ジャッジと一緒にルールを学ぼう! ~『カルロフ邸殺人事件』編~

晴れる屋メディアチーム

はじめに

みなさんこんにちは、晴れる屋メディアチーム所属・認定レベル1ジャッジの島田と申します。

ジャッジと一緒にルールを学ぼう!』では、ゲームでよく使われているカードやジャッジをしていてよく聞かれるルール”のみ”に焦点を絞り、回ごとのテーマに合わせて例を挙げ・極力わかりやすく説明していきたいと思います。

この記事が少しでもみなさんのルール理解に繋がり、ひいてはマジックの楽しさを増すことに繋がれば幸いです。

※2024/1/29時点のマジック総合ルールに基づいています。特に新カードに関するルールのため、今後のルール改定などで内容に齟齬が発生する可能性があることをご了承ください。
※文章の都合上、表現を簡略化・省略している場合があります。
※本記事は複数のジャッジが監修していますが、誤りや疑問点を見つけましたら遠慮なくお問い合わせページまでご指摘ください。

今回のテーマ

オレリアの立証者命狙いの逃亡者、エトラータ真紅の鼓動の事件
蜘蛛網の頭、アイゾーニ正義の幽霊、アグルス・コス

今回のテーマは、『カルロフ邸殺人事件』の新要素「変装」「偽装」「事件」「証拠収集」「容疑」です。

新しいカードのルールなので、詳細な解説というよりはプレリリース前の予習として軽くイメージをつかむための軽い記事としてご覧ください。

それでは始めましょう。

今「変装」したやつがこの部屋を出て行かなかったか?

逃走する暗号破り

変装/Disguise」はクリーチャー(や、まれにそのほかのパーマネント)が持つ能力で、そのカードを裏向きで唱えてあとから表にするという選択肢を与える能力です。過去の能力を参照すると「変異」に追加で「護法(2)」がついたもの、と説明すると早いでしょうか。

あなたが「変装」を持っているカードを唱えようと思ったときは、通常通り唱える選択のほかに「3を支払い、裏向きの2/2クリーチャーとして唱える」という第2の選択肢を選ぶことができます。そうするとそのカードは裏向きで戦場に出ます。

「変装」によって出た裏向きのカードは、以下のような特性を持ちます。

■「変装」の特性

・2/2のクリーチャー
・護法2
・表面に書いてある能力は「変装」以外何も持っていない
・無色
・名前、マナコスト、サブタイプ(「兵士」など)を持たない
・マナ総量0(※唱えるときに3マナ支払っていますが、これは代替コストなのでマナ総量に影響しません)
・優先権があるときならいつでも、「変装」コストを支払って表向きにすることができる

プレイヤーは、いつでも自分が「変装」で出した裏向きのカードの中身を見ることができます。一方、相手は中身を知ることができません。

そして裏向きのカードの「変装」コストを支払うと、そのカードはその瞬間に表向きになります。この行動にスタックで別の行動をすることはできません。

表向きになったカードは、その瞬間に表面の特性を取り戻します。また、いくつかのカードは表向きになったときに誘発する能力を持ちます(これにはスタックできます)。

密偵ワニエルフ裂け目破りのヘリオン

相手は裏向きのカードがいきなり「変装」を解除して表向きになり、サイズが大きくなったり能力を持ったりすることを警戒しながら行動することになります。これが「変装」の大きな強みです。

ややこしいのですが、この裏向きの状態は両面カードの「第一面/第二面」とは全く関係がありません。両面カードが「変身」して別の面になっても、それは「表向き/裏向き」になるのとは別の現象です。同様に、裏向きのカードを表向きにしてもそれは「変身」していません。

未来予知

「変装」持ちのカードを裏向きのクリーチャーとして唱えられるのは、あなたがクリーチャーを唱えられるタイミング(普通はメインフェイズ)だけです。もし《未来予知》などなんらかの効果で許可されていれば、手札からだけではなくライブラリーや墓地や追放領域から裏向きで唱えることも可能です。墓地などの公開領域から唱えたら中身はバレバレですが、それでも一応「変装」しています。

イクシドロン

一度表向きになったら、そこからは通常のパーマネントと同様です。《イクシドロン》などの特別な効果があれば再度裏向きにできますが、かなりレアな状況でしょう。

カードが表向きになったり裏向きになっても、「タップ/アンタップ」などの状態や《巨大化》などでかかっている効果はそのままです。またずっと戦場にあるままなので、召喚酔いもしないし「戦場に出たとき」などの効果も誘発しません。

付いているオーラや装備品も基本的にそのままですし、ブロックされている状態で表向きになって回避能力を持ったとしてもその戦闘ではブロックされたままです。

隠し武器

少数ですが、《隠し武器》など「変装」を持ったクリーチャー以外のパーマネントも存在します。その場合、表向きになるとクリーチャーではなくなるので装備品やクリーチャーにしか付けられないオーラは外れます。また、「クリーチャー1体を対象とする。それを破壊する」のように表面を対象に取れない呪文を打たれていたら、それは対象不適正で効果を発揮しません。

