《戦争の世継ぎ、ローアン》調整録とデッキ解説 ~統率者神に狙いを定めて~

中村 祐矢

はじめに

中村 祐矢

みなさん、はじめまして。先月開催された『第6期統率者神決定戦』で《戦争の世継ぎ、ローアン》を使用していたナカムラです。

予選を勝ち抜いたものの、神決定戦では良いところを見せられず敗退してしまいましたが、発売から日が経っていない統率者で派手な動きをするということでいってつさんに声をかけていただき、今回筆を執ることになりました。

この記事では統率者《戦争の世継ぎ、ローアン》がどのように生まれたのか、神決定戦までの調整録、デッキの解説やプレイ指針などをお届けします。少しの間お付き合いいただけますと幸いです。

能力のおさらいと考察

星の数ほどいる統率者のなかで《戦争の世継ぎ、ローアン》はどのような能力を持っているのか、まずはおさらいしていきましょう。

戦争の世継ぎ、ローアン

伝説のクリーチャー – 人間・ウィザード

威迫

T:このターン、あなたが黒や赤である呪文を唱えるためのコストはX少なくなる。Xは、このターンにあなたが失ったライフの合計に等しい。起動はソーサリーとしてのみ行う。

威迫……は統率者戦ではインクのシミに近いのでおいておきましょう。起動型能力がこのカードの本体で、不定ではありますが呪文のマナコストを大きく軽減することができます。

軽減量によっては色マナの数だけアクションすることが可能になる強烈なもので、昨今の悪さをするであろう能力には「1ターンに1回」という安全弁がかかってることが多いですが、めずらしく起動したターン中は継続する効果になります。

ただし、効果が強力な代わりに使用できる状況に制限がかけられており、ソーサリータイミングかつ召喚酔いが解けている場合にしか起動することができません。この制限は非常に大きな隙であり、高めのレベル帯で戦うにはどうにかして克服する必要があります。

効果が強力な分、起動に大きな隙がある能力ですが、どうにかして隙を埋めるられないか考えた結果、思いついたのは以下の3点です。

1. 速攻を付与する。

2. 優先権を挟まずにライフを支払う。

3. 能力の起動をスタックに乗せてからインスタントタイミングでライフを支払う。

このなかで[1]は専用にカードを用意する必要があるため優先度を下げ、[2]と[3]をベースにデッキのギミックを考えていきました。

その結果、白羽の矢が立ったのが土地です。自分のライフを削るカードをスペルで取る必要がなく、設置~起動まで優先権を発生させないため、自然に[2]または[3]を満たせます。

上記から「早い段階で土地から自傷ダメージを3~4点受け、ドローはスペル側で何とかする」という内容が固まり、その方向性に沿ってたたき台のリストを作成していきました。

デッキリストの変遷

本デッキですが、作成当初から挑戦者決定戦に持ち込むことを想定していたわけではありません。最初は”Challenge”帯で結構遊べそうかなくらいの認識からのスタートでした。

“Challenge”などテーブル分けについてはこちらの記事をご覧ください。

1. たたき台の作成

カードの発表があった際のファーストインプレッションは「面白いことができそう」でした。

語りの神、ビルギ

赤+マナコストの軽減といえば、レガシーの赤単ストームや統率者の《語りの神、ビルギ》が想起されます。これにANTのようなマナ加速とドロー・サーチによるチェインを組み合わせれば面白い動きができそうだなと思い、たたき台を作成しました。

また弱点が分かりやすく、周りが慣れてきたら統率者が優先的に除去されそうとも思っていたので、この段階では「さっさと組んで除去が優先的に飛んでくるようになるまで遊ぼうかな」くらいの感覚でした。

これが『エルドレインの森』発売前の8月18日ごろのことです。

ゾーン

ある程度リストに遊びがあることを許容されるレベル帯での使用を考えていたため、《ゾーン》のようにかなり限定的なシナジーに寄せたものなど、普段は絶対に使わないようなカードもお試しで採用していました。

