はじめに
みなさんこんにちは。晴れる屋メディアチームの富澤です。
先週末はアドベンチャーエンジンを搭載した2つのデッキ、ティムールワープとナヤアドベンチャーを紹介しました。ナヤフューリーを徹底的にメタった両デッキでしたが、今週もそれらの天下となったのでしょうか?
スタンダードは停滞とは無縁のようであり、メタゲームは循環しています。『カルドハイム』リーグ・ウィークエンドが終わった瞬間から、新たなデッキたちが現れているようです。
今回は$5K Strixhaven Championship QualifierとStandard Challenge #12269130、Altiora $2K Open Presented by LFM Networkの大会結果を振り返っていきます。
先週末の注目デッキは?
ここ最近のスタンダードで注目を集めているナヤフューリー。サイズの優れたクリーチャーと豊富なアドバンテージ獲得手段、そしてコンボによる勝利手段と隙がない構成となっています。Hareruya Prosの藤江 竜三選手が詳しく解説してくれているので、ぜひご覧ください。
- 2021/3/5
- ワンショットキル!ナヤフューリーの使い方!
- 晴れる屋メディアチーム
赤がメインのフューリーパッケージですが、このコンボはもっと別のデッキにも採用可能なのではないでしょうか?そこで《カズールの憤怒》の追加コストに着目し、制作者はサクリファイス系へ載せ替えることを思いつきました。
前置きが長くなりましたが、まずは先週末の注目デッキを確認していきましょう!
Ginko選手はフューリーパッケージをラクドスサクリファイスへと組み込み、マルドゥフューリーへと進化させました。元来ラクドスサクリファイスはコントロール奪う(パクる)手段と、生け贄(サクリファイス)手段の組み合わせによる高いボードコントロール力を持ちながら、鈍足ゆえにスゥルタイ根本原理などのコントロール相手を苦手としていました。
そこへ4枚からなるフューリーパッケージを詰め込んだことで、《黄金架のドラゴン》を強化してのコンボによる一点突破が可能となったのです。タッチされた《スカルドの決戦》はコンボ始動のための下地作りはもちろん、ラクドスに不足していたリソース確保手段となります。《カズールの憤怒》はフィニッシュブロー以外では使いにくいカードですが、サクリファイスがベースの戦略であるため《初子さらい》と組み合わせて盤面処理も可能となっています。
$5K Strixhaven Championship Qualifier
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
優勝 | Claudinei Brasil Junior | ジェスカイサイクリング |
準優勝 | Toni Ramis Pascual | ディミーアローグ |
トップ4 | Omar B | ナヤクラリオン |
トップ4 | Nakagawa Tomohiro | ジェスカイサイクリング |
トップ8 | Karl Sarap | 赤単アグロ |
トップ8 | Alexander Flynn | スゥルタイ根本原理 |
トップ8 | Ruben da Silva | 赤単アグロ |
トップ8 | Nicholas DeMichele | ティムールワープ |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
参加者337名で開催された$5K Strixhaven Championship Qualifierはジェスカイサイクリングを使用したClaudinei Brasil Junior選手の優勝となりました。アドベンチャーとナヤフューリーをメタった《型破りな協力》型であり、スゥルタイ根本原理が多かったことからも有利なデッキ選択となっていました。
メタゲーム
デッキタイプ | 使用者数 | トップ16 |
---|---|---|
スゥルタイ根本原理 | 77 | 2 |
サイクリング | 45 | 3 |
ナヤアドベンチャー | 40 | 3 |
ティムールワープ | 33 | 2 |
赤単アグロ | 31 | 3 |
ディミーアローグ | 30 | 1 |
ナヤフューリー | 12 | 0 |
その他 | 66 | 2 |
合計 | 337 | 16 |
注目すべきはサイクリングの増加です。ナヤフューリーに強いボード戦略に重きを置いたスゥルタイ根本原理、アドベンチャー系が増えたことでサイクリングは勝ちやすいフィールドが形成されました。《型破りな協力》や《クラリオンのスピリット》のような数で止める/攻めるデッキが増えたことで、《エンバレスの宝剣》の価値が上がると読み、赤単アグロを選択したプレイヤーも一定数いました。
トップ8デッキリストはこちら。
ジェスカイサイクリング
『イコリア:巨獣の棲処』発売以降、ほとんど形を変えることなく環境に存在し続けているサイクリングデッキですが、最近変化がみられます。メタゲームに適応する形でナヤフューリーを抑え込む《型破りな協力》をタッチしてジェスカイへとなっているのですが、それだけではなく構築自体も大きく変化をみせているのです。ジェスカイサイクリングの”今”を追っていきましょう。
