(編注:インタビューはこちらの発表の前にお答えいただきました。)
消えた「相棒」
2020年5月18日。レガシー、そしてヴィンテージという2つのエターナルフォーマットに大きな変更が加えられました。レガシー、ヴィンテージともに《夢の巣のルールス》が禁止になり、レガシーではそれに加え《黎明起こし、ザーダ》が禁止カードに名を連ねたのです。
この度の禁止改定、特に両フォーマットを支配していた《夢の巣のルールス》が去った影響により、環境は激変することでしょう。そこで本記事では、レガシー神である鈴池 史康選手、ヴィンテージ神である谷川 風太選手に各フォーマットの禁止改定について、そして各フォーマットの今後についてお話を伺いました。
レガシー神・鈴池 史康選手から見た禁止とこれから
Q1. この度の禁止改定で《夢の巣のルールス》と《黎明起こし、ザーダ》が禁止カードに指定されました。
圧倒的な支配力を見せていた《夢の巣のルールス》だけでなく、《黎明起こし、ザーダ》まで禁止されたことに驚いたプレイヤーは多かったと思います。これら2種類の禁止について感想をお聞かせください。
禁止になった2種に関しては妥当かと思います。ただイコリア前の環境に戻るので、《アーカムの天測儀》・《王冠泥棒、オーコ》・《夏の帳》のどれかは禁止がかかるかと思っていました。
《夢の巣のルールス》
この1か月間Magic Online (以下MO)でプレイしていましたが、ルールスがリリースされた結果以下2つが問題視されました。
1つは混成マナなのであらゆるデッキへの採用。テンポ(デルバー)、コンボ(ANT)、コントロール(青白奇跡)など、どのレンジのデッキにも採用されました。
そしてもう1つは環境からコスト3以上のパーマナントを追い出しました。青白奇跡すらデッキの代名詞ともいわれる《精神を刻む者、ジェイス》を抜き、ルールス+ガラクタパッケージを採用した方が強かったのです。
《黎明起こし、ザーダ》
ザーダはルールスの陰に隠れていましたが、ザーダ入りの無限マナコンボ(《厳かなモノリス》 or 《玄武岩のモノリス》)がお手軽すぎでした。除去1枚や《カラカス》だけでは無限マナを止めることは難しく、カウンターも《魂の洞窟》などで突破できます。
ザーダの他に2種のカーンもマストカウンターであり、着地が早いターンであればあるほど強く、それらをバックアップするモノリス2種が無限マナパーツにもなるため手の付けようがありませんでした。
ザーダ+《大いなる創造者、カーン》の組み合わせがとにかく強く、カーンでモノリス or 《ライオンの瞳のダイアモンド》サーチでコンボスタートできますし、カーンが相手のガラクタを止められるので、私はルールスよりもザーダデッキの方が好みでした。
この2種に関してはほんとうに仕方ない!カードプールが多い弊害なので仕方ない!
Q2. 鈴池選手は環境初期と言って差し支えない頃から《深海の破滅、ジャイルーダ》の可能性を見出していました。《深海の破滅、ジャイルーダ》は今後レガシーを代表する「相棒」になれるのでしょうか?
また、現時点で他に注目している「相棒」、または「相棒」を使ったデッキはありますか?
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《深海の破滅、ジャイルーダ》
残念なことに対応の仕方がばれている今、「相棒」界のAIBOになることは難しいかと思います。ジャイルーダを見ただけでメインは除去を引くまでマリガンされるので、従来のスピードでコンボを達成するのは難しく感じます。
ただ5/21開催のMOPTQはGriselpuffがジャイルーダコンボで抜けていました。サイドプランが煮詰まったり、リアニメイトとのハイブリッドをして少しずつ完成に近づいてるかと思います。
その他の「相棒」
構築制限の緩い《空を放浪するもの、ヨーリオン》、《湧き出る源、ジェガンサ》、《孤児護り、カヒーラ》、《獲物貫き、オボシュ》には注目しています。
ヨーリオンはやろうと思えばあらゆる既存のデッキに採用できます。
ジェガンザもマーベリックなどほぼ変更なしで採用できます。ティムールデルバーに採用され、サイド後に《意志の力》と《否定の力》を抜いて2ゲーム目から「相棒」として使うテクニックは目から鱗でした。また、《血染めの月》の入ったデッキに対してサイドインすることもできます。
カヒーラはANT・奇跡で見せるだけの採用も考えられます。
オボシュは黒単ウィニーの希望で、絶賛構築考え中です。
4 《湿地の干潟》
4 《新緑の地下墓地》
3 《汚染された三角州》
2 《ロークスワイン城》
-土地 (19)- 4 《血に染まりし勇者》
4 《カーノファージ》
4 《墓所破り》
4 《墓所這い》
4 《縫い師への供給者》
4 《吸血鬼の裂断者》
4 《囁く兵団》
3 《甦る死滅都市、ホガーク》
2 《デルレイッチ》
4 《死の門の悪魔》
-クリーチャー (37)-
Q3. 今回の禁止改定を受けて、レガシー環境(メタゲーム)はどのように変化していくのでしょうか?
