マジックの上達に必要な3つのもの ~技術よりも伝えたいこと~

Sebastian Pozzo

Translated by Nobukazu Kato

原文はこちら
(掲載日 2019/08/26)

技術よりも伝えたいこと

やぁみんな!僕はこの間、ミシックチャンピオンシップ・ロングビーチ2019(MC5)の参加権利を獲得した。こんなにありがたくて幸せな気分は他にないだろうね。今回の記事では、僕が結果を出すに至った重要な要因について精一杯話そうと思う。ただ、マジックの技術的な側面に重きは置かない。僕たちがマジックで成功を収めるうえで有用なモチベーションや考え方に焦点を当てていく。

ミシックチャンピオンシップへの道のり

MTGアリーナによるミシックチャンピオンシップは“68名の選ばれし者だけが参加できる新時代のプロツアー”だ。マティアス・レヴェラット/Matias Leverattoミシックチャンピオンシップ・ラスベガス2019(MC3)を優勝したのも記憶に新しいだろう。ただ、この大舞台へ立つ方法を知らない人もいるだろうから、そのシステムを簡単に説明しておこう。

長い道のりにはなるけど、コンピューターとインターネットさえあれば、世界のどこに住んでいても等しくチャンスが与えられるのは素晴らしいことだ。人を選ぶことなく、みんなにも同様の可能性がある。

まず、構築かリミテッドでミシックランクの1000位以内に入り、ミシックチャンピオンシップ予選ウィークエンド(MCQW)の参加権利を得る必要がある。予選が行われる週末になったら、初日は10勝か2敗するまで2本先取のスタンダードをプレイする(ミシックチャンピオンシップ・ラスベガス2019では8勝か2敗するまでだった。少しずつ難しくなっていることになるね)。

初日の上位128名は2日目に7回戦を戦い、16の招待枠をかけて争う。総合成績が5-0や5-1のプレイヤーは予選抜けとなり、5-2でも若干名が権利を得ることができる。

このように険しい道のりだけど、やってみる価値はある!それに、突出した実力を持つ世界中のプレイヤーを前に腕試しできる場にもなる。

デッキ選択

本番までは1週間しか猶予がなかった。ミシックチャンピオンシップ・バルセロナ2019(MC4)の後に休暇を取っていたんだ。

敵意ある征服者軍団の副官傲慢な血王、ソリン

最初に試してみたのはオルゾフ吸血鬼だった。完成度は高かったけど、同時に少し物足りなさを感じた。何度もマリガンしたり、マナスクリューやマナフラッドしたりで取れる選択肢がほとんどない場面がたまにあったんだ。MCQWでは度重なる失敗が許されない。

風景の変容死者の原野ハイドロイド混成体

オルゾフ吸血鬼は諦め、《風景の変容》デッキ(スケープシフト)を試すことにした。大きな手ごたえを感じるとともに、オルゾフ吸血鬼よりも遥かに安定していた。それだけでなく、スタンダードのメタゲームマスターであるブラッド・ネルソン/Brad Nelsonが本番の2日目にスケープシフトを使っていたのも素晴らしい判断材料となったね。僕は彼のデッキリストに非常に納得ができたので、完全なコピーをさせてもらうことにした。

Bant Scapeshift

そして、土曜日は完璧に物事が運んだ。

こんなにも全てのことが思い通りにいった日は中々ない。最終戦では負けても2日目が確定していたけど、最後の最後のターンで《拘留代理人》をトップデッキしてミラーマッチを制した。ただ、MCQWでは初日の成績が2日目に重要な影響を与えるわけじゃない。

それに2日目は強豪が揃う難関であることは明白だった。僕が知っているプレイヤーだけでも、Oliver TiuOndrej StraskyStanislav Cifka(この3人はMC5の権利を獲得した)、そしてMartin MullerSimon Gortzen津村 健志・ブラジル出身で前回権利を獲得したPatrick Fernandes(この4人は惜しくも予選通過できなかった)といったプレイヤーがいた。(できる限り思い出してみたけど、名前を挙げ忘れている人がいたらごめん!)

意外だったのは、初日に一度もオルゾフ吸血鬼に当たらなかったことだ。(厄介な相手だけど、十分に勝てる見込みはある)ところが、2日目に奴らは待ち構えていた。最初の4回戦は全てオルゾフ吸血鬼であり、3回戦目だけ敗北した。

ドミナリアの英雄、テフェリー裏切りの工作員

続く5回戦ではジェスカイプレインズウォーカーと当たった。サイドボードに《ドミナリアの英雄、テフェリー》《裏切りの工作員》を2枚ずつ採用しているから戦いやすい相手だった。

精励する発掘者隠された手、ケシスモックス・アンバー

6回戦は勝てば予選通過という状況だった。だけど、Stanislav Cifkaが生み出した《隠された手、ケシス》コンボを使うOndrej Staskyが立ちはだかり、僕はコテンパンにやられてしまった。ただ、僕はオポネント・マッチ・ウィン・パーセンテージがかなり高く、7回戦でもう一度チャンスが巡ってくるだろうと思っていた。

