神インタビュー: 和田 寛也 ~自分のためにも、神というタイトルのためにも、できるだけ長く勝ち続けたい~

晴れる屋

By Kenji Tsumura


 和田 寛也 (東京) 。


 【第5期スタンダード神決定戦】では【見事な一点読みを的中】させ、前「神」である高橋 優太を打ち破り「神」の座に就任した。




 【高橋との対決】後に行われた勝利者インタビューでは、感極まった表情を見せた和田。あの試合に向けて、和田は誰とどのように調整を行ったのか。

 この度は、激戦の【第5期スタンダード神決定戦】を振り返ってもらうとともに、「神」として挑む【第6期スタンダード神決定戦】への意気込みを語ってもらった。



この試合に勝てたんだから、本戦も大丈夫


--「【第5期スタンダード神決定戦】後のインタビューから、あの1戦にかける強い気持ちが窺えたような気がしたのですが、どれくらい調整されたのですか?」

和田「調整にはかなりの時間を割きました。幸いなことに職場に頼りになるプレイヤーが多いので、早い段階であんちゃん (高橋 優太) は『ダーク・ジェスカイ』を持ち込んでくると決めたうえで、こちらはどのような戦略を選ぶべきか多くの方に相談に乗っていただきました」

--「【あの白緑】にはすぐにたどり着いたのでしょうか?」

和田「いえ、最初は『赤緑ランプ』からスタートしました。それくらい相手の読みを外すデッキ選択をしなければだめだろうと考えていて、なおかつサイドボードに『ダーク・ジェスカイ』に対して強力な《棲み家の防御者》《死霧の猛禽》パッケージを入れて調整を開始しました。ただ『赤緑ランプ』くらいだとあんちゃんも想定してくるだろうという話になって、それなら《棲み家の防御者》《死霧の猛禽》をメインに据えたデッキに変更しようと」


棲み家の防御者死霧の猛禽


--「高橋さんはメインから《軽蔑的な一撃》3枚を採用していましたし、仰る通り『赤緑ランプ』は想定内だったのかもしれません」

和田「そうなんですよね。『赤緑ランプ』は1本目は高い確率で勝てると思ったんですけど、サイドボード後はカウンター呪文や手札破壊など汎用性の高いカードで対抗されてしまうんです。その一方で最終的に【自分が使用した白緑デッキ】は、《フェリダーの仔》のような特殊なカードを使わないと捌かれませんし、攻め方も多角的なので初見で見切られることもないだろうと。そこからはひたすら『ダーク・ジェスカイ』との練習を繰り返しました」

--「練習中の感触はいかがでしたか?」

和田「調整にはたくさんの方が協力してくれたんですが、何度か相手をしてくれたヤソ (八十岡 翔太) には1回も勝てませんでした……。ライブラリーアウトで負けたりもして(笑) 最終日にはルー君 (有留 知広) が終日練習に付き合ってくれて、最後の最後でルー君とのマッチに勝つことができたんです。その試合の後にルー君が、『この試合に勝てたんだから、本戦も大丈夫』って言ってくれたのは嬉しかったし自信にもなりました」

--「たくさんの方が応援してくださっていたんですね」

和田「調整に参加してくれたプレイヤー以外にも、部長たちもすごい応援してくれてて。自分自身、タイトルにかける思いも強かったですし、会社でもそういった雰囲気を作ってもらえてありがたかったです」




--「和田さんの予想通り、高橋さんは『ダーク・ジェスカイ』を使用されていたわけですが、デッキが判明したときの心境はいかがでしたか?」

和田練習通りのデッキだったので、安堵感が大きかったです。ただし調整中に《フェリダーの仔》だけはまずいと分かっていたので、サイドボード後に《フェリダーの仔》が出てくるかどうかは懸念材料でした。練習もずっと《フェリダーの仔》入りの『ダーク・ジェスカイ』でやっていましたし、デッキ相性は良いけれども、それでも勝負は《フェリダーの仔》次第だろうと結論付けていたので」


