情報を制す者はマジックを制す。
特にSNSによる情報交換が盛んな現代、口コミがその後のメタゲームに与える影響は計り知れない。
すなわち、バズってる(話題になっている)カードを知ることは、メタゲームの把握と予測の大いなる助けとなることだろう。
当企画では、そんな「今、バズってるカード」を週刊で追っていきたいと思う。
カードの紹介に入る前に、先週行われたイベントやマジック関連の主な出来事を簡単におさらいしよう。
【The Last Sun 2015】
先週末は弊店主催の完全招待制トーナメント、【The Last Sun 2015】が開催された。
厳しい予選を勝ち抜いた猛者たちやプロプレイヤーが一堂に会し、熱い火花を散らした今大会で優勝を収めたのは【2015年度マジック・プロツアー殿堂顕彰者】である八十岡 翔太(東京)!
【TLS】誰よりも巧みに、そして誰よりも情熱的に。2つのフォーマットで行われた過酷な戦いを見事制し、「鬼神」と呼ばれる理由を改めて知らしめた。『The Last Sun 2015』優勝は八十岡 翔太!おめでとう!#TLS2015 pic.twitter.com/6cCYCzgJiv
— 晴れる屋 (@hareruya_mtg) December 20, 2015
また、サイドイベントとしてカリスマ土地絵師・Rob Alexander氏を招致してのサイン会などが開催され、“年末のお祭り”に相応しい大盛況のイベントとなった。
カバレージをはじめ、動画やインタビュー、デッキテク、写真館などなど盛りだくさんのコンテンツをぜひご覧ください。
主要な出来事はこのくらいだろうか。
さて、それでは今大きな話題を呼んでいるカードたちを紹介しよう。
1. 《突然の衰微》
【The Last Sun 2015】の【決勝戦】は斉藤 伸夫と八十岡 翔太によるレガシー対決だった。
その最終戦で勝負を分けたカード、それが《突然の衰微》だ。
その活躍の委細については【決勝カバレージ内】でも書かれている通りだが、顛末を簡単に説明するならば《師範の占い独楽》に対して《突然の衰微》をプレイし、ライブラリートップに潜んでいた《Force of Will》を引っ張り出して《陰謀団式療法》で捨てさせた、といった状況である。
動画だと1:15:51~の前後でその活躍ぶりが見られる。
八十岡が使用していたデッキは「ANT」だったが、最近のレガシーではフェアデッキ全般に有利な「BUGカスケード」などの消耗戦に強い緑黒系のデッキが増えつつあり、それらのデッキで必然的に採用されている《突然の衰微》は今最注目のカードと言える。今週末の【エターナルフェスティバル2015】でも《突然の衰微》が飛び交うことになるだろう。
2. 《僧院の導師》
惜しくも決勝戦で殿堂プレイヤー・八十岡の前に膝を屈した斉藤だったが、スタンダードにおける彼のデッキ選択も非常に印象的だった。
《僧院の導師》入りのダークジェスカイ。BBD(Brian Braun-Duin)が【SCGO Las Vegas】で優勝したリストを参考にしたようだ。さっそくリストをご覧いただこう。
1 《島》 1 《山》 1 《平地》 1 《沼》 4 《血染めのぬかるみ》 4 《汚染された三角州》 3 《溢れかえる岸辺》 2 《大草原の川》 2 《燻る湿地》 1 《窪み渓谷》 3 《神秘の僧院》 2 《乱脈な気孔》 -土地(25)- 4 《ヴリンの神童、ジェイス》 4 《魂火の大導師》 2 《僧院の導師》 2 《黄金牙、タシグル》 -クリーチャー(12)- |
3 《焦熱の衝動》 1 《払拭》 2 《焙り焼き》 1 《勇敢な姿勢》 4 《はじける破滅》 3 《コラガンの命令》 3 《苦い真理》 2 《オジュタイの命令》 2 《完全なる終わり》 1 《残忍な切断》 1 《宝船の巡航》 -呪文(23)- |
3 《アラシンの僧侶》 2 《強迫》 2 《否認》 2 《光輝の炎》 1 《払拭》 1 《軽蔑的な一撃》 1 《焙り焼き》 1 《影響力の行使》 1 《見えざるものの熟達》 1 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》 -サイドボード(15)- |
