Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2019/03/14)
はじめに
2月最後の週末。ミシックチャンピオンシップ・クリーブランド2019が開催されました。厳密に言えば今シーズン2回目のプロツアーですが、システムの変更によって第1回ミシックチャンピオンシップという位置づけとなり、競技マジックが新時代を迎えてから初となる大規模な大会です。まだ明らかになっていない部分もありますが、ミシックチャンピオンシップは今後も大きな比重が置かれるイベントになっていくと思います。
私はプラチナレベルまでプロポイント7点が不足している状況であり、その獲得を目指していこうと考えていました。それに加えて、私は自分のライフスタイルに厳しい制約を設けることにしたのです。記事の最後には、ミシックチャンピオンシップで使用したデッキのサイドボードプランについても言及しました。その点についてだけ知りたい方は、気兼ねなく読み飛ばしてしまってくださいね。
数々の挑戦
私のカレンダー上では、2/20がミシックチャンピオンシップの開催地であるクリーブランドへ発つ日でした。今回の大会に参加するに当たり、準備という点において、何らかの変化を加えた方がいいのではないかという思いがありました。前回の結果が悲惨だったからというわけではなく、改善できることが間違いなく存在していたからです。
ここ数ヶ月、欠かさずジムに通うようにしています。結構な頻度で通っていますし、さまざまなトレーニングもするようになったので、とてもいい状態にあると感じていました。そして、健康習慣のためにもう少し踏み入ったことをして、マジックにも役立ててみたいと考えるようになったのです。
アメリカに発つまでの20日間、以下のことを実践しようと決めました。
私はヘビースモーカーではありません。タバコ20本入りの1箱があれば、1週間はもちます。問題なのは、マジックの大会中となると、狂ったようにタバコを次から次へと吸ってしまうことにあるのです。禁煙をするに当たって、グランプリ・ストラスブール2019は大きな試金石となります。ですが、これらの禁止事項はアメリカに行くまでにしようと考えていました。というのも、アメリカに行けば文化の違いや時差という大きな変化に見舞われますから、なかには継続が難しいものもあるからです。
Magic Onlineでの調整とMOCS予備予選
前回のプロツアーでの大きな失敗のひとつとして、デッキ選択をMagic Onlineのリーグの結果に依存し過ぎたことが挙げられます。そのときに使用したデッキは、いつぞやの青黒ゾンビほどではなかったのは間違いないですが、決して出来がいいとは言えないものでした。プロツアー『ラヴニカのギルド』でボロス「教導」を持ち込んだ私たちは、新たなカウ・ブレードを携えているのだと思っていました。しかし、そのデッキを使用したチームメンバー全員があまりにも平凡な結果に終わってしまい、少々落胆した記憶があります。
相性がよいと思っていたマッチアップは、実はかろうじて相性がよいぐらいであり、相性が悪くないと思っていたマッチアップは、実は不利だったのです。この教訓から、今回はチームメンバー間で対戦する機会を大幅に増加させました。Magic Onlineのリーグは、さまざまなデッキの感触を確かめること、そしてメタの理解を深めることに狙いを絞り、以前より使用を控えました。
MOCS予備予選
とはいえ、MOCS予備予選が迫ってきており、Magic Onlineのなかでも屈指の環境でデッキを調整できるチャンスは逃したくないものでした。私はいつでも使えるようにしてあるイゼットドレイクで出場する気でしたが、イベントが始まる数時間前に、友人から《ハイドロイド混成体》をタッチしたリストが送られてきました。まったく試したことがないデッキでしたが、一度試してみようということになり、結果は6-2。、MOCSプレイオフの参加権利を手にできたものの、《ハイドロイド混成体》がタッチに値するだけのものかはわかりませんでした。
以下のものがその際に使用したデッキリストですが、気になる方もいると思うので説明しておきますと《山》が1枚余計に入っています。基本土地をグルランドに入れ替えようとした際に、誤って「add 4 to the list(4枚追加する)」をクリックしてしまったのです。グルランドが使えたので、よしとしましょう。
2 《島》
4 《蒸気孔》
3 《繁殖池》
1 《踏み鳴らされる地》
4 《硫黄の滝》
3 《内陸の湾港》
1 《根縛りの岩山》
-土地 (22)- 4 《プテラマンダー》
3 《ハイドロイド混成体》
4 《弾けるドレイク》
2 《パルン、ニヴ=ミゼット》
-クリーチャー (13)-
