統率者戦コンバットの誤謬
みなさんこんにちは、メディアチームのいってつです。
12月25日にはTC大阪で、1月10日にはTC東京でそれぞれ「コマンダーサミット」が開催されます。ハイレベルからカジュアルまで様々なデッキが一堂に会す大型イベントです。そのサイドイベント、「最強統率者決定戦」に注目しているプレイヤーも多いでしょう。
競技的な雰囲気の中で勝利を求めてプレイする統率者戦もまた乙なものです。これをきっかけにデッキを強化したり、ハイレベルな統率者戦に参入することをきめたプレイヤーも少なくないはず。
ある程度のレベルの統率者戦になると戦闘ダメージでの決着というのは少なくなります。40点のライフどころか、21点の統率者ダメージさえ意識されることが少なくなるのです。
コンボでの勝利がほとんどになると、ライフはどんどん軽視されます。ここにプレイヤーが陥る「勘違い」があります。今回はカジュアルなゲームからシビアなゲームに参入するプレイヤーに向けて、統率者戦でのライフの価値・クリーチャーの価値を探ってみましょう。
※統率者戦には地域性があり、環境も流動的です。この記事でご紹介する戦略や事例も普遍的絶対的なものではなく、「こんな環境もあるんだ」と、あくまで一例としてデッキ構築やプレイの参考に役立ててください。
ライフが減るのはどんなとき?
そもそも、ライフが減るのはどんなときでしょうか。
クリーチャーに攻撃されたとき、なんらかの能力でプレイヤーにダメージが与えられたとき、そして呪文や起動型能力のコストでライフを支払うとき。主にこの三つですね。
統率者戦は40点のライフで始まります。40点もライフを削るのは容易ではありません。飛行やトランプルなどの回避能力を持った巨大なクリーチャーがいるならともかく、互いのプレイヤーがクリーチャーを大量展開してにらみ合いが始まり、なかなかライフを減らせない!というのはよく見かける光景です。
そのため、「ライフを40点削るのは容易ではない」から「ライフを削って勝利するよりコンボ勝利の方が手っ取り早い」という理屈でハイレベルなゲームではコンボデッキが幅を利かせることになります。
こうした状況が生まれると、「どうせクリーチャーは殴ってこないからライフは減らない」ので「ライフをリソースにしよう」といった発想が生まれます。
とくに《むかつき》は黒を含むデッキの勝利手段としてメジャーになりました。大量に増やした手札から《魔力の墓所》や《汚物の雨》などでマナを増やし、サーチカードも使いながらコンボに突入します。《むかつき》や《ネクロポーテンス》で何枚引けるかは残りのライフ次第です。たった1点でも減らしておくことで、《むかつき》ドローできる枚数が変わってきます。
ここまでは多くのプレイヤーが理解していることだと思います。
しかし本当に実践できているでしょうか。
実例
自分は緑単色デッキ。対戦相手には黒の絡んだコンボデッキらしき統率者がいる。
1ターン目に《ラノワールのエルフ》を唱えた。対戦相手はそれぞれマナアーティファクトを展開。戦場にクリーチャーはなし。
2ターン目には土地から2マナを出して《ティタニアの僧侶》を唱えた。《ラノワールのエルフ》から1マナ出すことができるが、1マナでとれる行動がなかったため、そのままターンを終えた。
どうでしょう。マナクリーチャーが立った状態でターンが回るというのはときどき見かける光景だと思います。たった1点のために「藪をつついて蛇を出す」のを恐れて攻撃をしないという選択もありますが、多くの場合、殴ったほうが有利になります。
うっかり何かのきっかけで《ラノワールのエルフ》を失うことがあれば、それはテンポ面でも苦しい展開です。しかしリソースをギリギリまで活用するハイレベルな統率者戦では「1点に泣く」場面も多いのです。毎ゲームのように《ラノワールのエルフ》で殴っているといつか瞬速で飛び出た《敵対工作員》にブロックされる日がいつかやってきます。しかし、ここで刻んだ1点は対戦相手の勝利を妨害しています。
実際に《むかつき》や《ネクロポーテンス》の入ったデッキを使っていると、「あの一撃、統率者を犠牲にしてでもブロックしておけば……」という局面が何度もあります。
「ガチ統率者にダメージ勝利無し」
そもそも「ハイレベルな統率者戦で戦闘ダメージでの勝利はほとんどない」というのは本当なのでしょうか。
最強統率者決定戦カバレージでもお伝えしていたように、《むかつき》ターボ戦略とスタックス戦略の漁夫の利をとる「クリーチャー主体のミッドレンジデッキ」が台頭しつつあります。
こうしたデッキは《否定の力》《激情の後見》などで妨害されないクリーチャー主体のコンボを内包しつつ、毎ターン確実にライフを減らしにかかります。