たたき台の完成後、ちょうどよく行われていたのが前回の『コマンダーサミット(8/20)』です。イベント自体には残念ながら別件があり出れませんでしたが、イベント後に知り合いを捕まえてフリープレイを行い、その際に面白い動きができることと、ある程度戦えそうという手ごたえを感じることができました。

2. 《ドラゴンの嵐》との邂逅

たたき台でテストプレイもでき、のんびりデッキの方向性の検討やデッキに合わないカードの取捨選択を行っていたある日の夜、Discordサーバー「飲酒EDH」で『エルドレインの森』発売後について数名で雑談をしていました。

そのなかで《戦争の世継ぎ、ローアン》の話題になり、面白いし”Challenge”やワンチャンス”The Game”でも戦えるレベルまで持っていけるかも?としてたたき台のリストを共有したところ、「《ドラゴンの嵐》とか面白そうじゃないですか?」との意見が出てきました。

ドラゴンの嵐

提案してきたのは統率者戦をよく遊ぶ友人であり、『第6期統率者挑戦者決定戦』の6位通過を含め、複数回の予選抜けをしている強豪マツモトさんです。

最初こそ懐疑的でしたが、以下の要素からデッキに噛み合いそうなのでテストする価値はあると思い、一旦お試しで採用してみることにしました。

・追加で採用するものも含めドラゴンがコンボ専用ではなく、素キャストに最低限のバリューがある。

・チェインコンボ一辺倒だとスタックスから脱出できなかったり盤面で戦えないパターンがあるので、太いクリーチャーを何体か採用しようと考えていた。

・大ぶりな呪文だがカウンターに強く、ゲームを終わらせられる性能がある。

採用後に1人回しを繰り返し、“The Game”でもかなり戦えそうという感触を覚えました。あわせて『第6期統率者神挑戦者決定戦』に持ち込む可能性が出てきたため、MoxFieldのリストを非公開にして情報の秘匿を始めたのが9月3日の出来事/Adventureです。

3. 闇の組織、統計会

1人回しで得た”The Game”でも戦える感触があっているかを確認する場を探していたところ、マツモトさんから“統計会”という闇の組織EDHバーサーカーの集いを紹介されました(集まれる人数の関係でその日に来れる8人目を探していたらしいです)。

日によって来る人は異なるらしいですが、『第6期統率者神挑戦者決定戦』で予選を抜けたタカハシさん・キドグチさん・マルヤマさん・マツモトさん・タナカ ショウマさんなど実力が確かなプレイヤーが集まる会で、コントロール色が強いデッキを好む人(精一杯のマイルドな表現)が多いという印象です。

デッキの強度を確認するのにちょうどいい機会だったので、マツモトさんの誘いを受けて《ドラゴンの嵐》を採用した《戦争の世継ぎ、ローアン》を持ち込んでみました。

情報アドバンテージによるわからん殺しもあり、上記のようなメンバーであるにもかかわらず、勝率25%が基本のゲームで30%以上を取ることができました。これにより「デッキの強度が十分にあること」「想定以上に青いデッキに強いこと」を確信するに至ったのです。

これが挑戦者決定戦の約1か月前、9月23日の出来事/Adventureです。

4. 最終調整

“統計会”参加後から挑戦者決定戦までの約1か月はデッキのブラッシュアップに励みます。

このあたりから私とマツモトさんの共通の知人であり、すぐさま自傷用の土地をFoilでそろえるほど《戦争の世継ぎ、ローアン》のリストに惚れ込んだ狂人Tさんも含めた3人で調整を行っていました(Tさんは住まいが東京近辺ではないため、挑戦者決定戦には出場していません)。

吸心紅蓮術師の道

調整とはいっても根を詰めるようなガチガチのものでも、知り合いだけを集めて卓を立てるというものでもなく、不定期で雑談をしながら《吸心》《紅蓮術師の道》といった、通常では見向きもしないようなカードについてやいのやいの言うだけではありましたが……。

また、対人戦での感触を確認するため立川のカードショップサトPinにも2回ほど持ちこみ、デッキ全体のバランスや実戦でのカードの評価を確認していました。

そんなこんなで挑戦者決定戦というフィールドに向けた取捨選択を行い、デッキリストの完成です。

デッキの構成

挑戦者決定戦で使用したリストですが、チェインコンボなので同じ役割のカードが多く、ざっくり3つ+その他に分類できます。

ドローカード

突然ですがMTGにおいてもっとも有名でもっとも強いドローカードは何でしょうか?

