Translated by Kenji Tsumura
(掲載日 2018/06/23)
(編注 : この記事はコヴァルスキ先生が「赤単」を使って3位に入賞されたグランプリ・シンガポール2018の前に執筆されたものです。)
やあ、みんな。グジェゴジュ・コヴァルスキだ。
本日は新しいデッキを用意してきたんだが、君にとってこれがワクワクするものであることを願うばかりだ。
スタンダード環境は《ゴブリンの鎖回し》と《ドミナリアの英雄、テフェリー》に支配されている。かつてつまらないとされていた、 “2種類のデッキだけのフォーマット” に再び直面してしまったというわけだ。
このようなフォーマットの問題点は明確だ。2種類のデッキは環境に存在する他のデッキよりも強く、それでいて互いが互いをうまく守っているんだ。例えば、「青白コントロール」に対して強いデッキを作ることはできるだろうが、その場合おそらく「赤黒」に対しては苦戦を強いられるだろう。これは逆の場合もまたしかりで、「赤黒」に勝つために《熱烈の神ハゾレト》が4枚入った「赤単」を使えばコントロールデッキに対して厳しい時間を過ごすことになる。
一般的に、Tier2 (2軍) に位置するデッキは相性が良いとされるマッチアップにおいてそれほど有利というわけでもなく、相性が悪いとされるマッチアップにおいては大きな不利益を被る。これが意味するところ、Tier2のデッキは競技シーンではプレイに値しないに等しいということだ。直近のグランプリやプロツアーの結果からも、これを垣間見ることができるだろう。
だが俺はこれに取り組んでいて、おそらくそこそこまともな解答を思い付いたと考えている。まず真っ先に検討すべきは、《ゴブリンの鎖回し》に対する最高の戦略は何なのか、そして《ドミナリアの英雄、テフェリー》を倒すために何ができるか、という問題だろう。
《ゴブリンの鎖回し》を倒す最良の方法は、タフネス1のクリーチャーを採用しないことだろう。《削剥》や《無許可の分解》といったカードをも無効化するために、クリーチャーを一切採用しなければ少なくとも1本目は優位に立てる。コントロールデッキに対しては、物事はそれほど分かりやすくはない。だが《イプヌの細流》、そして《ドミナリアの英雄、テフェリー》を止める術を組み合わせることが最善策だと思う。
では、直近のメタゲームにどのように挑むべきか?ここまでに述べてきたことをひとつにしてしまえばいいんだ!
それが「バント・ランプ」デッキだ。早速リストをご覧いただこう!
2 《平地》
1 《森》
1 《灌漑農地》
4 《まばらな木立ち》
4 《陽花弁の木立ち》
4 《イプヌの細流》
2 《不屈の砂漠》
2 《シェフェトの砂丘》
1 《ハシェプのオアシス》
1 《オラーズカの拱門》
1 《敵意ある砂漠》
1 《屍肉あさりの地》
-土地 (26)- 1 《歩行バリスタ》
-クリーチャー (1)-
2 《明日からの引き寄せ》
4 《残骸の漂着》
3 《約束の刻》
2 《燻蒸》
4 《開拓+精神》
4 《封じ込め》
3 《楽園の贈り物》
3 《排斥》
1 《サンドワームの収斂》
1 《魔学コンパス》
4 《ドミナリアの英雄、テフェリー》
-呪文 (33)-
2 《黎明をもたらす者ライラ》
2 《奔流の機械巨人》
2 《否認》
2 《イクサランの束縛》
2 《魔術遠眼鏡》
1 《ジェイスの敗北》
1 《帰化》
-サイドボード (15)-
これが今現在のリストだ。これは決して完璧とは言えないし、まだまだ調整半ばではあるものの、このデッキには非常に期待している。グランプリ・コペンハーゲン2018でこのデッキをプレイしようと思っていたんだが、プロツアー『ドミナリア』後に調整する時間がないと分かったために、結局は既存の「エスパーコントロール」をプレイした。ただ次なる「グランプリ・シンガポール2018」まではまだ1週間の猶予があるし、これはこのデッキを調整する大きなチャンスだ!