Tomohiro Nakagawa選手が使用したのは定番だった《夢の巣のルールス》を廃し、「サイクリング」呪文をやや削った構築です。空いたスロットには「サイクリング」と強烈なシナジーを形成する2種類のクリーチャーを埋めこんでいます。
《アイレンクラッグの紅蓮術師》は「サイクリング」2回(自分のターンなら1回)で3点を与える高効率ダメージソースであり、ボードコントロール力を得た《ドラニスの刺突者》となります。自分と相手のターンで合わせて6点生み出せるダメージ効率は無視できず、除去するタイミングを間違えるとそのままライフを削りきられかねません。
タフネスが高く、環境にある火力で落ちにくいのもポイントです。赤くないデッキに対しては壁にもなれる厄介な存在であり、単色アグロに対してはボードコントロール力を発揮してくれるでしょう。
また、サイクリングデッキがメタゲーム上いい立ち位置にいることで、対策カードが採用され始めています。《トーモッドの墓所》は《天頂の閃光》に対する絶対的メタカードですが、《アイレンクラッグの紅蓮術師》はそれをかわすカードとしても優秀なのです。サイドボード後も見据えた素晴らしい選択となっています。
非「サイクリング」カードが増えたことで、「サイクリング」が止まり《天頂の閃光》のダメージ不足になる可能性があります。それを補ってくれるのが《常智のリエール》。毎ターン最初の「サイクリング」でのドローを2枚にしてくれるため、このクリーチャーが戦場にいれば「サイクリング」1枚で相手のターンでも《アイレンクラッグの紅蓮術師》と《型破りな協力》を誘発させてくれるのです。何より、自身が《繁栄の狐》につぐアタッカー性能を秘めているため、こちらも無視できない存在となっています。
以前の《繁栄の狐》《雄々しい救出者》の2面クリーチャーによるプレッシャーと《天頂の閃光》による逆転勝利を狙うコンボ特化タイプから一転、現在のサイクリングは複数のダメージソースとコントロール力を手に入れています。ボードからのダメージを減らし、《天頂の閃光》を打ち消すだけでは不十分であり、これまで以上に厄介なデッキになっているのです。《夢の巣のルールス》を抜くのにも頷ける構築でしょう。
Standard Challenge #12269130
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
優勝 | Tixis | ナヤクラリオン |
準優勝 | _Marian_ | 赤単アグロ |
トップ4 | GYBA | ナヤフューリー |
トップ4 | Usama96 | 4色サイクリング |
トップ8 | _Spata_ | 赤単アグロ |
トップ8 | Kaies | ティムールワープ |
トップ8 | Thatted | ティムールワープ |
トップ8 | JoseCabezas | スゥルタイ根本原理 |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
Standard Challenge #12269130を制したのはTixis選手のナヤクラリオン。決勝トーナメントでは赤単アグロとナヤフューリーを倒しての優勝であり、《巨人落とし》に加えて《カビーラの叩き伏せ》まで採用したインスタント多めの構築が功を奏したようです。
トップ8デッキリストはこちら。
ナヤクラリオン
Tixis選手が使用したのは新しいナヤカラーのデッキ、ナヤクラリオン。《クラリオンのスピリット》を活かしたトークン戦略のデッキとなっており、ラダーでも優れた成績を残しています。《グレートヘンジ》がないためリソース勝負ではやや不利となりますが、ナヤフューリーに対する明確な回答を持ち合わせているのは魅力といえるでしょう。
同一ターンに2つ呪文を唱えることでスピリット・トークンを生成してくれる、このデッキの主力クリーチャーになります。マナカーブが整ったこのデッキには条件を満たすためのさまざまな工夫がみられます。まずはお馴染みの「出来事」カードたち。《恋煩いの野獣》は最たる例であり、合計4マナで2度の呪文キャストが可能になります。また「出来事」面は1マナと軽いため、ほかの呪文とも組み合わせやすくなってもいますね。
忘れてはならないのは1マナと2マナにクレジットされたマナクリーチャーの存在。《ヤスペラの歩哨》と《絡みつく花面晶体》は使えるマナを伸ばし、《クラリオンのスピリット》の誘発や英雄譚の使用を楽にしてくれます。
毎ターン複数の呪文をキャストしていくと、「出来事」があったとしても手札が枯渇しがちです。そこを補ってくれるのはナヤカラーでよくみる《エッジウォールの亭主》と《スカルドの決戦》のコンビです。特に《スカルドの決戦》はスピリット・トークンの強化にも一役買ってくれ、このデッキの打点アップ役にもなっています。
久しく活躍をみなかった《フェリダーの撤退》が採用されています。サイクリングの《型破りな協力》と同じくクリーチャーデッキに対しては壁役となり、トークンが並べば盤面を強化する《栄光の頌歌》にもなってくれるのです。《寓話の小道》と合わせて一気に戦場を強化していきましょう。
