Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2021/10/7)
好きなカードで遊ぶヴィンテージ
やぁ、ハビエル・ドミンゲス/JavierDominguezだ。
シーズンが終わったから、しばらく遊べていなかったフォーマットを色々と巡り始めた。そのひとつがヴィンテージだ。遊び出してから数週間経ったけど、さまざまなアーキタイプを試しながら存分に楽しんでいるよ。
ヴィンテージではキューブを彷彿とさせるゲーム展開が巻き起こる。各種モックスがあるから、常識外れの動きがいくつもできるんだ。
だけど、少し使った段階ではあまり魅力的じゃないなと思えるデッキが実はひとつあった。でも、結局はそのデッキが一番のお気に入りになった。そのデッキとはゴロススタックスだ。デッキ名となっている《煙突》はもう採用されていないけど、その魂は今も受け継がれている!
ほかの記事を読んで知っている人もいるかもしれないけど、《世界のるつぼ》や《壌土からの生命》は大好きなカードだ。だから《世界のるつぼ》を4枚も使うアーキタイプとなれば、とりあえずゴロススタックスを試してみようという気が起きたのは自然なことだったと思う。
デッキリスト
まずは現在のデッキリストを紹介しよう。
デッキガイド
基本ゲームプラン
過去の《Mishra’s Workshop》デッキのなかには、ロック要素だけじゃなくてアグロ要素をハイブリッドにしたものがあった。《磁石のゴーレム》や《電結の荒廃者》などをアタッカーに据え、プレッシャーをかけて勝利する。
でも、今回の構成はかなり守備的なものになっている。ゲームをひたすらコントロールし、いずれどこかで勝つ。つまり、攻めに回らず、ゲームをコントロールすることが原則的なゲームプランだ。相手のプランを崩そうとせず、盤面の構築を優先させてしまって何度も負けた経験がある。
《ウルザの物語》
デッキ全体で見ても、《ウルザの物語》は飛びぬけて強いカードの1枚だと思う。
なぜゴロススタックスの《ウルザの物語》がそんなに強いのだろうか。無色という制約上、選択肢が限られがちなゴロススタックスにおいて、《ウルザの物語》はマナソースであり、脅威であり、カードアドバンテージであるからだ。
《ウルザの物語》をどのタイミングでプレイするか、その判断はかなり腕が試される。構築物トークンを出せばほかの展開が1ターン遅れることになり、ヴィンテージではその1ターンが勝敗を分けかねないからだ。理想を言えば、可能な限り相手を妨害し、それから《ウルザの物語》を展開するのがベストだ。
ゴロススタックスの構築物トークンは信じられないようなサイズまで育つ。《鋼の風のスフィンクス》や《僧院の導師》といったクリーチャーでさえ、圧倒してしまうことがあるほどだ。
《ウルザの物語》が強い理由はトークンのサイズが大きいだけではない。III章のチューター能力も重要なんだ。レガシーやモダンの《ウルザの物語》はIII章を終えるとマナが減ってしまうことが弱点だった。だけど、ヴィンテージならそうはならない。
《太陽の指輪》をサーチできるためマナが減ることはなく、安心して《ウルザの物語》を出せるんだ。ほかに良いアクションがなければ、1ターン目に《ウルザの物語》を置くことだってできるだろう。
マナベース
《ウルザの物語》がパワーカードだとすれば、《Mishra’s Workshop》はこのデッキのエースカードといったところだろうか(《ウルザの物語》との相性は良くないけどね)。《Mishra’s Workshop》があるからこそ、本来必要とされるマナソースなしで《不屈の巡礼者、ゴロス》のような重い呪文も唱えられる。
《古えの墳墓》も強力な土地であり、2点ダメージが重くのしかかることが多いと言えど、マナの点で相手に有利をつけることができる。
だけど、話したいことはそういうことじゃない。土地の置き方だ。これまでの経験上、この2種の無色土地の置き方はとても難しい。普通は《古えの墳墓》よりも《Mishra’s Workshop》のほうが強い。だけど、その序列を変えてしまう手札も確かに存在する。
