ローテーション後にも活躍が期待できる10種のデッキ

Fabrizio Anteri

Translated by Nobukazu Kato

原文はこちら
(掲載日 2019/09/09)

ローテーションとスタンダード2020に備えよう

みなさんこんにちは。

ローテーションはマジックの中でも特に好きな時期です。新環境で様々な可能性を探ったり、デッキを組み上げたりする余地が大きいですからね。カードプールはやや小さくなってしまいますが、依然として選択肢は十分にあり、解きごたえのあるパズルとなります。

今回は『エルドレインの王権』のプレビューカードにスポットは当てず、ローテーション後も残るセットでどんなデッキが組めるのかを探っていこうと思います。ここでご紹介するデッキたちは特に「スタンダード2020」に役立つことでしょう。このイベントは、日本時間の9/10から9/26まで、MTGアリーナのBO1(1本先取)とランク戦のBO1で遊べる予定となっています。

単色デッキ

使用できるカードプールを確認してみると、強力なカードが揃っているものの、『イクサラン』と『ドミナリア』に収録されたチェックランドがローテーションで使えなくなってしまうため、マナベースが大幅に弱体化していることがわかりました。そこでまず私が目をつけたのが単色デッキです。

大嵐のジンベナリアの軍司令ゴブリンの鎖回し

《執着的探訪》《大嵐のジン》が抜け、青単はデッキの核がなくなりました。白単ウィニーは《ベナリアの軍司令》《ベナリア史》《軍団の上陸》《アダントの先兵》を失ったため、デッキそのものが機能しなくなったと言っても過言ではないでしょう。

赤単はクリーチャーと火力呪文の大半を失います。(クリーチャーは《狂信的扇動者》《ギトゥの溶岩走り》《ヴィーアシーノの紅蓮術師》《ゴブリンの鎖回し》。火力呪文は《稲妻の一撃》《魔術師の稲妻》)。

ローテーション後に残るのは、ビッグレッドのベースとなるカードです。

ビッグレッド

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このデッキの強みはプレインズウォーカー群にあります。《主無き者、サルカン》は他のプレインズウォーカーと合わせることで大きな脅威となります。また、チャンドラを多く採用することで《チャンドラの勝利》が5点火力として機能するようになるため、《稲妻の一撃》の代わりとして適切なカードとなることでしょう。《チャンドラの勝利》はプレイヤーにダメージを与えることはできませんが、ビッグレッドはライフを狙うよりもプレインズウォーカーを守るために火力呪文を使いたいので、大きな問題とはなりません。

保有の鞄チャンドラの調圧器

非常に綺麗なマナベースであるとはいえ、デッキの安定性には不安が残ります。土地や序盤にマナコストの重いカードを引きすぎてしまうと痛手となりかねません。だからこそ《保有の鞄》《チャンドラの調圧器》を試すことにしました。《保有の鞄》の起動型能力のコストは少々重いですが、序盤の動きをスムーズにし、後になって追加土地と高マナ域の呪文を手札に戻せば勝利につながるはずです。注意していただきたいのですが、《保有の鞄》が戦場にある場合、《強迫》《思考消去》で手札破壊されたカードも追放されます。

以前までは十分に強力だとは言えませんでしたが、今は試したくて仕方がないのが黒単です。

黒単

  • ファブリツィオ・アンテリ
  • 「黒単」
  • 「スタンダード2020」デッキ#2
  • (BO1)
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メタゲームが固まれば、黒単はチューニングする余地が大きく出てくることでしょう。アグロの構築が困難であることや、タップインが多いマナベースになりそうなことを踏まえ、《強迫》をメインデッキから4枚採用することにしましたが、場合によっては《見栄え損ない》にしても良いと思います。《害悪な掌握》《古呪》もややギャンブル要素があり、大当たりか大ハズレとなるでしょう。

オルゾフの処罰者疫病造り師夜の騎兵戦慄衆の将軍、リリアナ

このデッキで好きなシナジーは、《オルゾフの処罰者》あるいは《ヤロクの沼潜み》《疫病造り師》《夜の騎兵》を生け贄に捧げることです。フィニッシャーには《戦慄衆の将軍、リリアナ》を選択しましたが、《人知を超えるもの、ウギン》《戦慄衆の指揮》《ボーラスの城塞》といったカードも有効な選択肢となるでしょう。

続いては2色デッキに移りましょう。(「神殿」サイクルがある)マナベースが強い5つのギルドと、マナベースが弱い、あるいは弱めの土地を使わなければならない5つのギルドがあります。

2色デッキ

ボロスフェザー

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ボロスフェザーは以前の形とほぼ変わりがありません。《無謀な怒り》は最重要カードの1枚でしたが、その穴を埋めるために《立腹》でアグレッシブなアプローチをとることにしてみました。

