Hareruya Prosのデッキ選択
いよいよ『第29回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権』が始まりました。新しいデッキリストや強豪たちのマッチアップにくぎ付けになってしまい、正直言って寝不足気味です。
今回の世界選手権に晴れる屋が誇るプロ集団Hareruya Prosからは6名のプレイヤーが参加しています。
本稿ではHareruya Prosが世界選手権へと持ち込んだスタンダードのデッキリストをお届けします。
ゴルガリミッドレンジ
ハビエル・ドミンゲス
世界王者やプロツアーチャンピオンといった数々のタイトルを総なめにしているハビエル・ドミンゲス/Javier Dominguez選手。マジックの酸いも甘いも知り尽くした情熱の体現者は今大会へゴルガリミッドレンジを持ち込んでいます。
ゴルガリミッドレンジは、高スタッツのクリーチャーを除去でサポートしながら押し込む攻め手の厚い中速デッキ。単体で攻防を制圧できる《グリッサ・サンスレイヤー》や《黙示録、シェオルドレッド》、時間経過とともにトークンを量産してくれる《下水王、駆け抜け侯》などでプレッシャーをかけていきます。また《執念の徳目》の獲得により、序盤のガードを下げずに長期戦も戦える仕様となっています。
ゴルガリミッドレンジの強みは土地の強さ。色事故しにくく安定性の高さはもちろんのこと、土地カード自体が脅威となり得るのです。《眠らずの小屋》と《ミシュラの鋳造所》はタップアウトを咎めるダメージソースであり、消耗戦や対コントロールでは頼もしいアタッカーです。特に《眠らずの小屋》はダメージレースに強く、墓地対策まで兼ねた優秀なカード。起動コストが軽く思えます。
これらの土地カードをサポートするのが《開花の亀》です。土地に関する効果を複数持ち、クリーチャー化する土地との相性は抜群です。ミッドレンジの帝王と言われた《黙示録、シェオルドレッド》と枠を分け合ってまで採用されているこのクリーチャーこそが、ゴルガリミッドレンジに継続的な攻め手を供給するとともに長期戦を支えているのです。
佐藤 啓輔
佐藤 啓輔はミッドレンジの名手。ボード上の攻防に長けており、状況に応じて的確にカードをプレイし、硬軟織り交ぜて自在に操ります。
佐藤選手が選択したのもゴルガリミッドレンジでした。3マナ域に採用された《失われし伝承の歩哨》は珍しいクリーチャーです。
《失われし伝承の歩哨》は3つの中から「1つ以上を選ぶ」ため、見た目に反して大きなアドバンテージを得られる可能性を秘めています。自分の《執念の徳目》を手札へと戻しながら相手の《忠義の徳目》をデッキへと戻したり、対リアニメイトでは墓地を一掃したりと無駄のないクリーチャーです。《墓地の侵入者》や《擬態する歓楽者、ゴドリック》を受け止め、火力に耐える高タフネスも強みのひとつです。
赤単アグロ
マルシオ・カルヴァリョ
ドラフトキングであるマルシオ・カルヴァリョ/Marcio Carvalho選手は世界選手権のドラフトラウンドを2-1と無難に折り返しています。構築戦にはどのようなデッキを持ち込んでいるのでしょうか。
赤単アグロは、序盤からクリーチャーでライフを攻めていく攻撃的なアーキタイプ。《僧院の速槍》や《擬態する歓楽者、ゴドリック》などの速攻付きのクリーチャーと直接ダメージ呪文の組み合わせにより、ほかのアグロと比べてもダメージ効率の優れたデッキです。《火遊び》や《稲妻の一撃》は除去でありながら、最後の数点のライフを削る役割も持ちます。
《擬態する歓楽者、ゴドリック》は速攻に加えて、「祝祭」時の打点の高さが魅力のクリーチャー。《熊野と渇苛斬の対峙》からスタートできれば3ターン目にして4/4となりますし、その後も軽量クリーチャーを連打することで継続的なサイズアップが期待できます。
マルシオ選手は《擬態する歓楽者、ゴドリック》を高く評価しており、《怪しげな統治者、スクイー》の枠を削って4枚採用しているほど。《ヴォルダーレンの美食家》は1枚で「祝祭」の条件を満たすためこの構築に適したクリーチャーです。
松浦 拓海
攻撃的な戦略を得意とする松浦 拓海選手。世界選手権に選んだ相棒は『エルドレインの森』で大きく強化された赤単アグロでした。