第10管区の軍団兵贖いし者、フェザー果敢な一撃

その相手は非常に相性が良いボロスフェザーだったけど、かつてないほど苦戦を強いられた。1ゲーム目を落とし、2ゲーム目はアンタップインの土地を引けていなければ負けていた状況まで追い込まれた、3ゲーム目は終始ゲーム展開を掌握することができた。総合成績が5-2となり、タイブレイカーによって15位に入賞。こうして16の招待枠に入ることができたんだ。

MC5の参加権利獲得は今の僕にとってあまりにも大きな意味があった。あんなにかっこいい大会でプレイできるからというのもあるけど、競技システムが変更されたことで2020年に開催される卓上イベントの権利がない状況だったからだ。

成功の要因

予選を通過したことで、いくつかの気づきを得ることができた。今回成功を収めることができたのは、以下の3つの要因が大きかったように思う。

1:休暇をとる

至福の休息

2週間以上もマジックに触れなかったのはいつ以来だっただろう。おかげでマジックをやりたくて仕方なくなった。そして物事というのは楽しむほど上達できる!

ときに僕たちは上達につながらない行動を繰り返して行き詰まってしまうことがある。そういうこときこそ、休暇のようなリセットが大いに役立つんだ。それに素晴らしい時間と幸せな気分がメンタルをポジティブにして、未来を楽観的に考えられるようになる。そういった意味でも休暇は重要だと思う。

2:新たなモチベーション

勝利の神、イロアス

さっきも言ったように、組織化プレイに複数の変更が加わり、マジックのプロ業界は新たに生まれ変わった。従来より新システムが明確に優れている点は多い(マジック・プロリーグ、ライバルズ・リーグ、多額の賞金、MTGアリーナから名を挙げられる可能性など)。だけど、プレイヤーによっては痛手となる変更でもあるんだ(たとえば、卓上のプロツアー/ミシックチャンピオンシップへ連続で参加しやくするプロプレイヤーズ・クラブがなくなった)。

世界最高峰のレベルで戦い続けるために、僕は年末までに何らかの結果を出す必要がある立場にいる。だからこそ僕は再びモチベーションを高めることができた。

3:新たなマインドセット

精神の制御訓練場

ここ3年間のプロツアー/ミシックチャンピオンシップに僕は参加し続けてきた。今思えば、僕が目指していたのは学ぶことと成長することであり、結果はあまり意識していなかった。上達していけばいずれ結果は伴ってくるだろうとわかっていたからだ。そして2016-2017シーズン、僕の中で最大の業績であるスタンダード・マスターの称号を獲得した(シーズン中の4回のプロツアーで勝ち星をあげたのはほとんどスタンダードだった)。

しかし最近になって僕は自分のスキル向上をあまり気に留めないようになってきていた。結果に目が行きがちになり、初のミシックチャンピオンシップトップ8に入ることを夢見ていたんだ。そして休暇からの帰りの飛行機で僕は自分の過ちに気づくことになった。僕は飛行機のなかでRafael NadalRoger Federerによるウィンブルドン選手権の決勝を題材にしたドキュメンタリー映画を見ることにした(Strokes of Geniusという映画だ。ぜひ鑑賞して欲しい)。

そのなかでRafael Nadalが語っていたのは、毎朝トレーニングをするに当たって、どうすれば上手くなれるか、速く動くにはどうすれば良いのか、どうすればボールをもっと上手く打てるようになるかといったことを目標にして取り組んでいる、ということだった。僕はその言葉に大きく心を揺さぶられた。(テニスというマジックよりも厳しい競技シーンで)世界2位に立つプレイヤーが常日頃から成長しようと努めているのに、僕がトップ8に入ることをただ待ちぼうけていて良いわけがない。

ここでの気づきが大いに役立ち、僕は結果から意識を遠ざけ、今までよりプレッシャーを感じなくなった。結果に関連した夢や目標を持つことは良いことだけど、それだけにとらわれずに、どんな結果も受け入れることも重要だ。また、結果に執着しなければ、失敗に恐れを抱くようなこともなくなるはずだ。

この3つの要因が重なって、僕はMCQWで力を発揮することができた。今の目標は、きたるイベントでもこれを繰り返していくことにある。

MTGアリーナで戦い抜くためのアドバイス

MTGアリーナに親しみがあまりなかったり、システムが好きになれなかった人もいるだろう。お金を使いすぎることなく頂点を目指していくために、僕からいくつかアドバイスをさせて欲しい。

今回の記事はここまで。読んでくれてありがとう!

セバスティアン・ポッツォ (Twitter)

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Sebastian Pozzo 2016-2017シーズンの「スタンダード・マスター」を獲得し、アルゼンチン人として初めての世界選手権出場を決めたゴールドレベル・プロプレイヤー。 その称号の通り、構築フォーマットを得意とし、特に優れたデッキを選択する慧眼を持つ。プロツアー『破滅の刻』でも大本命の『ラムナプレッド』を使用して、見事に『スタンダード・マスター』となった。 チームメイトでもあり同じアルゼンチンを代表するプレイヤーでもあるLuis Salvattoと共に、Hareruya Prosに加入。 Sebastian Pozzoの記事はこちら