はじめに
みなさんこんにちは。晴れる屋メディアチームの富澤です。
昨日公開された佐藤 啓輔選手の「エスパーミッドレンジのデッキガイド」はお読みになりましたか?エスパーミッドレンジのカード選択に始まり、サイドボードプランまで解説されています。ミッドレンジミラーのコツもあり、苦手な方の助けとなる1本です。ぜひ、ご一読を。
さて、本稿ではStandard Challengeより、最新の大会結果を振り返っていきます。
先週末の注目トピックは?
カードプールに若干の変化はあったものの、大ミッドレンジ時代は続いています。『兄弟戦争』まで黒い中速デッキが幅を利かしたままなのでしょうか。
いいえ、そんなことはございません。先週末のオンラインイベントでは上位に黒いミッドレンジを狙ったデッキが見られました。「スケールの大きさ」、つまりは重いカードを有効に活かしたボロスリアニメイトと、真逆のテンポに寄せた青単デルバーです。
ボロスリアニメイトは《永岩城の修繕》や《聖域の番人》を使用して戦線を横へ広げることで、単体除去では打開できないボードを構築していきます。《食肉鉤虐殺事件》がなければ惜しみなくリソースをボードに注ぎ込めるのです。
リセット呪文がなければ、《聖域の番人》や《報復招来》などの「スケールの大きさ」を利用して押しつぶすことが可能です。マナコストの高いカードが多く、トップデッキ勝負でもほかのミッドレンジに引けを取りません。
青単デルバーは《秘密を掘り下げる者》や《傲慢なジン》を妨害呪文でバックアップするクロックパーミッションの部類です。1ターンにワンアクションしかできないミッドレンジに対し、手数の多さで勝負します。《かき消し》の前では「スケールの大きさ」が仇となり、ミッドレンジ側は強みを活かしきれません。
黒系ミッドレンジを意識した戦略とはいえ、相反する2つのデッキが成績を残したのは興味深い結果といえます。それでは大会結果をみていきましょう。
10/22(土):Standard Challenge
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
優勝 | MSlap_LaBiscia | ボロスリアニメイト |
準優勝 | Ryan100495 | 青単デルバー |
トップ4 | crK | エスパーミッドレンジ |
トップ4 | O_danielakos | エスパーミッドレンジ |
トップ8 | ranranjintianchiwhat | エスパーミッドレンジ |
トップ8 | Graciasportanto | ジャンドミッドレンジ |
トップ8 | milikin | オルゾフコントロール |
トップ8 | FerMTG | ジャンドミッドレンジ リアニ型 |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
土曜日に開催されたStandard ChallengeはMSlap_LaBiscia選手のボロスリアニメイトが制しています。ボロス対青単と、珍しく黒の介在しない決勝戦となりました。
crKとranranjintianchiwhat両選手のエスパーミッドレンジは、レジェンドクリーチャーをベースに構築されています。特徴的なのは今までありそうでなかった《策謀の予見者、ラフィーン》と《絶望招来》の共存。マナベース限界ギリギリ、ぶっちぎりの凄い構築です。
メタゲーム
デッキタイプ | トップ32 | トップ16 |
---|---|---|
エスパーミッドレンジ | 8 | 4 |
青単デルバー | 5 | 2 |
ジャンドミッドレンジ | 3 | 3 |
ボロスリアニメイト | 3 | 3 |
ジョダーレジェンズ | 2 | 0 |
オルゾフコントロール | 2 | 0 |
グルールアグロ | 2 | 0 |
その他 | 7 | 4 |
合計 | 32 | 16 |
除去に寄せたデッキを狙うかたちで青単デルバーが急増し、母数で2位に浮上しています。
トップ8デッキリストはこちら。
ボロスリアニメイト
ボロスリアニメイトは《神憑く相棒》や英雄譚のようなアドバンテージのとれるパーマネントを軸に構築されたデッキです。1枚で複数の脅威を用意してくれるためボード上の攻め合いで強く、単体除去に強い耐性を持ちます。《夜明けの空、猗旺》や《聖域の番人》といった「スケールの大きさ」を活かしたカードに加えて、《報復招来》によるリアニメイトエンジンもブレンドされています。
このデッキの主役はなんといっても《聖域の番人》。「盾カウンター」のおかげで除去に耐性があり、さらに種類を問わずカウンターをトークンと手札へと変換してくれます。カードアドバンテージの権化といえるクリーチャーであり、追放か打ち消し呪文以外では効率良く対処できません。
この天使を最大限活かすためには、+1/+1カウンターを配置するカードが必要不可欠。《放浪皇》は最高の相性を誇り、この2枚が揃ってしまうと打開するのは至難の業となります。
珍しいカードとしては《ラフィーンの密通者》でしょう。「謀議」で+1/+1カウンターを置きつつ、《報復招来》用の種を埋められる一挙両得カードなのです。
《聖域の番人》ばかりに目が行ってしまいますが、ほかにもリソースを伸ばすカードが揃っています。《夢の巣のルールス》の生まれ変わりではと噂の囁かれる《セラの模範》は、本家と比べても遜色ないデザインです。英雄譚の使いまわしは当然として、土地をプレイできるのが地味に嬉しく、能動的に墓地へ送り込める《ジェトミアの庭》まで採用されています。
再利用してこそ真価を発揮するため、十分にマナを確保してからプレイしましょう。このクリーチャーがいれば《豪火を放て》で失ったアドバンテージもすぐにリカバリーできます。