立腹速太刀の擁護者ブリキ通りの重鎮、クレンコ正義の模範、オレリア

《速太刀の擁護者》《ブリキ通りの重鎮、クレンコ》はパワーに修正を与えたときに真価を発揮します。そのため、 《正義の模範、オレリア》を使うのは良いアイディアではないかと考えました。《牢獄領域》は追加の妨害要素としての採用です。マナベースについてですが、土地23枚は従来よりも多い数となっています。ボロスフェザーは赤マナと白マナ2マナを序盤に見つける必要性が高いため、手札から何も唱えられないよりもマナフラッドのリスクをとろうという考えです。

シミックフラッシュ

  • ファブリツィオ・アンテリ
  • 「シミックフラッシュ」
  • 「スタンダード2020」デッキ#4
  • (BO1)
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シミックもマナベースが強いギルドのひとつです。シミックランプは良い土壌がありますが、《運命のきずな》がないなら勝利に直結するカードのために3色目を追加する必要があるように感じます。そこで私が試そうとしたのが、このシミックフラッシュです。

エリマキ神秘家夜群れの伏兵野獣の擁護者、ビビアン

《エリマキ神秘家》《夜群れの伏兵》を使うデッキが4マナを構えることがいかに恐ろしいかはみなさんもご存知でしょう。そのため、できる限りこの動きを3ターン目に実現したいと考えました。このデッキはほぼクリーチャーだけで構成されており、唯一の例外がクリーチャーを豊富に採用していることに見返りを与えてくれる《野獣の擁護者、ビビアン》です。クリーチャー全員が瞬速を持つ?さぁ、がんばって狼とハイドラの群れを倒してみてください。

その他の「神殿」がある3つのギルド(イゼット、ゴルガリ、オルゾフ)でもデッキを作ってみましたが、納得のいくものはできませんでした。

マナベースは弱くなってしまうものの、グルールストンピィは来週の手始めのデッキとして良い選択肢であると考えています。

グルールストンピィ

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《ラノワールのエルフ》の喪失は確実に大きな影響をもたらします。ですが、環境全体の速度が遅くなるため、サイズの大きいクリーチャーをマナカーブ通りに展開していくのは次期環境でも十分に通用するゲームプランとなる可能性があります。

世界を揺るがす者、ニッサ主無き者、サルカン無効皮のフェロックスザル=ターのゴブリン

構築の選択肢が豊富なアーキタイプであり、5マナ域には《世界を揺るがす者、ニッサ》《主無き者、サルカン》がいますし、4マナ域には《無効皮のフェロックス》を使っても良いかもしれません。《ザル=ターのゴブリン》は優秀な2マナ域ですが、マナベースへの負担が大きくなってしまうように思います。

セレズニアはパーツが不足しており、ディミーアやアゾリウスはコントロールとしてマナベースが好きになれません。2色はここまでにし、健全なマナベースである3色デッキを見ていきましょう。

3色デッキ

ジェスカイプレインズウォーカー

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数か月に渡ってメタゲームに出入りしていましたが、ローテーションでのダメージが少ないアーキタイプです。

選択予期稲妻の一撃チャンドラの勝利

《選択》《予期》になり、《稲妻の一撃》《チャンドラの勝利》となりました。《ドビンの拒否権》を支えるマナベースの構築は困難であるかもしれませんので、代わりに《否認》を採用しても良いでしょう。細部の構築はメタゲーム次第ですが、プレインズウォーカーに偏った環境になった場合、全体除去の5枚体制は過剰かもしれません。

ティムールエレメンタル

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私自身は念入りに調整したことがないデッキですが、質の高いデッキを作れるだけの土台があることは確かです。マナベースは理想的でないものの、ローテーション後は単色以外のほぼ全てのデッキが同様に抱える問題でしょう。

発現する浅瀬雲族の予見者乱動の座、オムナス新生化

《新生化》を入れるか入れないか、つまりミッドレンジ寄りにするかシナジー寄りにするかは、MTGアリーナのイベントが始まり、新環境でプレイヤーたちが遊び始めればわかることでしょう。

ティムール《荒野の再生》

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イゼットカラーのデッキを作ろうとしていた際に、パスカル・メイナード/Pascal Maynardがミシックチャンピオンシップ・クリーブランド2019で使用したデッキを思い出し、参考にすることにしました。これこそがイゼットデッキに求める土台になると思ったのです。

発展+発破荒野の再生

《荒野の再生》《時を解す者、テフェリー》が登場するまで極めて強力なカードでした。テフェリーはローテーション後も目にするでしょうが、以前ほどの頻度ではない可能性はあります。いずれにしてもこのデッキはテフェリーを対処する手段を持っていますし、必ずしも容易に妨害・中断されない強力な動きを実現できます。マナベースは新環境の3色としてはこの上なく安定しているでしょう。土地27枚の青赤が中心のマナベースです。

