世界選手権初日終了!
みなさんこんにちは。晴れる屋メディアチームです。
105名が参加した『第29回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権』も2日目が終了し、残るは決勝トーナメントのみとなりました。
決勝トーナメントは本日26時から始まるわけですが、先んじて2日目のメタゲームブレイクダウンをお届けしたいと思います。2日目に占有率が高かったのはどのアーキタイプだったのでしょうか?
『第29回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権』 メタゲームブレイクダウン
(編集者注:使用者2名以下のデッキは「その他」に計上しています。デッキ登録段階の集計のため、数字にズレがある可能性があります。ご了承ください。)
占有率を伸ばしたデッキたち
テンポを重視した赤単アグロやエスパーレジェンズ、アゾリウス兵士は軒並み割合を減らし、座席をほかのデッキへと譲っています。1日目と比較して占有率が高くなっていたのは6つのアーキタイプ。内訳はエスパーミッドレンジ、多色ランプ、ゴルガリミッドレンジ、エスパーコントロール、青単《アガサの魂の大釜》、ラクドスサクリファイスです。
エスパーミッドレンジが占める割合は3%、多色ランプにいたっては5%以上増加しています。必然的に2日目はこの両者と対峙する機会が増えるわけです。
かたやマナを伸ばしてビッグスペルを連打するランプ、かたや軽量クリーチャーと打ち消し呪文を併せ持ちバフをかけるビートダウンと性質の異なるデッキです。相反する両者を同時に対策するのは難しく、自分の戦略を堅持しながら要所要所をおさえるほかありません。戦略ではなく、カードの質で対抗するほかのミッドレンジはやや苦しい立ち位置となっています。
エスパーミッドレンジ視点
では、エスパーミッドレンジとランプ戦略はプロツアーのメタゲームにどう備えていたのでしょうか。
エスパーミッドレンジの強みは高速度のクロックと汎用性の高い妨害手段の両立にあります。特段サイズが優れてはいませんが、代名詞である《策謀の予見者、ラフィーン》のおかげで瞬く間に無視できないサイズへと変貌します。明確に制限時間を設定し、その刹那的な時を《強迫》や《かき消し》、《喉首狙い》などでサポートするのです。
これまで単体除去と太いクリーチャーでゲームをコントロールするミッドレンジを苦手としていましたが、新顔《忠義の徳目》はその相性すらも覆すほどです。仮にボードを処理されてしまったとしても《忠義の徳目》さえ設置してあれば、それ以後のクリーチャーすべてが脅威へと変貌します。
戦場を立て直す観点からは《策謀の予見者、ラフィーン》よりも優れたカードといえます。
対ランプ戦を考える上ではメインボードの《かき消し》に加えて、サイドボードには多数の妨害手段が採用されています。《否認》と《軽蔑的な一撃》、《強迫》と効果的なカードが揃っています。特に《軽蔑的な一撃》は《太陽降下》と《偉大なる統一者、アトラクサ》の両方を弾ける刺さるカードです。
全体除去の優先度は《太陽降下》が高く、《告別》はほとんどのデッキで不採用となっています。《婚礼の発表》に加えて《忠義の徳目》も残りやすくなっているのもこのデッキにとって追い風といえます。
多色ランプ視点
多色ランプの強みは汎用性の高いボードコントロール手段とパワーカードにあり、量ではなく質でもってゲームの掌握を目指します。「サイクリング」付きの3色土地や《群れの渡り》によってマナベースを整え、ときにマナ加速を挟みながら各色のカードへと繋げていきます。《力線の束縛》、《執念の徳目》、《太陽降下》と優秀な除去が揃っています。
赤単アグロのようにライフを詰めることに特化したデッキや1~2マナのクリーチャーをインスタントでバックアップするアゾリウス兵士を苦手としていました。ランプ戦略はタップイン土地が10~13枚程度と多く、マナベースを整えているにも時間がかかります。《力線の束縛》や《骨化》のために足場を整えている内に致命的なダメージを負ってしまうというのがよく見た光景でした。
《骨化》の代わりに採用されている《執念の徳目》はこれらの軽量アグロへの対抗策です。「出来事」はソーサリーではあるものの、おまけで速攻クリーチャーの攻撃1回分のライフがついてきます。プレイに際して下地作りの必要がないため使いやすく、かつアグロ性能も高いとあって優先されています。
これ1枚で相性差が覆るわけではありませんが、《怒りの大天使》までの延命手段を手に入れたこともあり、改善傾向にあるといえるでしょう。
デッキが4~5色のカードで構成されているため、メタゲームによってサイドボードは大きく変化します。対エスパーミッドレンジ戦を想定するならば1マナで《策謀の予見者、ラフィーン》まで対処できる《石術の連射》が最有力候補。兵士までまとめて対策できる優れものです。
しかし、本来「版図」要素でしかない4~5色目に位置する色のカード、それも序盤にプレイしたいカードを採用するとマナベースを圧迫するため、色事故が懸念されます。《執念の徳目》の採用でマナベースが黒寄りに構築されていることを考えると、汎用性の高い《切り崩し》や《喉首狙い》などの対策が無難といえます。
実際のところ、トップ8に残ったランプ戦略はどちらも《石術の連射》を不採用でした。エスパーミッドレンジよりも赤単アグロ対策を優先し、汎用的な単体除去やメインカラーである白の《エルズペスの強打》や《痛烈な一撃》を採用していました。
全体除去は《太陽降下》一択と思われてきましたが、エスパーミッドレンジが《婚礼の発表》に加えて《忠義の徳目》を採用しはじめたことで再考する必要がでてきました。汎用性の高い《力線の束縛》があるとはいえエンチャントの脅威が増えていることを考えると、《告別》は再検討すべき1枚です。
総括
テンポ戦略と入れ替わるように、エスパーミッドレンジと多色ランプの存在感が増した2日目となりました。テンポだけでは攻めきれず、かといって質の高いカードの集合体であるミッドレンジでもすべての脅威に対処するのは難しいと言わざるを得ません。
今のスタンダードには1枚のカードで破綻しない太い戦略を遂行しながら、要所で相手の呪文に対応できる打ち消し呪文や《力線の束縛》レベルの汎用性の高い干渉手段の両方が求められています。
今大会2日間の戦績優秀デッキリストの公開していますので、そちらもぜひご覧ください!
- 2023/9/24
- スタンダード 成績優秀デッキリスト
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