はじめに
みなさんこんにちは。
先週末にはチャンピオンシップ(旧プロツアー/ミシックチャンピオンシップ)への出場権をかけた大会など、ハイレベルなオンラインイベントが複数開催されました。誰がどんなデッキを使用し、勝利を掴み取ったのでしょうか?
今回は$5K Kaldheim Championship QualifierとSekappy COLOSSEUMの大会結果を振り返っていきます。
$5K Kaldheim Championship Qualifier
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
優勝 | モリ ノリユキ | オボシュランプ |
準優勝 | Thierry Ramboa | ディミーアヨーリオン |
トップ4 | Lorenzo Pollone | 赤単アグロ |
トップ4 | Mattia Rizzi | 緑単フード |
トップ8 | Sergio Garcia Gonzalez | ディミーアヨーリオン |
トップ8 | キムラ コウヘイ | セレズニアアドベンチャー |
トップ8 | Gavin Bennett | マルドゥスタックス |
トップ8 | Will Pulliam | 緑単フード |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
参加者289名で開催された$5K Kaldheim Championship Qualifierは、オボシュランプを使用したモリ ノリユキ選手の優勝となりました。モリ選手はオボシュランプを使い続けており、その成果が出たといえるでしょう。
モリ選手はオボシュランプの使用にあたり、デッキ枚数を60~65枚の間で細かく調整されています。これまでデッキ総数は「特定のカードを引きやすくするために最小値が適切」とされていましたが、ディミーアローグや《空を放浪するもの、ヨーリオン》が存在するメタゲームでは柔軟な変化が求められているようです。事実、決勝戦ではディミーアヨーリオンとの総力戦となり、ライブラリー2枚(総数63枚)を残しての勝利となりました。
デッキ総数が63枚に増えたことで気になるのは土地と呪文の比率です。ミッドレンジタイプのデッキでありながら《発生の根本原理》があるがゆえに土地を伸ばす必要があり、闇雲に呪文ばかりを増やせません。そこで呪文/土地の両面カード(以下、スペルランド)を多めに採用することで、バランスを取っています。
なかでも《バーラ・ゲドの復活》は珍しい1枚ですが、消耗戦で効果を発揮します。「出来事」を使い回すも良し、《峰の恐怖》を回収するも良しとなっています。対ディミーアローグ戦では「切削」過程で墓地が肥えるため、回収先には困りません。
メタゲーム
デッキタイプ | 使用者数 |
---|---|
ティムールランプ | 53 |
グルールアドベンチャー | 52 |
緑単フード | 52 |
ディミーアコントロール | 37 |
ディミーアローグ | 25 |
エスパースタックス | 12 |
赤単アグロ | 11 |
その他 | 47 |
合計 | 289 |
デッキ分布はティムールランプとグルールアドベンチャー、そして緑単フードの使用者数が拮抗した非常に珍しい結果となっています。ランプのなかではオボシュランプが主流になりつつあることを踏まえれば、この3つの共通項としてクリーチャー主体の緑のミッドレンジデッキとわかります。突出したデッキがなく群雄割拠な環境においては「完全なコントロールやアグロよりも、ダメージソースを有しながら盤面干渉もおこなえるデッキを使うべき」と判断したプレイヤーが多かったようです。
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赤単アグロ
4 《エンバレス城》
-土地 (19)- 4 《熱烈な勇者》
4 《火刃の突撃者》
4 《義賊》
3 《カルガの威嚇者》
3 《リムロックの騎士》
4 《鍛冶で鍛えられしアナックス》
4 《砕骨の巨人》
3 《朱地洞の族長、トーブラン》
-クリーチャー (29)-
マナカーブに沿ってクリーチャーを並べていき、《朱地洞の族長、トーブラン》や《エンバレスの宝剣》にて押し切る典型的なアグロデッキ。大会上位にその姿を見なくなって久しい赤単アグロですが、Lorenzo Pollone選手はメタゲームに合わせた構築で見事トップ8に入賞しました。今回のデッキは1マナ域から始まる展開力をそのままに、中盤以降に活躍できるカードが選択されています。
