Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2020/5/19)
アグロに見た希望
みなさんこんにちは。リー・シー・ティエン/Lee Shi Tianです。
つい先日、Red Bull Untapped International Qualifier 1でマルドゥ騎士を使ってトップ16に入賞しました(この大会はなんと4000人以上が参加!)。
昨今はジェスカイルーカであふれかえっているスタンダード。私はそのミラーマッチを何度もやることに時間を使いたくないと思っていました。そのようななか、Red Bull Untappedの前週に行われたMagicFest Online Season 2 Finalsで赤単オボシュが頭角を現し、80枚デッキは安定してアグレッシブな戦略に勝てるわけではないと判明しました。
とはいえ、《空を放浪するもの、ヨーリオン》を使うプレイヤーたちが赤単オボシュを意識し始め、《ガラスの棺》《霊気の疾風》《敬虔な命令》といったカードを採用してくるおそれがありました。私は赤単オボシュとは異なるアグロデッキを探すことにし、プロツアーチャンピオンであるワイアット・ダービー/Wyatt Darbyの配信でマルドゥ騎士と巡り合うことになります。
マルドゥ騎士は一般的なアグロデッキのように攻めっ気がありながらも、「相棒」として採択された《夢の巣のルールス》によって相手の妨害からリカバリーできるようになっていました。私は数時間かけてさまざまなカードを試し、これからご紹介するリストへと行きつきました。
デッキリスト:マルドゥ騎士
カード選択
では、カード選択について解説していきましょう。クリーチャー
《熱烈な勇者》《尊い騎士》《漆黒軍の騎士》
フル投入したこの3種の騎士は、現環境で最強クラスの1マナ域です。それぞれが実質パワー2以上を持っています。質の低い1/1のクリーチャーを採用する赤単オボシュよりもこのデッキを好む理由のひとつです。
《立派な騎士》《鼓舞する古参》《黒槍の模範》
特に優れた能力を持つ2マナクリーチャーたちです。《立派な騎士》はトークンを横に並べ、《鼓舞する古参》はその全体を強化。《黒槍の模範》は絆魂でダメージレースをサポートしたり、相手のブロッカーを相打ちにさせたりします。瞬速を持っているため、ソーサリータイミングの全体除去を打たれたあとの立て直しにも有効です。
《リムロックの騎士》《恋に落ちた剣士》
この2種は一般的な選択ではありませんが、「出来事」呪文が1マナで唱えられる点で評価しています。このデッキはできるだけテンポよく動いていくことが理想です。しかしときには1マナ域が1体しか引けず、3ターン目までマナを無駄なく使えないタイミングが発生します。《リムロックの騎士》と《恋に落ちた剣士》はその隙間を埋める存在でありながら、ダメージを増量させられます。《空を放浪するもの、ヨーリオン》デッキと対峙したときには、なんとしても最速でゲームを終わらせたいのです。
呪文
《一心同体》《不吉な戦術》
《空を放浪するもの、ヨーリオン》の影に隠れていますが、《一心同体》は環境随一の効率的な防御呪文です。こちらは1マナを構えていればいいだけなのに対し、相手は非常にケアしづらい特徴があります。《不吉な戦術》は環境最強の除去です。とはいえ、現環境では除去の重要性が高くありませんし、コンバットトリックである《リムロックの騎士》や《黒槍の模範》がいるので2枚に抑えています。
マナベース
《試合場》とショックランド
このデッキの1マナ域は3色に散っています。これらの土地が必要なのは言うまでもないでしょう。
《サヴァイのトライオーム》
3色を供給できる土地です。アグロデッキのタップイン土地は一見すると弱そうに見えるでしょう。しかしタップインするよりも耐え難いことがありますよね?そう、呪文をまったく唱えられないことです。できれば《サヴァイのトライオーム》を使いたくない思いから不採用にしたこともありましたが、色事故が頻繁に起こるようになりました。もしマナフラッドが気になるようでしたら、《サヴァイのトライオーム》を1枚減らした土地22枚の構成を試してみてもいいでしょう。
《寓話の小道》とピン挿しの基本土地
プロツアー『タルキール覇王譚』のトップ8に入賞したときの《ジェスカイの隆盛》デッキを見てもらえるとわかりますが、当時からちょっとした教訓を実践していました。つまり、同じ基本土地を2枚以上引いて悲惨な状況にならないように、フェッチランドを採用して基本土地を1枚ずつに抑えたのです。マルドゥ騎士のマナベースが脆弱だと思い悩みたくない方は、同一の基本土地を2枚以上使わないことをおすすめします。
採用に至らなかったもの
《空騎士の先兵》《嵐拳の聖戦士》《死体騎士》
これらには共通の問題点があります。マナベースに過度な負荷がかかってしまうのです。このデッキは3色のアグロデッキですが、フェッチランドから2色土地をサーチできる贅沢な環境ではありません。テンポよく動く確率を最大まで高め、手札に多色カードが腐る確率を下げたいと考えました。再三述べているように、呪文を唱えられることは重要です。こういった考えからこの3種の多色呪文は一切採用しませんでした。
《不敗の陣形》《死住まいの呼び声》
状況を選ぶにもかかわらず3マナは重すぎます。自然とテンポよく動きたいので、これらは1枚も採用していません。活躍する状況はいろいろあるものの、あらゆる状況で有効なカードではありません。特定の条件下で破格のパフォーマンスをするカードよりは安定して手堅いパフォーマンスをするものを選びたいと考えました。