Ancestral Recall

そう、《Ancestral Recall》です。《Contract from Below》のようなごく一部の例外を除き、わずか1マナで2枚以上のリソースを獲得するカードは、MTG30年の歴史においてもほぼ存在しません。

野望の代償大勝ち見事な修理Wheel of Fortune

そんなカードが《戦争の世継ぎ、ローアン》ならなんと16枚も入れることができるのです!ローアンで3マナ以上軽減すれば、《野望の代償》は1マナ3ドローですし、《大勝ち》も確定で《水蓮の花びら》が2枚付いてくるのでリソースを2枚得ている計算になります。

《見事な修理》は衝動的ドロー3枚と《水蓮の花びら》3枚分なので《Ancestral Recall》2枚分のようなものですし、《Wheel of Fortune》は1マナ7枚ドローと実質《Contract from Below》といっても過言ではありません。

《Ancestral Recall》未満のカードも含めれば実に18枚のドローカードが入っており、カウンターを考慮しなければ各種サーチカードと合わせてチェインが途切れることはほぼなく、フィニッシュまで持っていくことができます。

マナ加速

ドローカードと同じかそれ以上に入っているのがマナ加速です。2ターン目に《戦争の世継ぎ、ローアン》を着地させるほか、チェインを続けるには色マナを増やす必要があるので、統率者専用のものを含めて26枚がマナ加速となっています(※一部はドローカードとしてもカウントしています)。

ジェスカの意志煮えたぎる歌________ Goblin

代表的なマナ加速といえば《暗黒の儀式》があげられますが、《戦争の世継ぎ、ローアン》の能力が解決した後であれば《ジェスカの意志》《煮えたぎる歌》《________ Goblin》などは《暗黒の儀式》を大幅に超える効率で色マナを捻出してくれます。

自傷カード

マナの合流点古えの墳墓四肢切断魔力の墓所

《戦争の世継ぎ、ローアン》の能力のためにダメージを受ける/ライフを支払うことができるカードで、ある意味このデッキにおけるガソリンの役割です。この枠にカウントするカードはキャストするタイミングを考慮すると合計で28枚の採用になります。

能力の起動後にキャストするドローカード(《野望の代償》など)や起動前のターンでキャストしていることが多い教示者(《吸血の教示者》《伝国の玉璽》)はカウントしていません。

28枚中23枚が土地、3枚が除去、2枚がマナ加速と兼任しているので、《血の執行司祭》のような自傷するための専用カードに枠を割いていないことが、《ドラゴンの嵐》の採用に次ぐ本リストの特徴になります。

色あせた城塞

特に繰り返し3点ライフを支払うことができ、好きな色マナが生み出せる《色あせた城塞》最強の自傷カードです。1ターン目の《吸血の教示者》《色あせた城塞》が真面目にサーチ候補に挙がるのはローアンくらいではないでしょうか。

その他

吸血の教示者霊気貯蔵器死の国からの脱出洞窟に宝蓄えしドラゴン

サーチ、フィニッシュ、墓地利用、ドラゴンなど、上記に当てはまらないカードたちです。細かく分けすぎても長くなってしまうので、今回はまとめてその他に分類しています。

炎の中の過去

とはいえサーチカードは上記のどれにでも変換できますし、墓地利用も一度使ったドローやマナ加速などを再利用してさらにチェインを繋げることができます。特に《炎の中の過去》が強力で、自身が「フラッシュバック」を持っているためカウンターに強く、優先してサーチしてくる対象になります。

