皆さんこんにちは。
2018年度のプレミアイベントのスケジュールがアナウンスされ、再びモダンのプロツアーが開催されることが決定しました。また、StarCityGames.com Tourではすでに定番となっているチーム戦もグランプリとプロツアーのフォーマットに採用されることが決まり、2018年シーズンはモダンをプレイする機会が増えそうです。
構築フォーマットの中でも一番人気であるモダンで開催されたSCGO Syracuseには、900人以上の参加者が集いました。今回の連載ではSCGO Syracuseで入賞したデッキを見ていきます。
SCGO Syracuse
Eldrazi Tronのワンツーフィニッシュ
2017年8月6
- 1位 Eldrazi Tron
- 2位 Eldrazi Tron
- 3位 Merfolk
- 4位 Jeskai Control
- 5位 Affinity
- 6位 Grixis Death's Shadow
- 7位 UR Gifts Storm
- 8位 UR Gifts Storm
Dan Musser
トップ8のデッキリストはこちら
二日目最大勢力はAffinityで、プレイオフにも勝ち残り安定したパフォーマンスを披露しています。それ以外には、SCGO Baltimore優勝以降常にメタの上位に位置しているGrixis Death's Shadowなどのアグレッシブなデッキが多く二日目に進出していました。
その次点にEldrazi TronとScapeshiftといった土地コンボ系が勝ち残っており、特にTronとEldraziをハイブリットしたEldrazi Tronは今大会でワンツーフィニッシュを飾るという活躍を見せました。
惜しくもトップ8入賞こそならなかったものの、《約束の刻》入りのScape Shiftや根強い人気を誇るSliverデッキなど、モダンらしく多種多様なアーキタイプが見られます。
SCGO Syracuseデッキ紹介
「Eldrazi Tron」「Jeskai Control」「Scapeshift」「Slivers」「G/W Company」
Eldrazi Tron
SCGO Syracuse(1位)
Eldrazi TronはEldraziアグロとTronをハイブリットしたデッキで、シナジーよりも個々のカードパワーで勝負するデッキです。
Eldraziの展開力とTronのロングゲームにおける強さを併せ持つデッキで、2ターン目の《虚空の杯》などGrixis Death's Shadowも含めて多くのデッキをシャットアウトするアンフェアな要素を搭載しています。
Death's Shadow、Jundなどの各種ミッドレンジ、通常のTronでは不利なBurnなど環境の多くのマッチアップで有利が付きますが、軽い除去が少ないためAffinityは苦手なマッチアップとなります。また、ハンデスやカウンターなど妨害要素も薄いためScapeshiftやAd Nauseamといったコンボデッキも苦手なマッチアップとなります。
☆注目ポイント
2ターン目に展開される《虚空の杯》は流行りのGrixis Death's Shadowを含めて環境の多くのデッキを機能不全に陥らせることが可能で、X=1はエルドラージクリーチャーに対するアンサーとなる《流刑への道》やサイドカードの《儀礼的拒否》をもシャットアウトします。
序盤は《エルドラージの寺院》から《難題の予見者》や《現実を砕くもの》といったエルドラージクリーチャーを展開していき、トロンランドが揃ってマナが大量に出る中盤以降は《解放された者、カーン》や《歩行バリスタ》などでゲームを決めます。
《歩行バリスタ》を序盤にX=1で除去として展開するのは稀で、主にエンドカードとして使っていきます。そういった理由から《探検の地図》は主にトロンランドをサーチしていきます。Grixis Death's Shadowなど《儀礼的拒否》をサイドインしてくるマッチアップでは《魂の洞窟》も選択肢となります。《魂の洞窟》で指定するタイプは基本的にEldraziとなりますが、《歩行バリスタ》を確実に通すためにConstructを指定することもあります。
《バジリスクの首輪》は《終末を招くもの》や《歩行バリスタ》と組み合わせることにより、破壊不能クリーチャーを除く全てのクリーチャーを除去することが可能で、クリーチャーデッキに対しては積極的に狙っていきたいコンボです。
サイドは苦手なAffinityやコンボ対策、墓地対策が中心で、《真髄の針》はAffinityの《頭蓋囲い》やCounters Companyの《献身のドルイド》、各種ミシュラランド、各種プレインズウォーカー対策になります。《漸増爆弾》は苦手なAffinityに対するスイーパーとして活躍します。《搭載歩行機械》は追加のマストカウンターかつ除去に対するアンサーで、多くのマッチアップでサイドインされます。
