(掲載日 2020/4/11)
(編集者注:この記事は『イコリア:巨獣の棲処』の全カードリストが公開される前に執筆されたものです)
朝礼
みなさんおはよう!『イコリア:巨獣の棲処』の発売まであと少しだ!本日の講義では、プレビュー期間に公開されたカードのなかでも特に面白そうなものを概観する。私は主にスタンダードを嗜むプレイヤーであるから、スタンダードの観点から新カードを評価していく!
あらゆるレアリティから個人的に注目のカードを紹介し、講義の最後にはボーナスコンテンツをご用意した。あらかじめお断りしておくが、私がこの記事を書いている段階では164枚のカードしか公開されていない。あとあとランキングが変わる可能性があることをご承知いただきたい。
トップキーワード能力 – 「サイクリング」
新セットの「変容」や「相棒」に世間がわきたっていることは知っている。その気持ちはわかるし、もっともな反応だと思う。確かにこれらの能力は素晴らしく、新鮮味があり、今後見かける機会も多いことだろう。だが、私としては“緊急事態モード”が付いているカードを採用することがスタンダードにおいていかに重要かを説かねばならない。
《定業》《血清の幻視》《渦まく知識》といった序盤のライブラリー操作呪文がないフォーマットにおける最大の問題点は、まともな勝負にならない展開、つまり片方のプレイヤーは呪文を続々と唱え、もう一方のプレイヤーは唱えられない展開だ。しかしここで軽量のマナコストで「サイクリング」できるカードがあれば、序盤に土地事故を起こしたとしても、終盤で活躍するカードを別のカードに変換できる。結果的に、まともな勝負にならない可能性を大幅に下げることができるのだ。
また、《時を解す者、テフェリー》《覆いを割く者、ナーセット》といった『灯争大戦』のプレインズウォーカーに対してフェアなゲームを展開しやすくなる。「サイクリング」は能力であるため、相手の盤面に《時を解す者、テフェリー》がいたとしても相手のターンにその能力を使用できるのだ。《サメ台風》でブロッカーを突如として出現させたり、戦闘中に《タイタノス・レックス》でトランプルを付与したりできる。ゲームは一層面白いものになるだろう。《時を解す者、テフェリー》を擁する相手も100%の安心はもうできない!
トップ神話レア
主観的な視点: 《古き道のナーセット》
私の近況を追っている生徒ならご存知だと思うが、今のスタンダードで私が気に入っているデッキは2つある。1つは、マジックフェストオンラインで使用したスゥルタイコントロール。もうひとつはジェスカイプレインズウォーカーで、元々は私のTwitchの視聴者から着想を得たお手製のデッキだ。このデッキを使い込んできたからこそ、言えることがある。今のスタンダードでアグロデッキに一番強いのはこのジェスカイプレインズウォーカーだ。
《古き道のナーセット》はこのデッキに素晴らしい戦力となるだろう。《主無き者、サルカン》のひとつ前に展開する優秀な4マナのプレインズウォーカーが今まではいなかった。しかし今、除去・手札入れ替え・ライフ回復・マナ加速ができる4マナのプレインズウォーカーを手に入れた。しかも、デッキに採用された他のカードと完璧にマッチした強力な奥義まである!最高だ!
客観的な視点: 《悪魔の職工》
客観的に見れば、《悪魔の職工》が期待の星だと言わざるを得ない。たった2マナであるのに、突出した柔軟性と力強さを兼ね備えている。
(モダンで禁止されている)《出産の殻》と比較する人もいるようだが、私は適切な比較だと思えない。《出産の殻》は求めているクリーチャーをサーチするには何度も起動しなければならないため、好きなときに好きなクリーチャーをサーチすることは困難である。他方、《悪魔の職工》はマナさえあれば即座にあらゆるものをサーチできる。なんとヤギトークンを生け贄に捧げても《フェイに呪われた王、コルヴォルド》を戦場に出せるのだ!!!
これでも《悪魔の職工》の強さがわからない?では、適切なデッキに組み込んだら《タルモゴイフ》よりも大きくなると言ったらどうだろう!
