はじめに
みなさんこんにちは。晴れる屋メディアチームの富澤です。
前回は5色ベースのコントロールデッキ、《神の乱》デッキをご紹介しました。デッキ名になっている《神の乱》はマナコストに負けず劣らず、効果も派手な英雄譚。豊富なボードコントロール手段を用いてゲーム展開をスローダウンさせ、《虹色の橋》からフィニッシャーを踏み倒す大味なデッキでした。
今回はStandard Challengeの結果を振り返っていきます。
先週末の注目トピックは?
前回のトピックでは、久しく見ていなかった白系アグロの登場を取り上げました。メタゲームがミッドレンジとコントロール中心になったことで軽量除去や全体除去が減り、序盤に漬け込む隙が生まれていました。アグロ側はその機を逃さず、火力に耐性のある速攻クリーチャーや保護呪文を採用し、ライフを詰め切れる構築をとっていたのです。
そして先週末のオンラインイベントではボロスアグロが一大勢力となり、複数名がトップ8へ入賞するまでにいたりました。
土日に開催されたStandard Challengeでのボロスアグロの使用者数は、4名(土曜)/8名(日曜)でした。特に日曜開催の方ではジェスカイオパスに次ぐ2番人気となり、アグロデッキへのガードが下がっていると認識していたプレイヤーが多かったようです。事実、ボロスアグロはトップ16に4名を送り込むことに成功し、一定の成果を残しています。
ボロスアグロは赤いデッキでありながら、環境屈指のカードパワーを誇る《鏡割りの寓話》を採用していない珍しいデッキでもあります。単純なパワーカードを廃し、速度を武器にメタゲームの荒波を乗り越えてきたのです。
前置きが長くなりましたが、それでは大会結果をみていきましょう。
Standard Challenge #12429720
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
優勝 | Mogged | エスパーミッドレンジ |
準優勝 | Lennny | ジェスカイオパス |
トップ4 | azatoyellow | ジェスカイオパス |
トップ4 | coffeannan | ボロスアグロ |
トップ8 | FleshEatinGnome | ジェスカイオパス |
トップ8 | Sorento04 | ジェスカイオパス |
トップ8 | FerMTG | ボロスアグロ |
トップ8 | SoulStrong | ジェスカイオパス |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
日曜開催となったStandard Challenge #12429720を制したのはMogged選手。同選手はあらゆるフォーマットで上位にみる強豪であり、前日のイベントでもエスパーミッドレンジを使用してトップ4に入賞していました。
トップ8の大半を占めたのはジェスカイオパス。打ち消し呪文をベースにしたミッドレンジに強いアーキタイプですが、メインボードから《勢団の銀行破り》まで採用し、ミラーマッチを意識した構築へと移行しつつあります。
Lennny選手はミラーマッチの増加を見越して、メインボードに《勢団の銀行破り》3枚目と《プリズマリの命令》を採用しています。
メタゲーム
デッキタイプ | トップ32 | トップ16 |
---|---|---|
ジェスカイオパス | 13 | 7 |
ボロスアグロ | 7 | 3 |
イゼットコントロール | 3 | 1 |
ジャンドミッドレンジ | 2 | 0 |
その他 | 7 | 5 |
合計 | 32 | 16 |
依然としてジェスカイオパスが最大母数なわけですが、対抗馬として上がってきたのはボロスアグロ。軽量+速攻を生かした先行逃げ切りの戦略は除去呪文が減った現在のメタゲームに効果的でした。
トップ8デッキリストはこちら。
エスパーミッドレンジ
一時的にはメタゲーム上から消えつつあったエスパーミッドレンジですが、見事復活優勝を遂げました。2マナクリーチャーから《策謀の予見者、ラフィーン》、《放浪皇》とパーマネントを並べてボードを強化する攻めに特化したミッドレンジになっています。
今回は通常のエスパーミッドレンジとの相違点を中心にMogged選手の構築を見ていきましょう。
これまでデッキの頂点にあった《忘れられた大天使、リーサ》や《蜘蛛の女王、ロルス》が抜け、デッキ全体がシェイプアップするなどジェスカイオパスを意識した構築になっています。クリーチャー除去は《軽蔑的な一撃》と《かき消し》の打ち消し呪文へと差し替えられ、相手のビッグスペルに対処できるようになりました。
万能除去と謳われた《消失の詩句》でしたが、多色クリーチャーが増えたことで制圧力は失われています。特に《暁冠の日向》はテンポ面で著しくアドバンテージをもたらすため、放置しておくわけにはいきません。《冥府の掌握》は《暁冠の日向》や《日の出の騎兵》、グリクシス吸血鬼を意識して採用されています。
本来《冥府の掌握》の持つデメリットは中~長期戦を狙うミッドレンジ戦略では無視できるほど軽くはありません。しかし、エスパーは攻めっ気が強く積極的にダメージレースをしかける前のめりなアーキタイプであるため、デメリットよりも低コストで対処できるメリットが勝ります。