現在のスタンダードにおいてエンチャントやアーティファクトを見ない日はありません。仮想敵である《黙示録、シェオルドレッド》がいるとはいえ、メインボードから《邪悪を打ち砕く》のような局所的なカードの採用が肯定されるほどなのです。
《聖戦士の奇襲兵》は1枚でエンチャントやアーティファクトの両方に対応できるユーティリティカード。クリーチャーであるため裏目がなく、《永岩城の修繕》や《セラの模範》で再利用可能です。
《しつこい負け犬》や《死体鑑定士》、デッキでは4色ロームと墓地を活用するカードや戦略が増えたことで、対策カードが欲しいところ。《未認可霊柩車》に加えて「換装」を持つ《獅子の飾緒》が採用されています。起動にマナがかかってしまいますが、マナの続く限り際限なく追放でき、クリーチャーであるため単体でクロックとしても機能します。貯まった+1/+1カウンターは《聖域の番人》で活用できますね。
青単デルバー
青単デルバーは軽量クリーチャーを打ち消し呪文でバックアップしていくクロックパーミッション戦略。レガシークラスのクリーチャーである《秘密を掘り下げる者》を筆頭に、《帳簿裂き》など交えて軽快に攻め立てます。ほとんどが2マナ以下のやや線の細いデッキですが、打ち消しや保護呪文があるためパワーカードで勝負してくるミッドレンジには強いアーキタイプです。
軽量のクリーチャーとインスタントのみで構築されているため、流行の《豪火を放て》で損をする心配はありません。相手からするとマナコストの重さがネックとなってしまいます。
最初期からの変更は打ち消し呪文の減量です。相手のデッキによって裏目のある《本質の散乱》と《否認》はサイドボードへと移行し、その分キャントリップや保護呪文などが増量されています。墓地にインスタントやソーサリーが溜まらないことには《傲慢なジン》や《トレイリアの恐怖》は真価を発揮できません。能動的なカードを増やしたことでこれらのクリーチャーが使いやすくなっているのです。
ダメージソースである《傲慢なジン》も《トレイリアの恐怖》も墓地に依存したクリーチャーです。前者は回避能力も相まってダメージレースに強いクリーチャーであり、ときには2~3回の攻撃でライフを削りきってしまいます。マナコスト軽減効果は《発見への渇望》やサイドボードの2マナの打ち消し呪文のプレイを助けてくれます。《邪悪を打ち砕く》には注意しましょう。
後者は除去によるゲームコントロールを目論むデッキに対して真価を発揮します。除去呪文のマナコストに「護法2」が乗っかれば《呪文貫き》から逃れることはできません。除去呪文で対処しようと躍起になればなるほど、動きに差が生まれることになります。
使い勝手の良い打ち消し呪文ほど賞味期限が短いもの。かといって《本質の散乱》と《否認》は打ち漏らしが懸念されます。不安定な打ち消し戦略よりも、回避能力やサイズに優れた自軍を守り短期のダメージレースを挑む方が遥かに効率的です。そのためテンポ面に特化した保護カードと、ショートレンジでもっとも効果範囲の広い《かき消し》が採用されています。
万能ともいえるデッキですが、打ち消し呪文をすり抜けたパーマネントと「魂力」のような起動型能力には頭を悩ますことになります。《真髄の針》は流行の「魂力」土地とプレインズウォーカーを対策してくれます。1マナと軽く、ほとんど隙はできません。これがあれば《天上都市、大田原》も《ヴェールのリリアナ》も怖くはありませんね。
その他の大会結果
10/23(日):Standard Challenge
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
優勝 | bernardocssa | ラクドスミッドレンジ |
準優勝 | n00bcheesepwner | エスパーミッドレンジ |
トップ4 | Ignotus97 | ボロスリアニメイト |
トップ4 | _Batutinha_ | グリクシスミッドレンジ |
トップ8 | MTGHolic | ジャンドミッドレンジ |
トップ8 | Akamatsu | 青単デルバー |
トップ8 | mdvayu2 | 青単デルバー |
トップ8 | BReal2 | エスパーミッドレンジ |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
日曜日に開催されたStandard Challengeはラクドスミッドレンジが制しています。メインボードから手札破壊やプレインズウォーカーも採用されており、多角的な攻めが可能になっています。
メタゲーム
デッキタイプ | トップ32 | トップ16 |
---|---|---|
青単デルバー | 10 | 6 |
ジャンドミッドレンジ | 9 | 3 |
エスパーミッドレンジ | 4 | 3 |
ボロスリアニメイト | 2 | 1 |
その他 | 7 | 4 |
合計 | 32 | 16 |
一夜にして青単デルバーはトップメタへと躍り出ました。追うジャンドミッドレンジは《傲慢なジン》と《トレイリアの恐怖》を綺麗にさばける《土建組一家の魔除け》を増やしています。
トップ8デッキリストはこちら。
おわりに
今回は黒いミッドレンジの攻略方法として、ボロスリアニメイトと青単デルバーをご紹介しました。狙いは共通していながら両極端のアプローチをとっているのは興味深く、《黙示録、シェオルドレッド》に頼らずともスタンダードは攻略できる証明になったかと思います。
今週末には久しぶりとなるチャンピオンズカッププレミアム予選が控えています。次回はそれらの情報をお届けしたいと思います。