例をあげてみよう。
この手札の場合、《Mishra’s Workshop》よりも《古えの墳墓》のほうが価値が高い。手札に高マナ域のカードはないし、すぐに負けるようなことがなければ2枚の《ウルザの物語》でおそらく勝てるからだ。だからこの場合、自分なら《Mishra’s Workshop》から出し、《不毛の大地》から2枚の《古えの墳墓》を守れるようにするだろう。
仮に手札の《世界のるつぼ》が《不屈の巡礼者、ゴロス》だったとすると、そのときは最初にセットするのは《古えの墳墓》だ。そうすることで、《不毛の大地》で破壊されたとしても、残る2枚の土地で《不屈の巡礼者、ゴロス》を出せる。この想定しているシナリオでは、2点ダメージが致命的になることはないだろう。さて、その2点ダメージのことについてだけど……
《魔力の墓所》《魔力の櫃》《古えの墳墓》。自分のカードに首を絞められて負ける可能性は大いにあり得る。とりわけ、自分で破壊するにも《大いなる創造者、カーン》しかない《魔力の櫃》は問題になりやすい。
状況によりけりだけど、勝ちを確定させる何かが手札に来るまで《魔力の墓所》を出さないプランなら、単純にゲームプランを少し遅らせれば良いだけのこともある。そういう理由から、特定のマッチアップでは《魔力の墓所》をサイドアウトすることも考えたことがあった。だけど、結局《ウルザの物語》との相性が良いからデッキから抜くわけにはいかないと思うようになったよ。
特徴的なカード選択
《不毛の大地》とか《The Tabernacle at Pendrell Vale》とか、マナベースに関してはほとんど説明するまでもないと思う。
ただ、マナベースにはいくつか調整を加えていて、その手ごたえを感じている。メインとサイドのどちらにも基本土地を1枚も採用していないデッキは環境にほとんどない。だから《幽霊街》は《世界のるつぼ》と組み合わさったとしても残念なものであり、この枠を変更した。
《幽霊街》が唯一強いと思ったマッチアップというのは、基本土地を使わない相手の1ゲーム目だ。それを除けば《幽霊街》は普通のカードでしかないという印象だった。
この手のデッキではお馴染みの《裏切り者の都》は、このデッキでもかなり強かった。2枚目の採用も考えているほどだ。あえて言うまでもないだろうけど、《ウルザの物語》との相性も良い。攻め込まれていて《古えの墳墓》からダメージを受けたくない展開なら《裏切り者の都》に助けられるだろう。
《爆発域》はアンドレア・メングッチ/Andrea Mengucciにおすすめされたカードで、ちょっと弱い場面もあるけど、ほかの土地なら絶対に勝てないゲームに勝たせてくれたことは一度だけじゃなかった。《爆発域》の主な採用理由は、《ウルザの物語》を上手く封じられる《真髄の針》に対処することだ。1マナしか出せないという点では《幽霊街》と似た立ち位置だけど、異なる角度から守ることができてとても気に入っている。
デッキの中核
メインデッキの核となるカードはあの手この手を使って相手の妨害する。ゲームプランの核を担うのは《抵抗の宝球》などの妨害系アーティファクトだ。そのうちの《虚空の杯》などは、その強さゆえに制限カードに制定されているけど、制限カードが多いデッキだからその内の1枚は初手に来る可能性が高い。
《ファイレクシアの破棄者》がデッキリストに入っているのは、相手のモックスを指名することで《露天鉱床》として機能しながら、2点クロックを刻めるからだ。状況にハマらないことも多く、特別高く評価しているわけではないが、2/1というサイズがとても重要で、ロックが決まっていれば20点を丸々持って行ってくれることもある。
デッキ内でカードアドバンテージをもっとも稼げるのが《世界のるつぼ》だ。《不毛の大地》《露天鉱床》を再利用して相手のプランを崩壊させるのはもちろん、相手の《不毛の大地》を水の泡にすることもできる。《ウルザの物語》と組み合わせれば、フェアデッキに粘り強く戦える。
