Translated by Yoshihiko Ikawa
(掲載日 2018/05/11)
やぁ、みんな。『ドミナリア』が発売されてから2週間が経ったが、すでにご覧になったように、『ドミナリア』はスタンダードに多大な影響を与えた。
新しいデッキや戦略が環境には存在している。旧環境からあるデッキたちも、以前とは明らかに変化している。要するに、『ドミナリア』が環境を大きく変化させたので、今やまったく新しいスタンダードを楽しむことができるんだ!
今回の俺の記事では、新セットが何をもたらして、それらをどう使えばいいのかを示すのが目的だ。新しいカードを使っているデッキの中で最も興味深いデッキを、なぜ俺がそれらが好き(もしくは嫌い)なのか、そしてどう改良しようと考えているのかといった説明付きで紹介していこうと思う。その前に、『ドミナリア』のベストカード、そして過大評価されているカードについて、俺の個人的な意見を共有させてもらおう。
過大評価されているカード トップ3
3. 《ウルザの後継、カーン》
勘違いしないでくれ。カード自体は素晴らしいし、特定の戦略ではぶっ壊れている強さがある。だが、人々はあらゆるデッキにこのカードを使用しているんだ。
アーティファクトを多数採用していないデッキにおいて、《ウルザの後継、カーン》はメインボードに採用するに値しないと俺は考えている。対コントロールのサイドボードとしては、カードアドバンテージを生み出せるので十分だろうが、それ以上ではない。エキスパンション内で最も高価なカードになる理由が俺には分からないな。
2. 《モックス・アンバー》
人々はこのカードでブレイクスルーを起こそうと試しているようだが、それは不可能、もしくは少なくともとても困難だと俺は考えている。きっと俺が間違えていて、プロツアーではきっと《モックス・アンバー》を活用した素晴らしいデッキが登場するのだろうが、俺には分からないんだ。
1-2ターン目にマナ加速してくれるので、「モックス」というのは一般的には素晴らしいものだ。しかしこのモックスは、マナ加速するために多くの労力をかける必要があり、その上、大抵そこまで早いターンにマナを生み出してくれない。たとえブン回ったとしても、伝説的なクリーチャーは除去で簡単に死んでしまい、このモックスはOFFになってしまう。労力に対して対価が見合っていないといえるだろう。
1. 《ベナリア史》
新環境の初期にこのカードをかなりプレイしたが、いつだって期待外れだった。
4ターン目以降の2/2・騎士・警戒クリーチャーはほとんど価値がない。パンプ効果はたった1ターンしかないので、対処するのも容易い。もし騎士クリーチャーが先に対処されてしまうと、Ⅲ章能力は非常に弱いものとなってしまう。このカードを使ったデッキを俺は作らないだろう。
『ドミナリア』で最も衝撃的なカード トップ5
5. 《ラノワールのエルフ》
このカードは単なるコモンだが、現在のスタンダードに大きなインパクトを与えている。このパワフルな1マナクリーチャーがいなければ、緑単は今ほど強力なデッキにはならなっていないだろう。
4. 《ゴブリンの鎖回し》
赤単の優秀な3マナ域だ。《暴れ回るフェロキドン》が禁止になった後、3マナ域のパワーカードは不足していた。このゴブリンが解消してくれそうだ。
3. 《鉄葉のチャンピオン》
《ラノワールのエルフ》と共に、緑単を真のデッキに押し上げたのがこのクリーチャーだ。緑単にとってもっとも脅威となるキーワード能力である接死を持っているクリーチャーたちはどれもパワーが2しかないので、こいつの能力は非常に意味のあるものである。
2. 《黎明をもたらす者ライラ》
簡単に対処できるが、対処されなければこれ1枚でゲームに勝利することができる。ハイリスク・ハイリターンなカードだ。白いミッドレンジ・コントロール戦略のデッキにとって、素晴らしいフィニッシャーとなるだろう。
1. 《ドミナリアの英雄、テフェリー》
こいつは真の英雄だ。コントロールデッキにとって、相手の脅威に対処でき、カードアドバンテージを生み出し、相手のターンにマナをオープンにしておけるのは夢のようだ。これらすべてを、たった5マナで行うことができるのだ。
正直に言って、少なくともスタンダードにおいては、このカードが『ドミナリア』で最も強力なカードだと俺は思っている。
新スタンダードの興味深いデッキたち
赤単
-土地 (23)- 4 《損魂魔道士》
4 《ボーマットの急使》
4 《地揺すりのケンラ》
3 《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》
