インタビュー: 高橋/橋爪/佐野チーム(東京理科大学)

晴れる屋

By Hiroshi Okubo


 チーム戦の醍醐味の一つである「相談」という要素。無数の選択肢からプレイングを選択するこのマジック:ザ・ギャザリングというゲームにおいて、複数人の意見を擦り合わせることでミスを減らせる可能性が高まるというアドバンテージは計り知れない。

 当然、会場では様々なチームが呪文のプレイのタイミングやコンバットのやりとりについて熱く語り合っていたのだが、中でも非常に楽しそうにコミュニケーションを取っていた、とあるチームが目に留まった。晴れる屋で開催された【PPTQ「マドリード」】を抜けた経験を持つ高橋を中心とする東京理科大学の非電源ゲームサークルである。


左から高橋 雅人(《霊気池の驚異》)/橋爪 伊織(赤黒バーン)/佐野 温子(青白《パンハモニコン》)


 明るく朗らかな橋爪と紅一点の佐野、そして2人の意見をまとめる冷静な高橋。この3人の絶妙なバランス感は会場でも随一だろう。さっそく、この3人に話を伺ってみた。



■ 3人はどういう集まり?

--「まず、みなさんの学校とチーム結成の経緯について教えてください」

橋爪「学校は東京理科大学です。僕と高橋が同期(4年)で、佐野さんが院生ですね」

佐野「うちのサークルの部長でレベル2ジャッジの松下 隆輝さんがマジックインターハイのことを教えてくれたんですけど、その本人が今日別の場所で開催されているPPTQのジャッジをすることになって……」

高橋「マジックをプレイしているメンバーは(松下を除くと)僕らしかいないので、必然的にメンバーはこの3人になりましたね」

--「なるほど。それぞれがご担当されているデッキはどのようにして決まったのでしょうか?」

佐野「まず私が《パンハモニコン》を使いたいって言ったんです」


パンハモニコン反射魔道士


高橋「そのあと僕が《霊気池の驚異》を使って、橋爪が余り物を担当しましたね」

橋爪「そうそう。それで八十岡さんがプロツアーで使用しているグリクシスコントロールを組もうかなと思ったんですが、3人のカードを集めても《奔流の機械巨人》が1枚しかなかったので断念して、今はURバーンを使用しています」


奔流の機械巨人


--「それだとたしかに厳しそうですね。ちなみに、デッキのパーツはみなさんでシェアされてるんですか?」

橋爪「ほとんどシェアしてますね」

佐野「このチーム全部自分のカードでデッキを組んでいる人はいないよね。特にメインでスタンダードをプレイしている人がいないので……」

--「スタンダードプレイヤーがいない? すると、みなさんは普段どのフォーマットで遊んでいらっしゃるのでしょう?」

佐野「私はリミテッドとEDHですね。カジュアルフォーマット中心です」

高橋「僕はPPTQなど競技イベントにも参加するのでスタンダードやモダンをプレイすることが多いですが、最近までPPTQがモダンシーズンだったこともあってスタンダードのカードはあまり持っていなかったんですよね」

橋爪「自分はスタンダード……なのかな。ただ、お金がないので最近はローテーションを追いかけるのも大変になってきました(笑)」

--「たしかにローテーションのサイクルが変更されてスタンダードを追いかけるのは学生には少し厳しくなりましたよね」



■ サークルならではの繋がり

--「しかし、本日はいらっしゃらない松下さんを合わせても4人しかプレイヤーがいないとなかなか調整なども大変そうですね。いつも4人集まれるとも限らないでしょうし、普段はみなさん別々にカードショップなどで練習されているのでしょうか?」

橋爪「サークルに在籍中のマジックプレイヤーは僕らと松下くんの4人だけですが、よくOBが遊びに来るので、僕らがマジックをプレイするときはこの4人にOBを交えて遊ぶことが多いですね」

--「OBと仲がいいサークルなんですね」

高橋「そうですね、OBの中には【第3期スタンダード神】の瀬尾 健太さんもいらっしゃいます。最近はあまり顔を出してくれませんが、LINEでデッキの相談をしたりすることはありますね」


第3期スタンダード神・瀬尾 健太
瀬尾 健太


--「おお、瀬尾さんの母校でしたか! では、わりと日頃からマジックで遊べているんですかね?」

佐野「まぁ、OBの皆さんは『社会人になって自由に使えるお金が増えた!』って言って、最近はレガシーを組んでそちらに夢中なので、やっぱりちょっとチグハグではありますけどね(笑)」

--「たしかに学生と社会人だと使えるお金の幅がだいぶ変わりますよね。ちなみにみなさんはレガシーは……?」

橋爪「やりたいんですけど、お金がなくてなかなか組めないですね(笑) 【グランプリ・千葉2016】は学生の参加費も無料で開催していただけるそうですし、参加したいのはやまやまなんですが……」



■ あえて相談しないという戦略

--「ちなみに、ゲーム中よくコミュニケーションを取っていらっしゃった印象を受けました。今回のチーム戦に向けて練習を積んできているのでしょうか?」

橋爪「いや、チーム戦の練習自体は先週晴れる屋のチームスタンダード杯に出ただけで、そのときゲーム中に相談するのは本当に難しい盤面以外なるべく減らそうって話になったと思うけど……そんなに相談してたっけ。普段マジックしているときの延長でつい喋っちゃうのかも」

高橋「相談を減らすっていう方針の意識共有はできてなかったかもしれないけど、今からそうしよう」

--「相談をしない方針ですか?」

橋爪「先週のチームスタンダード杯に出たときはめっちゃ相談してて、そのせいでプレイがブレてしまって負けたりしたんですよね。あの火力本体に撃ってたら勝ってたじゃん、みたいな」

高橋「僕のデッキは《約束された終末、エムラクール》を使うので、相談しているといつまでも時間がかかってしまって引き分けになってしまうこともあったり。なので、なるべく相談は減らしたいです。もちろんコミュニケーションを取りながらプレイすることは必要かなとは思いますが」

佐野「私今日もめっちゃプレイング聞いてたけど、たしかにその方がいいのかも」

--「プレイングの相談ができることはチーム戦の魅力の一つですが、そのことがかえって敗因にも繋がってしまいかねないということですね」

高橋「そうですね。脇に目をやっていると目の前のゲームに集中できないこともありますし、気をつけたいです」

--「ありがとうございました。このあとも頑張ってください!」





 大学入学以来サークルで親交を深めてきた3人は、仲の良さを裏付けるかのようにハイコンテクストなノリを交えながら快くインタビューに応じてくれた。デッキを考えることや勝利することも間違いなくマジックの楽しさの一つだが、根本にあるのは他人と楽しい時間を共有できることにあるのだろう。

 “あの頃に戻る”ことはできないまでも、今この瞬間一緒にマジックを楽しむ仲間との時間を大切に過ごしていきたい。



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