《秘密を知るもの、トスキ》はスピリット・トークンをアドバンテージ源へと変換し、脅威を最大化してくれる存在です。
Altiora $2K Open Presented by LFM Network
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
優勝 | Martin Quiroga | 赤単アグロ |
準優勝 | Nicolás Epstein | 赤単アグロ |
トップ4 | Omar Lopez Cabrera | ジェスカイサイクリング |
トップ4 | DemianLucke | ディミーアローグ |
トップ8 | Peto Martinez | 4色サイクリング |
トップ8 | Fabrizio Anteri | バントクラリオン |
トップ8 | hogpog_98 | ジェスカイサイクリング |
トップ8 | MAYCON GUIMARAES | ナヤフューリー |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
参加者128名で開催されたStandard Challenge #12269130は赤単アグロを使用したMartin Quirogaが制しました。決勝戦は赤単同士の対決となりましたが、除去と《アクロス戦争》が多くミラーマッチに強い構築であった同選手が優勝となりました。
メタゲーム
デッキタイプ | 使用者数 | トップ16 |
---|---|---|
スゥルタイ根本原理 | 23 | 2 |
サイクリング | 18 | 3 |
ナヤアドベンチャー | 16 | 1 |
ティムールワープ | 13 | 2 |
赤単アグロ | 10 | 2 |
ディミーアローグ | 5 | 1 |
その他 | 43 | 5 |
合計 | 128 | 16 |
スゥルタイ根本原理とナヤ系デッキが多かったことで、サイクリングデッキは最適な選択となったようです。トップ8に3名と最多アーキタイプであることからも証明されています。サイクリングにとっての誤算は、《エンバレスの宝剣》有する赤単アグロが2名残ったことでしょう。軽く序盤からプレッシャーをかけ、ブロックしたクリーチャー・トークンの上からダメージを通す《エンバレスの宝剣》の前には《天頂の閃光》も間に合わず、為す術がなかったようです。
大会情報はこちら。
バントクラリオン
ナヤナヤクラリオンから赤を抜き、代わりに青と組み合わせたバントクラリオン。Hareruya HopesのFabrizio Anteri選手は同デッキでトップ8入賞を果たしました。構成の違いを見ていきましょう。
最大の違いは《願いのフェイ》パッケージと打ち消し呪文の採用です。これにより対応力が増し、対処すべきカードが明確なデッキに対しては強い構築となっています。
具体的にあげますと、スゥルタイ根本原理のような重いカードパワー重視の戦略やコンボに対しては打ち消し呪文(加えて《黄金架のドラゴン》には《巻き添え》も)、最近流行のサイクリングに対しては打ち消し呪文に加えて《トーモッドの墓所》が用意されています。特にメインボードから《天頂の閃光》を封じられるのはほかのデッキにない魅力であり、戦場に置いてプレッシャーをかけながら盤面の押し切りを狙いましょう。
《スカルドの決戦》と《グレートヘンジ》がないため、ほかのアドベンチャーデッキと比べリソース勝負は不利になります。それを打開してくれるのは《秘密を知るもの、トスキ》であり、伝説のクリーチャーながらを4枚採用されているほどです。《クラリオンのスピリット》の生成したトークンと相性が良く、頭数を並べて一気にアドバンテージを稼ぎましょう。
また、緑やアドベンチャーデッキに対して《グレートヘンジ》無双されないように《水晶壊し》を採用しているのも特徴です。トークンが並ぶため「変容」先に困らず、アドバンテージを失いにくくなっています。
また、Hareruya ProsのMatias Leveratto選手は同デッキの青を濃くしたリストでStandard Challenge #12269168のトップ4に入賞しています。こちらは青が濃くなり、メインボードから干渉手段である《厚かましい借り手》、フィニッシュブローとして《アールンドの天啓》が採用されています。マナベースに負担をかけてしまいますが、攻め切るアプローチとしては面白い選択となっていますね。
おわりに
『カルドハイム』発売以降、スタンダード環境は活性化し、メタゲームは目まぐるしく動いています。色構成は単色~3色以上と多岐に渡り、アーキタイプにも縛りはありません。メタゲームをいかに読み、最適なデッキを導きだせるかに焦点がおかれています。タイミングを誤らなければどのデッキにもチャンスがある環境なのです。
先週の段階では《クラリオンのスピリット》が大々的にフィーチャーされたトークンデッキが隆盛していますが、今週末はどうなるのでしょうか?
今週末にもプレイヤーズツアー予選となる$5K Strixhaven Championship Qualifierが控えていますね。次回はそれらの情報をお届けしたいと思います。