イコリアリリース前に戻るかと思われます。大ミッレンジ時代へ。
ミッドレンジ流行→コンボ(スニーク・ショー系)→デルバー(テンポ系)→ミッドレンジと変化していくかと。
Q4. もし明日大会があるとすれば、鈴池選手はどんなデッキ、または構成で参加しますか?
3 《Volcanic Island》
2 《溢れかえる岸辺》
2 《霧深い雨林》
2 《汚染された三角州》
2 《樹木茂る山麓》
1 《沸騰する小湖》
4 《不毛の大地》
-土地 (20)- 4 《秘密を掘り下げる者》
3 《戦慄衆の秘儀術師》
2 《タルモゴイフ》
2 《運命の神、クローティス》
1 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
-クリーチャー (12)-
MOPTQを想定してお話しします。
まずミッドレンジに勝てるように意識します。ミッドレンジが多いなら《魔の魅惑》デッキもありかと思いますが、一定数のコンボ(スニーク・ショー、ジャイルーダ)の存在を考慮するとデルバーの方が良さそうですね。
ミッドレンジ相手は《運命の神、クローティス》着地という明確なゴールを作り、そこに向かってリソースの削り合いをします。クローティスはとにかくすばらしい。デルバーが苦手とする《自然の怒りのタイタン、ウーロ》を追放しライフレースもまくり、まるで全体除去に巻き込まれない《真の名の宿敵》です(名もなきデルバーおじさんより)。
ウーロはクロックパーミッション戦略とも相性がよく、ゲーム中どこかで見つかればいいので1枚のみの採用です。3マナプレイ+《不毛の大地》できるとうまい。
コンボに対してはカウンターをたくさん引くだけですが、リソースを削ったあとにウーロか《戦慄衆の秘儀術師》着地でマウントを取るのがベストですね。
テンポミラーでもクローティスが板!
(編注:鈴池選手はインタビュー回答後に参加されたレガシーチャレンジにおいて、上記ティムールデルバーを使用して見事にトップ8に入賞されました。実際に動いているところが見てみたいという方は、鈴池選手の配信ページをぜひご覧ください。)
ヴィンテージ神、谷川 風太選手から見た禁止とこれから
Q1. この度の禁止改定で《夢の巣のルールス》が禁止カードに指定されました。
ヴィンテージで制限カードではなく禁止カードが出ることは非常にめずらしいですが、ルールスの禁止についての感想をお聞かせください。
ルールスはその構築制限の緩さとアドバンテージ獲得力の強さにより、イコリアのリリース当初から様々なアーキタイプで使用されていました。
ルールスの能力により再利用ができるパーマネントとして、ミラー対策かつアドバンテージ源にもなる《虚無の呪文爆弾》や《魂標ランタン》といった墓地対策がメインから採用されている状況でした。ドレッジなどの墓地利用デッキにとっては辛い環境だったため、私にとって今回の禁止は大変嬉しく思っております。
しかし、禁止カードが出たことについては懸念があります。これまでヴィンテージにおいては、どんなにカードが強くとも制限カード止まりとなっておりました。
ルールスは「相棒」能力により、制限にしても意味がないということで禁止となりました。これは調整の失敗に他ならないと思いますし、場合によってはヴィンテージで今後も禁止がありうるという嫌な前例になってしまったと思います。
Q2. レガシーでは《夢の巣のルールス》だけでなく《黎明起こし、ザーダ》も禁止になりましたが、ヴィンテージでは《夢の巣のルールス》以外の「相棒」カードは禁止されることなく生き残りました。
現時点で注目している「相棒」や、「相棒」が入ったデッキがあればお教えください。
《黎明起こし、ザーダ》(《逆説的な結果》デッキ)
先日Dicord上で行われました添削杯にて、ルールス以外の「相棒」デッキで唯一トップ8に入りました。
3 《Volcanic Island》
2 《Tundra》
2 《霧深い雨林》
2 《汚染された三角州》