調整を重ねていくなかで一番衝撃だったのは、MTGアリーナにおいて構築でミシックランクになれば、BO3での調整が非常に高い質で行えるということでした。ランキングで上位8名に入ると、ミシックインビテーショナルへの出場権利が与えられるため、熾烈な争いが繰り広げられています。誰しもが勝利に向けて全身全霊で取り組んでおり、デッキやサイドボードプランも質が高いものとなっているため、練習の場としては非常に信頼性が高いものとなるのです。そのため、非常に限定的な事項を調整したい場合を除き、チーム間での対戦は減っていきました。
かたや、ドラフトは悲惨なものでした。MTGアリーナのボットは決して質がよいとは言えず、非常に多くのデッキがギルド門デッキになってしまいます。Magic Onlineのドラフトも、卓が立つまでに時間がかかってしまいます。
グランプリ・ストラスブール2019(リミテッド)
私の個人的な挑戦は非常に順調に進行しており、自ら設定したゴールに向けて上手く自己コントロールできている状態にありました。ですが、このグランプリでタバコを吸ってしまわないか、とても心配だったのです。また、リミテッドに大きな自信があったわけではないですが、マルシオ・カルヴァリョ/Marcio Carvalhoや、導師であるベルナルド・サントス/Bernardo Santosと週末を過ごすことになっていたので、そこで改善が図れるのは間違いありませんでした。
ポルトガル語をご存知でない方のために説明しますと、マルシオは1ヶ月先のフライトを予約してしまったため、自らの行為を笑い、責めるようなメッセージを送ってきたのです。ストラスブールへの素晴らしい旅を予約しておきながら、グランプリには参加できないとのことでした。
金曜日、私はベルナルドと、Magic OnlineでAlvasとして知られているプレイヤーと空港で落ち合いました。しかし、マルシオに続き、ここでも私たちは仲間を失うことになります。Alvasはレガシーのスペシャリストであり、MTGアリーナのリミテッドランキング1位になった後、その週の早くからフライトの予約をしていたのですが、パスポートもポルトガルのIDも有効期限が切れており、搭乗することを許されなかったのです。
結局私はベルナルドと二人になってしまいましたが、何より驚いたのは、彼もタバコを絶っていたことでした。おかげさまで、私が昔の習慣に戻ってしまう確率を下げられたのは間違いありません。
土曜日に受け取ったシールドのプールは基準を満たすようなものであり、グルールに黒をタッチした、クリーチャーのサイズで圧倒するデッキに仕上がりました。3Byeに加えて、標準よりもいいドローが重なり、なんとか8-1で切り抜け、とても満足のいく結果に終わりました。
日曜日は、とても出来のよいアゾリウスをドラフトで組み上げたのですが、1-2というガッカリな成績でした。
これだけのデッキを使いながらも、トップ8の可能性がなくなってしまったのは残念でしたが、重要な意味を持つプロポイントのためにドロップしませんでした。ここから3連勝すれば、12-3でプロポイントを3点追加できるため、ミシックチャンピオンシップで9-7以上でプラチナレベルに到達できます。あるいは1-2でもプロポイントを1点追加し、ミシックチャンピオンシップで10-6以上でプラチナレベルを達成という状況でした。
ここから状況が一変し始めます。とてつもなく無残なデッキをドラフトしてしまい、これは全敗してしまうだろうと覚悟を決めたのです。
このデッキには何でも揃っています。脆いマナ基盤、悪質なマナカーブ、除去の薄さ、そしてデッキ内には仕方なく入れているだけのカードばかりなのです。唯一の勝ち筋は、《天使の称賛》で飛行や絆魂を持つクリーチャーをサポートする形でした。最初の2マッチは連敗(ゲームカウントで言えば0-4)してしまいましたが、どういうわけか最終ラウンドでByeを獲得!同じく連敗をしてしまったプレイヤーがドロップし、私は試合をすることもなくプロポイントを1点追加したのです。これはあまりにも大きいものでした。
ミシックチャンピオンシップ
スタンダードのデッキ選択
グランプリが終わり、リミテッドもまだ追い込みをかける必要があると認識していましたが、スタンダードのデッキについても決め兼ねていました。イゼットドレイクは、MTGアリーナで数ヶ月間使ってきたものであり、他に選択肢がない場合に使うことも可能でしたが、ミシックチャンピオンシップで使う気にはなれませんでした。グランプリ・メンフィス2019を優勝したラクドスミッドレンジは目を引くものであり、何ゲームか使ってみたのですが、こちらも感触はよくなかったのです。ベルナルド、マルシオ、ティアゴ・サポリート/Thiago Saporitoは青をタッチした白単ウィニーでほぼ確定していて、私も試してみることにしましたが、まったく好きになれませんでした。