《刃を咲かせる者、ナジーラ》や《軍団のまとめ役、ウィノータ》は無限戦闘コンボを持つものの、そもそも無限コンボを決めずとも40点のライフを削り切るポテンシャルを持っており、泣く泣く統率者をブロックに回そうとも敗北は回避できない……なんてことも珍しくはありません。
「4ターンで殴り切られることはない」
「自分のデッキは4ターン目くらいにコンボ勝利できる。さすがに4ターンで殴り切られることなんてないからクリーチャーはコンボに必要な最低限しか入れない」。
なるほど、確かに統率者戦は2/2で殴って勝てるゲームではありませんから、自分のライフも相手のライフも無視してクリーチャーは最低限の採用という戦略も悪くなさそうです。
マナ基盤について考えてみます。自身を出すのに1マナかかり、召喚酔いの影響で出たターンにはマナが出せない《ラノワールのエルフ》。対して、自身を出すのにマナが不要で、出たターンからマナを出せます。
もちろん採用されているデッキや戦略に左右されますが、《ラノワールのエルフ》のほうが強いケースも少なくないのです。それはなぜでしょう。
《ラノワールのエルフ》はクリーチャーゆえに全体除去に巻き込まれるリスクがあるものの、クリーチャーなので当然攻撃とブロックができます。攻撃に反応する誘発型能力を持つ統率者のサポートはもちろん、同様の統率者の妨害も可能なのです。
ときとしてクリーチャーの存在は打ち消し呪文よりも強力に対戦相手を妨害するのです。クリーチャーの戦闘に絡んでアドバンテージを獲得する統率者はハイレベルな環境にも少なくありません。
《刃を咲かせる者、ナジーラ》や《織り手のティムナ》は常に空っぽの戦場を求めています。《愚者滅ぼし、テヴェシュ・ザット》のようなプレインズウォーカー・統率者にとってもクリーチャーのいない戦場は居心地よいものです。
《刃を咲かせる者、ナジーラ》や《軍団のまとめ役、ウィノータ》はコンボを介さずとも4,5ターン目にプレイヤーを脱落させる十分なパワーがあります。そうでなくても、4,5ターンの間に《織り手のティムナ》や《愚者滅ぼし、テヴェシュ・ザット》に大量のアドバンテージを与えてしまい、もはや追いつくことが困難、なんて状況に陥ってしまうかもしれません。コンボをスタートさせようにも、大量にドローした 《織り手のティムナ》 に打ち消されたり、《軍団のまとめ役、ウィノータ》がスタックスを展開していてコンボを始めることさえ不可能かもしれません。
数ゲームも遊べばすぐに「クリーチャーの価値の高さ」に気づくはずです。そう、
熊の価値に。
「熊」とはマナ総量が2の2/2のクリーチャーの俗称。2/2というスタッツは素晴らしいものです。《刃を咲かせる者、ナジーラ》や《織り手のティムナ》と相打ちが可能。 マナクリーチャーや《刃を咲かせる者、ナジーラ》が生み出すトークンを一方的に討ち取ることだってできるのです。
デッキを低マナ域のクリーチャーでいっぱいにしろ、とは言いません。しかし、1~2ターン目に登場するパワー2のクリーチャーやタフネス3のクリーチャーの価値が高まっているのも確かです。
《セラの高位僧》の注目度が上がっているのも納得ですね。序盤から黒いデッキからライフリソースを吸い取りながら、対戦相手のビートダウン戦略を「ブロック」します。カジュアルテーブルだけの需要では決してないのです。
あの11月を振り返る
- 2021/11/09
- 最強統率者決定戦 カバレージ【コマンダーサミット】
- いってつ
11月3日のコマンダーサミットの最強統率者決定戦を振り返ってみましょう。《むかつき》を擁するターボ型を意識した構築やプレイが目立ち、決勝戦には黒を含んだデッキが残ることができませんでした。一方で決勝に進んだ4つのデッキのうち3つはクリーチャーの濃いデッキでした。
結果的にはクリーチャーの少ない「クラーク&逆嶋」が勝利したのですが、序盤に積極的にクリーチャーを展開するプレイングの賜物でしょう。
いってつ自身、コマンダーサミット後もさまざまなコミュニティで競技性の高い統率者戦を取材していますが、やはり「クリーチャーの厚い・強いデッキ」が活躍していて、それを意識して全体除去を増やしたり、2/2以上のスタッツのクリーチャーを採用する動きがみられます。
12月25日のTC大阪、1月10日のTC東京の最強統率者決定戦(コマンダーサミット)ではどんなデッキが勝ちあがるのでしょうか。
両大会ともいってつが取材・カバレージ作成を行う予定です。みなさんのデッキやプレイングを拝見するのがいまから楽しみです。
それではみなさん、統率者戦のテーブルやイベントでお会いしましょう!
コマンダーサミットin大阪 12/25(土)
晴れる屋TC大阪で開催。事前予約受付中
- 2021/12/09
- コマンダーサミット in 大阪がやってくる!東京とはどう違う?
- いってつ
コマンダーサミット 1/10(月・祝)
晴れる屋TC東京で開催。事前予約受付中