4 《アン一門の壊し屋》
4 《ゴブリンの鎖回し》
4 《熱烈の神ハゾレト》
-クリーチャー (27)-
赤単がスタンダードにおいて新しいアーキタイプでないことは明らかだが、2週間前とは完全に異なっている。《損魂魔道士》が帰ってきた!《ゴブリンの鎖回し》とのシナジーは、すべてのクリーチャーデッキとのマッチアップで光り輝くんだ。
素敵な追加としては、古典的なリミテッドカードである《火による戦い》だ。赤いデッキへのベストカード・《黎明をもたらす者ライラ》に対する素晴らしい解答だというだけでなく、《黎明をもたらす者ライラ》とよく同じデッキに搭載されている《残骸の漂着》を打たれたあとには最高のフィニッシャーにもなる。追記しておくと、新しいゴブリンが入ったので、無色しか出ない砂漠がないマナベースにせざるをえないだろう。
緑単
4 《ハシェプのオアシス》
1 《屍肉あさりの地》
-土地 (24)- 3 《歩行バリスタ》
4 《ラノワールのエルフ》
4 《緑地帯の暴れ者》
4 《マーフォークの枝渡り》
4 《鉄葉のチャンピオン》
3 《翡翠光のレインジャー》
1 《不屈の神ロナス》
1 《新緑の機械巨人》
3 《原初の飢え、ガルタ》
-クリーチャー (27)-
2 《貪る死肉あさり》
2 《捕食》
2 《造命師の動物記》
1 《高木背の踏みつけ》
1 《英雄的介入》
1 《垂直落下》
1 《沈黙の墓石》
1 《不滅の太陽》
1 《生命の力、ニッサ》
-サイドボード(15)-
『ドミナリア』のおかげで、緑単はついにTier1に昇りつめ、メタゲームに大きなインパクトを与えている。以前《原初の飢え、ガルタ》を人々が試したが、ガチデッキというよりはどちらかというとファンデッキ寄りだった。今は違う。フォーマットのデッキの中で、速く、大きいデッキなのだ。赤単とのマッチアップは相性がいいし、《残骸の漂着》と《燻蒸》を除けば天敵はいない。
《燻蒸》と《残骸の漂着》を考慮した、8枚の黒緑2色土地を採用し、4枚の《強迫》をサイドボードに採用してみた。このタッチカラーはほとんどタダみたいなものだと思っているし、最悪なマッチアップを改善するためには、努力するだけの価値があるだろう。微調整するとすれば、サンプルリストの《垂直落下》の代わりに《押し潰す梢》を採用するつもりだ。《垂直落下》をサイドインしたいデッキというのは大抵の場合《黎明をもたらす者ライラ》が入っていて、そういったデッキには《封じ込め》や《排斥》が採用されているはずだ。《垂直落下》よりも1マナ重くはなるが、自軍のベストなクリーチャーを助けることができるなら、その価値はあるだろう。
白黒トークン/機体
4 《秘密の中庭》
4 《孤立した礼拝堂》
4 《シェフェトの砂丘》
2 《屍肉あさりの地》
-土地 (22)- 4 《模範的な造り手》
2 《不屈の護衛》
4 《屑鉄場のたかり屋》
4 《ベナリアの軍司令》
-クリーチャー (14)-
4 《スラムの巧技》
4 《軍団の上陸》
2 《ベナリア史》
4 《キランの真意号》
2 《霊気圏の収集艇》
2 《試練に臨むギデオン》
2 《ウルザの後継、カーン》
-呪文 (24)-
俺が支持できる、《ウルザの後継、カーン》を使ったデッキの1つめがこちらだ。多くの「霊気装置」生成カードと機体があるので、《ウルザの後継、カーン》はとても大きいインパクトを戦場にもたらしてくれる。ターンを跨いで2体の大型クリーチャーを作った上で、まだ戦場に居座ってくれるのは素晴らしい。もし《ウルザの後継、カーン》をプレイしたいのならば、弱いカードを引くためではなく、大型クリーチャーを生成することを主な目的とするべきだ。
このタッチ黒は、緑単でイメージしてもらったときと全く同じように働く。タッチするのはほとんどタダ同然だし、黒いサイドボードカードは優秀だ。色を足すのに十分な理由になるだろう。
青白コントロール
2 《一瞬》
1 《否認》
4 《不許可》
4 《残骸の漂着》
4 《天才の片鱗》
2 《燻蒸》
2 《暗記+記憶》
3 《封じ込め》
1 《アズカンタの探索》
2 《排斥》
3 《ドミナリアの英雄、テフェリー》
-呪文 (31)-
3 《否認》
3 《俗物の放棄》
2 《ウルザの後継、カーン》
1 《ジェイスの敗北》
1 《封じ込め》
1 《排斥》
1 《イクサランの束縛》
-サイドボード(15)-