「バント・ランプ」にはいくつかの勝ち手段がある。最も一般的な方法は、《イプヌの細流》で対戦相手をライブラリーアウトさせることだ。他にも《サンドワームの収斂》でロックしたり、単に相手を消耗させて《約束の刻》のトークンや《ドミナリアの英雄、テフェリー》の奥義で勝つこともできる。
概してゲームプランはマッチアップ次第であるため、ここからは今現在のスタンダードで主要なデッキに対してどのように戦うべきかをお伝えした後に、どのようにサイドボーディングを行うべきかご覧いただこう。
ゲームプラン
「赤単」
非常に相性が良い。白いカードは赤に対して上手く機能する。こちらの目的は、序盤の脅威を《封じ込め》や全体除去で食い止めることだ。そうすれば、やりたいことをやるための十分なカードアドバンテージとマナが用意できるだろう。ゲームを掌握してしまえばやがて何かしらの勝ち手段にたどり着くだろうし、それがどのカードであれかまわない。
サイドボード後は《火による戦い》に気を付けよう。《残骸の漂着》の効果もあり、対戦相手はいずれ十分なマナを手に入れてしまう。したがって、ライフを11以上に保っておくことは非常に重要なんだ。
この点において《領事の権限》、《楽園の贈り物》、《燻蒸》が役に立つし、それほど難しい課題ではないだろう。序盤に必要以上にダメージを受けないように注意しよう。
「赤黒ミッドレンジ」
こちらは「赤単」とは事情が異なる。ミッドレンジ寄りの「赤黒」は、このデッキにとって相性が良くないマッチアップなんだ。メインボードは例によって悪くない。相手側にのみ無駄カードがあるため、5~8ターン目くらいにはゲームを掌握し、その後勝利するに十分なアドバンテージを稼げるだろう。
サイドボード後は、除去呪文などの無駄カードが手札破壊呪文や《アルゲールの断血》、またはプレインズウォーカーといったカードに置き換わるため問題に直面してしまうことになる。《否認》や《魔術遠眼鏡》で対面のプレインズウォーカーを止めるようにし、《明日からの引き寄せ》を引くまで1対1交換を続けよう。相手はこちらのトップデッキに干渉することができないため、中盤以降に《明日からの引き寄せ》を引き当ててX=5以上でキャストできれば勝利は目前だ。
このマッチを終わらせるための主な勝ち手段は《サンドワームの収斂》だが、もしも早期の段階で手札破壊されてしまっても気に病む必要はない。ゲームは長引いて消耗戦になるため、ライブラリーアウトも立派な勝ち手段のオプションになるからな。
「《王神の贈り物》」
相性は良い。こちらの目的は《王神の贈り物》を戦場に出させないことだが、仮に《王神の贈り物》が出てしまったとしても、《約束の刻》から導くことができる《屍肉あさりの地》がメインボードにあるんだからな。
対戦相手はたくさんカードを引いて自らライブラリーを削る。《残骸の漂着》と《燻蒸》を駆使して生き残り、最終的には《イプヌの細流》でライブラリーアウトさせよう。
「黒緑《巻きつき蛇》」
このマッチは相性が悪い。1本目に関しては、対「赤黒ミッドレンジ」と同じようにこちらが有利だ。《燻蒸》と《残骸の漂着》は「黒緑《巻きつき蛇》」に対して素晴らしいカードだし、相手側がこちらに干渉する術はほんのわずかしかない。しかし、サイドボード後の備えは「赤黒ミッドレンジ」のそれをさらに上回る。
《強迫》によって守られる《光袖会の収集者》は悪夢そのものだ。対「赤黒ミッドレンジ」でメインの戦略に据えている《否認》と《魔術遠眼鏡》では、《光袖会の収集者》を止めることができない。相手はゆっくりと着実に毎ターンアドバンテージを積み重ねてくるから、「黒緑《巻きつき蛇》」を中盤戦で息切れさせることはとても大変なんだ。
「青白コントロール」
とても相性が良い。こちらに求めらることは《ドミナリアの英雄、テフェリー》を解決させないこと、または対処することのみだ。決して《排斥》を “サイクリング” してしまわないように!
