津村健志のプロツアー『ゲートウォッチの誓い』レポート ~実戦編~

津村 健志


(スマートフォンの方は【こちら】)


こんにちは!

今日は前回の【調整編】の続きです。今回はプロツアーの裏話なんかもお届けしたいと思います。

それでは、まずは初日のレポートから!



■ プロツアー『ゲートウォッチの誓い』・初日



●ファーストドラフト

いつでも緊張するプロツアー初日。ファーストドラフトは【プロツアー王者のMartin Dangさん】と同卓でした。

初手は弱めのパックから《種子の守護者》を。


種子の守護者


前日に瀬畑 (市川 ユウキ) さんから、彌永 (淳也) 君直伝という非常に面白そうな「青赤コントロール」ドラフトを教えていただいたので、ぜひとも狙いたかったところなんですが、キーカード (?) である《古代ガニ》が出てないのか全く目の前を通らなかったので渋々諦めました。


古代ガニ


そこからはたくさん回ってきた白いカード、そして多くのプレイヤーに過小評価されていると思われる《鞍背ラガーク》を集めてこんなデッキに。


鞍背ラガーク



津村 健志「白緑」
プロツアー『ゲートウォッチの誓い』・ファーストドラフト

8 《平地》
8 《森》
1 《梢の眺望》

-土地(17)-

2 《オンドゥの戦僧侶》
1 《マキンディの飛空士》
1 《忍び寄りドローン》
1 《噛み付きナーリッド》
1 《コーの懲罰者》
1 《タジュールの重鎮》
1 《ジョラーガの援軍》
1 《コーの空登り》
3 《鞍背ラガーク》
1 《救援隊長》
1 《種子の守護者》
2 《幽霊の歩哨》
1 《タジュールの戦呼び》

-クリーチャー(17)-
2 《イトグモの蔦》
1 《まばゆい反射》
1 《力強い跳躍》
1 《抗戦》
1 《天使の贈り物》

-呪文(6)-
1 《まばゆい反射》

-使用したサイドボード(1)-
hareruya



※画像をクリックすると拡大します。


軽量クリーチャーが少し不足気味でトリック呪文も少し弱いものの、十分に合格点をあげられそうなデッキになりました。

ちなみに今回はフルアートの土地が配ってもらえる厚待遇でしたが、そこにはなぜか大量の《荒地》も入っていました。もちろんこれは使用できないため、再三にわたって「配られた《荒地》は使用しないでください」とのアナウンスが(^_^;)(笑)


荒地



ラウンド 対戦デッキ 勝敗
Round 1黒赤 〇×〇
Round 2白青黒 〇〇
Round 3白青 〇××


結果は2-1

最終戦の相手のデッキもそこまで強くなさそうだったので勝ちたかったところですが、スタンダードでも絶賛大活躍中の《反射魔道士》が火を噴いてしまい負け。


反射魔道士

ターンが飛んだら一巻の終わり……


印象的だったゲームは1回戦の2ゲーム目で、対戦相手が《荒廃した山峡》をコントロールしていて、こちらのライフは2という絶体絶命の状況。


荒廃した山峡


しかししかし、そこから《まばゆい反射》を駆使してなんとか逆転!


まばゆい反射

これまた過小評価されていると評判の1枚


朝から熱戦を制してテンションも上々です(*^_^*)



●モダン

ここからは運命を左右するモダンラウンド。


津村 健志「グリセルシュート」
プロツアー『ゲートウォッチの誓い』

1 《島》
1 《沼》
1 《山》
3 《蒸気孔》
1 《湿った墓》
1 《血の墓所》
4 《沸騰する小湖》
4 《汚染された三角州》
1 《血染めのぬかるみ》
2 《忍び寄るタール坑》
1 《闇滑りの岸》

-土地(20)-

4 《ヴリンの神童、ジェイス》
4 《猿人の指導霊》
4 《グリセルブランド》
4 《引き裂かれし永劫、エムラクール》

-クリーチャー(16)-
4 《血清の幻視》
4 《信仰無き物あさり》
3 《呪文貫き》
4 《御霊の復讐》
4 《イゼットの魔除け》
1 《差し戻し》
4 《裂け目の突破》

-呪文(24)-
3 《稲妻》
2 《払拭》
2 《紅蓮地獄》
1 《苦い真理》
4 《神聖の力線》
3 《粉砕の嵐》

-サイドボード(15)-
hareruya


できることなら4-1か3-2で切り抜けたいところですが、果たして!?


