Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2021/03/31)
朝礼
みなさん、おはよう!先週は良い週末を過ごせただろうか?先生は素晴らしい週末を過ごせたぞ。『カルドハイム』チャンピオンシップが幕を閉じ、Hareruya Prosにとって(願わくは晴れる屋のファンにとっても)最高の大会になったのだ。無敗で勝ち上がってきたアーネ・ハーシェンビス/Arne Huschenbethに決勝戦で負けてしまったが、私も準優勝することができた。アーネの卓越したプレイに加えて相性の悪いマッチアップだったから、決勝に関してはなす術がなかったと感じている。
本日の講義では、私を準優勝に導いてくれたデッキ、スゥルタイ根本原理について余すことなく語ることにしよう。
そもそもスゥルタイを選んだワケは?
正直に言うと、環境の立ち位置が良いと感じたデッキはひとつもなかった。私にとってはスタンダードが健全すぎたのだ。こう言うと変に思うかもしれない。多様性のメタゲームとは誰しもが望むものであり、ランク戦やプレイヤー体験にとって好ましいものでもある。ただ、プレイヤーとしてのキャリアがかかっている大会となると、その健全さがデッキ選択を一層悩ましいものにしてしまう。
そのようななか、スゥルタイ根本原理はどんな相手にも勝ち目のあるデッキだと感じた(ディミーアローグは例外かもしれないが、大会での使用者は少ないと予想していた)。また、最大勢力となるのはスゥルタイ根本原理であると考えていた(この予想は当たっていたね)。この予想を踏まえ、私が下した判断は「自分もスゥルタイ根本原理を選択し、ミラーマッチを意識したチューニングをすること」だった。
使用したデッキリスト
特徴的なカード選択
手札破壊呪文
ミラーマッチなどにおいて、《出現の根本原理》で選ぶ3枚のなかに手札破壊呪文を入れると便利なときがある。『カルドハイム』チャンピオンシップ前は《強迫》がメインデッキに1枚入っている構成も見受けられたが、メインデッキに入れるほどのカードパワーではない。
チーム内で《ペラッカの捕食》はどうかというアイディアが浮かび、これは名案だと思えた。必要に応じて土地としてプレイでき、《出現の根本原理》の選択肢としても機能する。これなら文句なしだ!
2マナ除去枠の配分
この枠は非常に可変的だ。本大会の狙いはミラーを制することであり、《取り除き》はミラーマッチにおける使い道に乏しい。《無情な行動》は少なくとも《巨怪な略奪者、ヴォリンクレックス》《空を放浪するもの、ヨーリオン》《エシカの戦車》を除去できる。サイクリングを意識するなら《取り除き》のほうが明らかに良い選択肢になるだろう(後手でも《繁栄の狐》を除去できるからだ)。
大型クリーチャー枠の選択
《鎖を解かれしもの、ポルクラノス》のほうが1マナ軽く、早ければ3ターン目にプレイでき、除去としても機能する。さらには「脱出」によって繰り返しプレイすることが可能だ。対して《長老ガーガロス》はアグロ全般・ティムールアドベンチャーに有効だが、ミラーマッチにおいては本来使い道の少ない《無情な行動》の的を5マナ払って作り出してしまう。今回はミラーマッチを主眼に置いているため、《長老ガーガロス》はサイドボードに置くことにした。
ティムールアドベンチャーがチャンピオンシップで突出した勝率だったため、今後を考えるならば《長老ガーガロス》を少なくとも1枚メインデッキに戻して良いかもしれない。ティムールアドベンチャーに対してスゥルタイが用意できる最強のクリーチャーだからね。
《アールンドの天啓》の枚数
2枚しか採用されていないリストもある。《アールンドの天啓》もミラーマッチを有利にするためのカードだが、ミラーマッチを度外視してもスゥルタイ根本原理の核となるカードであり、2枚以下にしようとは思わない。
マッチアップごとの戦い方 – サイドボードガイド
ミラーマッチ:有利
今回の構成はミラーマッチで勝つことを意識しているため、相性は有利だと考えている。スゥルタイ根本原理は80枚のメインに打ち消し呪文が数枚入っているだけなので、基本的に打ち消しをケアせずに呪文を唱えていくことを強く推奨する。
1枚目の《出現の根本原理》で選ぶ3枚の組み合わせは、脅威・《アールンドの天啓》・手札破壊の3枚が基本となる。脅威の選択はゲーム展開によるが、通常はこのように考える。
何らかの形で相手の手札に《出現の根本原理》がないとわかっている場合は、手札破壊ではなく脅威を追加で選択しよう。この場合は基本的に《巨怪な略奪者、ヴォリンクレックス》《星界の騙し屋、ティボルト》《アールンドの天啓》が最善の組み合わせとなる。《ヴォリンクレックス》がいる状態で《ティボルト》が戦場に出ればすぐに奥義ができるからだ。
対 ミラーマッチ
ティムールアドベンチャー:互角~有利
相性は相手の構成に大きく左右される。《唱え損ね》と2~3枚の《アールンドの天啓》が入った従来の構成であれば、ほぼ互角だ。打ち消し呪文の種類を絞り、《アールンドの天啓》を廃したハビエル・ドミンゲス/JavierDominguezの構成に対しては、より楽に戦える。