最も特徴的なのは《カマキリの乗り手》が不採用で、3マナ域のクリーチャーが《僧院の導師》のみに絞られていることだ。これによってマナベースに余裕が生まれ、従来型のリストと比較してもタップイン土地を増やすことなく《乱脈な気孔》を入れることが可能になっている。
また、ドロースペルとして《苦い真理》と《宝船の巡航》が合計4枚とやや多めに採用されているのも特徴的だ。《苦い真理》のペイライフは若干気になるところだが、4枚採られた《魂火の大導師》が失ったライフを回復してくれるのだろう。
【トップ8プロフィール】でもデッキ選択の理由として“レガシーっぽいから。”と述べている。アグロとしてもコントロールとしても立ち回ることができるこのデッキはできることの幅が広く、勝つためにはかなりのプレイングスキルが必要となるだろう。普段から繊細なプレイを要求されるレガシーフォーマットで勝利を収めている、斉藤らしいデッキ選択である。
3. 《Goblin Sleigh Ride》
時節もクリスマスが間近ということで、マジックとクリスマスに関する小噺を一つ。
みなさんは「Holiday gift card」をご存知だろうか? 2006年から毎年クリスマスにごく少数印刷され、WotCから従業員や関係者へと配布される非常に貴重なプロモカードだ。
これらのカードは「アンヒンジド」や「アングルード」同様“銀枠カード”なため公式フォーマットで使用することはできないが、ユニークなイラストやテキストから多くのコレクターたちに愛されている。
今年もそんな「Holiday gift card」が新たに登場するということで、カード画像が公開されている。
《Goblin Sleigh Ride》 (1)(R)
ソーサリー
あなたのコントロールするクリーチャー1体を対象とし、~の上に登らせる(climbs)。あなたは彼らを彼らの愉快な手段で滑らせる。そのクリーチャーが落ちずに止まった(stayed on,)場合、そのクリーチャーは滑っている間に触れた他の各クリーチャーに自身のタフネスに等しい点数のダメージを与える。
ソーサリー
あなたのコントロールするクリーチャー1体を対象とし、~の上に登らせる(climbs)。あなたは彼らを彼らの愉快な手段で滑らせる。そのクリーチャーが落ちずに止まった(stayed on,)場合、そのクリーチャーは滑っている間に触れた他の各クリーチャーに自身のタフネスに等しい点数のダメージを与える。
つまりこれは、テーブルの上でソリ遊びをするカードである。イラストにも《包囲の搭、ドラン》の上に乗ってはしゃぐボガート(ローウィン次元の沼地に住むゴブリン)が描かれており、銀枠らしいユーモラスな1枚となっている。
ちなみに本カードのイラストレーターのMark Zugは《包囲の搭、ドラン》のイラストレーションも手掛けている。
コレクショングッズではあるが、所持していればちょっとした話題になりそうなこれらのカード。普段一緒にマジックをしている友人や、あるいは自分へのクリスマスプレゼントとして、イラストやテキストで気に入ったものがあれば集めてみるのもよいだろう。
3.5 《天使の贈り物》
そしてお忘れだろうか? 今年の12月25日は金曜日。つまり、クリスマスにFNMが開催されるのだ。これは6年ぶりのことであり、次回クリスマスにFNMが開催されるのは東京オリンピックが開催される2020年のことだ。
今回は読者の皆さんに、この特別なFNMに回すデッキとして相応しい“特別なデッキリスト”をお贈りする。こちらをご覧いただきたい。
3 《森》 3 《山》 2 《平地》 3 《梢の眺望》 3 《燃えがらの林間地》 4 《吹きさらしの荒野》 4 《樹木茂る山麓》 1 《進化する未開地》 3 《戦場の鍛冶場》 -土地(26)- 4 《失われた業の巫師》 4 《ピア・ナラーとキラン・ナラー》 4 《突進する大鹿の群れ》 4 《風番いのロック》 4 《ムラーサの緑守り》 2 《龍王ドロモカ》 -クリーチャー(22)- |
4 《ドラゴンの餌》 3 《焙り焼き》 1 《チャンドラの灯の目覚め》 4 《天使の贈り物》 -呪文(12)- |
4 《鐘突きのズルゴ》 4 《軍族童の突発》 4 《アタルカの命令》 3 《ラッパの一吹き》 -サイドボード(15)- |
なんだこれ?と思われたかもしれないが、まずはこの3枚に注目していただきたい。
サンタクロースとトナカイ、そしてプレゼントである。