《影の評決》はボロスや緑単といったアグロ用の全体除去。追放するため《老樹林のトロール》や《しつこい負け犬》にも効果があります。
また、ミラーマッチにおる後手番は除去を軸にしてコントロール的に立ち回る必要があり、単体除去に加えて全体除去を必要とします。《影の評決》は《食肉鉤虐殺事件》と違い範囲は指定できないものの、《策謀の予見者、ラフィーン》や《婚礼の発表》で強化されていたとしても強制的に一掃できる巻き返しカードとなります。
ボロスアグロ
一躍アグロデッキの最有力候補となったボロス。低コストクリーチャーを横展開し、火力でサポートして4~5ターンの内に押し切ってしまうビートダウン戦略です。マナベースはタイトであるものの、低コスト除去が減ったメタゲームを狙い撃った構築であり、見事にハマった結果となりました。軽いクリーチャーが多いにもかかわらず、タフネス1を極力排除したことで《棘平原の危険》はほとんど機能しません。
《熊野と渇苛斬の対峙》はタイムラグがあるとはいえ、1マナ2/2速攻のハイスペックカード。I~III章すべてがデッキと噛みあっており、理想のスタートといえます。デッキ内で唯一《棘平原の危険》の的となる《光輝王の野心家》はこの英雄譚とセットで使うことで、射程圏外へと逃れられます。
《熊野の食刻》へと「変身」した後も単なる速攻クリーチャーにとどまらず、常在型能力のおかげで《しつこい負け犬》や《無常の神》の使いまわしを防いでくれます。
マナカーブに沿ったクリーチャーに加えて、タップアウトを咎める速攻クリーチャーが3種類採用されています。なかでも《日の出の騎兵》は《鏡割りの寓話》や《婚礼の発表》の返しで最高のクリーチャーであり、トランプルのためチャンプブロックを許しません。
昼夜システムにより強制的に動くことを強要でき、打ち消し呪文をベースにしたイゼット系にとっては見た目以上に厄介なクリーチャーといえます。打ち消し呪文を構えるならば、代償として打点の上昇を許すことになってしまうためです。
《轟く雷獣》はボード強化付きの速攻クリーチャーですが、事前にクリーチャーを用意できれば直接ダメージまでついてくる仕様です。《光輝王の野心家》や《熊野と渇苛斬の対峙》と組み合わせて+1/+1カウンターをばら撒き、一気にライフを攻めましょう。
これ以上ボロスアグロが増えるのであれば、イゼット系のデッキは《ドラゴンの火》などの3点火力をメインボードに戻す必要があります。
メインボードは攻撃的なクリーチャーばかりですが、サイドボードにはコントロール要素の強いクリーチャーが揃っています。《スレイベンの守護者、サリア》は呪文を中心としたイゼットやジェスカイへの必殺カードであり、動きを縛る枷となります。先手番では3ターン目の呪文を《ジュワー島の撹乱》や《かき消し》から守ってくれる、文字通り守護神となるのです。
クリーチャー同士がぶつかり合うアグロやミッドレンジとのマッチでは中盤以降の突破力が課題となります。小回りは利くもののサイズの小さいボロスアグロにとって、《天使火の覚醒》は攻防を支えるキーカード。1枚で2ターンに渡って戦闘を有利に進められるため、消耗戦やダメージレースなど多くの状況で活躍します。
その他の大会結果
Standard Challenge #12429710
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
優勝 | Lennny | ジェスカイオパス |
準優勝 | CharlesWang | グリクシスコントロール |
トップ4 | Mogged | エスパーミッドレンジ |
トップ4 | LucasG1ggs | ボロスアグロ |
トップ8 | sick_boy138 | グリクシス吸血鬼 |
トップ8 | SoulStrong | ジェスカイオパス |
トップ8 | Jaberwocki | グリクシスミッドレンジ |
トップ8 | FerMTG | ボロスアグロ |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
Standard Challenge #12429710はジェスカイオパスを使用したLennny選手が制しています。トップ8にはジェスカイオパスやエスパー、グリクシス吸血鬼、ボロスアグロと現在のトップアーキタイプがバランスよく入賞しています。
メタゲーム
デッキタイプ | トップ32 | トップ16 |
---|---|---|
ジェスカイオパス | 7 | 4 |
グリクシス吸血鬼 | 7 | 4 |
ジャンドミッドレンジ | 6 | 2 |
ボロスアグロ | 4 | 3 |
エスパーミッドレンジ | 2 | 1 |
その他 | 6 | 2 |
合計 | 32 | 16 |
トップ8デッキリストはこちら。
おわりに
今回は増加傾向にあるボロスアグロをご紹介しました。序盤から低コストクリーチャーと除去でプレッシャーをかけ、《日の出の騎兵》や《轟く雷獣》で押し切る攻撃的なアーキタイプでした。タフネス3がキーとなるため、今後は3点火力をメインボードに戻す必要がありそうです。
神決定戦が終了し、今シーズンのスタンダードイベントはあらかた終了してしまいました。それに伴って、今後のスタンダード情報局は晴れる屋の店舗大会やオンライン大会の情報を中心にお届けしていきます。
それではまた次回の情報局で!