はじめに
みなさんこんにちは。晴れる屋メディアチームの富澤です。
ついに『ニューカペナの街角』が発売となりましたね。お目当てのカードはもう手に入れましたか?
今回はテーブルトップのリリースとオンラインの実装がほぼ同日をいうこともあり、カード評価の是非は定まっていません。新しいデッキは誕生しているのでしょうか。
今回は『ニューカペナの街角』環境初陣戦を中心に、スタンダードの大会結果を振り返っていきます。
先週末の注目トピックは?
『ニューカペナの街角』が発売されて最初の週末を迎えたわけですが、スタンダードはどのように変化したのでしょうか?注目を集めていた《敵対するもの、オブ・ニクシリス》の動向も気になるところです。
これが令和仕様のプレインズウォーカーなのでしょう。まさか3マナでプレインズウォーカーが2体出せる日が来るなんて!
《敵対するもの、オブ・ニクシリス》の魅力は「犠牲」による圧倒的なテンポ面での優位にあります。「犠牲」コストがかかりますが3ターン目に6マナ相当の動きを可能にし、処理する側に複数のカードを迫るわけですから。問題は「犠牲」コストをどれだけ抑えられるかにあります。
プレイヤーが示した解決方法は次の3点になります。ひとつ目はクリーチャー・トークン生成カードを使い、損失を半減させること。次は墓地から使い回せるクリーチャーを採用すること。そして最後に、「犠牲」コストはそのままに《エシカの戦車》で《敵対するもの、オブ・ニクシリス》のコピーを生成する方法です。
実際に環境初陣戦では、これら3要素すべてを兼ね備えたジャンドオブニクシリスが優勝しています。横に横に戦線を伸ばしていくカードパワーの集合体ともいえるデッキは、中途半端なアグロやコントロールでは太刀打ちできなかったのです。
早くも暗雲立ち込めるスタンダード。環境は《敵対するもの、オブ・ニクシリス》で終わってしまったのでしょうか?
MOのメタゲーム変動は早いもので《敵対するもの、オブ・ニクシリス》の危険を察知するが早いか、対抗馬が生まれています。環境の焦点がパーマネントを軸にしたボードの押し引きにあるならば、それらを一掃してしまえば良いわけです。
翌日に開催されたStandard Challenge #12414728は、全体除去を多用したボードコントロールのみに注力した白単コントロールが制しました。パーマネントに依存しない呪文ベースの青系デッキが少なかったこともあり、白単コントロールは一夜にしてメタゲームの頂点へと躍り出ています。
前置きが長くなりましたが、それでは大会結果をみていきましょう。
『ニューカペナの街角』環境初陣戦
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
優勝 | 原 康貴 | ジャンドオブニクシリス |
準優勝 | マツダ ヒデユキ | 白単アグロ |
トップ4 | 鷹觜 達哉 | エスパーフラッシュ |
トップ4 | 宮田 健太郎 | バント機体 |
トップ8 | 深田 崇聖 | ロアホールドシュート |
トップ8 | 高橋 亮 | エスパーミッドレンジ |
トップ8 | 西村 裕 | 黒単ミッドレンジ |
トップ8 | チョウ・ジョンウ | ジャンドミッドレンジ |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
『ニューカペナの街角』環境初陣戦はジャンドオブニクシリスを使用した原 康貴選手が優勝しました。ほかにもエスパーやバント、果ては4色と『ニューカペナの街角』リリースによりデッキ構築の多色化が促進されたことがわかります。
環境が多色化一辺倒になるかと思いきや、単色デッキもしっかりと生き残っています。西村 裕選手の持ち込んだ黒単ミッドレンジは《しつこい負け犬》を採用しています。この1枚で序盤からダメージを稼げるクリーチャーと中盤以降のリソース補充を獲得したことになります。これまで《絶望招来》はボードコントロール能力を買われての採用でしたが、しっかりしたダメージ要員を獲得したことでフィニッシャーとしての期待値も上がっています。
トップ8デッキリストはこちら。