白単ウィニーを使う彼らのゲームを何回か観戦するうちに、私は一番重要な点を取り違えていたのだと気づきました。このデッキは盤面を作っていくことが肝要であり、あまりテンポで勝ちに行くデッキではないのです。それまで私はより大きな盤面を作るのではなく、少しでもダメージを稼ごうとしてしまっていました。このようなプレイを取った場合、このデッキには直接相手のライフを削る手段もなければ、速攻クリーチャーもいないので、最後に残った数点のライフが削りきれない場面があまりにも多かったのです。この認識を修正したところ、勝率は上がり、デッキへの印象は大きく好転しました。
デッキリストについては大きな革新こそないですが、マルシオがおおよそのカード選択について、こちらで解説してくれています。
当時のメジャーなデッキリストと比較した場合、最大の違いはメインデッキに採用された2枚の《不可解な終焉》でした。これは、環境に存在する問題となるクリーチャーを除去したい場合に、《議事会の裁き》よりもはるかに綺麗に対処できることがあるのです。クリーチャーしか相手のライフを奪う手段がないこのデッキにとって、「召集」でターンを費やして攻撃しないというのは致命的と言えます。また、同じく「召集」をもつ《敬慕されるロクソドン》を採用しているため、「召集」でなくても2マナで唱えらえる《不可解な終焉》に利点を見出せます。
その他に目を引くカードとしては、メインデッキの《暴君への敵対者、アジャニ》でしょうか。これはサイドボードが16枚欲しかったので、それを1枚昇格させたものです。
チームメンバーと違い、私だけが採用したカードが2枚あります。まずは《呪文貫き》の枠に採用した3枚目の《軽蔑的な一撃》です。スゥルタイと戦うにはもう1枚必要だろうという私の判断でした。そしてもう1枚は《不敗の陣形》の代わりに入れた《啓蒙》です。この入れ替えについては今でもやってよかったと思えますし、もう1枚追加すべきだとすら感じます。《啓蒙》は対《運命のきずな》デッキやミラーマッチにおいて極めて有用で、ゲームの展開を一転させるようなテンポを獲得できる重要な役割があるのです。
4 《神聖なる泉》
4 《氷河の城砦》
-土地 (20)- 4 《不屈の護衛》
4 《空渡りの野心家》
4 《短角獣の歩哨》
4 《徴税人》
2 《アダントの先兵》
4 《ベナリアの軍司令》
4 《敬慕されるロクソドン》
-クリーチャー (26)-
大会結果
スタンダードラウンドは6-4であり、《運命のきずな》デッキに2回、青単に1回負けてしまいました。いずれも相性は悪くありません。特別相性がよいというわけでもないですが、マッチングして残念に思うような相手ではないのです。残りの1敗は、決勝に進出したエスパーコントロールと同型のもので、これに関しては相性が悪いと言わざるを得ません。
ドラフトは2日間とも2-1で、満足のいくものでした。初日のドラフトデッキは、ギルド門をサブテーマにした、とても完成度の高いティムールになりました。
2日目はアゾリウスアグロをドラフトし、予想をはるかに上回るパフォーマンスを見せてくれました。手に汗握る接戦で負けてしまったのですが、その相手は新たなHareruya Pros、そして殿堂のラファエル・レヴィ/Raphael Levyでした。
さいごに
PLATINUM!!!!#2019MC1 #HareruyaPros #MTGManager
— Goncalo Pinto (@u_mad_bro_MTGO) 2019年2月23日
振り返ってみれば、この1ヶ月は成功でした。プラチナレベルに必要だったプロポイント7点を稼げたという意味でもそうですし、自ら健康のために課した制約を守り続けることができましたからね。これを機に、できるだけタバコに手を伸ばさないようにしようと本気で決意しました。精製糖やアルコールの制約も継続させていて、たまにであれば、それらを摂取することを「許されて」いますが、大抵はその機会を利用しません。断食のルールも守り続けています。1日を通して集中力を保つ効果的な方法でありながら、特に大きな努力をしなくても摂取カロリーを合理的な水準まで抑えることができるのです。
チームメイトのマルシオ、マイケル・ボンデ/Michael Bonde、ミシックチャンピオンシップトップ8おめでとう!12-4を達成し、プラチナレベルに到達したトーマス・エネヴォルトセン/Thomas Enevoldsenもおめでとう!
記事の終わりに、環境の大多数に対応できるサイドボードプランを紹介しておきましょう!
サイドボードプラン
対 青単
対 スゥルタイミッドレンジ
対 イゼットドレイク
対 白系アグロ
対 赤単
対 《運命のきずな》デッキ
対 グルールミッドレンジ
対 ラクドスミッドレンジ
対 エスパーコントロール
対 セレズニアトークン
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ではまた次回!
ゴンサロ・ピント