《焦がし吐き》亡き後、赤単アグロの1マナ域は《アクームのヘルハウンド》が有力視されていましたが、中盤以降のカードパワーの低さと「上陸」がネックとなっていました。《火刃の突撃者》は序盤の打点こそ《アクームのヘルハウンド》に劣るものの、安定したダメージソースであり盤面処理もこなしてくれます。また、《エンバレスの宝剣》が戦場に必要となりますが、《熱烈な勇者》《義賊》と並ぶ速攻持ちであり、最後の数点を詰めるのにも適しています。
シナジーの少ない赤単においては珍しく、いくつかのカードとの組み合わせることでその強さは大きく変化します。これまでおまけ付き程度だった《リムロックの騎士》とのシナジーは、相手の不意を突き複数のクリーチャーを除去できる優秀な火力へとなってくれます。
火力と《エンバレスの宝剣》一辺倒だった呪文の枠にも変化がみられます。メタゲームの傾向としてサイズの優れたクリーチャーで盤面を維持するミッドレンジデッキが増えたことで、対抗策として《アクロス戦争》が採用されているのです。マナカーブに沿って相手の3マナクリーチャーを奪って押しきるも良し、《貪るトロールの王》などのフィニッシャーを配下として奪うことで《エンバレスの宝剣》で一撃のもとに切り伏せることも可能となります。
今大会の使用者数上位3デッキが緑のクリーチャーベースだったことからもわかる通り、《グレートヘンジ》が共通するアドバンテージ獲得手段となっています。消耗戦に強いこのカードはカードアドバンテージだけではなく、ターン毎に2点のライフを回復させてくれます。早期決着を目指す赤単アグロにとっては必ず対処しなければなりません。
アグロデッキであることから今回はクリーチャーとしても使え、テンポ面に優れた《エンバレスの盾割り》が選択されています。《グレートヘンジ》入りのデッキを使用するプレイヤーが多いことを見越して3枚採用されています。
セレズニアアドベンチャー
6 《森》
4 《寓話の小道》
4 《枝重なる小道》
-土地 (20)- 4 《エッジウォールの亭主》
4 《巨人落とし》
4 《青銅皮ライオン》
4 《光輝王の野心家》
1 《群れの番人》
4 《カザンドゥのマンモス》
4 《恋煩いの野獣》
2 《鎮まらぬ大地、ヤシャーン》
1 《探索する獣》
-クリーチャー (28)-
3 《ガラクの先触れ》
2 《探索する獣》
2 《ヘリオッドの介入》
1 《漁る軟泥》
1 《群れの番人》
1 《鎮まらぬ大地、ヤシャーン》
1 《魔術遠眼鏡》
1 《怪物の代言者、ビビアン》
-サイドボード (15)-
キムラ コウヘイ選手はアドベンチャーのなかでも柔軟性に富んだセレズニアカラーを使用して入賞しました。ほかのアドベンチャーデッキと同様にクリーチャーを展開しつつ、《エッジウォールの亭主》《グレートヘンジ》でリソースを伸ばし、相手に合わせて「出来事」を使い有利を維持していきます。攻撃力こそグルールアドベンチャーに劣りますが、《エルズペス、死に打ち勝つ》があるため対応力の優れたデッキとなり、特に緑単フードに強い構築となっています。
ヒストリックのサクリファイスキラーとしてデビューした《鎮まらぬ大地、ヤシャーン》ですが、スタンダードでは緑単フードに対するメタカードとなっているようです。食物・トークンを生け贄に捧げることでシナジーを織りなす《金のガチョウ》《パンくずの道標》《貪るトロールの王》をことごとく機能不全に追い込み、リソースゲームへと移行させません。
サイズ面こそ緑単フードに劣りますが、《巨人落とし》《エルズペス、死に打ち勝つ》の除去の2枚看板が戦場を支えてくれます。ライフを残しながら《エッジウォールの亭主》か《グレートヘンジ》をキャストして、一方的にアドバンテージを稼いでいきましょう。
《光輝王の野心家》は序盤から終盤まで活躍できる2マナクリーチャーであり、システム・クリーチャーでありながら遅いデッキ相手には自身をパンプアップすることで相手のライフを詰めてくれます。《グレートヘンジ》の着地を早めるだけではなく、環境の主力除去《無情な行動》を実質的に無効化することもできるため、+1/+1カウンターを配置する効果は見た目以上に大きな意味を持っています。
Sekappy COLOSSEUM 決勝大会
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