大会カバレージはこちら
ジャンドオブニクシリス
デッキ名にもなっている《敵対するもの、オブ・ニクシリス》を軸に据えたミッドレンジデッキ。最速3ターン目に2体の《敵対するもの、オブ・ニクシリス》を着地させ、除去でボードをコントロールしながらライフと手札を攻めていきます。英雄譚に《エシカの戦車》、《蜘蛛の女王、ロルス》とパワーカード盛りだくさんで、ミッドレンジの王道と呼ぶに相応しいデッキです。
冒頭でも軽く触れた通り、このデッキは《敵対するもの、オブ・ニクシリス》を生かすべく構築されています。そのためには2マナ域には「犠牲」した際にコピーの忠誠度が3以上なるようにパワー3のクリーチャーが必要です。このデッキでは11枚の2マナ域を採用しており、その内の7枚がパワー3。安定した《敵対するもの、オブ・ニクシリス》マウントが期待できます。
残るは定番の《裕福な亭主》であり、《エシカの戦車》の早期着地を助けてくれます。3ターン目に《エシカの戦車》が定着すれば、次のターンの戦闘前メイン・フェイズに《敵対するもの、オブ・ニクシリス》を「犠牲」込みでプレイしておくことで、なんと攻撃するたびに《敵対するもの、オブ・ニクシリス》のコピー・トークンが生成可能になります。
コピー時の忠誠度について補足しますと、《エシカの戦車》でコピーされる《敵対するもの、オブ・ニクシリス》の忠誠度は「犠牲」時に支払ったX分です。増え続けるプレインズウォーカーを前にしては、相手もゲームを諦めるよりほかありません。
上記記述につきまして、一部誤った記載がありました。ここにお詫びして訂正いたします。
訂正前
残るは定番の《裕福な亭主》であり、《エシカの戦車》の早期着地を助けてくれます。3ターン目に《エシカの戦車》が定着すれば、次のターンの戦闘前メイン・フェイズに《敵対するもの、オブ・ニクシリス》を「犠牲」込みでプレイしておくことで、なんと忠誠度3の《敵対するもの、オブ・ニクシリス》のコピー・トークンが生成可能になります。増え続けるプレインズウォーカーを前にしては、相手もゲームを諦めるよりほかありません。
《しつこい負け犬》は攻め手としても頼もしく、中盤以降は「奇襲」によるアドバンテージも見込めます。安定したダメージクロックを用意することで相手はライフを支払いにくくなり、《敵対するもの、オブ・ニクシリス》の[+1]効果の旨味が増します。
ボードコントロールを担うのは4種類の単体除去。その内《絞殺》はソーサリー版の《稲妻》ともいえるカードであり、テンポ面でのリターンを期待できる1枚。わずか1マナでほとんどの3マナ域まで対処でき、さらに《軍団の天使》まで射程圏内におさめます。重いカードが多く、同一ターン中に複数行動とるのが難しいデッキだけに、1マナの除去呪文はそれだけで価値があるのです。
逆に《豪火を放て》は重いながらも複数交換を狙えるインスタント。《鏡割りの寓話》を後腐れなく処理するだけでなく、《放浪皇》や《蜘蛛の女王、ロルス》と巻き込むかたちで《エシカの戦車》や《婚礼の発表》まで一度に対処してくれます。現在のメタゲームならばぜひとも採用しておきたい1枚ですね。
サイドボードに控えている《作業場の戦長》は場持ちが良く、おまけにライフ回復付きとアグロ~消耗戦まで手広く対応してくれます。《キキジキの鏡像》の良き相棒となるため、隙を見て定着させたいところ。
トークン生成は死亡時の誘発型能力ですので《消失の詩句》だけはご注意を。
エスパーミッドレンジ
高橋 亮選手が持ち込んだのは前環境から続投のエスパーミッドレンジ。低コストクリーチャーが増えたことで以前よりも格段に攻め手が厚くなり、プレインズウォーカーに頼らずとも主導権を握れるほどになりました。プレインズウォーカーはそえるだけ、です。
先ほどのジャンドオブニクシリスと同様に《しつこい負け犬》が加入したことで、安定して2ターン目からクリーチャーを展開できるようなりました。ゲームを引き伸ばしたいミッドレンジやコントロールにとってこのアタッカーは目の上のたん瘤でありながら、除去耐性付きなのが何とも歯がゆい仕様。
