スタンダード情報局 vol.98 -《事件》はいつも突然に-

富澤 洋平

はじめに

みなさんこんにちは。晴れる屋メディアチームの富澤です。

10月10日に禁止制限告知があり、スタンダードから《食肉鉤虐殺事件》が去りました。

食肉鉤虐殺事件

環境を代表する全体除去が禁止されたことで、スタンダードは大きな変革期を迎えています。黒系ミッドレンジに抑圧され続けてきたアグロ。それが今まさに活躍の時を迎えようとしているのです。

今回は追悼の意を込めて禁止カードを振り返るとともに、改定後のスタンダード環境を予測していきます。

禁止カードを振り返る

食肉鉤虐殺事件

《食肉鉤虐殺事件》は発売以来、コントロール色の強いデッキを支えてきました。展開力を武器にしたアグロデッキの攻勢を押しとどめ、貴重なライフ供給源となったのです。事実、現環境のメタゲームからアグロデッキは締め出され、黒系ミッドレンジばかりになっています。

本体が全体除去と別の誘発型能力をもっているため、除去呪文が無駄になりやすいマッチアップにおいてもカードとして一定の機能を有していたのも特徴です。ミッドレンジにとってこのカードはアグロ対策でありながら、コントロールに対する攻め手にもなりました。ロングゲームでは自軍を除去されているだけで相手のライフは1点、また1点と減っていったわけです。

黒単ミッドレンジでは、押し寄せるクリーチャーの群れを対処する最終手段として採用されていました。《ヴェールのリリアナ》などの単体除去呪文と組み合わせればボードコントロールは思うがまま、というわけです。

しつこい負け犬

最近のミッドレンジミラーでは消耗戦ののち、《しつこい負け犬》の「奇襲」による殴り合いへと移行します。片方のプレイヤーのみがこのエンチャントをコントロールしている場合、お互い「奇襲」すると都合2点の差がつくことになります。《食肉鉤虐殺事件》の有無が勝負を決めるといっても過言ではありません。

これからのスタンダード

今後のスタンダードの主役となるのはどんなデッキでしょうか。ここでは直近の大会結果を参考にしながら、次期環境を占っていきたいと思います。

新鋭

多色デッキを咎めるのはいつでも速度に特化した単色アグロです。古のスライとでも呼ぶべき極端に低コストに寄ったマナカーブの赤単アグロは、活躍の可能性を秘めています。天敵《食肉鉤虐殺事件》がなければ真紅のクリーチャー軍団を止める術はありません。

火遊び稲妻の一撃

最後の一押しは《火遊び》《稲妻の一撃》などの直接火力が担います。このリストには採用されていませんが、多少土地を増やして《轟く雷獣》などを採用するのも良いでしょう

スレイベンの守護者、サリア結ばれた者、ハラナとアレイナ

ほかにも《スレイベンの守護者、サリア》《輝かしい聖戦士、エーデリン》を使った白単アグロ、以前ご紹介したグルールアグロは勢力を伸ばしていきそうです。

現状維持

禁止改定によって恩恵を受けるのは何もアグロだけではありません。《食肉鉤虐殺事件》が消えたことでほかのミッドレンジも戦力を出し惜しみする必要がなくなり、ボードが作りやすくなっています。

エンチャントとのシナジーを持つクリーチャーと、英雄譚をベースに構築されたナヤエンチャント。序盤からパーマネントを並べて波状攻撃をしかけるデッキですが、《魅知子の真理の支配》による短期決戦プランもあります。

ドーンハルトの殉教者、カティルダ神聖なる憑依

フィニッシャーに位置する《ドーンハルトの殉教者、カティルダ》《神聖なる憑依》はボードに依存します。《食肉鉤虐殺事件》の退場で、以前よりも安定感が増したことになります。