裏向きのカードが除去や打ち消しなどでスタックや戦場から離れて墓地や手札などに行くときは、必ず表面を公開する必要があります。もし本当は裏向きで出せないカードが混じっていたら大変ですからね。

また、裏向きのカードはどんな効果で・どういう順番で出したかがわかるようにする必要があります。たくさん裏向きのカードを出す予定があるときは、ダイスや付箋で目印を付けられるようにしておきましょう。

裏向きのカードは謎と駆け引きに満ちており、またルールもそれなりに複雑です。すでに「変異」などで慣れているぜ!という方も、改めて詳細を確認しておくとプレリリースなどのイベントがスムーズに進められると思います。

この街の裏側は「偽装」された脅威に溢れている

謎めいた外套

偽装/Cloak」はライブラリーの上からカードを裏向きで戦場に出すキーワード処理です。これも過去の能力「予示」に追加で「護法2」がついたアップデート版といえるでしょう。

「偽装」は「変装」と異なり、クリーチャーが持っている能力ではなく何かの効果の一部として発生します。「偽装」を行うと、ライブラリーの一番上にあるカードは護法2を持った2/2のクリーチャーとして戦場に出ます。

このクリーチャーの細かい特性やほかのルールはほぼ「変装」と同様ですが、いくつかの違いがあります。

「偽装」されたカードは、その表面がクリーチャー・カードならマナコストを支払って表向きにすることができます。これは「変装」を表にするときと同様、コストが払えて優先権があればいつでも可能です。

細かい違いですが、「偽装」をこの方法で表向きにする行為は「能力」ではありません。なので、そのクリーチャーが能力を失っていても表向きにできます。一方、「変装」の場合「変装」コストを支払って表向きにするのは「変装」能力です。能力が失われたら、表向きにすることもできません。

激しい叱責ティシャーナの潮縛り

《激しい叱責》《ティシャーナの潮縛り》がいる状況では、その違いが重要になってくる…かもしれません。

「偽装」したカードが「変装」も持っていたら、「マナコストを払って表にする」「「変装」コストを払って表にする」のどちらも選択できます。どちらで表にした場合でも、表向きになったことに変わりはありません。

表向きにはできませんが、パーマネントだけでなくインスタントやソーサリーも「偽装」して戦場に出せます。表面がパーマネントではないのに「偽装」されたクリーチャーがもし《犯人暴き》などで表向きになろうとしたら、それは全員に表面を公開した上で裏向きのまま戦場に残ります。

まとめると以下のようになります。

■「偽装」されたカードの表面が、

・クリーチャー:マナコストを払って表向きにできるし、ほかの方法でもできる

・アーティファクトや土地など、クリーチャーではないパーマネント:「変装」や《犯人暴き》などの効果なら表向きにできる

・インスタントやソーサリー:表向きにはできない。そうなるときは表面を公開して裏向きのまま

「偽装」と「変装」を同時に使う場合は、どの裏向きのカードがどのように戦場に出たか区別できるようにしておきましょう。「変装」で出したと思っていたカードを表にしたらインスタントだった!となったらビックリですから。

「偽装」は「変装」と似ているので覚えやすくはありますが、細かい違いもあります。どっちがどっちだっけ?となったら落ち着いてジャッジを呼んだり、ルール文章を参照しましょう。

「事件」は会議室で起きてるんじゃない!戦場で起きているんだ!

手つかずの饗宴の事件

事件/Case」はエンチャントが持つサブタイプで、縦型で3つに分かれたテキスト欄を持ちます。既存のカードだと「クラス」に似た見た目です。

3つの欄には上から「戦場に出た/出ているときの能力」「解明条件」「解明完了後に得られる能力」が書かれており、「出したらお得なことがあり、事件を解明したらさらにお得」という構造になっています。順番に説明します。

1つ目の能力は出した時点で効果を発揮します。誘発型能力であれば出たときに誘発し、常在型能力であれば出た瞬間から影響を及ぼします。これは普通のカードと同様です。

2つ目は「解明条件」と呼ばれ、なんらかの達成すべき条件が書かれています。「解明条件」を達成している状態であなたの終了ステップを迎えると能力が誘発し、その能力(そしてその事件)が解決すると、その「事件」は「解明完了」されます。

これはいわゆる「場合のルール」に従うので、条件を達成して終了ステップを迎えても能力が解決する前に妨害されて条件を満たさなくなると、そのターンは事件は解明されません。地道に解明を進めて次のターンを待ちましょう。

3つ目は「解明完了」後に得られる能力で、「解明条件」を達成して事件を解明した後に効果を発揮します。

常在型能力であれば「解明完了」した瞬間に効果を発揮し、誘発型能力なら「解明完了」した直後から誘発の条件をチェックするようになります。起動型能力の場合は「解明完了」した後に改めてコストを払って能力を起動することになるので、「解明完了」後も必要になるまで温存しておくことができます。