フェリダーの仔


--「ゲームは5本目までもつれ込む大熱戦でした」

和田「4本目に《停滞の罠》を1枚無駄に使用する大ポカをやらかしたんですが、実は練習中にも同じミスをやっていたんです。なので試合後にヤソから『練習でも同じミスやったじゃん!何やってんの!』って突っ込まれました……(笑) どのゲームも均衡していましたが、だからこそ最終ゲームに勝てたときの達成感は大きかったです」


停滞の罠




妥協点を探るのが『神決定戦』の醍醐味


--「今回は『神』として『挑戦者』を迎え撃つ立場になりますが、前回のような秘策はありますか?」

和田「前回の読み合いを【カイジのEカード】で例えるなら、あんちゃんが『皇帝』側でなおかつ『皇帝のカード』を出すと分かっていたから僕は『奴隷のカード』を合わせることができたんです。今回の『挑戦者』である後藤 (広行) さんは、【グランプリ・東京2016】では『エルドラージ』デッキを使用していましたが、横浜のプロツアー予備予選では『エスパーコントロール』を使用していたと聞いています。そのため、最終的にどんなデッキを使用されるか見当が付かないですし、今回は前回よりもやりづらい部分が多いと感じています」

--「後藤さんに関してかなり情報収集されているようですが、『神決定戦』において対戦相手を研究することは重要ですか?」

和田「非常に重要だと思います。対戦相手のことを何も知らなければ、ただ単に強いデッキを探すだけの作業になってしまいますし、それには途方もない時間と労力が必要です。しかし、もし対戦相手が使用するデッキの傾向などが分かっていれば、作業時間を大きく削減できるだけなく、対戦相手に合わせたデッキ選択もできます。ただしこれは『挑戦者』側にも同じことが言えるので、『挑戦者』が自分のことをどのように考えて、どのようなデッキ選択をしてくるのか。その妥協点を探るのが『神決定戦』の醍醐味だと思っています」




--「そのような『対戦相手のイメージ』を逆手に取った選択もありえると思われますか?」

和田「もちろん後藤さんが奇抜なデッキ選択をする可能性もありますが、奇抜なデッキ選択はリターンも大きいものの、自分自身が慣れていないデッキを使いこなせるかというリスクもあるので、プレイヤーの心理として自分が使い慣れたデッキで挑みたいと考えるはずなんです。そういった意味で対戦相手のデッキ選択の傾向を探ることは重要だと考えています。ひょっとしたら『神決定戦』において一番重要なのは、対戦相手と親しくなることかもしれませんね(笑)」



自分のためにも、『神』というタイトルのためにも、できるだけ長く勝ち続けたい


--「最後に、『神決定戦』に向けた意気込みをお願いします」

和田「自分にとって念願のタイトルでもありますし、ぜひとも『神』の座を維持したいと思っています。それと『神決定戦』では1回で最大4人の『神』が入れ替わる可能性がありますが、簡単に『神』が敗れてしまうとこのタイトルの重みも薄れてしまうような気がするんです。『挑戦者』になるプレイヤーも強いので一筋縄ではいかないと思いますが、自分のためにも、『神』というタイトルのためにも、できるだけ長く勝ち続けたいと思っています」




--「ありがとうございました。本戦もがんばってください」





 和田にとって【第5期スタンダード神決定戦】は、【高橋という因縁の相手を】、そして自身の殻を打ち破るための戦いだった。

 神経をすり減らすようなフルゲームの末に、ようやく掴み取った念願の初タイトル。

 【第6期スタンダード神決定戦】では、和田はタイトルホルダーとしてこの1戦に挑むことになる。「挑戦者」のリサーチにも余念がなく、タイトル防衛への執念が垣間見える「神」だが、そこにはどんなドラマが待ち受けているのか。

 「神」として。和田の新たな挑戦が始まる。