スタンダード情報局 vol.37 -抜け道を探して-

富澤 洋平

はじめに

みなさんこんにちは。晴れる屋メディアチームの富澤です。

前回の情報局ではクリーチャーが横に並び、ナヤフューリーに強い2種類のデッキをご紹介しました。《型破りな協力》によりジェスカイカラーとなったサイクリング、そして《クラリオンのスピリット》を攻防の要に据えたアドベンチャーデッキです。1週間経過して、これらのデッキの立ち位置はどのように変化したのでしょうか。

型破りな協力クラリオンのスピリット

今回は$5K Strixhaven Championship QualifierCFB Pro Showdown March 2021の大会結果を振り返っていきます。

先週末の注目デッキは?

まずは先週末の注目デッキを確認していきましょう!

白単アグロ

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Joaquin Effertz選手がプレイヤーズツアー予選を突破したのは、久しぶりの登場となる白単アグロでした。以前と比べても戦略に大きな違いはないため、詳しいデッキ解説は以前の情報局に任せて、ここでは変更点について詳しくみていきましょう。

石とぐろの海蛇

目立つ変更点は《堕ちたる者の案内者》の不採用です。《クラリオンのスピリット》をはじめとしたトークン戦略が増えたことで、タフネス1のアタッカーは使いにくい環境となってしまいました。そこで、代わって採用されたのは可変的なマナ域として使える《石とぐろの海蛇》。同じ1マナ域として使えるだけではなく、中盤以降はマナフラッド受けにもなっているのです。

スゥルタイ根本原理や4色スタックスの《古き神々への拘束》に耐性があり、《無情な行動》で落ちにくいのも見逃せません。トランプルはトークン戦略にも強く、仮に相打ちを狙われたとしても横にいる《無私の救助犬》《命の恵みのアルセイド》が守ってくれます。中盤以降は余りがちなマナを注ぎ込んでゲームを決めるサイズでキャストしていきましょう。

影槍

トークン戦略への意識は装備品にも表れています。《影槍》はダメージレースで優位に立てるカードですが、トランプルを付与することでチャンプブロックすら許しません《軍団の天使》《光輝王の野心家》で育ったクリーチャーなどに装備して、ダメージを刻んでいきたいところです。

赦免のアルコン

サイドボードでは3枚採用された《赦免のアルコン》が目立ちます。ミラーマッチはこのクリーチャーの有無で勝負が決まるといっても過言ではなく、攻撃を抑制しつつ一方的にダメージを稼いでいけるのです。また、メインとサイド合わせて《軍団の天使》が3枚しか採用されていない点からも、トークン戦略をかなり意識した構築となっています。

$5K Strixhaven Championship Qualifier

順位 プレイヤー名 デッキタイプ
優勝 Joaquin Effertz 白単アグロ
準優勝 Lukas Dusek スゥルタイ根本原理
トップ4 Tulio Jaudy ディミーアローグ
トップ4 Ayrton Micallef 赤単アグロ
トップ8 Andreas Hamann ティムールワープ
トップ8 Mani Davoudi スゥルタイ根本原理
トップ8 Bobby Fortanely 赤単アグロ
トップ8 Marco cammilluzzi ティムールワープ

(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)

参加者286名で開催された$5K Strixhaven Championship Qualifierは白単アグロを使用したJoaquin Effertz選手の優勝となりました。《クラリオンのスピリット》を苦手とするアーキタイプでしたが、同デッキを強烈にメタった構築を持ち込んでいます。

メタゲーム

デッキタイプ 使用者数 トップ16
スゥルタイ根本原理 67 4
ティムールワープ 42 2
赤単アグロ 38 4
サイクリング系 28 0
ディミーアローグ 26 3
ナヤアドベンチャー 17 0
白単アグロ 13 1
その他 55 2
合計 286 16

メタゲームはスゥルタイ根本原理を頂点にティムールワープと赤単アグロが続くかたちとなりました。この構図はトップ16でも変わりません。白単アグロは予選ラウンドこそ苦戦しましたが、結果的に相性の良いフィールドが形成されていたようですね。

トップ8デッキリストはこちら

スゥルタイ根本原理

スゥルタイ根本原理

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スゥルタイ根本原理はランプデッキの一種ですが、メタゲームによって大きく構築が変化するアーキタイプです。初期はボードコントロール強めの構築でしたが、日本選手権2020ファイナル時はミラーマッチを意識したパーミッションスタイルへと変化していたのです。