ボロスリアニメイトはパーマネントをリアニメイトしつつ、+1/+1カウンターをばら撒く《報復招来》を軸にしたデッキ。一度に複数の脅威を用意してくれるため、単体除去に強い構築です。リアニメイト以外では《婚礼の発表》《鏡割りの寓話》を使ってじっくりとボードを育てながら攻めていきます

一時的封鎖巨竜戦争集団失踪

ボードコントロールに強いカラーリングでもあるため、今後増加するアグロ対策にも余念がありません。

前回ご紹介した4色ドメインは「版図」システムを最大限活用したミッドレンジデッキ。見た目は4色ですが、《スパーラの本部》により基本土地タイプを網羅しています。基本土地タイプを揃えて、カードのパフォーマンスを最大限発揮させます。

群れの渡り

3マナのエンチャントコンビに《放浪皇》とさまざまな攻め手を持っていますが、《群れの渡り》にこそ注目です。最大5体もの3/3トークンを生成するこの呪文を《食肉鉤虐殺事件》なしで対処するのは難しく、コントロール色の強い黒系ミッドレンジにとっても致命傷になりかねません。

タップイン土地が多めに採用されているため、アグロにおくれをとる場合もありますが、構築で改善できる範囲内と思われます。

仕様変更

各種ミッドレンジに採用されていた《食肉鉤虐殺事件》。対クリーチャー戦の最終兵器が抜けた穴を埋めるのはどんなカードでしょうか。サイドボード視点で探したところ、いくつかのカードが見つかりました。

タフネス2以下限定

悪意ある機能不全締めつける瘴気血統の選別

いわゆる《蔓延》の亜種である《締めつける瘴気》《悪意ある機能不全》は真っ先に思いつくカードです。どちらも小型クリーチャーに対して強く、複数交換が狙えます。反面、3マナ以上のクリーチャーに対しては効果が薄く、ほかのカードと組み合わせる必要があります。

環境には《婚礼の発表》《鏡割りの寓話》などのトークンを生成するカードが活躍しています。トークン限定ながら状況に応じて全体と単体を打ち分けられる《血統の選別》もお忘れなく。

マナコストや土地タイプ

危難の道底への引き込み

現在のスタンダードには《敬虔な新米、デニック》《穢れた敵対者》のような2マナ以下で高タフネスのクリーチャーが複数存在しています。先ほど紹介したカードでは一掃することはかないません。むしろ別の全体除去にこそ可能性がありそうです。

《危難の道》は2マナ以下のクリーチャーすべてを対処してくれる対アグロ性能の優れたカード。「切除」コストを支払えばマナ総量を無視して全体除去としても機能する優れモノ。ミッドレンジ戦略に適したデザインです。

「版図」戦略ならば《底への引き込み》がお勧めです。コントロールしている基本土地タイプの数によって修正値が変わってしまいますが、中堅以上のクリーチャーまで流せます。先ほどの《危難の道》と比較すると基本土地タイプを揃える必要があるため、マナコストの割に効果範囲が広いカードとなります。

先週末の大会結果

以下は、先週末に開催されたプレミアム予選の結果になります。どれも禁止改定前の環境となりますのでご承知おきください。

チャンピオンズカップ プレミアム予選 in 晴れる屋日本橋店

順位 プレイヤー名 デッキタイプ
優勝 サイトウ シンヤ 黒単ミッドレンジ
準優勝 ヤマダ マサト エスパーミッドレンジ
トップ4 ムラカミ カズヤ エスパーミッドレンジ
トップ4 ミオタニ トモヤ エスパーミッドレンジ
トップ8 セゴ ケンジ ジェスカイコントロール
トップ8 ウツノミヤ タクミ ジャンドミッドレンジ
トップ8 ムラオカ ヒデアキ ジャンドミッドレンジ
トップ8 モリヤマ マサヒデ グリクシスミッドレンジ

(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)

