はじめに
みなさんこんにちは。
今週末には『プレイヤーズコンベンション横浜2022』が開催されますね。プロツアーへの最後の関門である『チャンピオンズカップファイナル サイクル2』をはじめ、スタンダード、モダンによるオープン戦や統率者戦などイベント盛りだくさんの2日間です。
イベントを間近に控えてつい浮足立ってしまいますが、何事にも準備が不可欠です。チャンピオンズカップファイナル、スタンダードオープンに備えて今回もスタンダードのデッキを紹介していきます。
今回は2/25(土)に開催された『Standard Challenge』の大会結果を振り返っていきます。
先週末の注目トピックは?
前回まで大暴れだった《偉大なる統一者、アトラクサ》ですが、ここに来て失速しています。今回の『Standard Challenge』ではトップ32中に3名のみ。一体何があったのでしょうか。
古今東西、墓地活用戦略は奇襲性こそ高いものの、サイドボード後はその戦略の脆さと付き合う宿命にあります。直接的な墓地追放カードのみならず、手札破壊や打ち消し呪文とも向き合わなければなりません。シンプルな戦略ゆえに、対策も容易なわけです。
アゾリウス兵士の《敬虔な新米、デニック》は《死体鑑定士》封じとして一定の評価を受けていましたが、再度評価の上がっているカードです。このちっぽけなレジェンド1枚で《ギックスの残虐》は本来の効果を失ってしまうわけですから。
《墓所の守護者》は白にしてはめずらしい瞬速持ちのクリーチャーであり、リアニメイト呪文に対してクリティカルな効果を発揮します。
狩られる側だった白単ミッドレンジは《未認可霊柩車》に加えて、《石の脳》を採用することで《偉大なる統一者、アトラクサ》を乗り越えつつあります。ソーサリータイミングでしか動けないならば、先に対処しておけばよいのです。偉大なる天使もゲーム外へと追放されてしまえば、なすすべもありません。
赤単アグロは速攻クリーチャーを多用し、《偉大なる統一者、アトラクサ》着地前の決着を目指します。サイドボードには墓地対策ではなく戦略と一貫性のある《血の裏切り》が用意されていました。瞬間的にアトラクサのコントロールを奪い、ライフを削りきってしまおうというのです。
激しいマークを受けた結果、《偉大なる統一者、アトラクサ》の一本釣りは不発に終わってしまいました。先週末に限っては、各デッキのアトラクサ攻略は成功したのです。
それでは大会結果をみていきましょう。
2/25(土):Standard Challenge
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
優勝 | yoman5 | 赤単アグロ |
準優勝 | Schiaveto | グリクシスミッドレンジ |
トップ4 | Salvatto | 白単ミッドレンジ |
トップ4 | Arianne | グリクシスミッドレンジ |
トップ8 | katuo079595 | グリクシスミッドレンジ |
トップ8 | trunks132 | グリクシスミッドレンジ |
トップ8 | trollasceticftw | 赤単アグロ |
トップ8 | canepis16 | アゾリウス兵士 |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
今大会を制したのは赤単アグロでした。最近少なかった《怪しげな統治者、スクイー》や《轟く雷獣》がメインボードへと戻っています。
軽量な干渉手段が多く、細かく立ち回れるグリクシスミッドレンジが勢力を伸ばしています。アトラクサ戦略などの大ぶりなデッキに対して有効なデッキタイプであり、2種類のファストランドを得たことで序盤のもたつきが改善されています。足回りの強化とメインボードの《切り崩し》により、対アグロ性能も向上しました。
メタゲーム
デッキタイプ | トップ32 | トップ16 |