ラウンド 対戦デッキ 勝敗
Round 4グリセルショール ×〇〇
Round 5バーン ×〇×
Round 6ミラーマッチ ××
Round 7トロン 〇××
Round 8バーン 〇〇


2-3の通算成績は4-4に。

7回戦のライザ君 (石村 信太朗) との一戦で、自分の下手さを改めて実感しました。3本目に対戦相手は7枚の初手をキープで《森》から《彩色の宝球》スタートでした。

2本目で《外科的摘出》を見ていた僕は、マリガンなしの《森》スタートを考慮して、この時点でライザ君が《外科的摘出》を持っていると判断しました。


外科的摘出


こちらの手札はかなり充実しており、《御霊の復讐》《裂け目の突破》も狙える立ち上がりでしたが、万全を期して《裂け目の突破》プランを選択。しかし実際にはライザ君は《外科的摘出》を持っておらず、4ターン目にトロン成立から《難題の予見者》《否定の契約》を構えられて敗北。


否定の契約


《外科的摘出》はあまり流行っていない予想ではありましたが、いざ対峙したときにこれほど萎縮してしまうのであれば、絶対に《思考囲い》は採用すべきでした。


思考囲い


教訓:モダンは度胸。下手くそは手札破壊。



■ プロツアー『ゲートウォッチの誓い』・2日目



●セカンドドラフト

セカンドドラフトはまたまたMartin Dangさんと同卓で、初手は《オンドゥの戦僧侶》から。


オンドゥの戦僧侶


3手目の《ザダの猛士》を機に赤に参入すると、そこからは白と赤のカードが大量に!

最終的には2マナのクリーチャーが余るような理想的なデッキが完成しました。


津村 健志「白赤」
プロツアー『ゲートウォッチの誓い』・セカンドドラフト

8 《平地》
8 《山》
1 《砂岩の橋》

-土地(17)-

1 《石鍛冶の見習い》
3 《ザダの猛士》
2 《マキンディの飛空士》
1 《オンドゥの戦僧侶》
1 《コーの刃振り》
1 《武器の教練者》
2 《棘撃ちドローン》
1 《マキンディの巡回兵》
1 《コーの鎌使い》
1 《ゴブリンの自在駆け》
1 《毅然たる刃の達人》
1 《幽霊の歩哨》
1 《溶滓のへリオン》

-クリーチャー(17)-
1 《現実の流出》
1 《戮力協心》
1 《抑圧的支配》
1 《チャンドラの誓い》
1 《孤立領域》
1 《隊長の鉤爪》

-呪文(6)-
1 《アクームの石覚まし》
1 《地割れの案内人》
1 《まばゆい反射》
1 《二人戦術》
1 《凶暴な力》

-使用したサイドボード(5)-
hareruya



※画像をクリックすると拡大します。

もろたで工藤!と思ったのも束の間。結果はまさかの……。


ラウンド 対戦デッキ 勝敗
Round 9青赤 ××
Round 10白黒
(Martin Dang)
 〇××
Round 11黒緑 ×〇×


ぜ、0-3(/_;)

多くの人に意見を伺ったところ、サイドボードの《地割れの案内人》《凶暴な力》はメインの方が良かったとのこと。


地割れの案内人凶暴な力


リミテッドマスターのRich (Hoaen) にも見てもらうと、「白赤はマナフラッドしたら負けるから、過剰な土地をドローに変えられる《アクームの炎探し》は必須だよ」とのアドバイスをもらいました。


アクームの炎探し


10回戦のMartin Dangさんとの一戦では、まさかDangさんまで届いてないだろうと思っていた《鞭打つ触手》をキャストされ、戦線が崩壊して負け。10手目とかそれくらいの順手で取れたそうです。


鞭打つ触手


そして試合後に簡単に感想戦をしていると、Dangさんから驚きの告白が!