それでも納得できない?《悪魔の職工》が黒の「信心」を2つ持っていることをお忘れではないだろうか。そこにサーチした《アスフォデルの灰色商人》が戦場に飛び出してきたらどうだろう。《悪夢の番人》と《ロークスワインの元首、アヤーラ》とチームを組めば、強力なコンボができるかもしれない。
黒単信心よりも《悪夢の職工》を有効活用できるアーキタイプがあることは確かだろう(ゴルガリやアブザンのカラーリングで、自らライブラリーを削りつつ柔軟にクリーチャーをサーチするデッキが典型的な《悪魔の職工》デッキとなると思われる)。とはいえ、『イコリア:巨獣の棲処』がMTGアリーナで実装されてすぐに試したいのは黒単信心だ。《出産の殻》コンボというよりも《タルモゴイフ》アグロといったアプローチの仕方になるが、ゲームがこう着し始めれば《アスフォデルの灰色商人》をサーチする利点も活かせる。
試作品
4 《ロークスワイン城》
-土地 (25)- 4 《どぶ骨》
4 《漆黒軍の騎士》
4 《悪魔の職工》
4 《ヤロクの沼潜み》
4 《残忍な騎士》
2 《ロークスワインの元首、アヤーラ》
2 《真夜中の死神》
4 《悪夢の番人》
2 《悪ふざけの名人、ランクル》
4 《アスフォデルの灰色商人》
-クリーチャー (34)-
トップ通常レア – 《死のオアシス》
これも”自らライブラリーを削りつつ柔軟にクリーチャーをサーチするアブザンデッキ”に加わる優秀なカードだ。全ての方向性がかみ合っているため、今あるビジョンを現実のものにできたらと強く期待している。ただ、この手のデッキはコモンやアンコモンが重要であることが多いので、全カードリストが公開されるまでは構築するのを待つつもりだ。もし素晴らしい出来のものが完成したら、後日に記事で紹介するとしよう!
他のアブザンカラーのカード(《奇妙な根本原理》《死の頂点、ネスロイ》)の効果を見てみると、自分のライブラリーを削ることが大切なアーキタイプのようだ!《悪魔の職工》にとっては朗報だろう!
それに《死のオアシス》のイラストレーターはグジェゴジュという方らしい。この選考に多少の偏りがあったとしても、大目に見て欲しい😀
トップアンコモン – 《領獣》
ようやくプレイヤーたちの声が届いた。シミックカラーの強すぎる神話レアはこのセットにない(もしかしたらこれから公開されるのかもしれないが)。今度は強すぎるアンコモンの出番だ!《樹上の草食獣》は再びプレイアブルなカードになる可能性を聞ききつけて樹から降りてきている!
ランプデッキはミッドレンジやコントロールに有利に戦えたが、アグロに苦しめられてきた。たった2マナで2/4というサイズはランププレイヤーたちがずっと欲しかったものだろう!高タフネスで除去されづらく、パワーが2あるために序盤のクリーチャーは攻撃できず、しかもマナが余ればカードアドバンテージを獲得できるのだ。
ここで重要なのは、「変容」しても他のクリーチャーの能力を受け継ぐという点だ。つまり、《枝葉族のドルイド》を「変容」の対象先としても、自らマナスクリューに追い込むこともない(もっとも、《枝葉族のドルイド》が戦場にいるなら《領獣》を「変容」させずに3ターン目に唱えた方が良いだろうが)。さらに、《領獣》はエレメンタルであり《発現する浅瀬》の能力を誘発させられる!期待せざるを得ない!
その他の期待のアンコモン – 《無情な行動》《想起の拠点》
《無情な行動》はマジックの歴史のなかでも最強の《破滅の刃》だ。『イコリア:巨獣の棲処』がカウンターをフィーチャーしたセットであるため、スタンダードでは若干デメリットが目立つかもしれないが、その他のフォーマットならば《究極の価格》《破滅の刃》《闇の掌握》とすぐに入れ替わるはずだ。
《想起の拠点》は《血の芸術家》に上手く変化を与えたデザインになっている。これまでのアリストクラッツにとって最大の弱点は、キーカードの除去のされやすさだった。たった1枚の《ショック》を《血の芸術家》に撃たれるだけで、シナジーが崩壊してしまう。《想起の拠点》はエンチャントであり、クリーチャーよりもはるかに除去されづらい。
残念ながらラクドスサクリファイスの3マナ域はすでに強力なカードによって埋められているため、《想起の拠点》が今すぐに頻繁に採用されるのは難しいかもしれない。スタンダードのローテーションが行われたら、このカードを使ったデッキが組めるのか試してみよう!
トップコモン – 《火の予言》
コモンに過度な期待を寄せるべきではないが、序盤の組み立てに役立つ軽量除去というアイディアは素晴らしい。イラストも秀逸だ!
ヴィンテージのおまけコンテンツ –
《夢の巣のルールス》 + 《Black Lotus》
《Black Lotus》を唱える、生け贄に捧げる、《夢の巣のルールス》をサイドボードから唱える、《Black Lotus》を墓地から唱えなおす。こんなことが許されて良いのだろうか!?
終礼
『イコリア:巨獣の棲処』はカードパワーの点でも面白さの点でも優れているように思う。新しく見たこともないメカニズムは、我々の構築の概念を変えるかもしれない。「相棒」は使わないと損なキーワード能力となるのだろうか?未来の我々は”手札が8枚”の状況でゲームを開始しているのだろうか?『イコリア:巨獣の棲処』の全カードリストに期待を寄せて、歴史に類を見ないデッキ構築をし始めよう!
ではまた次回の講義で。