優勝 | 斉藤 徹 | グルールアドベンチャー |
準優勝 | 平井 淳也 | ディミーアローグ |
トップ4 | 磯 俊治 | ボロスアグロ |
トップ4 | 松崎 照央 | 4色サイクリング |
トップ8 | 岩崎 悠大 | ディミーアローグ |
トップ8 | 佐藤 レイ | 緑単フード |
トップ8 | 山口 璃人 | ディミーアローグ |
トップ8 | 行弘 賢 | 緑単フード |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
2度の予選を突破した16名(一部招待含む)で開催されたSekappy COLOSSEUM 決勝大会。MPL所属選手をはじめ強豪ぞろいの大会となりましたが、名だたるプレイヤーを倒して頂点に立ったのはグルールアドベンチャーを使用した斉藤 徹選手でした。
特徴的なのはメインボードに3枚採用された《怪物の代言者、ビビアン》でしょう。これまで突破力の高い《エンバレスの宝剣》に軍配が上がってきましたが、ここにきて消耗戦に強いプレインズウォーカーのほうが優先されています。
どのマッチアップでも腐らないカードですが、特に《トリックスター、ザレス・サン》を採用しているディミーアローグに効果的なカードといえます。ならず者の攻撃を通して《トリックスター、ザレス・サン》へと繋げることで追従不可能な展開を目指すデッキに対し、到達によりその初手たる「攻撃」を封じることでゲームを有利に進めようとしているのです。メインボードに6枚採用されたインスタント除去、3枚の《漁る軟泥》からもディミーアローグへの意識がうかがえます。
メタゲーム
デッキタイプ | 使用者数 |
---|---|
ディミーアローグ | 6 |
緑単フード | 2 |
ティムールランプ | 2 |
ラクドスエスケープ | 2 |
その他 | 4 |
合計 | 16 |
極端にディミーアローグに人気が偏ったデッキ分布となりました。パーマネントを軸としたミッドレンジデッキを想定したプレイヤー多く、6名中4名が《トリックスター、ザレス・サン》を採用しています。クリーチャーデッキのなかではコントロール寄りに位置したデッキであり、打ち消し呪文があることでどのマッチアップにも対応できる柔軟な選択肢となっています。
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ボロスアグロ
磯 俊治選手が使用したのはボロスアグロ。クリーチャーのほとんどが2マナ以下と極端に低いマナカーブを描いており、3ターン以降は展開したクリーチャーを補助してビートダウンを目指します。「出来事」や「脱出」、スペルランドなど消耗戦に強いカードが多く、アグロデッキながら広いレンジで戦うことが可能となっています。
このデッキの特徴の1つとしてダメージソースの途切れにくさがあげられます。《無私の救助犬》はマナカーブを埋めつつデッキの主力アタッカー《歴戦の神聖刃》《義賊》《光輝王の野心家》を除去から守る生きた避雷針。装備品も安全にキャストできるようになります。《歴戦の神聖刃》はパワー3と高い打点と除去耐性を持ち合わせ、相手にプレッシャーをかけ続けます。
展開したクリーチャーのダメージを加速させるのは2種類の装備品と《太陽の宿敵、エルズペス》。新加入の《スカイクレイブの大鎚》はキャストした際に自動的に装備されるオーラのような仕様であり、ダメージ除去に強く回避能力もあるためダメージレースで優位に立つことができます。守勢に回ったとしてもタフネス4以下のクリーチャーでの突破は難しく、黒い除去呪文がない限り時間を稼ぐことができるため、攻守に渡って活躍できるカードです。
《太陽の宿敵、エルズペス》はディミーアローグ隆盛時に「脱出」カードとして注目されましたが、今回はゲームを締めくくるフィニッシャーとなっています。特にコントロールマッチでは角度の違う脅威となるため、処理する際に相手にクリーチャーかプレインズウォーカーかの二択を迫ることができます。クリーチャー・トークンを生成できるので装備品とも相性がよく、装備したクリーチャーを強化することで飛躍的にダメージが稼げるためデッキに合ったプレインズウォーカーといえますね。
グルールアドベンチャータッチ青
2 《山》
1 《島》
4 《寓話の小道》
4 《ケトリアのトライオーム》
4 《岩山被りの小道》
2 《河川滑りの小道》