1 《溢れかえる岸辺》
1 《沸騰する小湖》
1 《カラカス》
1 《トレイリアのアカデミー》
-土地 (14)- 1 《Ancestral Recall》
1 《Time Walk》
1 《Black Lotus》
1 《Mox Emerald》
1 《Mox Jet》
1 《Mox Pearl》
1 《Mox Ruby》
1 《Mox Sapphire》
-パワー9 (8)- 1 《歩行バリスタ》
-クリーチャー (1)-
1 《狼狽の嵐》
1 《ギタクシア派の調査》
1 《精神的つまづき》
1 《神秘の教示者》
1 《思案》
1 《天秤》
1 《ハーキルの召還術》
1 《商人の巻物》
1 《修繕》
4 《逆説的な結果》
4 《意志の力》
1 《時を越えた探索》
1 《宝船の巡航》
3 《オパールのモックス》
1 《魔力の墓所》
2 《師範の占い独楽》
1 《魔力の櫃》
1 《多用途の鍵》
1 《太陽の指輪》
1 《通電式キー》
4 《厳かなモノリス》
1 《ボーラスの城塞》
1 《時を解す者、テフェリー》
1 《大いなる創造者、カーン》
-呪文 (37)-
3 《魂標ランタン》
1 《ゴブリンのクレーター掘り》
1 《力ずく》
1 《断片化》
1 《削剥》
1 《精神壊しの罠》
1 《マグマ地雷》
1 《Time Vault》
1 《マイコシンスの格子》
1 《黎明起こし、ザーダ》
-サイドボード (15)-
レガシーとは異なり、《大いなる創造者、カーン》が制限であるためサイドボードを駆使した戦法を取りにくくはあるものの、《逆説的な結果》デッキにて即死コンボを併用した形で使用されると思われます。
ただし、使用者曰く《無のロッド》・《溜め込み屋のアウフ》・《石のような静寂》といったアーティファクト対策が致命的になりやすいので、いかにデッキのバランスを崩さずに対策カードを組み込めるかが鍵となりそうです。
《巨智、ケルーガ》(ドレッジ)
イコリアのリリース当初、私はドレッジに採用される「相棒」はないと感じ大変悲しかったのですが、海外のDiscordにてケルーガを使用したドレッジ案が検討されており衝撃を受けました。
4 《Bazaar of Baghdad》
-土地 (8)- -パワー9 (0)- 4 《秘蔵の縫合体》
4 《よろめく殻》
4 《臭い草のインプ》
4 《イチョリッド》
4 《虚ろな者》
3 《巨智、ケルーガ》
1 《ゴルガリの墓トロール》
-クリーチャー (24)-
《ナルコメーバ》や《陰謀団式療法》を使用できなくなるものの、《イチョリッド》と《秘蔵の縫合体》は使用できますし、《ガイアの揺籃の地》より生み出したマナでケルーガを唱え、大量のドローから盤面を制圧できます。
《呪文追い、ルーツリー》
制限カードを多用するヴィンテージにおいて、各カードが1枚しか使用できないことはそこまで大きなデメリットにはなりません。
《意志の力》が1枚しか入れられないのは痛いですが、その枠に《否定の力》、《誤った指図》などを入れることができるため、十分デッキパワーは担保できるでしょう(《誤った指図》で相手の《Ancestral Recall》を自分に方向転換するとゲームが決まりかねません)。
2 《Tropical Island》
1 《Tundra》
3 《溢れかえる岸辺》
3 《汚染された三角州》
3 《沸騰する小湖》
2 《不毛の大地》
1 《露天鉱床》
-土地 (18)- 1 《Ancestral Recall》
1 《Time Walk》
1 《Black Lotus》
1 《Mox Emerald》
1 《Mox Pearl》
1 《Mox Ruby》
1 《Mox Sapphire》
-パワー9 (7)- 1 《死儀礼のシャーマン》
1 《戦慄衆の秘儀術師》
1 《ヴリンの神童、ジェイス》
1 《アゾリウスの造反者、ラヴィニア》
1 《瞬唱の魔道士》
1 《タルモゴイフ》
1 《僧院の導師》
-クリーチャー (7)-
1 《ギタクシア派の調査》
