スタンダードの資産運用

Oliver Polak-Rottmann

Translated by Daijiro Ueno

やあみんな! 新しい記事へようこそ!

プロツアーがすぐそこに迫っているから、みんなそんなに手の内をバラしたくないところだろう。俺だってそれは同じだ。それでも今日はスタンダードのことについて話そうと思う。といっても、大会でどのデッキが強いとか、そういったことについてではなく、みんなが抱えている”ある疑問”についてだ。それは、”スタンダードのカードをどう捌いていくか” ……つまりカードの市場価値について、俺なりのアドバイスをしたいと思う。

”スタン落ちしたカードは価格が下がる” と不満を漏らす人も多いが、これは正確じゃない。実際のところは、 ”ローテーションの数週間前、時には数か月前から価値は下がり始める”。

この記事がどのカードをキープすべきか、あるいは売るべきかといった判断材料になれば良いと思っている。他のフォーマットに興味がなくて、スタンダードしかプレイしていない人にとっては少し力不足かもしれないが、まあ最後まで楽しんでくれ!

では、実際にカードの捌き方に関する第一歩は、①どのタイミングで”価格の”ローテーションが起こるか、②君自身がどのトーナメントを重視しているか、③最終的にどのカードをキープすべきか、という点を把握し、整理するところから始まる。では、次のローテーションでスタンダードで使えなくなるセットたちを確認してみよう。『カラデシュ』、『霊気紛争』、『アモンケット』、そして『破滅の刻』の4つだ。

『カラデシュ』

古いセットから説明していった方が合理的だから、まずは『カラデシュ』から始めよう。正直に言って、このセットで特に価値のあるカードといえば”マスターピース”関連のみだから、そんなに失うものというのはないね。

反逆の先導者、チャンドラ

最も高いカードは《反逆の先導者、チャンドラ》だ。このカードは《再燃するフェニックス》の登場によって4枚採用される機会が減ったから、もう価格のピークは過ぎてしまっているね。しかしながら、《反逆の先導者、チャンドラ》は統率者で活躍できるし、モダンでも2枚ぐらいは採用される可能性がある。だから2枚ほどキープしておくのが最良の選択だと思う。

ここまで読んで、なんで俺が ”売る” ことじゃなくて “買う” ことも含めて話そうと言ったのか疑問に思っている人もいるだろう。”価値はスタンダードで使えなくなれば、下がるだけじゃないか?” ってね。でも実際はそうではない。ローテーションの数か月後に価格が上がるカードもあるんだよ。

最後の望み、リリアナ呪文捕らえ集団的蛮行騒乱の歓楽者

『異界月』を例にとって見てみよう。《最後の望み、リリアナ》《呪文捕らえ》《集団的蛮行》、そして《騒乱の歓楽者》みたいなカードはずっと使用されていた。スタンダードの環境を定義した良く見る顔ぶれだったが、スタンダードから去ったあとに、価格が高くなった。モダンでは居場所を欠いていたが、メタゲームの推移とともに状況は変わって、見たことのない価格まで上昇することになったわけだ。

激変の機械巨人奔流の機械巨人焼却の機械巨人

さて、『カラデシュ』で次点に高いのは ”機械巨人” サイクルだが、実際に高価なのは、そのポテンシャルをまざまざと見せつけている《奔流の機械巨人》だけで、このカードの値段も今より落ち込むことだろう。だから、このカードは今手元に置いておくカードではない。他の機械巨人たちについては、もうすでにかなり安くなってしまっているし、これから価格が上昇する可能性もあるから取っておいた方が良いと思うね。

植物の聖域尖塔断の運河

残っためぼしいカードは “ファストランド” たちだ。どのファストランドも全部同じようなものだと思って構わない。こいつらの内、何種類かは過去に価格が上がり、その後また下がったけど、基本的には今が”史上最低額”と言って良いだろう。『ミラディンの傷跡』がローテーション落ちしたときもまったく同じことが起こったわけだが、『ミラディンの傷跡』のファストランドは、今が”史上最高額”だ。だから、急ぎでないならファストランドは手元に残しておこう。こいつらはきっとスタンダードから姿を消した1~2年後に、また高騰するだろうね。

『霊気紛争』

次は『霊気紛争』だが、こいつはカード価値の面で言ったら史上最も奇妙なセットだと言えるね。

致命的な一押し

奇妙なこととは、《致命的な一押し》がアンコモンなのにも関わらず、このセットで最も高いカードだったということだ。フライデー・ナイト・マジック(FNM)でプロモカードが配られ、《歩行バリスタ》がモダンで使われるようになって状況は変わったがね。この2枚の他はスタンダードでさえ使われない無価値なカードばかりしかないが、《不許可》は不良在庫とみなして売ってしまった方が良いと思う。

