バイバイ《オムナス》
シーズン・グランドファイナル終了から1日と経たず、10月12日に禁止制限告知がありました。
ヒストリックでは、一時停止中だった《時を解す者、テフェリー》と《荒野の再生》に加えて、シーズン・グランドファイナルで大活躍だった《創造の座、オムナス》が禁止カード入りとなってしまいました。
「2020年10月12日 禁止制限告知」より引用
スタンダードと同様に、《創造の座、オムナス》はヒストリックでも強力であることが証明されています。ヒストリックでの勝率はスタンダードよりも低いものの、我々は《創造の座、オムナス》を使ったデッキのメタ内でのシェアが確実に増大し、とりわけこのデッキが最もプレイされているデッキであるBO3において顕著であることを目にしています。またヒストリックには《探検》や《成長のらせん》などのこのデッキが求めている追加の土地を置く手段がスタンダードよりも多く存在します。ヒストリックのメタのよりよい多様性と健全性のために、《創造の座、オムナス》は一時停止されます。
リリースからわずか18日、あまりに早い禁止カード入りとなってしまいました。マジック史上最速の禁止カード入りとなりますが、要因は単体の強さはもちろん、《オムナス》を巡る構築環境にもあったと思います。多数の特殊地形によりマナベースは安定しており、《探検》をはじめとした相性の良いカードが多く、そして《自然の怒りのタイタン、ウーロ》や《僻境への脱出》のようにリソースを伸ばすカードの多さから手札が尽きず、結果として使いやすく強いデッキとなったのです。人気が集中し、高い使用率となったのも納得でしょう。
今回は追悼の意味を込めて、《オムナス》を中心に2020年シーズン・グランドファイナルの結果を振り返っていきます。
2020年シーズン・グランドファイナル
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
優勝 | オースティン・バーサヴィッチ | オムナスランプ |
準優勝 | アーロン・ガートラー | オムナスランプ |
トップ4 | ガブリエル・ナシフ | 4色ミッドレンジ |
トップ4 | ラファエル・レヴィ | 4色ミッドレンジ |
トップ8 | オータム・バーチェット | オムナスランプ |
トップ8 | パトリック・フェルナンデス | オムナスランプ |
トップ8 | セス・マンフィールド | ジャンドサクリファイス |
トップ8 | エマ・ハンディ | オムナスランプ |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
シーズン・グランドファイナルはスタンダードとヒストリックの混合フォーマットでしたが、トップ8には5つのオムナスランプが残りました。優勝したオースティン・バーサヴィッチ選手はヒストリックラウンドを5-1とし、スタンダードと合わせて最速で決勝ラウンド進出となりました。
同じ4色デッキながらスゥルタイを軸に、メタカードである《鎮まらぬ大地、ヤシャーン》をタッチしたのが4色ミッドレンジです。《思考囲い》、《霊気の疾風》、《取り除き》とコントロール要素が増えています。
《世界を揺るがす者、ニッサ》はオムナスランプのフィニッシャーよりも軽く、さらに攻撃的なプレインズウォーカーであり、《ハイドロイド混成体》とのコンボは遅いデッキに対して圧倒的なリソースを差を生み出してくれます。巨大な《ハイドロイド混成体》をキャストした後は隙ができがちですが、防御体制も整っています。「森」タイプを持ちながら青マナが生成できる《繁殖池》が1枚でもあれば、《ニッサ》の常在型能力のおかげで2マナの打ち消し呪文を構えることができるようになっているのです。
《ニッサ》と軽い妨害カードの組み合わせこそがこのデッキのアイデンティティーであり、ランプデッキへの対抗手段なのです。
マナベースに若干の変更があったものの、『ゼンディカーの夜明け』以前と変わりないデッキがジャンドサクリファイスです。正確にはラクドスサクリファイスに《集合した中隊》をタッチした攻撃的なミッドレンジデッキであり、アグロに対して抜群の相性を誇ります。しかし、フィールドには天敵である《鎮まらぬ大地、ヤシャーン》が数多く存在していたため、トップ8入賞はセス・マンフィールド選手のみとなってしまいました。
メタゲーム
デッキタイプ | 使用者数 | トップ8 |
---|---|---|