---|---|---|
グリクシスミッドレンジ | 10 | 6 |
赤単アグロ | 7 | 4 |
白単ミッドレンジ | 4 | 1 |
アゾリウス兵士 | 3 | 1 |
エスパーミッドレンジ | 3 | 1 |
5色アトラクサ | 3 | 1 |
その他 | 2 | 2 |
合計 | 32 | 16 |
メタゲーム的にアグロを取りこぼさずにロングゲームまでカバーする必要に迫られたことで、攻守揃ったグリクシスミッドレンジが最適となり、大きく数を伸ばしています。《偉大なる統一者、アトラクサ》デッキのような重いミッドレンジに対して有効な打ち消しや手札破壊が標準装備されており、ファストランドの加入により序盤の隙もほとんどありません。
トップ8デッキリストはこちら。
赤単アグロ
赤単アグロは、序盤からクリーチャーでライフを攻めていく攻撃的なアーキタイプ。速攻付きのクリーチャーと直接ダメージ呪文の組み合わせにより、ほかのアグロと比べてもダメージ効率の優れたデッキです。使いまわせる《フェニックスの雛》や《怪しげな統治者、スクイー》のおかげで攻め手が尽きることはなく、《血に飢えた敵対者》による呪文の使いまわしも可能。
赤単アグロの定番となりつつあった《鏡割りの寓話》や《敬慕される炎魔道士、ヤヤ》の姿はなく、昔懐かしいライフのみを狙った構築です。
中盤以降のダメージソースは《怪しげな統治者、スクイー》と《轟く雷獣》の2種。前者は攻撃のたびに戦線を横へと広げ、ライフを詰めていきます。《死体鑑定士》などで追放されない限り何度でも蘇る消耗戦に強いクリーチャーです。
《轟く雷獣》は攻撃するたびに+1/+1カウンターをばらまき、戦線を強化しつつ直接ダメージまで狙える中盤の削り役。しかも《熊野と渇苛斬の対峙》や《血に飢えた敵対者》《フェニックスの雛》《シヴの壊滅者》など相性の良いカードも多く、急角度からダメージを受けることも。能力が誘発するには攻撃が条件であるため、可能ならタップアウトを狙ってプレイしたいところです。
同大会で8位に入賞していた赤単アグロのサイドボードには《偉大なる統一者、アトラクサ》用に《未認可霊柩車》が取られていましたが、このデッキリストには皆無。代わりに《血の裏切り》が採用されています。
トピックでも触れましたが、《偉大なる統一者、アトラクサ》を対象にすれば3マナ7点火力に相当します。1枚でブロッカーを対処しつつ攻め手を増やせる戦略に合致したサイドカードです。
《焼炉の懲罰者》はグリクシスミッドレンジなどの特殊土地モリモリのデッキに対するメタカード。速攻こそないものの、直接ダメージを有しており、威迫により単体ブロックを許しません。《切り崩し》の範囲外なのも嬉しく、《熊野と渇苛斬の対峙》経由でプレイすれば《削剥》すらも耐えます。見た目以上にライフを詰めてくれるクリーチャーです。
《黙示録、シェオルドレッド》対策の定番であった《引き裂く炎》に代わり、《一斉蜂起》が採用されています。「親和」の意味はありませんが、一時的に破壊不能を無効化してくれるため、《栄光のドミヌス、モンドラク》などの「ドミヌス」サイクルや《忠実な護衛、ハジャール》に守られたレジェンドを綺麗に対処してくれます。
白単ミッドレンジ
白単ミッドレンジは《神憑く相棒》や《婚礼の発表》のようなアドバンテージのとれるパーマネントを軸に構築されたデッキです。1枚で複数のクリーチャートークンを生成してくれるためボード上の攻め合いで強く、単体除去に耐性を持ちます。
《軍備放棄》《骨化》といった軽量除去も多く、その守りはまさに鉄壁。強固な守りから繰り出されるフィニッシャーには、これまた破壊効果に強い《夜明けの空、猗旺》や《聖域の番人》といったパワーカードが据えられています。