黄金架のドラゴン峰の恐怖山背骨のドラゴン
溜め込む親玉洞窟に宝蓄えしドラゴン

ドラゴンたちも《ドラゴンの嵐》専用というわけではなく《戦争の世継ぎ、ローアン》の能力で現実的にキャストできる範囲であり、高いスタッツと単体で強い能力を持ったものを厳選しているので、本当に用途が限定されているカードはほとんどありません。

『第6期統率者神挑戦者決定戦』に向けたアプローチ

挑戦者決定戦で《戦争の世継ぎ、ローアン》を持ち込むにあたり、デッキリストだけではなくデッキのギミックやローアンを使用するという点まで、すべての情報を隠す戦略を取ってみました。

普段は調整段階でどうしても情報がある程度広まってしまうので、意識的に隠すことはあまりやらないのですが、今回は以下の通り複数の条件が整っていたため試してみた次第です。

1. “The Game”で戦えるだけのポテンシャルがある

戦争の世継ぎ、ローアン

最低限の条件として、挑戦者決定戦および神決定戦で勝ち抜けるだけのポテンシャルを持つデッキであることが挙げられます。

こちらは友人とのフリープレイにて早い段階で高いポテンシャルを持っていることを体感できており、情報の秘匿と合わせて挑戦者決定戦ではかなり良い立ち位置につけそうという感覚がありました。

2. 世間の認識と実際のデッキパワーに差異がある

《戦争の世継ぎ、ローアン》自体はカードが発表された当初から強そうに見える能力としてある程度注目されていたと思います。

ですが、通常の2人構築と異なりMTGアリーナやMOのようなデッキの研究を効率よくできる土壌がないこともあり、『エルドレインの森』の発売(9/8)から挑戦者決定戦(10/22)までの1か月半でデッキリストを仕上げてこれるプレイヤーはほぼいないだろうと思っていました。

背信のオーガ血の執行司祭暗黒への突入血の壁

また、Web上で見かけるアイデアも《背信のオーガ》《血の執行司祭》《暗黒への突入》《血の壁》などで大量のライフを支払った後にX呪文を唱えるという、隙が大きく”The Game”帯での運用は難しいものがほとんどだったことも追い風になります。

上記より自身で情報を公開しなければ、仕上がったデッキリストや「3マナ軽減で起動したらほぼ勝利する」という脅威度の情報は出回らないであろうということが予想でき、対戦相手の対応ミスによる勝利、いわゆる「わからん殺し」を狙いやすいと判断しました。

3. デッキの調整の9割が1人回しで完結する

挑戦者決定戦で使用したリストは攻めっ気の強いチェインコンボのため、実際のゲームでもこちらの行動を押しつけ続ける形になります。

死の国からの脱出炎の中の過去過去へ帰還せよ

デッキの強度確認としての対人戦は必要でしたが、相手の行動に対するリアクションを考える余地が少ないため、デッキの回し方やチェインさせるカードの取捨選択はほぼ1人回しで完結します。

そのため、「情報を秘匿しながらデッキの完成度を上げる」ことが可能な統率者だったことも大きいです。

リストを詰める際に実際の対人戦での感覚が必要になると、どうしても完成度と情報流出を天秤にかける形になってしまいます。

4.事前のヘイトが勝率に直結してしまう

《戦争の世継ぎ、ローアン》のマナコスト軽減ありきでデッキを組んでいる都合上、除去を撃たれるときびしい戦いになってしまいます。

《ドラゴンの嵐》に目が行きがちですが、本当に隠したかったのは《戦争の世継ぎ、ローアン》の能力は一度起動させたらゲームエンドまで持っていく性能があるという点です。

巧みな隠蔽

そのため、情報を隠し「起動させたらやばい」という話が流れないようにすることで、本戦で除去キープされたり過剰に除去を撃たれないよう大会前の段階からヘイトコントロールを試みました。

