はじめに
みなさん、こんにちは。晴れる屋メディアチームです。
『第29回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権』の幕が閉じ、フランスのジャン=エマニュエル・ドゥプラ/Jean-Emmanuel Depraz選手の優勝となりました。
🌍🏆Congratulations to Jean-Emmanuel Depraz, winner of Magic World Championship XXIX!🏆🌍
— PlayMTG (@PlayMTG) September 24, 2023
With this win, Depraz realized his dream of adding an individual World Championship title to his 2018 World Magic Cup win.
Congratulations again, JED! pic.twitter.com/hDydXQyKh3
決勝トーナメントは構築戦のため、デッキ情報ばかりが話題に上がっていますが、ちょっとお待ちを。プロツアーは2つのフォーマットで争われる形式であり、ドラフトも実施されました。
本稿ではプロツアーで実施されたもうひとつのフォーマット、ドラフトに焦点をあてていきます。最多勝を獲得したのはどの色の組み合わせだったのでしょうか。
3勝デッキの色の組み合わせ
ここでは1日目と2日目のドラフトで3勝した15名のデッキの色の組み合わせをみていきます。2日目のドラフトで3勝したプレイヤーの内2名の色が不明なため、本来よりも少ない情報となりますが、ご了承ください。
デッキカラー | 使用者数 |
---|---|
2 | |
2 | |
1 | |
1 | |
1 | |
1 | |
1 | |
1 | |
1 | |
1 | |
1 | |
1 | |
合計 | 15 |
3勝したデッキが複数あったのは白青と黒赤の組み合わせのみです。
意外だったのは単色に加えて3色以上の多色デッキも3-0している点です。序盤の出遅れが敗因となる可能性が高く2色が推奨されていますが、マナサポートを有効活用した戦略も結果を残しています。
トップアーキタイプ
ここでは複数のプレイヤーが3勝をあげた白青と黒赤のキーカードをみていきます。
白青は《麻痺海溝のシャレー》に代表されるように、相手のクリーチャーをタップすることでボーナスを得られ、そのシナジーを活かして攻めていくアーキタイプです。ブロッカーをどかしながらボーナスを得られるため、ダメージレースを有利に進められます。
しかしながらキーカードが軒並み高レアリティであり、コモンから狙いずらいアーキタイプです。複数のアンコモンを要求されるため再現性は低く、難易度の高い戦略とされています。
黒赤は大量のネズミトークンを生成する横並び戦略です。コモンに《ネズミ捕りの見習い》や《エッジウォールの群れ》《大食の害獣》とトークン生成カードが多く、形になりやすいカラーです。おまけにフィニッシュ手段である《かじりつく大合唱》までコモンにあるため、再現性の高いアーキタイプとなります。
攻撃を通す《大群の笛吹き、トーテンタンズ》に各種除去呪文とサポートも充実。最多勝デッキも納得です。
しいて弱点をあげるならば、どちらも強いカラーゆえの競争率の高さがあげられます。誰しもが黒か赤のいずれかは触りたい、できれば黒赤をと考えているのですから。
Hareruya Prosのマルシオ・カルヴァリョ選手による環境解説記事もありますので、こちらもご覧ください。各色コモントップ5やオススメアーキタイプなど参考になること間違いなしです。
- 2023/9/20
- 『エルドレインの森』リミテッドについて知ろう!
- マルシオ・カルヴァリョ
多色化への抜け道
『エルドレインの森』ドラフトは2マナクリーチャーの価値が高く、「役割」やコンバットトリックなど攻撃をサポートする手段も多く、高速アーキタイプ環境です。そのため2色デッキが推奨されており、多色化は茨の道といわれています。
そんな環境にあって3色のデッキをドラフトしてキッチリと3勝をあげたプレイヤーがいました。ここではリード・デューク/Reid Duke選手とサイモン・ニールセン/Simon Nielsen選手のデッキから多色化のヒントを探っていきます。
リード・デューク:緑+青黒
サイモン・ニールセン:白緑+青
どちらのデッキも複数のマナサポートカードを採用しています。そのなかで両デッキに共通していたのは《根乗りのフォーン》と《案山子の導き手》の2枚です。
環境に照らし合わせると、攻防に使えるクリーチャーでありつつ色マナをサポートしてくれるカードがベストです。どちらのクリーチャーも重要なマナカーブとして位置づけられている2マナ域を埋めてくれます。《根乗りのフォーン》にいたってはマナ加速をメインとしながら、色マナサポートまで兼ね備えた2マナとは思えないデザインとなっています。タフネスは3と高めであり、《塔の点火》で落ちません。
従来の環境であれば《予言のプリズム》は多色戦略の強い味方ですが、序盤の攻防が重要な現環境においては評価を下げざるをえません。
これらに加え、デューク選手のデッキは緑のマナサポートを活かして強固なマナベースを構築しています。《僻境との対峙》と《僻境からの帰還》を複数枚採用しているのです。《僻境との対峙》は1マナと軽く、色事故防止に貢献してくれる縁の下の力持ち。デッキのマナベースは9枚の《森》と3枚の《僻境との対峙》によって成り立っています。
《僻境からの帰還》は単なるマナ加速ではなく、「協約」を持つ《小村の大食い》と素晴らしいシナジーを形成します。この2枚がそろえば、4ターン目にして6/6のファッティが手に入るわけですから。これら緑のマナサポートを採用した結果、土地総数を15枚まで切り詰めることに成功しています。
ドラフトラウンド無敗のデッキ
最後に2回のドラフトラウンドを無敗で切り抜けたプレイヤーのデッキリストを掲載いたします。見事6勝したのはイーライ・カシス/Eli Kassis選手ただひとりでした。
1日目ドラフト:黒赤
2日目ドラフト:黒赤
環境指針と相違なく、低マナ域の充実したドラフトデッキです。2マナ以下のクリーチャー数は1日目のデッキが9枚、2日目のデッキが6枚と十分な枚数確保されています。除去カードは4~6枚あり、攻守どちらにも対応できます。強デッキ+強者の組み合わせとくれば6勝も納得です。
共通コモンは《墳丘のいたずら好き》《自惚れた魔女》《乱入》の3種類。《墳丘のいたずら好き》は相手の2マナ域を止められる受けの強いクリーチャーであり、膠着すれば飛行を活かしてダメージを刻めるため、賞味期限の長いカードです。ほかのフェアリーとセットでの運用が理想的ですが、単体でも十分仕事をしてくれるいぶし銀的なクリーチャーなのです。
《自惚れた魔女》と《乱入》はどちらもカードの効果におまけして、「役割」トークンを付与してくれます。序盤の攻防に焦点がおかれているため、戦闘を有利に進められる「役割」は見た目以上に大きな意味をもちます。
《自惚れた魔女》は回避能力持ちであり、序盤の展開を受けてダメージレースを有利に推し進めます。《乱入》はボード処理にプラスしてバフをかけるため、4~5ターン目にプレイするとゲームの趨勢を決めてしまうほどのパワーカードです。
ただやみくもにデッキを軽くするのではなく、戦闘を有利に進めるための工夫があったのです。
それにしても、1日目のデッキレア入りすぎでは?
2マナ域から始まる高速環境と言われる『エルドレインの森』ドラフト。6-0のデッキリストは軽いクリーチャーを確保しながら、ダメージレースサポートする手段がいくつも盛り込まれていました。次回のドラフトの参考になれば幸いです。