オムナスランプ | 11 | 5 |
ジャンドサクリファイス | 7 | 1 |
4色ミッドレンジ | 6 | 2 |
ネオストーム | 3 | 0 |
アゾリウスコントロール | 2 | 0 |
ラクドス秘儀術師 | 1 | 0 |
ゴブリン | 1 | 0 |
バントコントロール | 1 | 0 |
合計 | 32 | 8 |
オムナスランプと対抗馬である4色ミッドレンジの使用者は多く、トップ8にも複数の入賞者を輩出していました。2番人気となったジャンドサクリファイスですが、環境の半数以上が《ヤシャーン》という明確なメタカードを積んでしまったため、非常に不利な立ち位置となりました。
《海門の嵐呼び》と《新生化》の2枚コンボ、ネオストームはデッキ構築からも注目が集まりました。行弘 賢選手はマナクリーチャーを減らして空いた枠にドロースペルを増やすことでコンボパーツを集めやすくし、手札にダブついた《新生化》を有効活用できるように《花の壁》と《自然の怒りのタイタン、ウーロ》を採用していました。サイドボード後は《夜群れの伏兵》と合わせて、コンボとビートダウンの2軸をとることができ、同デッキはヒストリックラウンドを4-2としていました。
トップ8デッキリストはこちら。
オムナスランプ
3 《森》
2 《山》
1 《平地》
4 《寓話の小道》
1 《進化する未開地》
1 《広漠なる変幻地》
4 《ケトリアのトライオーム》
4 《ラウグリンのトライオーム》
1 《繁殖池》
1 《神聖なる泉》
1 《踏み鳴らされる地》
1 《断崖の避難所》
1 《氷河の城砦》
1 《根縛りの岩山》
-土地 (29)- 4 《水蓮のコブラ》
3 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
4 《創造の座、オムナス》
2 《鎮まらぬ大地、ヤシャーン》
1 《帰還した王、ケンリス》
-クリーチャー (14)-
使用者11名、内トップ8進出者5名という素晴らしい成績を残したオムナスランプ。スタンダードよりも「上陸」を複数回行う手段が多数あり、マナベースも強化されています。呪文選択の差異はあるものの、デッキの骨子はどれも共通しています。
マナ加速である《水蓮のコブラ》と《自然の怒りのタイタン、ウーロ》(準ずる《探検》)、そして《創造の座、オムナス》の3種類のカードです。これらは相互にシナジーを形成しており、前者2種は《オムナス》の着地を早め、2種類の「上陸」クリーチャーは1ターン中に2度セットランドすることで爆発的なマナを生成し、《ウーロ》はほかの2種類の「上陸」を補助してくれています。
《オムナス》はゴールではなく中間地点であり、そこに《寓話の小道》や《探検》を組み合わせることでさらにマナを生成し、《僻境への脱出》へと繋げてリソース差をつけていきます。ゴールは《発生の根本原理》と、当たり牌の《精霊龍、ウギン》、《帰還した王、ケンリス》の3種類となっています。
自分の動きを優先し、ノーガードでマナを伸ばしていくため、ネオストームや自分よりも早いデッキを苦手としますが、サイドボードには対策カードが全方位に用意されています。ネオストームには打ち消し呪文に加えて、コンボ自体を無効化する《鎮まらぬ大地、ヤシャーン》、アグロには《轟音のクラリオン》、墓地対策の《墓掘りの檻》にミラーマッチを決める《絶え間ない飢餓、ウラモグ》と、隙がありません。
ネオストーム
4 《繁殖池》
4 《蒸気孔》
4 《踏み鳴らされる地》
2 《岩山被りの小道》
2 《内陸の湾港》
1 《河川滑りの小道》
-土地 (19)- 4 《花の壁》
4 《海門の嵐呼び》
4 《二重詠唱の魔道士》
4 《玻璃池のミミック》
2 《タクタクの瓦礫砦》
2 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
1 《戦闘の祝賀者》
-クリーチャー (21)-
行弘 賢選手が使用したネオストームは、前回紹介したMichael Jacob選手のリストと違い、マナクリーチャーを採用せずにキャントリップスペルを増やしています。これによりコンボパーツを集めやすくなり、さらに複数引いてしまった《新生化》を手損せずに運用できる構築となっています。
コンボはこれまでと同じく、《海門の嵐呼び》と《新生化》の2枚であり、《二重詠唱の魔道士》と《玻璃池のミミック》を使いコピーし続け、《タクタクの瓦礫砦》で速攻をつけて攻撃します。
