シールドの神髄 ~後編~

Jean-Emmanuel Depraz

続、シールドの神髄

氷雪ミッドレンジが強いのは事実だとしても、カードプールがそれに向いていないときまで思考停止して組んでいいわけではない。私がやった『カルドハイム』シールドの50%ほどは緑中心の多色だ。これは他のセットよりも明らかに多いけど、対戦相手がこのアーキタイプを組んでいる率は私よりも高い。かといって装備品が3つよりも少ないなら、正直言ってアグロは組みたくない。どちらも組めないときには私たちはどうすればいいのだろうか?

3. 「ダイナミックミッドレンジ」vs「おとなしいミッドレンジ」

封がされたパックを自らの手で開封していたむかしの話、『破滅の刻』のリミテッドを研究していた頃の話をしよう。私たち、フランス人の小さなグループ(多少は知られていそうな人の名前を挙げるとルイ・デルトゥール/Louis Deltourやレミー・フォルティエ/Remi Fortierがそこにいた)は、私が前編の終わりの方で説明した気づきを得た。『破滅の刻』にはたくさんの強力なボムが存在していたけど、一部のカードプールの方が他のカードプールよりもそれを使った戦略では恵まれているんだ。

スカラベの神永遠の刻圧倒的輝き霰炎の責め苦

その上、ふつうのセットで行うリミテッドとは違って、多くのものが伝統的な除去で対処する方法が通用しない。全体除去や「永遠」持ちカード、それに加えて神クリーチャーも死亡させても戻ってくる。《永遠の刻》《圧倒的輝き》《霰炎の責め苦》などなど…。当時想定していた「強いカードプール」というものはバリエーションがあって強力なロングゲームでの戦い方が可能だったから、ロングゲームを目指すことを選ぶのはかなり恐ろしい選択肢になってしまっていた。《殺害》《帰化》の類を使って対戦相手の切り札に対処するゲームプランは信用できず、自分のボムが相手のボムに打ち勝てるかどうかも自信が持てない。

呪文織りの永遠衆

ゲーム中に起こることをうまく制御できないことが不満だったから方向性を変えることにした。でもアグロを組むわけではない。それが許される環境ではなかったからね。最強のドラフトデッキは「果敢」クリーチャーを多く含むイゼットカラーのテンポデッキだった。しかしシールドでそれを組むのは困難だったんだ。たとえば《呪文織りの永遠衆》は代えが効かなかったね。

アグロを組む代わりにリミテッドでのミッドレンジの扱い方を変えたんだ。狭いカードプールとマナカーブにかかる制約から、リミテッドのデッキはほとんどが何かしらのミッドレンジだ。でも全てのデッキが同じことをしようとしているだろうか?どうしてロングゲームをしなければいけないのだろうか?

ミッドレンジデッキを組んでもマナカーブは気にしているだろう。序盤に使えるカードも用意してマナをムダにしないように気をつけている。序盤のカードをロングゲームまで生き残ることを目的に使うのではなく、対戦相手に圧力をかけてカードを最適ではない方法で使わせるようにしたらどうだろうか?

残忍な野猫ロナスの重鎮魂のたかり屋屍肉の金切り声上げ

話をかんたんにすると、私たちはカードアドバンテージを重視する度合いを下げて、テンポを重視しつつ、アグロ一辺倒にはならないようにした。オーラや1マナのクリーチャーは試合にあまり影響しないからデッキに入れなかったし、ボムや除去を含む色は使うようにした。でもたとえば《残忍な野猫》の代わりに《ロナスの重鎮》を使うようにした。タフネス1のクリーチャーには厳しい環境だったけど、《魂のたかり屋》を抜いて《屍肉の金切り声上げ》を入れることもあった。

かすむ刀剣

結局平凡なカードプールを持っていて相手がこちらのプレイするカードに対処し続けたら不利なんだ。だったら対戦相手が順調に展開できない試合に集中したり、対戦相手が《かすむ刀剣》をいいタイミングで引けなかった試合に強い除去を適当な飛行クリーチャーに使わざるを得ないようにしたらどうだろうか?そうすれば私たちがボムを出す頃には相手は除去が枯れているかもしれない。防戦に努めていたら対戦相手は最良の除去を最大の脅威のために残しておいたことだろう。

大事なのは相手を早く倒すことではない。相手の引きがすごく悪くないとそれは起きない。対戦相手にぎこちない動きをさせて、ロングゲームになってボム次第で決着できるようなカードの使い方を許さないことが目的なんだ。