《魅力的な悪漢》はほかの2マナ域と比較しても遜色ないダメージソースでありながら、赤らしくない器用さを持ち合わせているクリーチャーです。過去にはそれぞれの能力を持つクリーチャーはいたかもしれませんが、それら別個が1枚へとまとめられてたクリーチャーは記憶にありません。どんな状況でも無駄にならないカードなのです。
松浦選手の構築で特徴的なのは4枚の《ナヒリの戦争術》と《魔女跡追いの激情》。ゴルガリミッドレンジやエスパーミッドレンジの増加を見越しての採用であり、天敵《黙示録、シェオルドレッド》を確実に対処するという強い意志が垣間見えます。《グリッサ・サンスレイヤー》や《敬虔な新米、デニック》などのタフネス3に触れるカードが増えたことで、立ち止まることなく一方的なダメージレースを演じられるでしょう。
エスパーミッドレンジ
平山 怜
『チャンピオンズカップファイナル サイクル1』の覇者である平山 怜選手はコンボやミッドレンジを好みます。今大会では柔軟な対応力を有し、高いプレイスキルを要求するエスパーミッドレンジを選択しています。
エスパーミッドレンジは2~3マナ域のクリーチャーを《策謀の予見者、ラフィーン》や《婚礼の発表》でバックアップしていく攻撃的な中速デッキ。打ち消しや除去、プレインズウォーカーと多彩なインスタントトリックが特徴のひとつです。
エスパーミッドレンジの理想は2マナから流れるように《策謀の予見者、ラフィーン》へと繋げて、打点と手札の質をあげていく攻防一体の動きです。ひとたび動き始めれば《かき消し》や《黙示録、シェオルドレッド》が待ち構えており、追いつくのは至難の技といえます。
「出来事」である《アーデンベイルの忠義》はインスタントでトークンを出せる呪文であり、《かき消し》や《喉首狙い》とともに構えられる受けの広いクリーチャーといえます。相手の動きを見極めてからプレイできるため定着しやすく、《策謀の予見者、ラフィーン》への繋ぎとしては最適な2マナ域といえます。
《忠義の徳目》は劣勢を跳ね返すほどのパワーを持つフィニッシャーであり、攻防一体のバフ効果は2ターンほどで強固なボードを構築してくれます。単体除去でゲームを作るミッドレンジには効果的なカードであり、アンタップ効果まであるためダメージレースすらも許しません。
エスパーコントロール
マッティ・クイスマ
マジック界の知の巨人であるマッティ・クイスマ/Matti Kuisma選手はマジックを俯瞰でとらえ、言語化し、我々読者のもとへと届けてくれます。搭載思考機械は世界選手権のメタゲームをどのように予想したのでしょうか。
エスパーコントロールは2マナの打ち消しと除去呪文を中心に脅威へ対処し、ドロー呪文を挟んで長期戦を目指す防御的な戦略です。全体除去やプレインズウォーカーを駆使してアドバンテージを稼ぎ、徹底的に相手の脅威へと対処していきます。デッキの大半がインスタント呪文で構成されているため相手の動きに応じた最適解をプレイしやすく、動かなければ《記憶の氾濫》でドローを進めたり《放浪皇》でトークンを並べるといった臨機応変なプレイが可能です。
《太陽降下》はクリーチャーデッキに対する最高の解答であると同時に、フィニッシャーまでこなす無駄のないカード。しかも破壊ではなく追放するため、《しつこい負け犬》や《苔森の戦慄騎士》、《敬虔な新米、デニック》を後腐れなく対処してくれます。ミッドレンジ相手には頼もしい1枚です。
そして、先ほど『第29回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権』の1日目が終了しました。Hareruya Prosではハビエル・ドミンゲス、マッティ・クイスマ、マルシオ・カルヴァリョ、平山 怜の4名が2日目進出を決めました!
特にプロツアー連続トップ8中のハビエル・ドミンゲス選手は5-2と安定した成績であり、全体の13位で初日を終えています。このまま勝ち続ければトップ8も十分狙えます。ぜひ応援よろしくお願いいたします!
明日は決勝トーナメント進出をかけての対戦となるため、激化必死!!気になる世界選手権2日目の配信開始時間は9月23日27時からです!パソコンや携帯電話の前で、ぜひご準備を!!(2日目の放送リンク)