参加者44名で開催されたプレミアム予選(日本橋店)は黒単ミッドレンジを使用したサイトウ シンヤ選手が権利を獲得しています。

メタゲーム

デッキタイプ 使用者数 占有率
エスパーミッドレンジ 18 (40.9)
黒単ミッドレンジ 5 (11.4)
グリクシスミッドレンジ 4 (9.1)
ジャンドミッドレンジ 4 (9.1)
白単ミッドレンジ 2 (4.5)
グルールアグロ 2 (4.5)
その他 9 (20.5)
合計 44名 (100%)

エスパーミッドレンジが頭2つ抜けて多いものの、白系やアグロなどデッキ選択はバラエティーに富んでいます。

トップ8デッキリストはこちら

チャンピオンズカッププレミアム予選 in 晴れる屋三宮

順位 プレイヤー名 デッキタイプ
優勝 コンドウ ショウゴ エスパーミッドレンジ
準優勝 アツジ マコト グリクシスミッドレンジ
トップ4 ヤマダ カズキ ジャンドミッドレンジ
トップ4 ナカジマ チカラ エスパーミッドレンジ
トップ8 ウラサキ タカユキ グリクシスミッドレンジ
トップ8 マツバラ ユウスケ グリクシスミッドレンジ
トップ8 イノウエ トオル エスパーミッドレンジ
トップ8 トクヤマ ヨシヒコ エスパーコントロール

(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)

参加者32名で開催されたプレミアム予選(三宮店)を制したのはコンドウ ショウゴ選手。決勝ラウンドへ進んだデッキの大半が黒系ミッドレンジであり、非常にタフな大会だったと思慮されます。

メタゲーム

デッキタイプ 使用者数 占有率
エスパーミッドレンジ 12 (37.5)
ジャンドミッドレンジ 7 (21.9)
グリクシスミッドレンジ 5 (15.6)
その他 8 (25.0)
合計 32名 (100%)

昨日とは一転して、黒単ミッドレンジのいない世界線がありました。

トップ8デッキリストはこちら

チャンピオンズカッププレミアム予選 in 晴れる屋 トーナメントセンター 大阪

順位 プレイヤー名 デッキタイプ
優勝 ヤマムラ ショウマ エスパーミッドレンジ
準優勝 キムラ シゲキ ラクドスミッドレンジ
トップ4 ウツノミヤ タクミ エスパーミッドレンジ
トップ4 コンドウ コウキ エスパーミッドレンジ
トップ8 ササキ リュウゾウ ラクドスミッドレンジ
トップ8 ムラオカ ヒデアキ ジャンドミッドレンジ
トップ8 イノウエ トオル エスパーミッドレンジ
トップ8 ノミヤ ヨウヘイ ジャンドミッドレンジ

(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)

参加者32名で開催されたプレミアム予選(TC大阪)はヤマムラ ショウマ選手のエスパーミッドレンジ。同アーキタイプはトップ8の半数を占めており、安定性と攻略の難しさがうかがい知れます。

メタゲーム

デッキタイプ 使用者数 占有率
エスパーミッドレンジ 10 (31.3)
グリクシスミッドレンジ 7 (21.9)
ジャンドミッドレンジ 5 (15.6)
黒単ミッドレンジ 2 (6.3)
ラクドスミッドレンジ 2 (6.3)
その他 6 (18.6)
合計 32名 (100%)

トップ8デッキリストはこちら

おわりに

今回は禁止改定にともなう次期スタンダードについて予想してきました。《食肉鉤虐殺事件》を失ったことで黒系ミッドレンジの地位はどう変化するのでしょうか。最適な全体除去は一体…?

アグロデッキが復権するのか、まったく違う色のミッドレンジ戦略が台頭するのか、興味は尽きません。突如として新しいカードが日の目を見る可能性もあります。

オンラインでの発行は今週13日となっているため、次回は新しいスタンダード環境をお届けできるはず。一体どんなデッキが活躍するのか今から楽しみでなりません。

それではまた!

この記事内で掲載されたカード

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富澤 洋平 晴れる屋メディアチームスタッフです。最近は《黙示録、シェオルドレッド》に夢中な日々です。 富澤 洋平の記事はこちら

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