この手のデッキを(フランス語からふわっと翻訳すると)「ダイナミックミッドレンジ」と私たちは呼んでいた。要するに能動的に動くことを重視していると言えば意味は伝わるかな。

読者のみんなも過去に「ダイナミックミッドレンジ」、あるいは多少のアグロ要素のあるミッドレンジデッキを組んだことはあると思う。対戦相手との相性的にそうしなければいけないときにはサイドボード後にダイナミックな側に寄せることもしただろう。でもこの手のデッキがどういう構成になるべきなのかを把握してそれを習得することで、私たちはデッキ構築のちゃんとした選択肢を持つことができるようになったんだ。《残忍な野猫》は対戦相手の方がロングゲームになったときに強ければ意味がないカードだし、そもそも《残忍な野猫》すら持っていないなら対戦相手に圧をかけて行った方がいい。

穿刺の一撃

ゲーム中のプレイングにも変化が生まれる。この戦略を意識していなければ、中盤の適当な3/4のブロッカーに《穿刺の一撃》を使うことはないだろう。そのうち出てくる神クリーチャーや「永遠」クリーチャーに使うだろう。でもそこで除去を使うことで、殴り切られることによる敗北を回避するために対戦相手も《穿刺の一撃》をこちらの適当なクリーチャーに使わなければいけないとしたらどうだろう。いい交換をしたと言えるかもしれない。私たちの除去は相手が持っているバカげたボムには対処しなかったけど、対戦相手もこちらが出す《蠍の神》を追放できなかった。

大蛇の餌世界樹への道

『カルドハイム』の場合は《穿刺の一撃》をもっと汎用性の高い《大蛇の餌》に置き換えられる。もし相手がカードアドバンテージ源をあまりにたくさん持っていて、脅威となる特定のカードに頼らずともそのうちクリーチャーの量に圧殺されるとしたらどうだろう?対戦相手が《世界樹への道》を起動することができる、もしくは《星界の番人》でそれを再利用することすらしてくるとしたらどうだろう?《大蛇の餌》《穿刺の一撃》よりも強いだろうが、対戦相手の方ががっしりしたミッドレンジデッキだったら《大蛇の餌》に頼って試合に勝利するのは無理だ。ロングゲームになったときにこっちの方が不利なら《大蛇の餌》も攻撃的に使いたいかもしれないね。

全てのカードプールで「ダイナミックミッドレンジ」が組めるわけでもない。攻めるのに適したクリーチャーがいないから受動的にプレイしなければいけないこともあるだろう(「おとなしいミッドレンジ」は「ダイナミックミッドレンジ」と違って身内で使われていた言葉ではないけど、いい感じの表現だと私は思っている)。でも「ダイナミックミッドレンジ」が組めないとしても違いを意識することは大事だ。「おとなしいミッドレンジ」デッキは生存することに徹して、1枚あるいは複数枚の切り札を唱えられるようになるまでは、有利になるプレイングを積み重ねていくんだ。

侵略の代償

対戦相手の解答を早めに使わせることで切り札を守るのではなく、相手の解答を打ち消せるだけのマナが貯まるのを待ったり、相手の手札を捨てさせたり、そういう方法で対処する。個人的には「おとなしいミッドレンジ」の方が私のプレイスタイルに合っている。だからこれまで教えてきたことは私にとって当初はしっくりくるプレイスタイルではなかったけど、ダイナミックに振る舞う必要があるときはそうできるように訓練してきた。

ひとつの物差しだとも言えるね。全てのデッキがなにかしらのアーキタイプにぴったり当てはまるわけでもない。でもデッキ構築の選択肢を知っていることを活かして、自分のデッキをどれかひとつの方向性に寄せることはできるし、そのために活かすべきなんだ。

さて次の章ではシールドで一番意見が分かれやすい判断について話そうか…。

4. 先手か後手か

予言

今は迷わずに先手を選ぶ人が多いね。脅威が強くなって解答はまあ弱くなったとも言える。だから追加の1ターンの方が追加の1枚よりも重要性が高まっている。この傾向はもちろん理解しているけど、迷うべき選択肢として考慮もしないのは少しモヤモヤ するね。《予言》がシールドでは強いなら、ただで1枚ハンドアドバンテージを得られるのは魅力的ではないのかい?