一度「解明完了」したら、その「事件」は戦場にある間はずっと解明されたままです。また「解明完了」した後でも、一つ目の能力はずっと持ったままです。

複数の「事件」がある場合、それぞれの条件さえ満たしていれば同じターンで一気に「解明完了」できます(スタックにはバラバラに乗ります)。同じ「事件」を複数並べておけば「解明条件」が同じなので一気に解決できてお得です。

ちらつき鬼火

「解明完了」した「事件」のコピーを作っても、それはまだ解明されていない状態です。また、《ちらつき鬼火》などいわゆる「ちらつき」系の効果で一瞬でも戦場を離れると解明されていない状態に戻ります。捜査が水の泡…でも条件によっては次のターンすぐに「解明」できるかも?

ミステリーには「事件」がつきもの。相手の妨害に負けず、難事件を解決に導きましょう。

名探偵もまずは地道な「証拠収集」から始める

花粉の分析

証拠収集/Collect Evidence」は、墓地のカードを追放することでさまざまなメリットを得られる行動です。必ず「証拠収集4」のように、後ろに数字(もしくはX)がついています。能力の起動コストや、呪文を唱えるときの追加コストになっていることが多いです。

「証拠収集」を行う場合、あなたは自分の墓地にあるカードをマナ総量の合計が「証拠収集」の数字以上になるように選んで追放します。枚数は何枚でもよく、また余分があってもOKです。

たとえば「証拠収集5」なら、墓地にあるカードを「5マナ1枚」「2マナ1枚+1マナ3枚」「4マナ2枚」等どんなパターンで追放しても構いません。余分に追放しても特にメリットはありませんが、どうしてもちょうど払えなかったり、墓地のカードをなるべく減らしたいタイミングもあるでしょう。

緊急の検死中止+停止

「証拠収集」は常に一括払いなので、追放できるマナ総量の合計が足りない場合は支払うことができません。特に「証拠収集」の値が大きいときは支払うのが大変です。 『カルロフ邸殺人事件』にも収録されている「分割カード」は両側を合計したマナ総量を持つ(《中止/停止》なら2マナ+6マナで8マナ)ので、そういったカードをうまく利用しましょう。

コストの一部として「証拠収集」を行う場合、カードの追放は他のコスト(マナの支払いなど)と同時に行われます。相手は、あなたが呪文を唱えるのを見てから「証拠収集」する前に墓地を追放して妨害することはできません。証拠隠滅は計画的に。

「証拠収集」をよりよく行うには普段の積み重ねが重要です。墓地のカードも大事なリソース、ご利用は計画的に。

「容疑」をかけられるだけでこんなに世界が変わるのか

正義の幽霊、アグルス・コス

容疑/Suspect」は、クリーチャーにかかる状態の一種です。カードの効果などでクリーチャーに「容疑」をかけるとそのクリーチャーは「容疑をかけられた」状態になり、メリットとデメリットを1つずつ得ます。

「容疑をかけられた」クリーチャーは「威迫」と「ブロックできない」を同時に持ちます。警戒されて相手のブロッカーが近づき辛いけれど、プレイヤーからも信用されなくなってブロックを任せられなくなる…というイメージでしょうか。

「容疑をかけられた」状態は、戦場を離れるか「容疑が晴れる」までそのままです。クリーチャー化した機体やミシュラランドに容疑がかかった場合、それらがクリーチャーでなくなっても容疑はかかったままです。ラヴニカでは何でも犯罪者になり得ますからね。

不可能性の除外

「容疑」は何体にでもかけることができます(怖い文章だ)。新しくクリーチャーに「容疑」がかけられても、ほかのクリーチャーはまだ「容疑」がかかったままです。逃れたければ《不可能性の除外》などで容疑を晴らすか、さもなくば戦場を離れる必要があります。

「容疑」をかけられたクリーチャーがコピーされた場合、新しく出てきたコピーには「容疑」はかかっていません。突然容疑者のそっくりさんが現れたら普通はびっくりするところですが、この世界のクリーチャーやプレイヤーはきちんと見分けることができます。マジック世界で生きていくには眼力も大切。

「容疑」は自分のクリーチャーにかけるべきときも、相手のクリーチャーにかけるべきときもあります。注意すべき対象を見極めて、捜査を有利に進めましょう。

おわりに

今回の記事で紹介できるのはここまでです。ほかにもたくさん気になることがあると思いますので、そのときはプレリリースの会場でジャッジに質問するか、晴れる屋Discordのルール質問チャンネルでご質問ください。

また冒頭にも書きましたが、新カードに関するルールは今後の発表やルール変更で内容が替わる場合があります。最新のルールをチェックして、気になることはその都度ジャッジにご質問ください。

それではみなさま、次のイベントでお会いしましょう。また次回!

『カルロフ邸殺人事件』特設ページ

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