-土地 (22)- 4 《エッジウォールの亭主》
4 《山火事の精霊》
3 《漁る軟泥》
4 《砕骨の巨人》
4 《カザンドゥのマンモス》
4 《恋煩いの野獣》
-クリーチャー (23)-
高橋 優太選手はグルールアドベンチャーに《神秘の論争》をタッチしたメタデッキを持ち込みました。グルールアドベンチャーの攻撃力・持久力そのままに、相手の動きを封じてゲームを締めくくる一手を組み込んだのです。
《山火事の精霊》や《恋煩いの野獣》など序盤でボードの優位が築ければ、《神秘の論争》は相手の反撃の芽を摘み、2ターンの自由を確約してくれます。グルールアドベンチャーの攻撃力をそのまま受け継いだこのデッキにとって、2度の攻撃は相手を倒すのに十分過ぎる時間となります。《神秘の論争》はミッドレンジやコントロールに強いことはもちろん、青い呪文に対して大きくテンポが取れるため《湖での水難》や《物語への没入》有するディミーアローグにも効果的なカードです。
通常のグルールアドベンチャーではメインボードの除去枠に3点火力である《焦熱の竜火》や《火の予言》をよくみかけますが、高橋選手は《切り裂かれた帆》を採用しています。ディミーアローグを意識しての選択ですが、ミラーマッチなどの緑系とのマッチアップにおいても除去すべきはクリーチャーではなく《グレートヘンジ》と狙いを定めているようです。緑単フード相手にも無駄にならず、この巨木がもたらすアドバンテージを一方的に獲得することができるようになります。
直近の大会結果
11月23日から11月29日までの大会結果になります(最低参加人数16人以上、32人以下の場合は上位8名のみ)。グルールアドベンチャーと緑単フードに加えて、ディミーア系のデッキ(ローグやコントロール)が上位に増えています。特に週末に開催された大規模大会ではディミーアコントロールの入賞率は高く、ディミーアローグの倍以上となります。
6 《沼》
4 《寓話の小道》
2 《ゼイゴスのトライオーム》
4 《清水の小道》
4 《欺瞞の神殿》
4 《這い回るやせ地》
-土地 (31)- 4 《真面目な身代わり》
3 《半真実の神託者、アトリス》
-クリーチャー (7)-
2 《塵へのしがみつき》
4 《無情な行動》
4 《ジュワー島の撹乱》
2 《本質の散乱》
2 《否認》
1 《取り除き》
4 《中和》
4 《絶滅の契機》
4 《海の神のお告げ》
3 《エルズペスの悪夢》
4 《精神迷わせの秘本》
2 《悪夢の詩神、アショク》
4 《精霊龍、ウギン》
-呪文 (42)-
3 《神秘の論争》
3 《影の評決》
1 《エレボスの介入》
1 《本質の散乱》
1 《否認》
1 《エルズペスの悪夢》
1 《空を放浪するもの、ヨーリオン》
-サイドボード (15)-
$5K Kaldheim Championship Qualifierでトップ16に入ったディミーアコントロールの内3つは《空を放浪するもの、ヨーリオン》を「相棒」にしたタップアウト気味のコントロールとなります。打ち消し呪文はあるものの、《真面目な身代わり》《半真実の神託者、アトリス》といったパーマネントを使用してリソースを伸ばし、除去呪文でボードコントロールしていきます。
ゴールには2種類のプレインズウォーカーが据えられ、《悪夢の詩神、アショク》《精霊龍、ウギン》を目指すデッキとなります。環境にミッドレンジのクリーチャーベースとなるデッキが増えることを読みきったデッキ構築といえるでしょう。
ミッドレンジに狙いを定めたディミーアコントロールが上位に増えることで、速度を武器にしたアグロデッキにもチャンスが巡ってきています。速攻クリーチャーと《エンバレスの宝剣》があることで、ほかの緑系デッキより一歩先に攻めるグルールアドベンチャーにとっては、先週よりも今週のほうが勝ちやすいフィールドだったはずです。
おわりに
ディミーアヨーリオンがこのまま増えて緑系ミッドレンジが減れば、アグロデッキにもチャンスが巡ってきそうです。しかし、ただアグロデッキを選択しただけでは$5K Kaldheim Championship Qualifierからもわかる通り、緑系ミッドレンジが半数近くを占める現在メタゲームにおいては厳しい選択となってしまいます。アグロデッキを選択する際には、《アクロス戦争》のような対抗策を準備していきましょう。
今週末には『ゼンディカーの夜明け』チャンピオンシップが控えていますね。次回はそれらの情報をお届けしたいと思います。