《永遠の放浪者》は、フィニッシャー・「戦場に出たとき効果」の使いまわし・全体除去の三役を兼ねたプレインズウォーカーらしい多彩なカードです。[+1]能力は《第三の道のロラン》や《神憑く相棒》でリソースを稼ぐだけにとどまらず、「試作」状態の《鋼の熾天使》を本来の姿へと戻したり、《聖域の番人》の「盾カウンター」を補充したりと使い道は多数あります。相手のクリーチャーを対象にとり続ければ、事実上除去したも同義です。
[-4]能力により各プレイヤーのコントロールするクリーチャーを選ぶのは、《永遠の放浪者》のコントローラーです。つまり、自分には強力なクリーチャーを残しつつ、相手にはトークンといったように都合のよいボードを構築できます。数が正義と並べ過ぎないように注意しておきましょう。
苦手な《偉大なる統一者、アトラクサ》対策にはかなりの枠が割かれています。特に《未認可霊柩車》にいたってはメインボードから採用。リアニメイト以外にもグリクシスミッドレンジや青単テンポなど墓地を使うデッキは多数ありますが、素晴らしいメタ読みです。
《石の脳》は特定のカードに頼った戦略やフィニッシャーの少ないデッキに効果的です。《偉大なる統一者、アトラクサ》自体をゲーム外へと追いやりましょう。
《軍備放棄》や《骨化》を安定して使用するために基本土地が優先ですが、能力付き土地も採用されています。《ミレックス》は全体除去が少なく、《廃墟の地》のない現環境の隙をついた選択です。《放浪皇》と一緒に構えることができ、中盤以降のマナの使い道となります。
白い《苦花》こと《スクレルヴの巣》も同様にミッドレンジやコントロール対策です。生成されるトークンの性質上「堕落」を達成しない限りダメージレースには不向きですが、クリーチャーが少なく、直接エンチャントに触れられないグリクシスには効果的です。
アゾリウス兵士
アゾリウス兵士は1マナ域からクリーチャーを展開し続ける由緒正しき白系アグロ。《徴兵士官》や《ヨーティアの前線兵》から始まる軽量ビートダウンスタイルを《雄々しい古参兵》や《包囲の古参兵》で強化していきます。お互いにクリーチャーの数が並ぶ膠着した場面では《先兵の飛行士、ハービン》がフィニッシャーとなります。
以前は《スレイベンの守護者、サリア》で非クリーチャー呪文を抑え込む展開力を重視した構築が主流でしたが、今回ご紹介するのは《微風の歩哨》や《交渉団の保護》を採用したフラッシュ寄りの構築です。
非兵士でありながら採用されている《離反ダニ、スクレルヴ》は、後続を守護する対ミッドレンジの要です。1マナと軽く、2マナの除去で対処しようものならばテンポ面でリターンが生まれます。《切り崩し》や《絞殺》などの同じ1マナ除去での対処がベストです。
アーティファクトであるため《喉首狙い》では対処されないこともポイントであり、しぶとく生き残り続けます。《敬虔な新米、デニック》や《雄々しい古参兵》《天空射の士官》といったキークリーチャーを定着させることで、試合を有利に進める役割があるのです。
《交渉団の保護》はあまり見ないカードですが、クリーチャーが並んでいれば確定カウンターへと早変わり。「キッカー」を支払えば軽い《神秘の蛇》といえなくもありません。「キッカー」はおまけと考えて、アドバンテージを狙うよりは《交渉団の保護》が有効な間にビートダウンの完遂を目指していきます。
《墓所の守護者》はフラッシュ戦略に合致したリアニメイト対策カードです。クリーチャーなのでどのマッチアップでも無駄にならず、追放したカード次第ではトークン生成も望めます。戦場に出たときの効果で土地カードを追放しておけば、中盤以降の土地ドローも有効になりますね。
おわりに
今回は《偉大なる統一者、アトラクサ》を対策する側のデッキを紹介してきました。単に墓地を対策するのではなく、《血の裏切り》のようなカードを有効に使えるのは赤単アグロのメリットといえますね。
冒頭でもお話しした通り、今週末には『プレイヤーズコンベンション横浜2022』が開催されます。今から楽しみでなりません。一体どんなデッキが活躍するのでしょうか。
次回はそちらの情報をお届けしたいと思います。それでは!