スタンダード情報局 vol.72 -屑鉄の利用法-

富澤 洋平

はじめに

みなさんこんにちは。晴れる屋メディアチームの富澤です。

前回は日本選手権2021 FINALを制した白単アグロをご紹介しました。呪文偏重のメタゲーム下では《スレイベンの守護者、サリア》は勝敗を左右するほどの存在ですし、デッキも《放浪皇》《皇国の地、永岩城》を得てマナフラッドに強い構築となっていました。今後もメタゲームの一角として活躍を続けていきそうですね。

スレイベンの守護者、サリア放浪皇皇国の地、永岩城

さて、今回は第5回Sekappy COLOSSEUM MTGアリーナ 2次予選とStandard Challengeの結果を振り返っていきます。

先週末の注目トピックは?

週末に開催されたSekappy COLOSSEUMの2次予選で複数のプレイヤーがラクドスサクリファイスを選択し、予選を突破しています。同デッキは前回ご紹介した日本選手権2021 FINALにおいて、MPL所属の八十岡 翔太選手が使用して9位となったアーキタイプでもあり、大会直後から徐々に人気に火がつき始めました。

かつてのスタンダードに、《波乱の悪魔》《初子さらい》を軸に戦場を支配するジャンドサクリファイスがありましたが、今回のサクリファイスはアーティファクトを生け贄に捧げることで自身の盤面を構築していくデッキになっています。

ヴォルダーレンの美食家税血の収穫者霜剣山の製錬者鬼流の金床

《ヴォルダーレンの美食家》《税血の収穫者》など血・トークンを生成するパーマネントでアーティファクトを用意し、それらを《霜剣山の製錬者》《鬼流の金床》でクリーチャーへと変換していきます。

デッキ全体が非常に軽く、マナカーブだけ見ればアグロといっても遜色ありません。大半が2マナ以下と少ないマナで動けるので、マリガンに強いデッキです。また、クリーチャーが横に並びやすく、さらにライフ回復手段を持ち合わせているため、飛行やトランプルのないデッキにとって、中盤以降の突破は困難を極めるのです。

日本選手権での登場からすぐに結果を出しており、今後のメタゲームにも影響を与えそうですね。それでは大会結果をみていきましょう。

第5回Sekappy COLOSSEUM MTGアリーナ 2次予選

勝利数 プレイヤー名 デッキタイプ
9勝 sanetomi#29559 ラクドスサクリファイス
9勝 ころも#16955 マルドゥイグニッション
9勝 sortreew#24784 ラクドスサクリファイス
9勝 ura_frst#62202 白単アグロ
9勝 TIKER#23343 セレズニアミッドレンジ
8勝 tamachan#95144 イゼットコントロール
8勝 yaya3#95675 ラクドスサクリファイス
8勝 rokiya#63969 白単アグロ
8勝 maiha#88478 ラクドスサクリファイス
8勝 ma-bo#06707 エスパープレインズウォーカー
8勝 BlooMooNight#66379 ナヤルーン
8勝 teruteru#97566 オルゾフミッドレンジ
8勝 bwd_shine#47938 ラクドスサクリファイス
8勝 hagiunlimited#32352 白単アグロ
8勝 neko#82822 オルゾフミッドレンジ
8勝 haribo#40027 ボロスアグロ

(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)

参加者481名で開催された第5回Sekappy COLOSSEUM MTGアリーナ 2次予選ですが、上位16名にはラクドスサクリファイスや白単アグロなどクリーチャー色の強いアーキタイプが複数残っていました。反面、純粋なコントロールはイゼットとわずか1名と苦戦を強いられています。攻め手がプレインズウォーカーやエンチャント、アーティファクトと多様化した結果、純粋に防御に振り切った構築ではさばききれなくなっています

スカルドの決戦墨の決闘者、キリアン天使火の覚醒

マルドゥイグニッションは《墨の決闘者、キリアン》をキーにしたコンボ寄りのアグロデッキ。《スカルドの決戦》のアドバンテージを軸に強固なボードを築いたり、第II章と《墨の決闘者、キリアン》のコスト軽減効果を利用してバーストダメージを演出することも可能です。「フラッシュバック」コストの重い《天使火の覚醒》《墨の決闘者、キリアン》がいればわずか2マナと使いやすく<、ダメージレースをひっくり返すのに適しています。