プレイングのアドバイス
その1:土地と呪文の色のバランスをチェックする
特定の色マナ源を1枚しか引けていないのに対し、その色の呪文を複数引いていることは頻繁に発生します。このような状況では、不足している色の呪文を優先的に唱えていきましょう。短期的に見れば1~2点を損する動きになることもありますが、手札の呪文を余すことなく消費すればその損失をカバーできるはずです。
その2:《夢の巣のルールス》を唱えるタイミング
《夢の巣のルールス》は全体除去を切り返す重要な存在です。まずは相手に全体除去を使わせるようにしむけ、それから《夢の巣のルールス》でアドバンテージを獲得し始めましょう。こうすれば相手はさらなる解答を用意する必要が生じ、盤面に《夢の巣のルールス》が残ればアドバンテージが1枚ずつ累積されていきます。このプランをたどる場合、タップイン土地を置く暇がないので、通常は《サヴァイのトライオーム》は5枚目の土地として置くことになります。
単体除去を多く使うデッキに対しては、除去を枯渇させてから《夢の巣のルールス》を展開しましょう。幸い、このデッキは除去を強要できるパワフルなクリーチャーが揃っていますから、その実現はそう難しくないはずです。さらに《夢の巣のルールス》を守る《一心同体》もあり、これが決まれば間違いなく有利な立場を築けるでしょう。
その3:全体除去をケアできる手札か考える
全体除去をいなせる手札ばかりではありません。ケアできない手札が来たときには、相手にできるだけ猶予を与えないようにプレッシャーをかけるべきです。ヨーリオンデッキがマナを構えていれば、《サメ台風》や《太陽の神のお告げ》、あるいは《海の神のお告げ》から《空の粉砕》が飛んでくるかもしれません。しかし、相手は80枚のデッキですから、必ずしも全体除去を引けるとは限りません。
Red Bull Untappedでの私のプレイングを参考したい方はこちらからご覧ください(Day 1 / Day 2)。見ていただければわかりますが、リスクを承知で展開し、ただ相手が全体除去を持っていないことを祈る場面は多々あります。それが今のスタンダードであり、このようなデッキを使う以上は覚悟しなければなりません。
サイドボーディングの指針
詳細なサイドボードガイドは書きませんが、基本的なルールだけ解説させていただきます。一般論ですが、クリーチャー以外の呪文は6~8枚に収まるようにします。クリーチャー以外の呪文の枚数が増えすぎる場合は《一心同体》を数枚削りましょう。
クリーチャーをサイドアウトしたいときは、対クリーチャーデッキには《リムロックの騎士》を、対非クリーチャーデッキには《恋に落ちた剣士》を真っ先に減らします。該当するマッチアップで特に弱いカードですからね。《エンバレスの盾割り》や《解き放たれた狂戦士》といった赤のクリーチャーをサイドインする場合は、色マナが競合しないようにまずは《リムロックの騎士》を減らします。
《強迫》
《ドリルビット》ではなく《強迫》を選択しました。対ヨーリオン戦で後手の場合、2ターン目までに《太陽の神のお告げ》を捨てさせる必要があります。しかし2ターン目までに《ドリルビット》を唱えるには1ターン目にクリーチャーを出していなければならなりません。
《強迫》ならばタップインの《サヴァイのトライオーム》が絡んだとしても2ターン目に確実に唱えることができ、1マナの呪文がほかにないときは1ターン目のアクションになります。《強迫》をサイドインするのはジェスカイルーカやティムール再生などの非クリーチャー呪文デッキです。
《灯の燼滅》《不吉な戦術》《死の重み》
《不吉な戦術》と《死の重み》は対アグロの追加の除去です。赤単オボシュに負けたことを受け、《鍛冶で鍛えられしアナックス》や《砕骨の巨人》に対応できる《ぬかるみの捕縛》を1~2枚追加してもいいかなと考えています。《灯の燼滅》はティムール再生とジェスカイファイアーズ用ですね。
《解き放たれた狂戦士》
《時を解す者、テフェリー》、《空を放浪するもの、ヨーリオン》、《太陽の神のお告げ》、《轟音のクラリオン》、《ガラスの棺》、《繁栄の狐》、《雄々しい救出者》とそのトークン。現環境には「プロテクション(白)」が活きる場面は数多くあります。
《浄光の使徒》
主に意識しているのは《自然の怒りのタイタン、ウーロ》《大釜の使い魔》《死の飢えのタイタン、クロクサ》《波乱の悪魔》《夢の巣のルールス》です。
《エンバレスの盾割り》
《魔女のかまど》、《石とぐろの海蛇》、《幸運のクローバー》、《紋章旗》、《ガラスの棺》、《メレティス誕生》の0/4の壁などの対策です。
《墓掘りの檻》を投入してくる相手がいる可能性は否定できません。個人的には誤ったサイドボーディングだと思いますが、仮にサイドインしてきた場合は《エンバレスの盾割り》で対抗することが考えられます。2:1交換になりますし、最悪でも《ゴブリンの長槍使い》として使えます。
おわりに
詳細なサイドボードの入れ替えが知りたい方は、私のTwitchチャンネルをチェックしてみてください。サイドボーディングを会得する最善の方法は、ゲームプランを理解し、それに沿ったサイドボーディングをすることだと思います。論理的に自分の頭で考えられるようにトレーニングしましょう。盲目的にサイドボードガイドに従ってはいけませんよ!
ではまた次回。