Jeskai Control
SCGO Syracuse(4位)
カードパワーが高くデッキの種類の多いモダン環境では、相手のアクションを全て捌き切るのは困難で、伝統的な青いコントロールはモダンではあまり有効な戦略とされていませんが、それでもコントロールデッキは形を変えつつ結果を残し続けています。
現環境ではコントロールデッキでも積極的に攻めることが求められています。ミシュラランドや数体のフィニッシャーによってゲームを決めるよりも、コストの軽いクリーチャーを展開しカウンターや除去などでバックアップするクロックパーミッションやミッドレンジ寄りの戦略が主流です。
《謎めいた命令》 のように相手のアクションを捌いていくカードによってコントロールデッキのように振舞いつつ、《聖トラフトの霊》のように軽い除去耐性のあるクロックで攻めに回ることも可能です。《瞬唱の魔道士》によるアドバンテージにより消耗戦を挑むという選択肢もあり、このように現在のコントロールデッキは状況に応じた役割を理解することが重要です。
☆注目ポイント
《聖トラフトの霊》はブロッカーを展開しないコンボに対して有効なクロックとなり、流行りのDeath's Shadowデッキに対しても単体除去が効かず飛行に対抗する手段も乏しいのでプレッシャーとなります。全体除去をメインから採用しているデッキが少ないのも、このクリーチャーにとっては大きな追い風です。
このデッキのフィニッシャーとして採用されている《雷口のヘルカイト》も《致命的な一押し》で処理されず、5/5飛行はDeath's Shadowにとって脅威となります。速攻は奇襲性もあり、Enter The Battlefield能力はこのタイプのデッキにとっては厄介となる《未練ある魂》対策にもなります。プロアクティブな戦略も取り入れた現在のコントロールを象徴するフィニッシャーです。
サイドの《ルーンの光輪》は白いコントロールデッキでときおり見かけるエンチャントで、主な勝ち手段が探査クリーチャーと《死の影》と限定的なGrixis Death's Shadowとのマッチアップや、このデッキにとって厄介なEldraziデッキの《難題の予見者》や《現実を砕くもの》、Scapeshiftの《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》など使えるマッチアップが多く、隠れた優秀なサイドカードです。
Scapeshift
SCGO Syracuse(17位)
《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》を軸にした土地コンボデッキで、《風景の変容》によってゲームを決めます。
よく見られる緑赤のリストは《稲妻》や《反逆の先導者、チャンドラ》といったカードも見られますが、Collins Mullen のリストはメインは緑単でサイドに除去を採用しているのみで赤が薄い構成です。
『破滅の刻』から《約束の刻》という新戦力を獲得し、勝ち手段の《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》を探しやすくなりました。
☆注目ポイント
《約束の刻》は最速3ターン目にキャスト可能で、《原始のタイタン》と同様の効果が得られ3ターン目にして土地が7枚になり4ターン目に《風景の変容》や《原始のタイタン》をキャスト可能になりより安定してコンボが決められるようになります。
《虹色の前兆》は多色のバージョンで採用されることの多いカードですが、緑赤の2色のこのデッキでも《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》が誘発しやすくなり、土地をサーチする新カードの《約束の刻》とも相性が良いエンチャントです。
相手はサイド後に《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》や《風景の変容》を対策してくるので、追加の勝ち手段として《カメレオンの巨像》と《強情なベイロス》が採用されています。《カメレオンの巨像》はプロテクション(黒) 持ちなので流行りのGrixis Death's Shadowに有効なフィニッシャーとなります。《強情なベイロス》はBurnなどのライフを攻めてくる相手や、ハンデスを多用するデッキに効果的なクリーチャーで、タフネスも4あり火力系の除去に耐性があります。
Slivers
SCGO Syracuse(13位)
昔から根強い人気の部族であるSliverは、構築フォーマットでも十分通用することが証明されました。
Merfolkと同様の部族アグロですが、《集合した中隊》デッキのバリエーションとしてもカウントされます。インスタントスピードで展開される《捕食スリヴァー》や《筋力スリヴァー》といったロードは、相手のダメージ計算を狂わせます。