Dangさん:「【StarCityGames.comに掲載されたグリクシスズー】あるじゃん?あれってMagic Onlineの対戦相手からコピーしたんだよね?」

僕:「イエス イエス。 (でもなんでそれを知ってるんだろう……?) 」

Dangさん:「実はあれは僕たちのチーム (エウレカ) で調整してたデッキなんだ。健志が当たったのは僕たちのメンバーだったんだよ。結局調整は辞めちゃったんだけどね」


まさか【Super Crazy Zoo】の亜種をヨーロッパ最強のチームが調整していただなんて……。彼らはプロツアー本戦に本家「Super Crazy Zoo」を持ち込んでいましたし、知らない間に迷惑をかけてしまったと申し訳ない気持ちになりました。


死の影

もはや立派なトーナメントデッキ


同じくチームエウレカの【Matej Zatlkajさん】に「次回は一緒に調整しよう(笑)」と冗談を言ってもらって気が楽になりましたが、MOの調整は今回の件も含めて色々大変ですね。

今後のMO調整のやり方は要検討だなと思いつつ、最後の構築ラウンドへ。



●モダン

ドラフトであほのように負けてしまったので、5-0でプロポイント1点追加という悲劇的な状況です。


ラウンド 対戦デッキ 勝敗
Round 12アブザン ×〇〇
Round 13アブザン 〇〇
Round 14バーン ×〇×


2-1で通算成績が6-8になってドロップ。

今回はトップ8に日本人が1人のみ、それも海外勢と調整をしていたナック (中村 修平) さんだけということで、【晩御飯のとき】はみんなで反省会。その後も今後の調整のやり方などについてしゃべり場して、気付けば深夜2時になり、そろそろ寝ようかと最後に一服しにロビーに降りてみると……。

そこには大量の酔っ払いが!





※画像は【StarCityGmaes.com】より引用させていただきました。

酔っ払いを率いていたRoss Merriamさん。試合中とは違ってとっても陽気な方でした。


嫌な予感しかしませんでしたが、とにかく「飲もう!」を連呼され、結局たくさんの海外勢に僕1人という面子で朝まで開いているというバーに出向くことに……。そして嫌な予感は的中し、そこからはひたすらきつい酒を飲まされまくって全ての記憶がなくなりました(;・∀・)


記憶殺し




■ 反省点


今回のプロツアーはいつにも増して反省点の多い結果となってしまいました。

今大会で最大の反省点、ずばりそれは「エルドラージ」デッキについてです。

【前回の調整記】で「エルドラージを作ること」に関して一切触れていませんでしたが、これは最初から「エルドラージ」デッキの構築を諦めていたからです。


エルドラージの寺院ウギンの目


僕は自分のデッキ構築能力が低いと自覚していますし、調整は基本的にMagic Onlineがメインです。

Magic Onlineで『ゲートウォッチの誓い』がリリースされたのは【グランプリ・名古屋2016】の前日。そこからプロツアーまでは、飛行機に乗る時間も考慮すると2~3日程度の時間しかありません。

デッキリストを作り上げるだけでも相当な労力ですが、仮にもしそれができたとしても、そこからさらに各マッチアップとのテストプレイやサイドボーディングを練り上げることが可能か否か。

僕はスケジュールを見た時点でこれが難しいと考え、それならば早い段階で良いデッキを見つけて、それを習熟する方が建設的だと判断しました。

ですが、みなさんもご存知の通り、いくつかの海外チームは見事な「エルドラージ」デッキを組み上げ、上位を独占しています。


Jiachen Tao「青赤エルドラージ」
プロツアー『ゲートウォッチの誓い』(優勝)

