はじめに
みなさんこんにちは。晴れる屋メディアチームの富澤です。
『ファイレクシア:完全なる統一』の情報公開が始まり、毎朝Twitterをチェックするのが楽しみになっています。本日公開されたニッサはストーリーとスタンダードにどんな影響を及ぼすのでしょうか。
【プレビュー】世界の歌を聴くことを得意とするニッサ。今、彼女の耳に聞こえるのはファイレクシアの金属音だけです。
— マジック:ザ・ギャザリング (@mtgjp) January 16, 2023
⬇『ファイレクシア:完全なる統一』製品情報ページhttps://t.co/O57y9rCeTp#mtgjp #MTGPhyrexia pic.twitter.com/NBTazOBSUF
はやる気持ちを抑えて、本題へと戻したいと思います。本稿は、毎週末に各地で開催されているエリア予選へと可能な限り帯同し、デッキ分布(メタゲーム)の分析と権利獲得デッキを紹介していく企画となります。執筆にあたり、各店舗様にご協力をいただき公開へといたっています。改めて感謝申し上げます。
今回はチャンピオンズカップエリア予選 in 札幌と第22期スタンダード神挑戦者決定戦の大会結果を振り返っていきます。
先週末のメタゲームは?
第2週目のメタゲームとして取り上げるのはエリア予選(晴れる屋札幌店)です。
デッキタイプ | 使用者数 | 占有率 |
---|---|---|
グリクシスミッドレンジ | 7 | (53.8%) |
エスパーミッドレンジ | 2 | (15.4%) |
白単ミッドレンジ | 1 | (7.7%) |
アゾリウスランプ | 1 | (7.7%) |
ディミーアアグロ | 1 | (7.7%) |
4色レジェンズ | 1 | (7.7%) |
合計 | 13 |
グリクシスミッドレンジが5割越えと、かなり偏ったデッキ分布となっています。ミラーマッチを見据えてメインボードから《剃刀鞭の人体改造機》や《刃とぐろの蛇》、《眼識の収集》を採用する構築が複数ありました。
対ミラーマッチ型へと姿を変えつつも、《黙示録、シェオルドレッド》をメインボードへ戻すことで赤単アグロに対してもガードは上がったままです。デッキの骨格を維持したまま少数のスロットを変更するだけで大きなリターンを得られるのが、ミッドレンジの強みなのです。
このメタゲームを予想していたのがレジェンド型に寄せたエスパーミッドレンジと白単ミッドレンジの2つ。非クリーチャー呪文を咎める《スレイベンの守護者、サリア》と、複数のパーマネントを利用した横並び戦略による攻略を目指したデッキです。
特に《スレイベンの守護者、サリア》が先手2ターン目に着地した場合、グリクシス側の選択肢は《切り崩し》か《税血の収穫者》と、行動を大きく制限されてしまいます。彼女と並べば《策謀の予見者、ラフィーン》の「護法」は実質2となるため、定着にも貢献してくれます。
残念ながらこれらのデッキは権利には届きませんでしたが、グリクシスミッドレンジが中心となってメタゲームが回り続ける限りは選択肢のひとつに数えられます。
第22期スタンダード神挑戦者決定戦より
グリクシスミッドレンジを狙うデッキはほかにもあります。エリア予選ではありませんが、第22期スタンダード神挑戦者決定戦では青単テンポが使用者数で2番手に入っていました。
打ち消し呪文を軸にしつつ、巨大な《傲慢なジン》や軽量化した《トレイリアの恐怖》を着地させて押し切りを目指す、トリッキーなデッキです。《とんずら》や《下支え》、《渦巻く霧の行進》といった庇護スペルにより隙はほとんどありません。捌く側は庇護スペルを念頭におきつつ除去しなければならず、最低でもインスタントトリックを2枚用意する必要があります。
グリクシスミッドレンジがミラーマッチを意識し、《喉首狙い》よりも《削剥》を優先している今、チャンスが巡ってきています。
前置きが長くなりましたが、それでは大会結果をみていきましょう。
チャンピオンズカップエリア予選 in 札幌
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
権利獲得 | ヤマザキ ダイスケ | ディミーアアグロ |
権利獲得 | カガ ヒロユキ | グリクシスミッドレンジ |
権利獲得 | ヤナギサカ トオル | グリクシスミッドレンジ |
権利獲得 | ナカムラ リョウタ | 4色レジェンズ |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