プレイの指針

『第6期統率者神決定戦』で使用したリストについてはまっすぐ行って右ストレートを撃つような構成なので、テクニカルなことはあまりないです。2ターン目までに《戦争の世継ぎ、ローアン》をキャストして、次のターンに能力起動からドローカードたちを叩きつけていきましょう。

……というだけだと省略しすぎなので、簡単なキープ基準やフィニッシュルートを以下に記載します。

キープ基準

上述した通り、2ターン目までに《戦争の世継ぎ、ローアン》をキャストし、次のターンに能力を起動して仕掛けられる手札が基準になります。

水蓮の花びら野望の代償
Badlands真鍮の都黒門

具体例を示すと「《Badlands》《真鍮の都》《黒門》《水蓮の花びら》《野望の代償》/その他」のような手札ですね。上記であれば2ターン目に《Badlands》《真鍮の都》《水蓮の花びら》からローアンをキャストし、3ターン目に《黒門》アンタップインと《真鍮の都》の1点で計4マナ軽減からドローカードをキャストできます。

デッキとしては《戦争の世継ぎ、ローアン》を起動しなければ話が始まらないですし、速攻を付与するカードも採用していないので、ローアンが出る手札が来るまでマリガンしましょう。

初手にドローやサーチがなくても、ローアンが出て3マナ以上軽減できれば、通常ドローで1枚引いてくれば何とかなることが多いので、ローアンのキャストが3ターン目になるくらいなら、積極的にマリガンしたほうが勝率が高くなりやすいです。

フィニッシュルート

本リストのフィニッシュは大まかに3つに分かれます。

1. 《霊気貯蔵器》

霊気貯蔵器

ドローとマナ加速を繰り返し唱えていると《霊気貯蔵器》で大量にライフゲインができますので、必要分ライフを確保してから各プレイヤーに50点ずつ打ち込んで終わらせます。ほかのルートと異なり《一つの指輪》でプロテクションを得られていても巣穴から出てくるまで待てるので、非常にわかりやすいフィニッシュルートになります。

2. 無限《ふにゃふにゃ》

語りの神、ビルギふにゃふにゃ嵐窯の芸術家

《戦争の世継ぎ、ローアン》の能力で4マナ以上軽減されている状態で《語りの神、ビルギ》《嵐窯の芸術家》が場にいると、無限に《ふにゃふにゃ》をキャストできるようになり無限ダメージです。

《ふにゃふにゃ》自体が主に《オークの弓使い》に対する除去として機能するため、フィニッシュ専用のカードではなく見た目よりもいぶし銀な性能をしています。

Saw in Half

《戦争の世継ぎ、ローアン》の軽減量が足りない場合は、必要な分だけ《嵐窯の芸術家》《Saw in Half》で増やすことで無限キャストに持っていくことができます。

3. 《峰の恐怖》によるバーンダメージ

峰の恐怖

諸事情により[1][2]のルートが使えない場合は《峰の恐怖》に頼ることになります。《峰の恐怖》がいる状態で《死の国からの脱出》《Burnt Offering》をそろえるなど、クリーチャーを繰り返し場に出せるようにしたら誘発ダメージを対戦相手に飛ばし続けましょう。《Saw in Half》《峰の恐怖》を増やしていけばおおむね削りきることができるでしょう。

ex.《ドラゴンの嵐》

ドラゴンの嵐

《ドラゴンの嵐》でのルートは以下の通りです。基本的には大量にリソースを獲得し、上記1~3のどれかに繋ぐ形になります。

ドラゴンが1体しか出ない場合

溜め込む親玉

《溜め込む親玉》をサーチしましょう。《戦争の世継ぎ、ローアン》で2マナ以上軽減できている状態であれば、浮きマナがない状態でも以下の手順でフィニッシュへ向かえます。