現在は8枚のマナ加速から高速《出現の根本原理》を目指していきますが、初期のようにボードコントロール強めの構築に確定打ち消し呪文を足したものとなっています。

エルズペスの悪夢否認

サイクリングデッキがメタゲームの上位に陣取ったことで《エルズペスの悪夢》が戻ってきています。ボードと手札、墓地とサイクリングデッキの戦略を1枚で完封できるカードであり、ゲームをかなりスローダウンさせられます。ボードがクリアな場合は5ターン目以降に置くことで、一時的ですが完全に《天頂の閃光》を無力化でき、《出現の根本原理》などこちらが攻めるタイミングを作ることになるのです。

《天頂の閃光》に加えて、ミラーマッチやティムールワープを睨み、メインボードから《否認》を採用しています。序盤こそタップアウト気味に動いていきますが、マナの伸びた中盤以降は相手の動きを牽制しつつ《出現の根本原理》のキャストタイミングをうかがっていくことになります。《否認》はこのデッキにとって致命的な《アールンドの天啓》《天頂の閃光》を狙い打つカードなのです。

軽蔑的な一撃

サイドボードには2種類の打ち消し呪文と《強迫》が採用され、かなりコントロール戦を意識しているようです。《軽蔑的な一撃》は環境的にもっとも有効範囲の広い打ち消し呪文であり、《黄金架のドラゴン》《天頂の閃光》《グレートヘンジ》《アールンドの天啓》と各デッキの中心となるカードを狙い打てる1枚となっています。

ディミーアローグ

ディミーアローグ

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前環境から引き続き存在しているディミーアローグですが、最近はやや大人しめになっていました。環境初期こそスゥルタイ根本原理があふれていたため立ち位置が良かったものの、徐々に隅へと追いやられていきました。最近では《クラリオンのスピリット》が登場したことで、唯一の利点であった飛行による防御無視のクロックも機能しなくなってしまいました。逆境に立ち向かう、ディミーアローグの今をみていきましょう

息詰まる噴煙

Tulio Jaudy選手は《マーフォークの風泥棒》の枚数を減らし、代わりに《息詰まる噴煙》を採用しています。白単アグロの《堕ちたる者の案内者》と同じく、トークン戦略が跳梁跋扈している環境ではタフネス1のクリーチャーに人権などないのです。《息詰まる噴煙》は並んだトークンを流すだけではなく、「サイクリング」があるためどのマッチアップでも無駄になりません

無礼の罰

しかし、「切削」カードが減ったことでローグ本来の相手の墓地に依存した戦略が機能しなくなる可能性があります。そこで「切削」と打ち消しがセットになった《無礼の罰》が増加しています。現環境には打ち消し呪文以外で対処できないカードが多々あるため、《無礼の罰》の増量は納得ですね。

激しい恐怖

サイドボードでは、《激しい恐怖》が目を引きます。展開次第では自陣は無傷のまま相手のクリーチャーだけ一方的に流せるため、《クラリオンのスピリット》など横に並ぶデッキには効果があるカードです。同じく人間がいる白単/赤単アグロ相手には展開を伺いながら、打ちどきを見定めましょう。

ティムールワープ

ティムールワープ

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Andreas Hamann選手のティムールワープは定番だった《獲物貫き、オボシュ》を抜いた構築となっています。「相棒」を廃してまで入れたかったでは、偶数のカードは何でしょうか。詳しいデッキ解説は以前の情報局に任せて、ここでは変更点について詳しくみていきましょう

メインボードに採用された偶数のマナコストを持つカードは《軽蔑的な一撃》《多元宇宙の警告》、そして《サメ台風》の3種です。ティムールワープはほかのアドベンチャーデッキと比べてカードアドバンテージ源が少なく、消耗戦に不利なデッキとなっていました。3マナ以下のパワー5のクリーチャー8枚からなる《グレートヘンジ》パッケージを採用していましたが、黒のインスタント除去に加えて、《巨人落とし》《スカイクレイブの亡霊》が環境に増えたことで、定着が難しくなってしまったのです。

多元宇宙の警告サメ台風

今回のデッキでは《多元宇宙の警告》を採用したことで、相手の除去に関係なくリソース確保が可能となります。相手がインスタント除去を構えているタイミングでは、《多元宇宙の警告》を相手のターンで使用したり「予顕」することでマナを無駄にしにくい構築になっているのです。《サメ台風》は手札の減らないクロックであり、ほかの瞬速クリーチャーと合わせて、予想外のタイミングでクロックを用意することが可能となるのです。