うっかり《消失の詩句》以外で対処しようものなら、毎ターンカードを1枚プレゼントすることになりかねません。追放もできない場合はダメージレースに持ち込むか、ライフを犠牲に耐えて高マナ域での巻き返しを狙うことになってしまいます。《しつこい負け犬》は2マナながら長期戦に影響を及ぼすクリーチャーなのです。
3マナ域にも新顔があります。《策謀の予見者、ラフィーン》はエスパーらしい非常に硬いクリーチャーです。《絞殺》や《パワー・ワード・キル》では除去されず、マナ加速がない限り3ターン目の《スカイクレイブの亡霊》《粗暴な聖戦士》ですら「護法」の前に沈黙せざるをえません。
攻めに転じれば最低でも1枚ルーティングでき、土地以外を捨てればサイズアップしていくことに。しかも「謀議」はほかの攻撃クリーチャーでも良いため、脅威の分散へと繋がります。伝説のクリーチャーながら手札で無駄にならないため複数枚採用しやすいのもグッド。
忘れてはならないのがマナベースの強化。基本的に2ターン目から動いていくデッキにとってタップイン土地は何ら問題ありません。むしろ1ターン目をパスすることで後々の安定を先物買いしているわけです。《ラフィーンの塔》を得たことで青マナ欲しさにうっかり《清水の小道》を第1面で置いてしまい、2ターン目に《消失の詩句》がプレイできないケースも減るはずです。
Standard Challenge #12414728
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
優勝 | Terribad | 白単コントロール |
準優勝 | AnnndWhammy | セレズニアミッドレンジ |
トップ4 | bless_von | エスパーミッドレンジ |
トップ4 | McWinSauce | マルドゥミッドレンジ |
トップ8 | Soondubu | イゼットコントロール |
トップ8 | levunga21 | エスパーミッドレンジ |
トップ8 | _against_ | ラクドスサクリファイス |
トップ8 | UnstableVuDoo | エスパーミッドレンジ |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
Standard Challenge #12414728を制したのは、まさかの白単コントロール。トップ16まで見渡して唯一の単色デッキです。
エスパーミッドレンジに加えて《敵対するもの、オブ・ニクシリス》を採用したマルドゥミッドレンジが入賞しています。クリーチャー、除去、プレインズウォーカーのどれをとっても双方に優れたカードがあり、前環境に引き続きミッドレンジはオルゾフがベースに構築されるようです。
メタゲーム
デッキタイプ | トップ32 | トップ16 |
---|---|---|
エスパーミッドレンジ | 8 | 3 |
ナヤルーン | 5 | 0 |
ラクドスサクリファイス | 3 | 2 |
オルゾフミッドレンジ | 2 | 2 |
オルゾフ天使 | 2 | 0 |
マルドゥミッドレンジ | 2 | 2 |
その他 | 9 | 7 |
合計 | 32 | 16 |
マナベースとクリーチャーが大幅に強化されたエスパーミッドレンジがトップメタとなり、ミッドレンジに強いナヤルーンが続きます。しかし意外や意外、ナヤルーンはトップ16へただ一人も進めていません。ミッドレンジ側に低コストの攻撃要員が追加されたことで、ダメージを刻みつつ除去してコンボまでの時間が稼げなくなってしまったのです。
トップ8デッキリストはこちら。
白単コントロール
Terribad選手が使用したのは大量破壊をたっぷりと詰め込んだ白単コントロール。黒に引けをとらない数多の除去に加えて複数のアドバンテージソースが用意されています。純粋なコントロール、しかも単色が優勝したのはいつ以来のことでしょうか。
《ドゥームスカール》と《告別》の2種類の全体除去が採用されています。《ドゥームスカール》は「予顕」によるコスト軽減が魅力であり、最序盤から展開してくるアグロデッキに効果的。白単アグロが蔓延る限り採用必須です。