タスケーリの火歩き突風歩きぬかるみの捕縛

「誇示」や「督励」のように先手が構造的に有利になるメカニズムは存在している。除去のマナ・コストの軽さも重要な要素だね。『テーロス還魂記』では《ぬかるみの捕縛》が最良の除去呪文だったから後手の1ドローは魅力的だった。でも世間にはひとつ誤解が存在していると思うから指摘したい。後手はリミテッドをやっているセットによって必ず正しかったり間違っていたりするわけではない。自分のデッキや相手との相性が大事なんだ

私が先手後手の判断をするときに意識する要素をいくつか紹介しよう。

枯れ冠

1) もっとも大事なのは軽い除去を使えるかどうかだ。それが使えないせいで、対戦相手の脅威にすぐに対処できなくて相手が加速度的に有利になって負けるようなリスクがあるなら、先手を選ぶ。『カルドハイム』だったら《枯れ冠》なんていい例だね。たしかに平凡なカードだ。でも後手の方が強く使えるね。

多元宇宙の警告頭蓋の奇襲

2) 建設的カードアドバンテージ源をたくさん持っているなら、後手の1ドローは魅力を失う。建設的カードアドバンテージ源とは使えるカードを増やすカード、たとえば《多元宇宙の警告》のようなカードのことだ。逆にそうではないのは対戦相手の手札を減らして相対的なカードアドバンテージを増す《頭蓋の奇襲》のようなカードだね。後者は破壊的カードアドバンテージ源とでも言えばいいのかもしれない。《頭蓋の奇襲》《古牙の信奉者》、さらには《ドゥームスカール》なんかもそういうカードだ。対戦相手が先手でゲーム開始時のリソースが少ない方がこういうカードは強い。

もちろん破壊的カードアドバンテージ源が戦場に影響を与えないタイプなら唱えるためには時間稼ぎが必要だ。軽い除去の重要性がさらに増す。でも自分のデッキが小型クリーチャーを簡単に止められるなら、アグロデッキに先手を取らせてカードを捨てさせると相手は大きな痛手を負う。ブロッカーを突破するためにはクリーチャーを多く展開する必要があるからね。

3) マナ基盤が弱ければ弱いほど、滑らかに展開するためには追加のドローが欲しくなる。これは私が前編で話した話題ともつながっていて、後手を取るメリットの中でもかなり過小評価されているものだ。色マナが足りていなさそうな多色デッキを相手が使っているとき、私は相手がうまくいかずマリガンする確率を上げるために先手を渡すことがある。相手が想定通りうまくいかなくて勝利できるときは嬉しいね。

無害な申し出

「ダイナミックミッドレンジ/おとなしいミッドレンジ」の用語に話を少し戻すと、上記の要素から「ダイナミックミッドレンジ」は先手を取りたい一方で、「おとなしいミッドレンジ」は後手を取りたい。このとき難しいのは「ダイナミックミッドレンジ」と「おとなしいミッドレンジ」の試合になったときだ。先手を取るべきかという問題は、どちらのデッキの完成度が高いかによる。私の「おとなしいミッドレンジ」がよくまとまっていて、軽い除去がたくさんある上に戦場を取り返すボムがあるなら、私は「ダイナミックミッドレンジ」相手にもよろこんで後手をもらおう。

まだ状況がよくわからないならとりあえず後手をもらうね。対戦相手のデッキがとてもしっかりした「ダイナミックミッドレンジ」だったり、アグロですらあったりするならロングゲームになったときに有利なのは自分だ。だから相手がゲームプランを遂行できないようにギアチェンジして先手を取る。自分のカードが多少強さを失うとしてもそうする。

最後にはなったけど大事な話題に触れよう。多くの人が悩まずに先手を取る。これをどう利用すればいいだろうか?自分のデッキが後手で強くなるように組めば、対戦相手がサイコロに勝って後手をくれたときも有利になるね。私が「おとなしいミッドレンジ」の側を好む理由のひとつでもある。実質的にサイコロに負けないんだ!