1 《稲妻》
1 《精神的つまづき》
1 《思案》
1 《先触れ》
1 《定業》
1 《紅蓮破》
1 《赤霊破》
1 《血清の幻視》
1 《破壊放題》
1 《呪文貫き》
1 《剣を鍬に》
1 《目くらまし》
1 《商人の巻物》
1 《否定の力》
1 《神秘の論争》
1 《精神壊しの罠》
1 《意志の力》
1 《噴出》
1 《時を越えた探索》
1 《宝船の巡航》
1 《レンと六番》
1 《ダク・フェイデン》
1 《覆いを割く者、ナーセット》
1 《王冠泥棒、オーコ》
1 《時を解す者、テフェリー》
1 《精神を刻む者、ジェイス》
-呪文 (28)-
3 《意志の力》
2 《The Tabernacle at Pendrell Vale》
1 《力ずく》
1 《儀礼的拒否》
1 《狼狽の嵐》
1 《古えの遺恨》
1 《魔力流出》
1 《呪文追い、ルーツリー》
-サイドボード (15)-
Q3. 今回の禁止改定を受けて、ヴィンテージ環境(メタゲーム)はどのように変化していくのでしょうか?
メインから墓地対策を採用していたルールスデッキの消滅により、墓地対策によって抑圧されていた墓地利用系デッキが息を吹き返し、墓地利用・MUD・逆説の3つを中心にメタゲームが回って行くと思われます。
Doomsday、オース、ジェスカイ、ヘイトベアーといった上記以外の既存のアーキタイプがどの程度バランス良くメタゲームを意識した構成に寄せるのか。「相棒」を採用したデッキがどこまで進化を遂げるのかにも注目です(現時点でオースデッキに《孤児護り、カヒーラ》を入れている方も!)。
また、ルールス環境では日の目を見なかった《天上の餌あさり》を使ったデッキも出てくるかもしれませんね。
Q4. もし明日大会があるとすれば、谷川選手はどんなデッキ、または構成で参加しますか?
いつも通りドレッジを使用すると思います。
禁止前はルールスデッキの影響により、《カラカス》の使用率が増加しミラーの遭遇率が減っている状況だったため、ミラーに強く《カラカス》に弱い《大修道士、エリシュ・ノーン》を解雇。ルールスの《Black Lotus》や《ミシュラのガラクタ》などを意識して《虚空の杯》をメインボードに昇格。墓地対策の再利用を防ぐため、サイドボードに《外科的摘出》を追加していました。
しかし、ルールスにより歪められていた環境ではなくなり、ヴィンテージはイコリアリリース環境初期へ逆戻り。
ルールスデッキが消滅したので上記変更を撤廃。メイン墓地対策環境が終了し、ミラーへの意識強化により《大修道士、エリシュ・ノーン》が復帰。《虚空の杯》も逆説用のサイドボード枠へ戻り、《外科的摘出》も抜けていきました。
現時点では、ドレッジのリストはイコリア前に戻ったような形となりました。
MOでは《這い寄る恐怖》を使用した形が結果を出していたり、ドレッジ対策として《The Tabernacle at Pendrell Vale》が増加傾向にありますね(《The Tabernacle at Pendrell Vale》対策として《不毛の大地》や《ガイアの揺籃の地》を入れようかな……)。
現在大変な状況下ですが、多くのプレイヤーが研究を進めています。次回の神決定戦で惨敗しないように、私もOnlineや海外の情報にも目を通し、色々なカードなどを試して経験を積んでおきます。神という立場に胡坐をかかず、むしろ自分が挑戦者であるという気持ちで調整を重ねていくので、次回の神決定戦ではお手柔らかにお願いしますね!
おわりに
歴代最強の猫はレガシーとヴィンテージを去り、両フォーマットは新たなステージへと歩を進めます。鈴池選手と谷川選手が言及してくれたように、《夢の巣のルールス》や《黎明起こし、ザーダ》の陰に隠れていた「相棒」たちがこれからの主役となるのか。それとも、まだ見ぬ『イコリア:巨獣の棲処』のカードが存在感を放つのか。
多様性を取り戻したこれらのフォーマットがどのように変化するのか、これからの動きに要注目ですね!