参加者13名で開催されたエリア予選(晴れる屋札幌店)ではお馴染みのグリクシスミッドレンジに加えて、ディミーアアグロや青抜きの4色レジェンズといった興味深いデッキが権利を獲得しています。
権利を獲得したグリクシスミッドレンジのサイドボードに共通して採用されているのが《軽蔑的な一撃》と《魂転移》。《夜明けの空、猗旺》や《聖域の番人》といった破壊時に誘発型能力や耐性を持つカードへの対抗策となります。
メタゲーム
デッキタイプ | 使用者数 | 占有率 |
---|---|---|
グリクシスミッドレンジ | 7 | (53.8%) |
エスパーミッドレンジ | 2 | (15.4%) |
白単ミッドレンジ | 1 | (7.7%) |
アゾリウスランプ | 1 | (7.7%) |
ディミーアアグロ | 1 | (7.7%) |
4色レジェンズ | 1 | (7.7%) |
合計 | 13 |
トップ4デッキリストはこちら。
ディミーアアグロ
ディミーアアグロは軽量クリーチャーを除去や打ち消しといったインスタントトリックでバックアップし、ビートダウンを目指す戦略です。線の細いクリーチャーが多く定着させるのが難しいように見えますが、墓地から直接戦場に戻せたり、瞬速があったりと見た目以上に粘り強く攻められます。
墓地から使いまわせるクリーチャーといえば《しつこい負け犬》が真っ先に思いつきますが、より軽い《教団の徴集兵》まで採用されています。最序盤からダメージレースをリードし、マナが余っていればほかのクリーチャーの死亡時に戦場へと戻ります。
マナコストを活かして《帳簿裂き》の「謀議」の誘発役にも、「謀議」で墓地へと送りこんでカードカウントを稼ぐこともできます。戦場へ戻る効果は能動的に起動できないため《死体鑑定士》だけには注意しましょう。
アグロデッキの弱点といえば、カードアドバンテージを稼ぐ手段に乏しく、中盤以降ガス欠気味になってしまう点です。それを打開してくれるのが攻撃的な戦略に合致した3マナ域、《ヨーグモスの法務官、ギックス》と《漆月魁渡》です。《漆月魁渡》はエスパーミッドレンジでも見かけるため、ここでは黒き法務官へと注目していきます。
1マナ域や飛行クリーチャーを採用し序盤から戦場のイニシアチブを狙うこのデッキにとって、《ヨーグモスの法務官、ギックス》は攻め手を緩めずにカードを補充してくれる生きたアドバンテージ源。《トレストの密偵長、エドリック》を彷彿とさせるドロー能力は、軽くテンポに寄せた構築と相性が良いため、攻撃クリーチャーを用意してからプレイしたいところです。自身も3マナと軽めであり、《呪文貫き》でサポートすれば定着も容易です。
4色レジェンズ
4色レジェンズは黒を基調としながら、各色の優良伝説クリーチャーを多用しています。《英雄の公有地》で色マナを整え、《忠実な護衛、ハジャール》や《アーボーグのラタドラビック》で守りながら伝説クリーチャーを並べて戦場を構築していきます。
レジェンドデッキといえば《スレイベンの守護者、サリア》と《策謀の予見者、ラフィーン》が共存したエスパー型が有名ですが、こちらはマルドゥベースの4色構成となります。赤が入ったことで定番の《鏡割りの寓話》に加えて、伝説クリーチャーのコピーを生成できる《トラブルメーカー、ジャクシス》が採用されています。伝説クリーチャーをコピーしても片一方は消滅してしまいますが、《トラブルメーカー、ジャクシス》は一体どのように使うのでしょうか。
レジェンドデッキの中核をなすのが《アーボーグのラタドラビック》。自身は「護法」を持ち、さらにほかの伝説クリーチャーが死亡した際にそのコピーであるトークンを生成してくれます。たとえば《アーボーグのラタドラビック》が戦場にいる状況で《忠実な護衛、ハジャール》の召喚に成功すれば、本体と死亡時に生成されるトークンで合わせて2回分の破壊不能効果が見込めます。
運よく《アーボーグのラタドラビック》が2枚引けた場合は2体とも戦場に出すことをおすすめします。伝説ルールにより片方は生け贄に捧げられ、そしてゾンビへと転生します。《アーボーグのラタドラビック》とそのトークンが並べば効果は2倍となります。
しかし、4枚採用されているとはいえ、毎回のように同じカードを2枚引けるとは限りません。
そこで《トラブルメーカー、ジャクシス》の出番です。《キキジキの鏡像》と違い、伝説クリーチャーをコピーできるため、《アーボーグのラタドラビック》を複製可能。しかも「奇襲」のおかげでターンを渡さずに、です。
《アーボーグのラタドラビック》が戦場にいる状況で《トラブルメーカー、ジャクシス》を「奇襲」でプレイし、コピーしてみましょう。成功すれば《アーボーグのラタドラビック》とそのコピー、終了ステップで《トラブルメーカー、ジャクシス》のコピーが2体生成されることになります。