2 《島》
2 《蒸気孔》
4 《沸騰する小湖》
4 《シヴの浅瀬》
3 《魂の洞窟》
1 《宝石の洞窟》
4 《エルドラージの寺院》
4 《ウギンの目》

-土地(24)-

4 《果てしなきもの》
4 《エルドラージのミミック》
4 《空中生成エルドラージ》
4 《不快な集合体》
3 《エルドラージの寸借者》
2 《破滅を導くもの》
4 《難題の予見者》
4 《現実を砕くもの》
4 《希望を溺れさせるもの》

-クリーチャー(33)-
3 《四肢切断》

-呪文(3)-
3 《頑固な否認》
3 《ハーキルの召還術》
2 《はらわた撃ち》
2 《虚空の杯》
2 《大祖始の遺産》
1 《呪文滑り》
1 《漸増爆弾》
1 《精霊龍の墓》

-サイドボード(15)-
hareruya




Ivan Floch「無色エルドラージ」
プロツアー『ゲートウォッチの誓い』(準優勝)

2 《荒地》
3 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》
4 《ちらつき蛾の生息地》
3 《変わり谷》
4 《幽霊街》
4 《エルドラージの寺院》
4 《ウギンの目》

-土地(24)-

4 《果てしなきもの》
4 《エルドラージのミミック》
2 《呪文滑り》
4 《猿人の指導霊》
4 《作り変えるもの》
4 《難題の予見者》
4 《現実を砕くもの》

-クリーチャー(26)-
4 《四肢切断》
4 《虚空の杯》
2 《漸増爆弾》

-呪文(10)-
4 《大祖始の遺産》
3 《忘却蒔き》
3 《はらわた撃ち》
2 《真髄の針》
1 《呪文滑り》
1 《漸増爆弾》
1 《歪める嘆き》

-サイドボード(15)-
hareruya


このふたつのリストを見て、正直なところ悔しい気持ちは一切湧いてきませんでした。

情けない話ではありますが、限られた時間の中で自分がこのデッキリストにたどり着ける可能性は限りなく0に近かったと思います。

調整段階で何名かのプレイヤーと「エルドラージ」について話したこともありましたが、僕たちの中で「エルドラージ」と言えば、《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》が入っている関係で黒を入れるのは確定で、あとはどの色を2色目にすべきか、という流れがほとんどでした。


ヨーグモスの墳墓、アーボーグ


優勝を収めた「青赤」バージョンはおろか【ChannelFireball.com】が作り上げた「無色エルドラージ」なんかは、全くもって意識の外。彼らのことを素直に称賛するほかありません。

今回はやまけん (山本 賢太郎) さん、なべ (渡辺 雄也) 君、瀬畑さんの助力もあり「《御霊の復讐》」デッキを完成させることができたので、全員で同じデッキを調整する方法に問題があったと言うべきかどうかは難しいところ。

ただし、デッキとしての完成度は結果を見れば明らかで、それだけに今後の調整にはより一層結束して挑む必要があると感じました。


英雄たちの結束


最後になりますが、たくさんお世話になった【Team Cygames】のお三方に感謝です。ありがとうございました。

瀬畑さん視点の調整記や、やまけんさんやなべ君のデッキに対する感想も挙がっておりましたので、お時間のある方はぜひそちらもご覧になってみてください。

【市川ユウキの「プロツアー参戦記」 プロツアー『ゲートウォッチの誓い』 前編】

【市川ユウキの「プロツアー参戦記」 プロツアー『ゲートウォッチの誓い』 後編】

【【PTOGW】構築ラウンド振り返り【Day2】】

結果が伴わず残念な限りですが、来月にモダンのグランプリとチームリミテッドのグランプリに連戦する予定なので、今回の反省点などを生かせればと思います。

今のところモダンもドラフトも帰ってきてからほとんどできていませんが、チーム戦ではぜひとも《古代ガニ》デッキの担当になりたいですね(笑)

それでは、また次回のブログで!


コガモ



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