基本的なゲームプランは、序盤の脅威を除去でさばき、合間を縫ってマナ加速していくことだ。相手よりもマナを多く出せるようにしてゲームをコントロールし、流れを自分のものにしていく。
相手のメインプランは序盤からクリーチャーを出し、打ち消しを構えていく展開だ。その展開をさせないようにできれば、相手はどこかのタイミングでタップアウトしなくてはならなくなる。そこで生まれた隙を突いてゲームを決定づけるパワーカードを通していこう。
対 ティムールアドベンチャー
サイクリング:不利~互角
先ほどと同様、相手の構成がものを言う。攻撃的な構成であるほど不利になり、《アイレンクラッグの紅蓮術師》が多いほど有利になる。こちらのゲームプランはシンプルで、《繁栄の狐》を除去し、《天頂の閃光》を決められる前に《出現の根本原理》で勝つ。
《エルズペスの悪夢》はこのマッチアップのキーカードであり、すべてのモードが突き刺さる。墓地を追放できれば《天頂の閃光》の効力を損なわせ、相手の一番の勝ち筋を奪える。《影の評決》もかなり心強い。相手のクリーチャーを全滅させ、同時に《天頂の閃光》を弱体化できる。
サイド後に相手は打ち消しを多く投入してくるから気をつけよう。《強迫》が非常に有効になる。
対 サイクリング
赤単:若干不利
赤単はスゥルタイに有利なデッキとして存在していたが、一般に思われているほどの相性差ではないと考えている。実際、『カルドハイム』チャンピオンシップでは赤単と3戦し、ダイスは全敗しながらもマッチは全勝した。これは出来過ぎの結果だろうが、赤単は非常に限られた時間のなかで勝利しなくてはいけないし、こちらは妨害に優れているデッキだ。
相手の理想的なスタートに対しては勝ち目がないかもしれないが、赤単側が1回でも土地が詰まったり、2枚以上余分に土地を引いてしまったりすれば、たいていはゲームの流れをひっくり返せる。赤単がライブラリー操作やドローをできないデッキであることを考えれば、こういった事態は頻繁に起こり得る。
対 赤単
白単:互角
白単は赤単ほどの爆発力がないため、相手のゲームプランに対応する余裕が若干生まれる。その反面、スゥルタイのゲームプランを妨害する《エメリアのアルコン》《傑士の神、レーデイン》を持ち合わせている。除去に強い《歴戦の神聖刃》も厄介だ。理想的な流れとしては、単体除去を《傑士の神、レーデイン》用に構えておき、その後に《影の評決》で盤面を一掃することだ。
注意して欲しいのは、《長老ガーガロス》への解答となる《巨人落とし》、《鎖を解かれしもの、ポルクラノス》への解答となる《スカイクレイブの亡霊》だ。通常はこの2種をケアしている余裕がなく、持っていないことを祈ることになるが、相手の盤面が広がっている状況で《影の評決》か《長老ガーガロス》の選択肢がある場合には、全体除去を先に唱えたほうがはるかに安全である。
対 白単
ディミーアローグ:その場から逃げてリペアリングを要求しよう
冗談はさておき、14枚のサイドボードをフル活用してもどう勝てば良いのか見当がつかない。もちろんローグはプレイングが極端に難しいデッキなので、(相手がアーネ・ハーシェンビスでなければ)相手のミスにつけ込むことはできる。
相手が早々に《鎖を解かれしもの、ポルクラノス》を墓地に落してくれれば、それが最善の勝ち筋になる。タイミング良く唱えられれば《エルズペスの悪夢》もゲームの流れをひっくり返せるかもしれない。流れを逆転できた場合は自分の墓地をできるだけ肥やさないようにしよう。たとえば、必要に迫られない限り《寓話の小道》は起動してはいけない。ローグのカードはどれもこちらの墓地枚数に応じて強化されるため、そのボーナス効果を得るまでの時間を先延ばしできれば勝ち目が出てくる!
対 ディミーアローグ
終礼
大会を通してスゥルタイを選択して良かったと感じていた。大会のベストデッキにならないことは承知していたが、どんなデッキが相手でも戦えるという確信があった。そして実際にこの考えは間違っていなかった!
常々言っていることではあるが、何かデッキに関して訊きたいことがあったらTwitterで気軽に尋ねて欲しい。いつでも喜んで力になろう!
また、フィーチャーされなかった試合も録画しておいた。そうでもしないと、記録として残らないからね。初日の動画はすでにアップロードしてあるから、トップ8までの道のりに興味ある生徒はチェックしてみて欲しい。解説なしのプレイ動画になっているが、私の視点から対戦の模様を観戦できる。
スゥルタイ根本原理(スタンダード)の対戦動画
ジャンドサクリファイス(ヒストリック)の対戦動画
本日もお付き合いいただきありがとう。そして大会で声援を送ってくれたことにも感謝している。みなさんの心温まる言葉は、私にとって大きな意味を持っている。世界中にファンがいるなんて本当に感慨深い!ありがとう、みんな!
それではまた次回。