ひとたび《アーボーグのラタドラビック》と《トラブルメーカー、ジャクシス》の複製コンボが始まると、全体除去以外では対処が追いつきません。ほかの伝説クリーチャーを次々とコピー&複製されてしまうわけですから。《ギックスに拾われし者、ミシュラ》や《残忍な巡礼者、コー追われのエラス》を並べて一気にライフを吸いとることも可能です。
その他の大会結果
第22期スタンダード神挑戦者決定戦
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
優勝 | 河野 融 | グリクシスミッドレンジ |
準優勝 | 仲宗根 良 | グリクシスミッドレンジ |
トップ4 | 齋藤 慎也 | グリクシスミッドレンジ |
トップ4 | 三科 良太 | 赤単アグロ |
トップ8 | 井川 良彦 | グリクシスミッドレンジ |
トップ8 | 簗瀬 要 | エスパーミッドレンジ |
トップ8 | 野宮 陽平 | グリクシスミッドレンジ |
トップ8 | ホリウチ マコト | エスパーミッドレンジ |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
参加者62名で開催された第22期スタンダード神挑戦者決定戦。決勝トーナメントへ進出したのは5つのグリクシスと2つのエスパー、それらミッドレンジに立ち向かう赤単アグロでした。
三科選手の赤単アグロは《無謀なる衝動》の代わりに、《勝負服纏い、チャンドラ》が採用されています。瞬間的に使えるカードを増やすには《無謀なる衝動》が優れているものの、《勝負服纏い、チャンドラ》は戦場にいる限り継続的に衝動的ドローか、ダメージソースとして機能します。環境に打ち消し呪文以外でプレインズウォーカーを対処できるカードは少ないこともあり、優先されていると思われます。
メタゲーム
デッキタイプ | 使用者数 | 占有率 |
---|---|---|
グリクシスミッドレンジ | 14 | (22.6%) |
青単テンポ | 11 | (17.7%) |
エスパーミッドレンジ | 9 | (14.5%) |
赤単アグロ | 4 | (6.5%) |
エスパーレジェンズ | 4 | (6.5%) |
アゾリウス兵士 | 3 | (4.8%) |
黒単ミッドレンジ | 2 | (3.2%) |
ラクドスアグロ | 2 | (3.2%) |
イゼットランプ | 2 | (3.2%) |
マルドゥミッドレンジ | 2 | (3.2%) |
その他 | 9 | (14.5%) |
合計 | 62 |
グリクシスミッドレンジは変わらぬものの、青単テンポが急増しエスパーミッドレンジを抜いて2番手となっています。ミッドレンジ環境が続いたことで、それを狙った選択となっています。
トップ8デッキリストはこちら。
今週のまとめ
デッキタイプ | 権利獲得者数 | |
---|---|---|
グリクシスミッドレンジ | 23 | +8 |
エスパーミッドレンジ | 11 | +4 |
白単ミッドレンジ | 4 | +4 |
赤単アグロ | 4 | +2 |
青単テンポ | 3 | +1 |
エスパーレジェンズ | 3 | +1 |
イゼットランプ | 2 | +1 |
ディミーアアグロ | 1 | +1 |
ジェスカイコントロール | 1 | +1 |
4色レジェンズ | 1 | +1 |
アゾリウス兵士 | 1 | +0 |
アゾリウスヒロイック | 1 | +0 |
ラクドスアグロ | 1 | +0 |
グリクシスコントロール | 1 | +0 |
ジャンドミッドレンジ | 1 | +0 |
マルドゥミッドレンジ | 1 | +0 |
マルドゥ天使ミッドレンジ | 1 | +0 |
合計 | 60名 | +24 |
一部のデッキにつきましてはBIG MAGIC様から引用しています。
前回の集計結果に、同じく第1週目に開催されたはま屋松本店様とTrading Card Game Shop193大須店様、カードゲームのシーガル仙台駅前店様、今回の晴れる屋札幌店の結果を足したものとなります。
グリクシスとエスパーの2大ミッドレンジにばかり目がいってしまいますが、白、青、赤の単色デッキもしっかりと結果を残しています。グリクシスミッドレンジの構築がミラーマッチへ寄せられて、チャンスが巡ってきています。来週はどのような結果になるのでしょうか。
それではまた次回!