古き良き、古典的な「ドロー・ゴー」コントロールデッキだ。インスタント・タイミングでプレイできないカードは6枚しかなく、そのうちの3枚は土地を2枚アンタップしてくれる。『ドミナリア』は青白コントロールに足りなかったすべての要素を与えてくれた。優秀な軽量除去(《封じ込め》)、生き残れば数ターンでゲームを決めてくれる脅威(《ドミナリアの英雄、テフェリー》)、そして攻撃的なデッキに対するライフゲイン手段。《黎明をもたらす者ライラ》は《威厳あるカラカル》に比べて圧倒的なアップグレードだ。
他のカードに目を向けると、俺は《一瞬》についてはそこまで好きではない。こういった類のカードであれば《暗記+記憶》の方が優れていると思っている。俺はそうなると予想しているのだが、もし青白コントロールがよりポピュラーになるようであれば、コントロール・ミラーマッチを意識して《ヒエログリフの輝き》を2枚追加するだろう。
緑白ミッドレンジ
5 《平地》
4 《まばらな木立ち》
4 《陽花弁の木立ち》
2 《ハシェプのオアシス》
2 《霊気拠点》
-土地 (24)- 4 《歩行バリスタ》
4 《ラノワールのエルフ》
4 《マーフォークの枝渡り》
3 《シッセイの後裔、シャナ》
3 《打ち壊すブロントドン》
2 《ピーマの改革派、リシュカー》
1 《豊潤の声、シャライ》
3 《黎明をもたらす者ライラ》
-クリーチャー (24)-
もう1つの《ラノワールのエルフ》デッキだが、こちらは緑単よりも少し広い構成になっている。個人的には緑単の方が好みではあるが、こちらにも一考の余地があるだろう。自分が攻撃的にプレイするということは、一般的には対戦相手が5ターン目よりも前に除去をプレイするということを意味する。《黎明をもたらす者ライラ》が輝く、最高のタイミングだ。この天使は対処されなければ本当に速くゲームを終わらせてくれるし、大抵の場合この天使とライフレースをすることは不可能だ。緑のビートダウンにとって悪夢ともいえる《残骸の漂着》から、《豊潤の声、シャライ》が守ってくれることを忘れないようにな。
このデッキにおいては、俺は《ウルザの後継、カーン》が良いとは思っていない。《歩行バリスタ》・《宝物の地図》・《霊気圏の収集艇》とあるので俺が予想しているよりはマシなのだろうが、《ウルザの後継、カーン》を守るためのクリーチャーも必要なので、俺には確信が持てない。きっと俺が単にこのカードを嫌いすぎているだけだろうな(笑) 《シッセイの後裔、シャナ》は青白コントロールに対して非常に優秀だ。なんせ《封じ込め》も《排斥》も、その能力のおかげで全く効かないんだ。
青赤ウィザード
4 《島》
4 《尖塔断の運河》
4 《硫黄の滝》
-土地 (20)- 4 《ギトゥの溶岩走り》
4 《損魂魔道士》
2 《セイレーンの嵐鎮め》
4 《呪文織りの永遠衆》
4 《燃えがらの風、エイデリズ》
-クリーチャー (18)-
今のスタンダードで最も魅力的なデッキがこちら。赤単よりも速く、攻撃的なんだ。このデッキのシナジーは相手の除去だったり、そもそも自分が十分にクリーチャーを引かなかったりで容易く破綻するので、とても強力なデッキであるとは思っていない。だがもし完璧な初手に出会えれば、青赤ウィザードはまず負けないだろう。
マッチアップを語れるほどまだ十分にプレイできていないが、このデッキが青白コントロールや緑単を簡単に打ちのめすであろうことは想像できるので、メタゲームによっては良い選択になるかもしれない。
まとめ
今のスタンダードは本当に素晴らしい。1マナ域から動くアグロデッキから、ごく少数のフィニッシャーしか採用しないヘビー・コントロールまで、新しく面白いデッキが多数存在している。誰でも自分が楽しめるデッキを見つけることができるだろう。
どのデッキが優秀で、どのデッキが劣っているか、近い内に開催される大会ではっきりすることだろう。グランプリとプロツアーは、プレイする側にとっても、観戦する側にとっても、本当に楽しいイベントになると確信しているよ。さて、俺はこれからスタンダードとレガシーで開催されるグランプリ・バーミンガム2018に焦点を当てなければならないので、より良いデッキリストを来週までに仕上げるだろう。カバレージをチェックしてくれよな!
(編注 : コヴァルスキ先生は、グランプリ・バーミンガム2018:レガシーにおいて、見事準優勝しました!)
では、また会おう!
グジェゴジュ・コヴァルスキ
この記事内で掲載されたカード
ポーランド出身。
【グランプリ・リール2012】、【グランプリ・ブリュッセル2015】でトップ8入賞。【グランプリ・サンティアゴ2017】では見事準優勝を果たした。
その高い実力はプロツアーでも発揮され、多数の上位入賞、マネーフィニッシュを経験している。