世間の後手を嫌がる風潮を利用しようとするなら、本来の枚数よりも少し土地やカードアドバンテージ源を減らしてもいいだろうね(正直言って、近頃は対戦相手が私に先手を渡してきたときは、本当は後手がよかったとしても嬉しいところがある。対戦相手はこのゲームがどういうゲームなのか理解していることを示しているからだ。その判断が正しかろうと間違っていようとね。)

5. 『カルドハイム』シールドのデッキ例

この記事自体はシールド一般の話だ。重要なことについて話したかったし、シールドをやるセットが変わっても基本的な原理は変わらないと信じているからね。リミテッドよりも構築を好む友人のユリエン・スチール/Julien Stihleの面白い話があって、彼はどんなセットのシールドでも彼独自の「逆転マナカーブ理論」を使う。平均マナ・コストが重い色を使うだけなんだ。これは自分のカードプールがロングゲームで強くなかったとしても、ふつうよりも重いカードを引き続けるだけである程度はカバーできるという理論なのだが…。

この過度に単純化された理論を提唱していること以外は偉大なプレイヤーが言っていることではあるけど、「ダイナミックミッドレンジ」の理論とは相容れない考え方だ。でもなんか面白い話だからみんなにも共有したかった。めちゃくちゃ弱いシールドのカードプールを得てしまったときには役立つかもしれない。

『カルドハイム』に話を戻そう!前編でボロスと緑中心多色の話をしていたときに、シールドで組めることがある他のアーキタイプについて話すと言ったね。これからそれについて話そう。各種「ダイナミックミッドレンジ」について話した上で、後手を取りたいような典型的な「おとなしいミッドレンジ」の例も見せよう。

A) オルゾフ「2つ目の呪文」シナジー

冥府のペットドローガーの再生

重要なコモン: 《冥府のペット》《ドローガーの再生》

クリックして拡大

このデッキはマッチ・シールドのイベントで4-0したときのものだ。『カルドハイム』でも最強クラスのボム《イマースタームの捕食者》があるね。でも「ダイナミックミッドレンジ」を組んだからと言って最強のカードを使わない理由にはならない。緑中心多色デッキよりもこのデッキの方が《イマースタームの捕食者》を活かせていたとも思うね。

血空の狂戦士クラリオンのスピリット武勇の審判者、ファーヤ

このアーキタイプは《冥府のペット》とそれより優れたアンコモン(《血空の狂戦士》《クラリオンのスピリット》)を中心に組む。「おとなしい」タイプのこのデッキも組むことができるよ。《武勇の審判者、ファーヤ》《村の儀式》《活力回復》といったカードを使う。でも「ダイナミック」なタイプの発想としてはマナカーブを低く抑えていることを活かして、そのターン2つ目の呪文を唱えるシナジーを満たしながら相手を突き崩すところが大事なんだ。

《ドローガーの再生》が一番強い補助的カードだね。相手への圧を継続させるリソースを補給しながら2つ目の呪文を唱えるシナジーも満たしていく。でも軽い補助的カードはたくさんあるよ。『カルドハイム』シールドで起こりがちなこととして、クリーチャーのマナカーブを整えるのが難しいんだ

B) シミックテンポ

地平の探求者氷山の徘徊者

重要なコモン: 《地平の探求者》《氷山の徘徊者》

クリックして拡大

雪崩呼び

BO1で私がやった中でも一番弱いカードプールの1つだ。《雪崩呼び》はレア級の強さのアンコモンではあるけどね。結果は7勝2敗だ。下のカードはサイドボード候補だ。

《地平の探求者》は『カルドハイム』で「ダイナミックミッドレンジ」向きのクリーチャーの一番いい例かもしれないね。特に《輝く霜》と比べたらそうだ。両方ともマナ基盤を整えてくれる。でも《地平の探求者》はもっと能動的なカードだから対戦相手に対処させるか、そうしなければカードアドバンテージを形成する。《輝く霜》は「おとなしい」デッキが欲張ってタッチしたあらゆるカードをひとまとめにしてくれる糊みたいなものだね。

C) (少し極端に)「ダイナミック」なグルール

護衛の林歩きタスケーリの火歩き臆病な大男

重要なコモン: 《護衛の林歩き》《タスケーリの火歩き》《臆病な大男》(+《地平の探求者》)

クリックして拡大

これはもはや「ダイナミックミッドレンジ」というよりはアグロかもしれない。装備品があるという点を見てもそうだね。クリーチャーたちも単独のカードパワーが低いから突破力も低くて、ゲームが進行したら何かしらサポートしてあげないと攻撃が通らない。

護衛の林歩き仮面の蛮人

《護衛の林歩き》は「ダイナミックミッドレンジ」に必要な2マナクリーチャーのいい例だ。序盤からダメージを与えられて、序盤以降に引いても他のクリーチャーのサイズを上げて攻撃できるようにしてくれる。《仮面の蛮人》の方が緑中心多色では、圧倒的に優れたカードだ。対戦相手のさまざまなボムに対処してくれるからね。でもこういうデッキではパワーが2あることの方が重要で、そういうボムや対戦相手の装備品はライフレースを仕掛けることで無視できるようにしたいんだ。