溜め込む親玉Saw in HalfBurnt Offering深淵への覗き込み

1. 《溜め込む親玉》《Saw in Half》をサーチ。

2. 《溜め込む親玉》を対象に《Saw in Half》を「召集」で唱える。

3. 場に出た2体のコピーから《Burnt Offering》《深淵への覗き込み》をサーチ。

4. 《Burnt Offering》でマナを生み出し、《深淵への覗き込み》を4マナ浮いた状態で唱える。

《戦争の世継ぎ、ローアン》の軽減がない状態でも、2マナ浮き+ライフが18点以上残っていれば以下の手順でいけます。

Saw in HalfBurnt Offering再活性約束の終焉

1. 《溜め込む親玉》《Saw in Half》をサーチ。(浮き2マナ)

2. 《溜め込む親玉》を対象に《Saw in Half》を「召集」込みで唱える。(浮き0マナ)

3. 場に出た2体のコピーから《Burnt Offering》《再活性》をサーチ。(浮き0マナ)

4. 「召集」した《再活性》《溜め込む親玉》をリアニメイトし、《約束の終焉》をサーチ。(浮き0マナ)

5. リアニメイトした《溜め込む親玉》をコストに《Burnt Offering》を「召集」で唱える。(浮き8マナ)

6. 「召集」込みX=1の《約束の終焉》《Burnt Offering》《再活性》を唱える。(浮き14マナ)

これで14マナと好きなカードを1枚サーチできるので、8マナ浮きで《深淵への覗き込み》をキャストするなりしてフィニッシュに向かいましょう。

ドラゴンを2体サーチできる場合

溜め込む親玉黄金架のドラゴン洞窟に宝蓄えしドラゴン

基本的には《溜め込む親玉》《黄金架のドラゴン》or《洞窟に宝蓄えしドラゴン》が丸いかなと思います。

《溜め込む親玉》が手札にいる場合や、親玉からサーチしてきたものがカウンターされそうなときは《峰の恐怖》《山背骨のドラゴン》で7枚ドローしてもいいですね。

ドラゴンを3体以上サーチできる場合

峰の恐怖溜め込む親玉山背骨のドラゴン

基本は《峰の恐怖》《溜め込む親玉》《山背骨のドラゴン》1枚サーチ+14点バーン+14枚ドローすれば大体勝てます。マナが足りない場合は親玉ではなく《黄金架のドラゴン》or《洞窟に宝蓄えしドラゴン》にすると良いでしょう。

4体以上の場合は《峰の恐怖》《山背骨のドラゴン》の間に好きな順番でほかのドラゴンを挟みましょう。

《戦争の世継ぎ、ローアン》の能力起動時の小技

血染めのぬかるみ四肢切断殺し

フェッチランドを起動する場合や《四肢切断》《殺し》などのインスタントでライフを支払う場合、必ずローアンの起動をスタックに乗せてから行いましょう。

《戦争の世継ぎ、ローアン》は起動がソーサリータイミングに限定されているので、先にフェッチランドの起動などをしてしまうと除去できる隙を作ってしまいます。

一度起動さえしてしまえば、《もみ消し》のような特定のカード以外では対応されないので、ここは癖づけておくと良いです。

デッキ相性

得意なデッキ

洞窟に宝蓄えしドラゴン星界の騙し屋、ティボルト希望の標、チャンドラ

デッキの中身が金太郎飴に近いためカウンターされて致命的な呪文がなく、各ドラゴンや《星界の騙し屋、ティボルト》《希望の標、チャンドラ》などの太いカードが複数採用されていることもあり、カウンターが濃い青いデッキに強く出ることができます。

カウンターに対する耐性が非常に高く、1マナ立っているだけの《リスティックの研究》《神秘的負荷》であればすべて引かせたうえでも勝ち切れるほどの貫通力を有します。

苦手なデッキ

ロフガフフの息子、ログラクフ愚者滅ぼし、テヴェシュ・ザット

除去が濃いデッキ攻めっ気の強いオールイン系のデッキ相手は厳しい戦いを強いられます。

《戦争の世継ぎ、ローアン》の起動が前提のデッキですが、本リストでは速攻付与はなくローアン自身の除去体制も低いため、除去を撃たれるたびに勝利が遠くなってしまいます。