これがネオストームのコンボ!#2020GrandFinals pic.twitter.com/0RdlBOgluk
— マジック:ザ・ギャザリング (@mtgjp) October 9, 2020
ここからはコンボ成立を助ける、デッキを掘り進めていくカードを中心にみていきましょう。
《花の壁》と《自然の怒りのタイタン、ウーロ》こそ、このデッキの肝となります。前者はアグロデッキに対する防御網ですが、手札に《新生化》がダブついた場合は別の役割が生じます。これをコストに《新生化》をキャストすることで、手札を減らさずに《自然の怒りのタイタン、ウーロ》がサーチできるのです。
ドロースペルもコンボパーツがない場合にはデッキを掘り進めて、コンボ達成を助けてくれますし、サイドボード後は《夜群れの伏兵》と合わせて、ミッドレンジプランをとることも可能となるのです。
2枚という最小コンボ枚数ですが、パーツが揃わなければ動けません。そこで《選択》をはじめ多数のキャントリップスペルが採用されています。《熟考》は《海の神のお告げ》のインスタント版でありますが、すぐに墓地へと落ちるため、《ウーロ》の「脱出」コストとしやすいカードといえますね。
《海門の嵐呼び》ばかりが手札に集まってしまったなら、《熟考》をコピーすることでデッキを必要牌を集める確率も、ググっと高まります。
コンボを主軸に、ドロースペルと最低限の干渉手段が用意され、妨害カードは《霊気の疾風》と《削剥》のみとなっています。特に《削剥》はゲームスピードをスローダウンさせるだけではなく、厄介な《墓掘りの檻》も対処できるユーティリティな1枚です。
サイドボードではコントロールマッチを見越して《神秘の論争》が4枚採用され、メインの《ウーロ》を後押しするように《夜群れの伏兵》が用意されています。デッキ公開制ではあるものの、コンボとビートダウンの2つのプランを対処するのは難しいでしょう。
Hareruya Pros/Hareruya Hopesの大会結果
プレイヤー名 | 戦績 | 結果 |
---|---|---|
ラファエル・レヴィ | 7-4-1 | トップ4 |
アレン・ウー | 7-4-1 | 9位 |
ピオトル・グロゴゥスキ | 7-5 | 13位 |
グジェゴジュ・コヴァルスキ | 4-7-1 | 25位 |
ルイス・サルヴァット | 4-7-1 | 26位 |
トニ・ラミス・パスクアル | 4-8 | 30位 |
ラファエル・レヴィ選手は4色アドベンチャー/4色ミッドレンジを使い、初日に4勝をあげたリードを保ったまま2日目を終え、決勝ラウンドへ進みました!決勝ラウンドでは優勝者のオースティン・バーサヴィッチ選手に敗れたものの、見事、トップ4入賞を果たしました。
4色ミッドレンジはスゥルタイミッドレンジに 「生け贄」を封じるメタカード《鎮まらぬ大地、ヤシャーン》をタッチした欲張りデザイン。トライオームとショックランド、《寓話の小道》がこの構築を成り立たせています。
惜しくも9位となったアレン・ウー選手は優勝者であるオースティン・バーサヴィッチ選手ら4人で調整した4色アドベンチャー/オムナスランプを使用しました。スタンダードで使用した4色アドベンチャーは《水蓮のコブラ》が入っており、注目すべきデッキといえるでしょう。
今シーズンのプレミアイベントはシーズン・グランドファイナルを持って終了となりますが、プロシーンに終わりはありません。プロマジックの最高峰に位置づけられているMPL、MRL、そこを目指すチャレンジャー制度が始まろうとしています。2020-2021シーズンは、もう、目の前まで迫っているのです!
おわりに
ここまでオムナスランプとともにシーズン・グランドファイナルを振り返ってきましたが、すでに禁止改定は行われたため、ヒストリックでは、《創造の座、オムナス》の姿をみることはもうありません!!
『ゼンディカーの夜明け』リリースから瞬く間に、スタンダードをはじめヒストリックまでも席巻した《オムナス》。創造主の名に相応しく、環境を一色に染めてしまいました(自身は4色なのに!)。惜しむらくは、自信のカードパワーもさることながら相性が良いカードと、4色を成立させるマナベースが用意されていたことでしょう。
次の環境では、どのカードが主役となるのでしょうか?スタンダード/ヒストリックともに注目していきましょう。
それではまた、次回の情報局でお会いしましょう!