輝く霜

このデッキの画像を保存する気になった理由の1つとして《輝く霜》が2枚…サイドボードにあるということがある。もともとはメインデッキに入れていたんだ。黒のカードもこのデッキに3枚入っているからね。でも「ダイナミックミッドレンジ」の方向性に合うカードではない。

D) (少し極端に)「おとなしい」アゾリウス

嘲笑の人形領界からの旅立ち

重要なコモン: 《嘲笑の人形》《領界からの旅立ち》

クリックして拡大

「ダイナミック」な方向性とは逆側ではあるものの、アゾリウス飛行ビートダウンは先手を取りたい。でも対戦相手をゆっくり追い詰めることもできて、勝利は飛行ビートダウンと半々の割合だったね。《嘲笑の人形》はすごくアグロの構築でもすごく「おとなしい」構築でも好きなカードではないけど、オルゾフとアゾリウスではうまく使えた。

これはあまり自信がないことだけど、ほとんどのリミテッドで存在している伝統的なアゾリウス飛行ビートダウンのアーキタイプは、「ダイナミック」デッキとしても、「おとなしい」デッキとしても、マッチアップとゲーム開始時の手札次第でどっちもゲームプランも取れるんじゃないかと感じている。好きなアーキタイプだけど今まで述べてきた理論には合わないデッキだと認めざるを得ないね…。

領界からの旅立ち

《領界からの旅立ち》はこの特徴を彩るカードだ。能動的にダメージを押し通したいときにも、テンポを犠牲に重要なカードを除去から守るためにも使えるカードだからね。後者をやるときにはゲームが長引くことを許さないといけない。グルールデッキの《蛇皮のヴェール》とは違う。「おとなしいミッドレンジ」デッキでボムを守るために打ち消し呪文を使うときを思い起こさせるね。

見張るもの、ヴェイガ

話は変わるけど、ほとんどのシールドでは《見張るもの、ヴェイガ》はボムだとは感じないけど、このデッキでは最高だったね。

E) 後手の1ドローをよこせ!

クリックして拡大

枯れ冠鉄の評決ベスキールの盾仲間

シールドという主題とは離れるけど、これは私が『カルドハイム』初期にやったドラフトの1つだ。後手を取れるときの気分の良さを体現したデッキだね。《枯れ冠》《鉄の評決》《ベスキールの盾仲間》そして2つの全体除去によって相手が順調に展開したとしても勝つのはお茶の子さいさいだ。かなり強そうなボロスデッキにだって勝てる。

おわりに

今日話したかったことはこれでおしまいだ。まあすでに結構な量だけど…。でもシールドで次の段階へと上達するための記事を書いているのにサイドボーディングに全く触れないのは妙な感じがするからパスカル・フィーレン/Pascal Vierenの偉大な記事を紹介しておこう。

シールドを今から始めるプレイヤーでも実績あるプレイヤーでも、何かしら興味を引く内容がこの記事に存在していて、シールドがより奥深いフォーマットに見えていたらうれしいよ!私がドラフトに次いで好きなフォーマットで、みんなもっと好きになれるはずだという自信を持っている!

ウィザーズ・オブ・ザ・コースト社がアリーナ・オープンにシールドを導入する判断をしたことは本当にうれしいし、また大舞台でリミテッドをやる日を心待ちにしているね。

ダイナミックミッドレンジの父、そして私にリミテッドの手ほどきをした先生の一人、レミー・フォルティエの言葉を借りて締めのあいさつとしたい。

「戦場でまた会おう」

ジャン=エマニュエル・ドゥプラ (Twitter / Twitch)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

Jean-Emmanuel Depraz フランスのMPL所属プレイヤー。グランプリ・ワルシャワ2017での優勝を皮切りに、プロツアー『イクサランの相克』で7位に入賞、ワールド・マジック・カップ2018でフランスを優勝に導く。その後も勢いは衰えず、2019年のミシックチャンピオンシップⅤで準優勝、2020年のプレイヤーズツアー・オンライン2でも準優勝を果たすなど、ハイレベルなイベントで好成績を残し続ける確かな実力を持つ。マジックの競技シーンとカジュアルの間には溝があると考えており、それを埋めることができるようなプレイヤーになりたいというのが彼の一つの夢である。(写真: Wizards of the Coast) Jean-Emmanuel Deprazの記事はこちら

このシリーズの過去記事

過去記事一覧へ