メタゲーム

デッキタイプ 使用者数 トップ32
オルゾフミッドレンジ 92 7
白単アグロ 75 6
エスパーミッドレンジ 48 1
ナヤルーン 38 2
ボロスアグロ 31 2
ジェスカイコントロール 22 1
ラクドスサクリファイス 16 5
アゾリウスコントロール 13 1
ゴルガリミッドレンジ 12 1
緑単アグロ 10 0
アゾリウステンポ 10 0
その他 114 6
合計 481 32

上位には白いデッキがズラリと並んでおり、白単アグロの隆盛を受ける形でオルゾフミッドレンジが息を吹き返しています。エスパーミッドレンジやナヤルーンは根強い人気ながら、《スレイベンの守護者、サリア》の多いフィールドでは勝ち星を伸ばせていません。

ラクドスサクリファイスは使用者の3割がトップ32どころか決勝トーナメントへ進出する大健闘をみせています。使用数の多かった直線的なアグロを狩る立ち位置にあり、ほかのデッキが《スレイベンの守護者、サリア》に苦しむ中、悠々と勝ち星を伸ばしたようです。

予選突破者デッキリストはこちら

ラクドスサクリファイス

ラクドスサクリファイス

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ラクドスサクリファイスはほかのデッキと見比べてもかなり軽いアーキタイプとなりますが、中盤以降のガス欠が懸念されます。それを補っているのが《舞台照らし》こと《実験統合機》です。軽さを手数で補うこのデッキにおいて《実験統合機》は使いやすく、サクリ台と組み合わせることで1マナで2枚分と本家に見劣りしない性能となります。

実験統合機

出たときと離れたときで1枚ずつ追放されるため、使い切れないこともほとんどありません。中盤以降は《霜剣山の製錬者》のコストにあてて、トークンを生成しつつカードも得る動きを目指します

霜剣山の製錬者鬼流の金床

1~2ターン目に《ヴォルダーレンの美食家》などで血・トークンを生成し、順次生け贄に捧げてクリーチャーへと変換していきます。《霜剣山の製錬者》は2マナのクリーチャーですが、生成されるトークンは打点が高く速攻もあるのでライフを詰めるのに適しています。是が非でも能力を起動したいため、できるだけ1マナ余るタイミングでプレイすることを心がけましょう

《鬼流の金床》の誘発条件は、「アーティファクトが戦場を離れること」とあります。つまり、宝物・トークンや血・トークンを起動するだけでも構築物・トークンを得られますし、ほかのカードの効果で生け贄に捧げても生成されるのです。特に《霜剣山の製錬者》とセットで出せれば、わずか1マナで3/1と1/1の2体のトークンを得ることに《鬼流の金床》は戦闘に合わせて起動すれば対戦相手の絆魂持ちを無効化したりできるので、起動するタイミングを見極める必要があります。

また、自身がアーティファクトであるため、メインボードでは対処されにくいのもポイント。イゼットが少ないこともあり、《削剥》《プリズマリの命令》を目にする機会は減っています。多色のため《消失の詩句》の対象にすらなりえません

墓所の門番

ナヤルーン相手に光るのがサイドボードの《墓所の門番》。バーストダメージ演出のキーとなる《樹海の自然主義者》を追放できればクリーチャーとエンチャントの両呪文でダメージが入るため、相手からすれば厄介なことこの上ありません。

セレズニアミッドレンジ

セレズニアミッドレンジ

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TIKER#23343選手が使用して9勝をあげたセレズニアミッドレンジ。デッキ全体はやや重いものの、2種類のマナ加速でブーストして一気に4マナまでたどり着き、その後は《エシカの戦車》《放浪皇》などカードパワーに任せてボード主導権を握ります。ラクドスサクリファイスを強烈にメタっており、結果をみるに予想通りいったようです。

鎮まらぬ大地、ヤシャーン

マナコストはやや重いものの、刺さるデッキにはとことん効くのがこの《鎮まらぬ大地、ヤシャーン》というクリーチャーです。常在型能力で土地以外のパーマネントを生け贄に捧げることを封じるため、サクリファイスからすれば戦略自体が否定されたも同義。マナ加速から3ターン目に着地でき、相手からすれば動き出す前に出鼻をくじかれてしまうのです。