また、相手の仕掛けに対するリアクションカードが皆無であり、平均キルターンも3とAll-In系にしては遅めのため、2ターン目に仕掛けてくるデッキの相手は同卓した人の妨害任せになりがちです。

今後の展望

神決定戦後ですが、いわゆる有名税が発生し除去が飛んでくる機会が激増するでしょう。また、デッキのギミックも割れたので《耳の痛い静寂》のようなスタックスでキープする人も出てくると予想されます。

そんななかで勝つために必要になってくるのは「速攻付与」「リカバリー能力の向上」「スタックスへの対抗手段」の3点と考えています。

速攻付与

山賊の頭の間死後の一突き

除去が飛んでくるなら速攻を付与することが一つの対応策として考えられます。ただ、《稲妻のすね当て》のような後付けの速攻では装備のタイミングで除去されてしまう可能性があるので、できれば場に出たときには速攻を持っている状態にあるのが望ましいです。そのため、この枠には《山賊の頭の間》《死後の一突き》などが考えられます。

特に《山賊の頭の間》はタップインではあるものの、自傷と速攻付与の両方を土地枠でこなせるため、調整の過程で一度は抜けましたが、情報が出回った今後については採用したほうが良さそうと感じています。

リカバリー能力の向上

挑戦者決定戦のリストでは2ターン目に《戦争の世継ぎ、ローアン》キャスト、3ターン目に3マナ以上軽減でチェインをスタートさせることに絞っていました。

しかし、今後は1回は除去される想定で考えていたほうが良いでしょう。そのため、2回3回とローアンをキャストする必要が出てくることが予想されます。複数回キャストするためにはリカバリー能力を向上させねばならず、特に瞬間的な加速に寄っているマナベースを少し考え直す必要がありそうです。

耽溺のタリスマン一つの指輪

具体的な案としては《耽溺のタリスマン》といった2マナのマナアーティファクトを採用した継続的なマナ基盤の増量になります。併せて《一つの指輪》のようにターンをまたぐが大量にドローできる手段を再度入れてもいいかもしれません。

完全化の杖

ライフの払い過ぎには注意する必要がありますが、ドローとマナ加速を使い分けられ自傷もできる《完全化の杖》も採用の候補に挙がってくることでしょう。

スタックスへの対抗手段

こちらの行動に制限をかけてくるパーマネントへの対応方法も頭の片隅で考えておく必要があります。クリーチャーであれば除去を撃てばよいのですが、エンチャントやアーティファクトに触るのは統率者の色やデッキの構造上結構大変です。

耳の痛い静寂法の定め

チェインに寄与しない除去専用カードに枠を割かなければならないですし、エンチャントに触れる強いカードが存在しない色なので、特に《耳の痛い静寂》《法の定め》相手は難儀します。

総魔長、モータリオン龍王コラガン帰ってきた刃の翼変わり身の狂戦士

ただ、上記のようなパーマネントを置かれた場合は卓全体のゲーム展開が遅くなるので、設置してきた相手をドラゴン軍団でプレイヤーごと除去するのが良いでしょう。すでに大きいクロックとして各ドラゴンが採用されていますが、《総魔長、モータリオン》あたりもデッキとシナジーがありクロックが増えるのが速いので可能性を感じています。

ほかにも《龍王コラガン》を採用してクリーチャーのマナ加速からの《ドラゴンの嵐》の破壊力を上げるプランや、コンボ専用に《帰ってきた刃の翼》《変わり身の狂戦士》を採用し、スタックスの上から無限ループを狙うプランも面白いかもしれません。

おまけ

おまけとして、相性が良さそうなのに調整段階で抜けていったカードたちもいくつか簡単に紹介します。統率者神決定戦後の今であれば入れたほうが良さそうなカードも一部含まれています。