デッキリストの趣旨がお分かりいただけただろうか? そう、これはクリスマスにちなんだ(?)カードのみで構成されたデッキ、その名も「クリスマスデックウィン」だ。デッキカラーもクリスマスを彷彿とせる赤緑白で構成されている。【基本土地をアイスエイジのもの】で統一すると冬らしさが増していい感じだ。
次はカップルである。クリスマスといえばカップル、そして現行スタンダードのベストカップルといえばやはりこの方々にお越しいただくほかないだろう。
戦場に出るや否や、即座に
クリスマスの光景に欠かせないものはまだまだある。たとえばローストチキンなどがそうだろう。ん、ロースト……? どこかで聞いたような……
というわけでロースト&チキン(鳥)だ。《ドラゴンの餌》はオマケのご馳走ということで、各自都合よく解釈していただきたい。
最後にクリスマスツリーとイルミネーションも外せない。
《ムラーサの緑守り》はどう見てもクリスマスツリーなので説明は不要だろう。
イルミネーションの《チャンドラの灯の目覚め》が構築級のカードであることは【松本 友樹氏によって証明されており】、このデッキでも装飾である《龍王ドロモカ》とのマリアージュによってド派手な輝きを放つことだろう。
こんな重いクリーチャーばかりの紙束が回るのか?と思われるかもしれないが、サンタクロース(《失われた業の巫師》)さえ生き残ればなんとかなる。また、《龍王ドロモカ》はこのデッキの弱点である打ち消しや除去を牽制できる。
サイドボードにはジングルベルということで《鐘突きのズルゴ》。トークン生成呪文の《軍族童の突発》は賑やかしだ。祭りの場には外せない《ラッパの一吹き》と、パレードとして《アタルカの命令》も採用している。
特別な夜を、特別なデッキと過ごしたいという益荒男は、ぜひともこの「クリスマスデックウィン」を使用してみてほしい。最高のクリスマスが、君を待っている。
いかがだっただろうか?
今週もまた多くのカードがプレイされ、注目され、議論を呼ぶのだろう。
次回の記事も楽しみにしていただけたら幸いである。
この記事内で掲載されたカード
Twitterでつぶやく
Facebookでシェアする
このシリーズの過去記事
- MTG Just Now! vol.25 -ラッパの一吹き etc.-
- MTG Just Now! vol.24 -ダク・フェイデン etc.-
- MTG Just Now! vol.23 -聖トラフトの霊 etc.-
- MTG Just Now! vol.22 -アタルカの命令 etc.-
- MTG Just Now! vol.21 -龍王オジュタイ etc.-
- MTG Just Now! vol.20 -風番いのロック etc.-
- MTG Just Now! vol.19 -白蘭の騎士 etc.-
- MTG Just Now! vol.18 -絶え間ない飢餓、ウラモグ etc.-
- MTG Just Now! vol.17 -絹包み etc.-
- MTG Just Now! vol.16 -ゼンディカーの同盟者、ギデオン etc.-
- MTG Just Now! vol.15 -白日の下に etc.-
- MTG Just Now! vol.14 -黒の万力 etc.-
- MTG Just Now! vol.13 -聖遺の騎士 etc.-
- MTG Just Now! vol.12 -洞察のランタン etc.-
- MTG Just Now! vol.11 -精力の護符 etc.-
- MTG Just Now! vol.10 -幽霊火の刃 etc.-
- MTG Just Now! vol.9 -マグマのしぶき etc.-
- MTG Just Now! vol.8 -搭載歩行機械 etc.-
- MTG Just Now! vol.7 -ウーラの寺院の探索 etc.-
- MTG Just Now! vol.6 -ケラル砦の修道院長 etc.-
- MTG Just Now! vol.5 -異端の癒し手、リリアナ etc.-
- MTG Just Now! vol.4 -ヴリンの神童、ジェイス etc.-
- MTG Just Now! vol.3 -師範の占い独楽 etc.-
- MTG Just Now! vol.2 -地平線の梢 etc.-
- MTG Just Now! vol.1 -ゴブリンの群集追い etc.-