ほぼクリーチャーオールインなデッキで相手に干渉するスペルが少なめなので《壊死スリヴァー》、《調和スリヴァー》、《心鞭スリヴァー》といったSliverクリーチャーの能力をうまく使っていきたいところです。
☆注目ポイント
Sliverクリーチャーに飛行を付与する《風乗りスリヴァー》は、このデッキにとって最も重要な1枚です。流行りのGrixis Death's Shadowは飛行クリーチャーを苦手とし、除去も《拡散スリヴァー》や《菅草スリヴァー》といったSliverクリーチャーで耐性を付けていきます。
《歩哨スリヴァー》と《マナ編みスリヴァー》の能力を利用することにより、攻撃しつつ展開することが可能になり、マナ食い虫の《壊死スリヴァー》の能力も使いやすくなります。
Sliver用の土地の《スリヴァーの巣》は、《魂の洞窟》と共にこのデッキのマナ基盤を支えるだけでなく、マナが余る中盤以降はトークン精製能力によりアドバンテージも稼ぎだします。
《カメレオンの巨像》は多相クリーチャーなのでSliverクリーチャーの恩恵を受けることも可能で、プロテクション(黒) と高タフネスのおかげで多くの除去に耐性があり、現環境では非常に強力なクリーチャーとなります。
G/W Company
SCGO Syracuse(19位)
《集合した中隊》デッキはAbzan CompanyやCounters Companyのように無限ライフや無限ダメージといったコンボ要素を搭載したものが主流でしたが、今回上位入賞を果たしたバージョンは《集合した中隊》でアドバンテージを得るミッドレンジです。
SCG Tourでコンスタントに入賞しているTodd Stevensがチーム戦のSCGO Atlantaで優勝したことで広まったデッキで、『破滅の刻』からの新カードである《ラムナプの採掘者》も含まれている面白いデッキです。
《幽霊街》による土地破壊を駆使し、マナ基盤が弱いGrixis Death's ShadowやTronをメタったデッキで、コンボに頼っていない分ハンデスや墓地対策にも耐性があり、《集合した中隊》のアドバンテージにより多くのフェアデッキにも強くお勧めのデッキの1つです。
☆注目ポイント
《世界のるつぼ》を内蔵した《ラムナプの採掘者》は《幽霊街》を墓地から使い回すことを可能にし、《迷える探求者、梓》や《聖遺の騎士》といったクリーチャーとも非常に相性が良いです。《聖遺の騎士》でサーチする土地は、《幽霊街》の他にも全体を強化する《ガヴォニーの居住区》、カードアドバンテージが得られる《地平線の梢》といった選択肢があります。
《不屈の追跡者》は、土地を複数プレイできるこのデッキならかなりのアドバンテージが期待できます。《エイヴンの思考検閲者》は今大会で多数の入賞者を輩出したGifts StormやScapeshiftといったサーチスペルを軸にしたデッキに特に有効で、環境のほとんどのデッキがフェッチランドなど何かしらのサーチ手段を採用しているため、メインボードでも十分に活躍します。
《献身のドルイド》や《療治の侍臣》といったコンボパーツを使う必要がないので、単体でのカードパワーに勝り他のミッドレンジに有利な構成となっています。緑白の2色はマナ基盤も安定していますが青を足すことで《聖遺の騎士》とコンボになる《珊瑚兜への撤退》や、過去のスタンダードのBant Companyでもお馴染みの《反射魔道士》 や《呪文捕らえ》といった優秀なクリーチャーにもアクセスができるようになるので考慮に値します。
総括
SCGO SyracuseはEldrazi Tronがワンツーフィニッシュを飾り、SCGO Baltimore以降勝ち続けていたGrixis Death's Shadowは数を減らしてきています。Grixis Death's Shadowの没落とEldrazi Tronの隆盛の陰に隠れていますが、2日目に進出した4名のUR Gifts Stormがすべてトップ16以内に入賞していることも注目に値します。
緑黒ミッドレンジ系やDeath's Shadowのハンデス/除去など軽い妨害要素を多用するデッキが失速し、Eldrazi Tronが勝ち残ったことによりコンボデッキは復権の兆しを見せています。
Eldrazi Tronに強く、《約束の刻》という新戦力を獲得して安定性が増したScapeshiftも無視できない存在で、他のコンボと同様にハンデスを主力とするデッキの減少に伴い上位で見られるようになってきました。
来週末にはSCGO Richmond、GP Birmingham、GP Sao Pauloとモダンのイベントが充実しているのでモダン好きな方はお見逃しなく。それでは次回の連載でまた会いましょう、楽しいモダンライフを!