「青白コントロール」はそれほど多くの勝ち手段を擁しておらず、無駄カードも多い。大量のマナを生かしてカードを引き増し、最終的に相手をライブラリーアウトに追いやろう。《奔流の機械巨人》と組み合わせることで、こちらにとって最高の脅威となる《暗記+記憶》だが、ここ最近のリストには《暗記+記憶》が入っていないものもあるな。
もしも《暗記+記憶》が入っているリストと直面したら、《イプヌの細流》で勝機を狙いつつ、《屍肉あさりの地》をアンタップ状態で待機させておこう。
サイドボーディング
「赤単」
対「赤単」
決して《否認》はサイドアウトしないように。あまり効果的には見えないかもしれないが、「赤単」が勝つには “キッカー” の《火による戦い》をキャストするしかない、という状況が頻繁するからな。盤面を落ち着かせることができた際に、《火による戦い》への解答があるかどうかは非常に重要だ。それに5~6ターン目に《黎明をもたらす者ライラ》を《否認》で守る動きも強力で、それができればほぼ勝利と同義だ。
「赤黒ミッドレンジ」
対「赤黒ミッドレンジ」
「《王神の贈り物》」
対「《王神の贈り物》」
相手が「赤単バージョン」をプレイしている場合には、《否認》は不要だ。
「黒緑《巻きつき蛇》」
対「黒緑《巻きつき蛇》」
《歩行バリスタ》は《光袖会の収集者》への最良の解答であるため、サイドアウトしないように。
「青白コントロール」
対「青白コントロール」
アドバイスとトリック
《楽園の贈り物》は可能であれば基本土地に付けよう。こうすることで《廃墟の地》から《楽園の贈り物》を守ることができるし、いずれかの “砂漠” を起動する際に《楽園の贈り物》を失ってしまうこともない。
《ドミナリアの英雄、テフェリー》と《楽園の贈り物》は素晴らしいコンボになる。《楽園の贈り物》が2枚あれば、5ターン目に《ドミナリアの英雄、テフェリー》をキャストして《残骸の漂着》を構えることができる。全てのアグロデッキはこれに打ち勝つことができない。
墓地に土地がない状況で《シェフェトの砂丘》を起動し、その能力が解決する前に《シェフェトの砂丘》を追放して《敵意ある砂漠》を起動することができる。もしも《シェフェトの砂丘》を起動する際に、他の “砂漠” を生け贄に捧げていた場合にも同様にこのテクニックを活用できる。すると《敵意ある砂漠》は実質タダで+1/+1の修正を受けることができるんだ!
《歩行バリスタ》は序盤の《ボーマットの急使》・《光袖会の収集者》を殺すため、そして終盤戦の複数枚交換のために採用している。盤面に何もいないのならば、決して2ターン目にキャストしてしまわないように。対戦相手は、本来ならば使い道のない除去呪文を持っているだろうからな。いついかなるときも《歩行バリスタ》をキャストするのは、《歩行バリスタ》を即座に起動して何かしらの価値を生み出すときだけだ。
おわりに
本日はここまで。デッキの出来栄えは良いし、俺はこのデッキが好きなんだが、いくつかの問題があるのも事実だ。最大の問題はマナベースだな。このデッキは3色だし、どの色にもダブルシンボルのカードがあって、そのうえで3枚もの無色土地がデッキに入っているんだからな。
何度か自分との戦いに敗れてしまうことがあったものの、マナさえしっかりと捻出できれば主要なデッキに対して決して負けることはないと感じたほどだ。
このデッキに取り組み続けることで、マナベースの問題が改善できることを願っている。もしもそれが実現できたのならばグランプリ・シンガポール2018では「バント・ランプ」をプレイするだろうし、そうなればこのデッキが競技シーンでどのような結果を出すのか知ることができるだろう。カバレージから目を離さないようにな!
それじゃあ、またな。
グジェゴジュ・コヴァルスキ
この記事内で掲載されたカード
ポーランド出身。
【グランプリ・リール2012】、【グランプリ・ブリュッセル2015】でトップ8入賞。【グランプリ・サンティアゴ2017】では見事準優勝を果たした。
その高い実力はプロツアーでも発揮され、多数の上位入賞、マネーフィニッシュを経験している。