不許可パラドックス装置遵法長、バラル

《パラドックス装置》《金属ミミック》《英雄的介入》、それに《遵法長、バラル》は統率者やモダンで使われるから、売り払いたくはないだろう? だから、《不許可》以外はすべてキープしてしまった方が良いと言っておこうか。このセットは『異界月』と同じパターンを行く可能性があるからね。

『アモンケット』

周到の神ケフネト死の権威、リリアナ

さあ、次は『アモンケット』だ。このセットは『霊気紛争』とは完全に真逆の性質を持っているね。”神”とプレインズウォーカーは全部何かしら価値を持っているが、これはスタンダードに限ったことなんだ。こいつらがスタンダードから去ったら暴落するから、全部売り払ってしまった方が良いと思うね。”神”を使う必要があったとしてもあまり問題ではないが、売りどきを逃さずにすべて手放すことをおすすめするよ。

『破滅の刻』

スカラベの神

『破滅の刻』は『神々の軍勢』と同じく、セット中で高騰するカードはないだろうと考えられていたわけだが、今のところは本当にそのとおりになっている。《スカラベの神》は価値があるが、1枚50ドルだった時代は過ぎ去ってしまった。コントロールデッキでは『ドミナリア』の新しいプレインズウォーカー、《ドミナリアの英雄、テフェリー》に居場所を取られてしまったようだから、《スカラベの神》は早めに売りたいところだ。

ここまで「何を売り払ったほうが良いか」を説明してきたわけだが、今度は ”今何を買うべきか?” という疑問にお答えしよう。もっとも、今はブロック構築というカードの価値を測る良い物差しがないから簡単なことではないんだが、想像力でそれを解決することにする。まず、第一印象として、『ドミナリア』は『イクサラン』ブロックと比べてかなり強力で重要なセットに見える。

『ドミナリア』

ウルザの後継、カーンベナリア史黎明をもたらす者ライラドミナリアの英雄、テフェリー

《ウルザの後継、カーン》《ベナリア史》《黎明をもたらす者ライラ》、そして《ドミナリアの英雄、テフェリー》を神話レアに擁し、これらは予想どおりりのカードパワーを見せつけている。

鉄葉のチャンピオンゴブリンの鎖回し

それに加えて、《鉄葉のチャンピオン》《ゴブリンの鎖回し》に代表される単色の3マナ域も存在する。これらは、スタンダードですでに使われているね。神話レアはすべて高値で取引されているから、今は少し待って価格が落ち着くのを待った方が良いだろう。ただ、《ウェザーライト》だけは例外だ。

ウェザーライト

《ウェザーライト》には可能性を感じている。俺が今すぐに1~2枚確保しておきたいカードだ。あとはさっき言った3マナ域と、《陰謀団の要塞》も見つけたら、4枚揃えておきたい。グランプリ・バーミンガム2018で黒単が日の目を見たことだし、ローテーション後はこのアーキタイプとともに《陰謀団の要塞》に注目が集まるだろうね。特に、7月に発売される『基本セット2019』に封入される可能性の高い《堕落》《堕落の触手》みたいなカードと相性が良いのも加点要素だ。

あとは、秋に出るラヴニカ次元の新セットにショックランドが再録されるかもしれないから、それらと相性の良い『ドミナリア』の ”チェックランド” も集めておきたい。ショックランドを買うかどうかについては、もちろん再録されるかどうか正式発表を待ったほうが良い。もし再録されても、リリース後2週間程度は待ったほうが良いだろうな。少しすれば、価格がだいぶ落ちるだろう。

『イクサラン』ブロック

では、最後に『イクサラン』ブロックの話をするとしよう。

アズカンタの探索残骸の漂着ヴラスカの侮辱

《アズカンタの探索》《残骸の漂着》、そして《ヴラスカの侮辱》こいつらにこの先どんな運命が待ち受けているか分からないし、新環境の動向を注視したほうがいいね。

秘宝探究者、ヴラスカ人質取り

《秘宝探究者、ヴラスカ》は今安くなったところだから、このカードはすぐ買った方が良いんじゃないかな。《人質取り》にも同じことが言える。環境初期のスタンダードではかなり使われたが、今はこのフォーマットに居場所はないからね。それから、もしまだ持っていないとするなら『イクサラン』のチェックランドは買っておこう。このセットのドラフトが行われなくなったら、こいつらは確実に値上がりする。『イクサランの相克』に関しては少しカジュアルセットのようなところがあるから、カードの価値について言及するのはちょっとだけ難しいね。

炎鎖のアングラス

ただし、オススメのカードが1枚ある。それは《炎鎖のアングラス》だ。今はサイドボードにちょっと見かける程度のカードだが、こいつが輝くときはすぐにやってくるような気がしているよ。

最後まで読んでくれてありがとう。プロツアー『ドミナリア』も楽しんでくれよ!

オリヴァー

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