ここまでメインボードの偶数のマナコストのカードについて解説してきましたが、このデッキで何よりも注目すべきカードはサイドボードにあります

エンバレスの宝剣

サイドボードに採用された《エンバレスの宝剣》こそ、このデッキから《獲物貫き、オボシュ》を廃した理由でしょう。現環境は《クラリオンのスピリット》《型破りな協力》により、《黄金架のドラゴン》《厚かましい借り手》でさえもダメージが通りにくくなっています。たとえ《アールンドの天啓》があったとしても、複数のブロッカーの前ではその威力を最大限発揮できません

《エンバレスの宝剣》は単体の突破力を強化し、トークンによるブロックを無効化してくれます。《巨人落とし》などのインスタントによる干渉手段には弱いものの、一度着地すれば対処の難しいカードです。《アールンドの天啓》+《エンバレスの宝剣》こそが、トークン戦略に対する解答となったのです。

CFB Pro Showdown March 2021

順位 プレイヤー名 デッキタイプ
優勝 Terrence J Campo ティムールワープ
準優勝 Josh Dunville 赤単アグロ
トップ4 Jason DePasquale ティムールワープ
トップ4 Steve Bodger ティムールワープ
トップ8 pablo vera ディミーアローグ
トップ8 Stompy45 4色スタックス
トップ8 walker Metyko ティムールワープ
トップ8 mausy ボロスサイクリング

(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)

参加者162名で開催されたCFB Pro Showdown March 2021はTerrence J Campoが制しました。《獲物貫き、オボシュ》型のティムールワープであり、基本に忠実な構築となっています。サイドボードには《長老ガーガロス》が4枚採用されており、アドベンチャーなどのミッドレンジマッチやトークン戦略を意識しているようです。

メタゲーム

デッキタイプ 使用者数 トップ16
ティムールワープ 32 5
スゥルタイ根本原理 23 2
赤単アグロ 19 3
サイクリング 19 1
ナヤアドベンチャー 16 2
ディミーアローグ 14 2
4色スタックス 8 1
その他 31 0
合計 162 16

最大母数となったティムールワープはスイスラウンドを快調に突破し、トップ8に4人が入る勝ち組デッキとなりました。決勝ラウンドでもその勢いは止まらず、優勝を果たしています。

一転して苦しい戦いとなったのはサイクリングでしょう。得意だったスゥルタイ根本原理も打ち消し呪文の増加により、以前ほどはっきりした相性差はなくなっています。上位には苦手なデッキが多く、不利な立ち位置となってしまいました。

トップ8デッキリストはこちら

4色スタックス

4色スタックス

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Stompy45選手が使用したのは4色スタックス。スタックスといえばエスパーやアブザンなどの3色デッキが定番となっていましたが、なぜ色を増やし4色構成にしたのでしょうか?

古き神々への拘束

タッチしてまで採用したカード、それは『カルドハイム』より加入した英雄譚《古き神々への拘束》です。あらゆるパーマネントを除去できるこのカードはスゥルタイ根本原理でもお馴染みの1枚になっていますが、《空を放浪するもの、ヨーリオン》《屋敷の踊り》と使い回せるスタックスではより強力なカードとなっています。

これまで対処の難しかった《グレートヘンジ》やプレインズウォーカーを難なく対処できるようになりました。《エルズペス、死に打ち勝つ》と違ってゲームを決め得るアドバンテージはとれませんが、シングルシンボルで使いやすく、何よりも除去範囲が限定されていません。重くソーサリータイミングでしか動けないスタックスにとっては軽い方が使い勝手も良く、マナカーブに沿って《空を放浪するもの、ヨーリオン》へと繋げられる《古き神々への拘束》に軍配が上がったのです。

連門の小道樹皮路の小道

さらに、両面土地により強化されたマナベースにも注目でしょう。これまで占術土地だったスペースをトライオームへと置き換え、残りは両面土地に変更しているのです。4色デッキながらほとんどのカードがシングルシンボルであるため、マナの要求値は低くなっています。これによりタップインによる序盤のもたつきを解消しながら、4色の構築が実現したのです。

おわりに

毎週のように新しいデッキが登場していたスタンダードですが、今回の結果をみるにデッキは出揃いメタゲームはちょうど1周したようです。これからは既存のデッキをメタゲームに合わせて、調整していくことが焦点になりそうですね。トークン戦略に対抗するためにティムールワープが《エンバレスの宝剣》を積んだように、プレイヤーの発想力が問われそうです。

次回もスタンダードの情報をお届けしたいと思います。

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富澤 洋平 晴れる屋メディアチームスタッフです。最近は《黙示録、シェオルドレッド》に夢中な日々です。 富澤 洋平の記事はこちら