《電圧のうねり》で対処しようにも追加コストが支払えないため、2枚以上必要になってしまいます。先出ししておけば《黄金架のドラゴン》に走られようとも宝物・トークンを止められることを覚えておきましょう。

スカイクレイブの亡霊

現在のメタゲームでは、ナヤルーンやラクドスサクリファイス、《放浪皇》など非クリーチャーパーマネントを絡めた戦略が増加しています。そのため《粗暴な聖戦士》よりも対象の広い《スカイクレイブの亡霊》が優先されます。

一見すると除去の多いオルゾフミッドレンジには効果が薄そうに思えますが、対象に取ったが最後、戦場を離れても戻ってくるころにはクリーチャー・トークンへと変わっています。除去に強い《魅せられた花婿、エドガー》すらも対処可能なのです。

放浪皇皇国の地、永岩城

セレズニアカラーと聞くとどうしてもインスタントタイミングのトリックが少ない印象を持ってしまいますが、それも昔のこと。《放浪皇》《皇国の地、永岩城》を得たことで、必要以上に自分のターンでマナを使わなくても行動を確保できるようになっています。両カードとも《黄金架のドラゴン》の誘発条件に引っ掛からないため、相手の計算を狂わせられるのもポイントですね。

その他の大会結果

Standard Challenge #12394229

順位 プレイヤー名 デッキタイプ
優勝 Cabezadebolo セレズニアミッドレンジ
準優勝 AlpInco 白単アグロ
トップ4 LucasG1ggs 白単アグロ
トップ4 GabingGoblin イゼットドラゴン
トップ8 rastaf ボロスアグロ
トップ8 Ailien02 白単アグロ
トップ8 billsive 白単アグロ
トップ8 Sapoa オルゾフミッドレンジ

(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)

Standard Challenge #12394229はトップ8の半数を白単アグロが占める現在のメタゲームを象徴とするイベントでしたが、優勝したのはセレズニアミッドレンジとなっています。

エメリアのアルコン

白単アグロの中ではbillsiveのデッキに注目です。土地総数26のミッドレンジ寄りの構築であり、メインに《エメリアのアルコン》を採用するなど独創的なものとなっています。

メタゲーム

デッキタイプ トップ32 トップ16
オルゾフミッドレンジ 8 4
白単アグロ 6 5
イゼットドラゴン 4 1
ボロスアグロ 3 2
ナヤルーン 3 1
セレズニアミッドレンジ 4 1
その他 4 2
合計 32 16

トップ8デッキリストはこちら

Standard Challenge #12394239

順位 プレイヤー名 デッキタイプ
優勝 Cabezadebolo セレズニアミッドレンジ
準優勝 Gul_Dukat ラクドスサクリファイス
トップ4 bolov0 ボロスアグロ
トップ4 HouseOfManaMTG 白単アグロ
トップ8 MrApple65 白単アグロ
トップ8 rastaf ボロスアグロ
トップ8 hermanomlg ナヤルーン
トップ8 mahzinha_linda ボロスアグロ

(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)

Standard Challenge #12394239ですが、何とCabezadebolo選手がセレズニアミッドレンジを使用して優勝と2日連続の快挙

エメリアのアルコンエメリアの呼び声

メインボードから《エメリアのアルコン》を採用してナヤルーンを強烈にメタっており、ロングレンジを見据えて《エメリアの呼び声》を採用と全方位に睨みを利かせています。

メタゲーム

デッキタイプ トップ32 トップ16
白単アグロ 8 6
ボロスアグロ 6 3
ナヤルーン 3 1
ラクドスサクリファイス 3 3
セレズニアミッドレンジ 4 2
イゼットドラゴン 2 1
オルゾフミッドレンジ 1 0
その他 5 0
合計 32 16

トップ8デッキリストはこちら

おわりに

今回はラクドスサクリファイスとそれをメタったセレズニアミッドレンジをご紹介しました。コンボからスタートした環境も白単アグロを経て、半周したといったところでしょうか。低迷を続けるコントロールですが、ミッドレンジが幅を利かせるメタゲームとなればチャンスが巡ってきそうですね。

次回もスタンダードの情報をお届けします。それでは!

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富澤 洋平 晴れる屋メディアチームスタッフです。最近は《黙示録、シェオルドレッド》に夢中な日々です。 富澤 洋平の記事はこちら

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