はじめに
みなさん初めまして。晴れる屋メディアチームの富澤です。
普段はメディアチームで編集などを担当していますが、今回より、スタンダード情報局を執筆していきます。よろしくお願いします。
早速ですが、今週は$5K Kaldheim Championship Qualifierの大会結果を振り返っていきます。
先週末の注目デッキは?
まずは先週末の注目デッキを確認していきましょう!
ナヤフューリー
2月19日、cftsoc3選手がミシックランク2位に到達したことで、話題を呼んだナヤフューリー。以前から存在していた《スカルドの決戦》入りのアドベンチャーデッキから、《憤激解放》+《カズールの憤怒》のコンボに振り切った新しいアーキタイプとなっています。
これまでのグルールベースのデッキは、タイプの異なるアドバンテージ源を使いながら戦闘による勝利を目指してきました。ですが、自分より早くボードコントロールに長けた白単アグロ、遅いもののパーマネントを根こそぎにしてしまうスゥルタイ根本原理に対して、突破することが難しくなってしまいました。
そこで目をつけたのが、戦闘に頼らない新たな勝ち手段です。《憤激解放》と《カズールの憤怒》のコンボはインスタントタイミングでいつでもしかけることが可能であり、《恋煩いの野獣》を追加コストに当てようものなら一撃10点のダメージをたたき出してくれます。《憤激解放》はブロックされなければ《エンバレスの宝剣》に近く、戦闘で10点、その後《カズールの憤怒》で10点、なんて勝ち方もあるのです。
さらに《憤激解放》と《黄金架のドラゴン》は「フリースペル」ごとき相性であり、《憤激解放》の数だけパワーを倍化できます。2枚あれば16点と《カズールの憤怒》がなくとも勝ち手段となるでしょう。
ですが、ドロー手段の多い青と違いナヤベースのデッキでは、3枚ものコンボパーツを揃えるのは非常に困難です。どのようにして集めていくのでしょうか?
ここで活躍するのは、アドベンチャーデッキのドローエンジンである《エッジウォールの亭主》です。ティムール-グルールと受け継がれてきた「出来事」サイクルは、このナヤフューリーにもしっかりと受け継がれており、クリーチャーを展開しつつ土地を伸ばしてくれます。そうして土地が4~5枚並んだら、《スカルドの決戦》の出番。一気に4枚のカードを補充してコンボパーツを探すだけではなく、II章III章の効果でサイズアップまで図ってくれるのです。これによりダメージは致死量へと達し、一撃必殺へと変化するのです。
3色デッキであるがゆえに、アグロデッキとの対決は不利となります。そのため、サイドボードには白単/赤単アグロ用にカードが多めに割かれています。《赦免のアルコン》は特徴的な1枚であり、数を並べて攻めてくる白単アグロには効果の高い1枚。プロテクション(白)により《スカイクレイブの亡霊》で対処されず、かなり時間を稼ぐことができますね。その隙に《スカルドの決戦》などのアドバンテージ源へと繋げていきましょう。
$5K Kaldheim Championship Qualifier
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
優勝 | Christoffer Larsen | 赤単アグロ |
準優勝 | simon kamerow | ジェスカイサイクリング |
トップ4 | sandydogmtg | 赤単アグロ |
トップ4 | liopoil | ナヤフューリー |
トップ8 | J P | 赤単アグロ |
トップ8 | outback@ Horie | スゥルタイ根本原理 |
トップ8 | Riley Hicks | ジャンドサクリファイス |
トップ8 | targetplayer | セレズニアアドベンチャー |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
参加者272名で開催された$5K Kaldheim Championship QualifierはChristoffer Larsen選手の赤単アグロが制しました。同アーキタイプはトップ8に3名が進出しており、今大会の勝ち組となっています。
メタゲーム
デッキタイプ | 使用者数 |
---|---|
スゥルタイ根本原理 | 42 |
グルールアドベンチャー | 40 |
赤単アグロ | 37 |
白単アグロ | 27 |
ナヤ系 | 26 |
ディミーアローグ | 14 |
サイクリング系 | 13 |
ラクドスサクリファイス | 10 |
エスパースタックス | 10 |
その他 | 53 |
合計 | 272 |
スゥルタイ根本原理、グルールアドベンチャー、赤単アグロの三すくみの構図は変わりませんが、注目すべきは5位に位置するナヤ系の増量です。スゥルタイ根本原理や白単アグロとの相性を改善すべくグルールアドベンチャーより進化したアーキタイプであり、今大会ではトップ8に1名、トップ16に2名送り出しています。メタゲーム的にはそれほど悪くない立ち位置ですが、3色ゆえに小回りのきくアグロデッキを苦手としており、赤単アグロの攻略が課題となっています。
トップ8デッキリストはこちら。
赤単アグロ
先週末は赤単アグロが大きな躍進を果たしました。$5K Kaldheim Championship QualifierとThe Bash Bros Battles #5を制し、2つのStandard Challengeでも決勝戦へと駒を進めています。
優勝デッキは既存の赤単アグロと比べ、やや軽い構築となっています。ゲームの締めくくりを務めてきた《黄金架のドラゴン》がバッサリと切られ、《朱地洞の族長、トーブラン》を増量しています。同時に土地もやや切り詰められており、《霜噛み》などの軽いカードへと差し替えられています。
メタゲームがアグロやクリーチャー主体のコンボへと舵を切ったことで、軽く戦場へ直接効果を及ぼすカードが優先されるようになりました。ミラーマッチをはじめとしたクリーチャーデッキを意識しつつ、コントロールにはより軽く、小型クリーチャーを展開する戦略にマッチした《朱地洞の族長、トーブラン》が睨みを利かせているのです。
サイドボードでは、スゥルタイ根本原理に効果覿面の《乱動する渦》に加え、現代に蘇りし《熱烈の神ハゾレト》こと《エンバレスの聖騎士》が光ります。まさか、コモンカードが使われるとは!