その他の可能性

隠された手、ケシス第1管区の勇士大集団の行進

アブザンもマナベースが安定していますが、デッキを作るに値するテーマが見つかりませんでした。私が実際に試したのは、(コンボではなくアドバンテージ源として)《隠された手、ケシス》を使った伝説デッキ《第1管区の勇士》を使った多色デッキ《大集団の行進》を使ったトークンデッキです。私はこれらのアイディアを諦めかけていますが、みなさんなら出来の良い60枚を組み上げられるかもしれません。

枝葉族のドルイド発現する浅瀬茨の騎兵

スゥルタイは青緑ランプデッキのようなものになると思われますが、黒を使う理由が見当たりません。「探検」クリーチャーがいなくなれば、スゥルタイミッドレンジも質が低下してしまうように思います。

炎の侍祭、チャンドラ崇高な工匠、サヒーリ炎の職工、チャンドラ

マルドゥはコントロールとして調整してみたところ、赤のプレインズウォーカーと雑多な多色呪文が残る形となりました。それならばビッグレッドにした方が良いだろうというのが私の見解です。

当初は、「神殿」を1種類しか使えない3色デッキは円滑なマナベースを組み上げられず、構築するまでもないだろうと思っていました。ところが、大満足のデッキを2つ作ることができたのです。

エスパー

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ローテーション後も強力なカードがほぼ全て残ります。(いなくなったのは《あのカード》だけですね。名前はなんでしたっけ?)

6マナのプレインズウォーカーである《人知を超えるもの、ウギン》《戦慄衆の将軍、リリアナ》は、5マナのテフェリーの代わりを務めてくれることでしょう。それよりも大きな問題はマナベースです。私は土地を1枚追加してデッキを安定させ(現在は土地27枚)、同時に青を濃くしないように《覆いを割く者、ナーセット》をデッキから抜くことにしました。

黒き剣のギデオン発見+発散薬術師の眼識

クリーチャーがいないデッキで《黒き剣のギデオン》を採用するのはやや違和感がありますが、アグロデッキが少ない環境になるとすれば、《黒き剣のギデオン》でプレインズウォーカーにプレッシャーをかけるという考えは非常に良いでしょう。また、《発見/発散》は色事故を防ぐのに役立ちます。《アズカンタの探索》が使えなくなるため、《薬術師の眼識》へと回帰するのは名案だと思いますし、相手次第で腐ってしまうカードを「再活」で入れ替えられる点も評価に値します。

そして最後は、先ほどほのめかしていたランプデッキを紹介しましょう。

バントランプ

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ぎこちないマナベースになると踏んでいました。ところが《世界を揺るがす者、ニッサ》のために《森》を多く確保した緑単寄りの構成にしたいため、白青の2色土地を減らし、残りのマナベースをショックランドと《森》で組み上げることが理に適っていたのです。

樹上の草食獣

《ラノワールのエルフ》は姿を消しましたが、何らかの1マナのマナ加速が欲しいところでした。1ターン目に展開するのはもちろん、巨大な《ハイドロイド混成体》を唱えるのに先立ってマナの数を偶数に揃えたり、大量ドローした後に浮いた1マナを使う際に有用です。

不和のトロスターニ時を解す者、テフェリー栄光の終焉

このデッキの勝ち筋は盤面に並べたクリーチャーを《不和のトロスターニ》で強化することであったり、《時を解す者、テフェリー》《栄光の終焉》を駆使して「ターン終了時に天使トークンを10体生成する」という古典的な方法であったりします。

さいごに

これでローテーション後のデッキを10個ご紹介しました!デッキを作ることも、この記事を執筆することも本当に楽しい経験でしたので、みなさんにも間違いなく新環境を楽しんでいただけるはずです。

『エルドレインの王権』の発売に向けて日々カード情報が公開されています。この記事で扱った内容がそれに応じて変化していくことも多々あるでしょう。しかし、現時点での環境の土台を理解し、月末の新環境に備えることは非常に重要であると私は信じて疑いません。

ここまで読んでいただきありがとうございました。みなさんもデッキ構築を楽しみましょう!

ファブリツィオ・アンテリ (Twitter)

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Fabrizio Anteri ファブリツィオ・アンテリはベネズエラ出身のプロプレイヤー。11回ものグランプリトップ8入賞回数を誇り、そのうちの5回で優勝を収めている。2018年の春に開催されたグランプリ・ボローニャ2018で準優勝に輝き、第2回Hareruya Hopes公募でHareruya Hopesに加入。 Fabrizio Anteriの記事はこちら