《不屈の巡礼者、ゴロス》は状況に応じてカードをサーチできるクリーチャーだ。そのときどきで欲しいカードは違うけど、困ったら《ウルザの物語》をサーチしよう。そうすれば《不屈の巡礼者、ゴロス》そのものが大きな脅威となる。除去が多い相手なら《カラカス》をサーチするという選択肢もあるので覚えておこう。
自由枠の選択
《大いなる創造者、カーン》のように誰の目にも採用が明らかなカードもあるけど、残る数枚の枠はデッキリストごとで違う。
《神秘の炉》はぜひドローしたいカードだ。《発明博覧会》でサーチすることは少なくても、5枚目の《世界のるつぼ》として使い、アドバンテージを稼ぐことができる。
《王神の立像》は微妙だという印象だった。着地すれば即勝利が決まるような展開もある定番カードだが、そういうゲームはこのカードがなくてもすでに勝利目前であることが多いように感じた。その反面、この6マナのアーティファクトはテンポ面で後れをとっている状況で盤面に何の影響も与えない。デッキから抜いてみたけど、今のところこの変更に不満はない。
それに対し、《ファイレクシアの変形者》は悪くないという評価だ。相手のカードをコピーすることもできるから腐ることはほとんどない。この《ファイレクシアの変形者》を採用する理由は《修繕》デッキ(ティンカー)にある。
《修繕》から《鋼の風のスフィンクス》や《荒廃鋼の巨像》をサーチされると普通は負けが確定する。だけど、《ファイレクシアの変形者》がデッキにあれば《発明博覧会》からサーチすることで対応できるし、自然とドローしてしまっても困ることはない。
最後の枠には《ウルザの後継、カーン》を選んでいる。《ウルザの物語》と同じく、《ウルザの後継、カーン》は《Mishra’s Workshop》と《古えの墳墓》の優劣を逆転させるカードだ。
《ウルザの後継、カーン》は《ウルザの物語》の5枚目とも言えるが、リソースが少ないときはゲームを作るカードとして機能するし、《Black Lotus》などから唱えることもできる。
マッチアップ別のサイドボーディング・戦略
単色デッキである以上、選択肢がとても限定的だから、ゴロススタックスのサイドボーディングは比較的簡単だ。
ミラーマッチ
ミラーマッチで先手が強いのは言うまでもない。それは当然として、ミラーマッチはマナアドバンテージと構築物トークンアドバンテージがものを言う。
一方が相手をマナスクリューさせる展開でなければ、《ウルザの物語》をIII章まで完走したほうが勝つ可能性が高い。そのプレイヤーは《真髄の針》をサーチして《ウルザの物語》を指名すれば、相手がトークンを出せなくなるからだ。だから、相手のマナが伸びているなら《不毛の大地》などの土地破壊を温存しておき、《ウルザの物語》を破壊できるようにしておくか検討するようにしよう。
対 ミラーマッチ
フェア系の青デッキ
フェア系の青デッキの代表格はジェスカイで、相手が投入する対策カードは《破壊放題》だ。それから厄介な《ダク・フェイデン》も採用しているから、目に見えてマナスクリューしている場合は別だけど、《ファイレクシアの破棄者》で指定するのは原則として《ダク・フェイデン》になる。
対 フェア系の青デッキ
ティンカー
ゴロススタックスに対するティンカー側のベストカードは《ハーキルの召還術》だ。それに対してこちらは《虚空の杯》をX=2で置くのはもちろん、《精神壊しの罠》で対抗するのが良い。《ウルザの物語》で《Black Lotus》をサーチすれば、まともにマナコストを払って唱えることもできる。有利な状況ならそうしてしまってほぼ問題ない。
対 ティンカー
逆説的な結果
《無のロッド》が切り札だ。面倒な《ハーキルの召還術》を唱えづらくさせる。
対 逆説的な結果
《活性の力》入りのフェアデッキ
《活性の力》が相手のベストカードであり、これを突破して勝つのはなかなか難しい。《ワームとぐろエンジン》がそれを実現できるカードだが、相手には《王冠泥棒、オーコ》やときには《ダク・フェイデン》もあるので気をつけよう。
対 《活性の力》入りのフェアデッキ
ここまで読んでくれてありがとう!みんなと対戦できることを楽しみにしているよ!