《告別》はプレインズウォーカーを除くすべてのパーマネントと墓地を追放する大味なカード。現環境には《婚礼の発表》や《エシカの戦車》、《鬼流の金床》など非クリーチャーパーマネントの採用率が高いこともあり、《告別》はこれ1枚でコントロールを確立してくれます。《しつこい負け犬》を使い回される心配もありません。
もしプレインズウォーカーまでまとめて流したいのなら《壊滅の熟達》をおススメします。
《運命的不在》は貴重なプレインズウォーカーの対処手段。《敵対するもの、オブ・ニクシリス》や《放浪皇》など強力プレインズウォーカーが多いため、クリーチャー除去としては使わずにぐっとこらえる必要があります。その役回りは《冥途灯りの行進》が担います。
《勢団の銀行破り》や《永岩城の修繕》などアドバンテージを生み出すカードも複数採用されています。中でも《聖域の番人》はアドバンテージ獲得兼フィニッシャーであり、追放以外ではほぼ対処できません。白以外のデッキに強く、特に単体除去が多いジャンドには効果てきめん。《敵対するもの、オブ・ニクシリス》へ引導を渡すには最適なクリーチャーです。
攻撃へ向かいだしたら最後、《這い回るやせ地》や《放浪皇》上のカウンターを次々と市民・トークンとカードアドバンテージへと変換してくれます。
サイドボードには対アグロ、コントロール、コンボとバランス良く準備されています。《未認可霊柩車》は追加の墓地対策であり、《しつこい負け犬》や「降霊」の対策となります。サイズは追放した枚数に依存するため、長期戦になればダメージソースでも期待できます。
その他の大会結果
Standard Challenge #12414716
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
優勝 | LukasDusek | ジャンドミッドレンジ |
準優勝 | musasabi | エスパーミッドレンジ |
トップ4 | T1_Tinker | エスパーミッドレンジ |
トップ4 | _against_ | ティムールトレジャー |
トップ8 | handsomePPZ | ナヤルーン |
トップ8 | GabingGoblin | マルドゥミッドレンジ |
トップ8 | SanPop | 緑単ランプ |
トップ8 | Cabezadebolo | ラクドスサクリファイス |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
新環境一発目のスタンダードのMOイベントであるStandard Challenge #12414716はLukasDusek選手のジャンドミッドレンジが制しました。
緑単ランプは生きた《不屈の自然》こと《装飾庭園を踏み歩くもの》で加速しつつボードを止め、《作業場の戦長》や《レンと七番》、《産業のタイタン》へと繋げます。除去は少ないため、サイズで押していくデッキになります。
メタゲーム
デッキタイプ | トップ32 | トップ16 |
---|---|---|
ナヤルーン | 4 | 3 |
白単アグロ | 4 | 2 |
ティムールトレジャー | 3 | 2 |
ラクドスサクリファイス | 3 | 1 |
オルゾフミッドレンジ | 2 | 2 |
ジェスカイギャンビット | 2 | 2 |
マルドゥミッドレンジ | 2 | 1 |
その他 | 12 | 3 |
合計 | 32 | 16 |
最初のイベントということもあり、環境をけん引したのはナヤルーンと白単アグロ。トップ16にも複数名残ってはいるものの、トップ8には両デッキ合わせてわずか1名しかいません。マナベースが強化されたことで多色デッキの不安定さは改善されつつあり、力関係も変化しつつあるようです。
トップ8デッキリストはこちら。
おわりに
いよいよ始まった『ニューカペナの街角』スタンダード。初週は《敵対するもの、オブ・ニクシリス》を中心にボードを構築するミッドレンジデッキが台頭しました。対抗馬として颯爽と現れた白単コントロールですが、このままも活躍は続くのでしょうか?
次回もスタンダードの情報をお届けします。それでは!