《山賊の頭の間》

山賊の頭の間

初期のたたき台では採用されていましたが、統率者神に向けた調整段階で抜けていきました。

抜けた理由ですが、統率者神決定戦のリストは2ターン目《戦争の世継ぎ、ローアン》キャスト→3ターン目仕掛けに特化させたものだからです。タップインしても速攻を持たせられるので仕掛けるターンは変わらないように見えますが、使える色マナの数が大きく異なるので手札の要求値が跳ね上がります。

また、情報を秘匿していたこともあり色マナが不自由な状態からチェインをスタートさせるよりは、土地2枚と《戦争の世継ぎ、ローアン》しかない弱そうな盤面からでも、余裕をもって奇襲気味に仕掛けたほうが勝ちやすいため、特に予選の段階では速攻付与の必要はあまりないと判断して抜けていきました。

上記の展望でも記載したように、統率者神決定戦が終わり情報が出回った今であれば採用したほうが良いと思います。

《背信のオーガ》

背信のオーガ

見た目は相性が良さそうに見えますが、かなり早い段階で抜けていったカードです。抜けた理由は《背信のオーガ》《戦争の世継ぎ、ローアン》の能力を起動したいタイミングの噛み合わせが悪いことにつきます。

《背信のオーガ》はできればローアンの能力で軽減した状態でキャストしたいカードですが、そうするとただ3点払って赤マナが出せるだけの置物にしかならないので見た目ほど強くありません。

《背信のオーガ》を先置きすればいいという意見もあるかと思いますが、その場合はローアンの召喚酔いが足を引っ張ります。

《戦争の世継ぎ、ローアン》《背信のオーガ》なんてそろえてしまったら、だれの目から見てもオープンリーチです。見逃してもらえるはずもなく、召喚酔いが解けるまでの1ターンで必ずどちらかは除去されてしまうでしょう。情報を隠しヘイトを上げないようにした意味もなくなってしまいます。

統率者神決定戦が終わった後の環境でも、採用にはかなり否定的な1枚です。

《一つの指輪》

一つの指輪

エターナル環境でなにかと話題に挙げられるスーパードローカードですが、最終調整の段階で抜けていきました。理由は4マナ1ドローにしかならない瞬間が非常に多いからです。

統率者神決定戦では完全にゲームの焦点を3ターン目の能力起動から仕掛けることに当てていたので、アンタップ手段もないこのデッキでは貴重な色マナを消費して1ドローしかできない置物と化していました。

ただ展望の欄で記載したように、統率者神決定戦後でローアンを除去される前提であれば強力なリカバリー手段になりうるため、今後採用される可能性はあります。

《完全化の杖》

完全化の杖

抜けた理由は《一つの指輪》とほぼ同じで、3ターン目にゲームの焦点を当てた際に設置するタイミングが存在しないためです。マナ加速・ドロー・自傷と、カードの性能とデッキは噛み合ってはいるのですが……。

また、こちらも情報が出回った今であれば、《一つの指輪》と同じく再度採用して良いと思います。

おわりに

ここまでお読みいただきありがとうございます。

今回はチェインコンボに寄せた調整でしたが、ほかにもドラゴンを増やしたりデーモンに寄せたりと、ほかのデッキでは使いにくい重い呪文でも検討の余地があるのが《戦争の世継ぎ、ローアン》の良いところです。

ぜひみなさんも面白い・強そうと思ったアイディアは積極的に試してみてはいかがでしょうか。もしかしたらとんでもない化け方をするかもしれませんよ?

この記事内で掲載されたカード

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中村 祐矢 日本レガシー選手権2023横浜・千葉 2連覇。 統率者戦では『第4期統率者神』トップ12・『第6期統率者神』トップ4に入賞のほか、《ロフガフフの息子、ログラクフ》&《愚者滅ぼし、テヴェシュ・ザット》の開発など。 クロックパーミッションやビートダウン+コンボといった攻めっ気の強いデッキタイプが好み。 中村 祐矢の記事はこちら