ソーサリータイミングでしか動けないデッキには効果的な1枚であり、環境の基本除去呪文である《取り除き》《無情な行動》は効果がありません。《灰のフェニックス》と合わせ、サイドボード後はさらにライフを詰めやすく、消耗戦に強くなっていますね。
ジェスカイサイクリング
サイクリングデッキといえば『イコリア:巨獣の棲処』発売以来、アーキタイプとして確立されたアグロベースのコンボデッキですが、Simon Kamerow選手は3色目を加えたジェスカイサイクリングを使用しました。メタゲームの変化はサイクリングデッキにも影響を及ぼし、立ち位置向上へと繋がったのです。大枠はほとんど変わりませんが、器用なデッキに仕上がっています。
《型破りな協力》採用の裏には、ナヤフューリーの台頭があげられます。《型破りな協力》はクロック生成と同時に、早いデッキに対しては防御網となるカードでした。しかし、筆頭アグロのグルールアドベンチャーは《山火事の精霊》《探索する獣》《エンバレスの宝剣》とチャンプブロックを許さず、3色目を足したことによる立ち遅れなどのデメリットばかりが目立っていました。
しかし、グルールアドベンチャーがナヤフューリーへと変化したことで、戦闘による突破力が激減し、クリーチャーによるチャンプブロックが可能となりました。《恋煩いの野獣》がいかにサイズで優れていようとも、ブロックされてしまえばプレイヤーへダメージは入りません。ナヤフューリーに合わせるように《雄々しい救出者》の追加として《型破りな協力》は採用され、絶対的な防御網を構築したのです。
《連門の小道》の加入は非常に大きく、タップインランドを《ラウグリンのトライオーム》だけに留めながら、《型破りな協力》のタッチを実現しました。さらに安定して青マナが供給できるようになったことで(供給源12枚)、サイドボードには《否認》《神秘の論争》と2種類の打ち消し呪文が採用されています。打ち消し呪文を入れることで《出現の根本原理》などのビッグスペルに対処できることに加えて、状況によっては育ちきった《繁栄の狐》を守る手にもなるのです。
直近の大会結果
2月17日から2月23日までの大会結果(最低参加人数32人以上、決勝トーナメント有り)になります。
白単アグロの天下から一転、メタゲームにどのような変化が訪れたのでしょうか。注目すべきはナヤフューリーの登場と、それをメタったサイクリングの復権です。立ち位置が悪くなっていたグルールアドベンチャーが非戦闘による勝ち手段を重視したアグロベースのコンボデッキとなったことで、スゥルタイ根本原理や白単アグロへの相性を改善しました。対グルールアドベンチャー戦では採用されているクリーチャーサイズが同じため引けを取らず、《巨人落とし》が相手のクロックを抑止します。しかも、《憤激解放》+《カズールの憤怒》のコンボはインスタントのため、干渉手段を構えながら可能なのです。
ジェスカイサイクリングも同じアーキタイプですが、こちらは数が並ぶデッキです。これにより戦闘によるダメージが著しく低下してしまうのでナヤフューリーとの直接対決では大きく有利となっています。「サイクリング」の特性上デッキも掘り進めやすく、仮にナヤフューリーがコンボを決めたとしても《天頂の閃光》によってライフゲインされてしまいます。
コントロールとの相性を改善すべく、3色のコンボデッキが増えたことで、より早く細かく動ける単色アグロにチャンスが巡ってきました。赤単アグロは攻撃性がもっとも高く、コンボよりも先に殴りきることができるため、メタゲームの中心デッキとなったのです。
おわりに
クリーチャーベースのメタゲームになったことで、コントロールデッキが最適化されそうですが、ここでもナヤフューリーとジェスカイサイクリングが悩みの種となってきます。単純なボード戦略だけではなく、直接火力(それも特大の)による勝ち手段があるためです。手札破壊や打ち消し呪文を増やせば、赤単/白単アグロに押し切られかねません。メタゲームは混沌としている状況です。
今週末には『カルドハイム』リーグ・ウィークエンドが控えていますね。次回はそれらの情報をお届けしたいと思います。