スタンダード情報局 vol.74 -鏡よ鏡、《キキジキ》は何処?-

富澤 洋平

はじめに

みなさんこんにちは。晴れる屋メディアチームの富澤です。

前回は第19期スタンダード神決定戦から優勝デッキであるバント機体をご紹介しました。序盤からクリーチャーでプレッシャーをかけつつ、中盤以降は攻防の軸を機体に委ねたオリジナルデッキでした。1枚だけの《メカ巨神のコア》は奥の手であり、引いた際は合体を目指したいところですね。

今回は第5回 Sekappy COLOSSEUM MTGアリーナ 決勝大会とStandard Challengeの結果を振り返っていきます。

先週末の注目トピックは?

前回の記事で軽く触れた《鏡割りの寓話》ですが、週末に開催されたStandard Challengeで多くのデッキが採用していました。わずか1週間足らずの内に、この英雄譚はスタンダードにどんな変化をもたらしたのでしょうか?

鏡割りの寓話鏡割りの寓話

現在のスタンダードは多くのデッキが横一線で並ぶ混戦状態。デッキパワー的に白単アグロとオルゾフミッドレンジが頭一つ抜けているものの、ほかからのマークは厳しく、結果的にバランスがとれている印象を受けます。ゲーム展開としては2ターン目ないし3ターン目に何らかのパーマネントを展開し、主導権を巡って処理し合っていくわけですが、こうなると1枚で複数展開/交換するカードが焦点となります。プレインズウォーカーはこの典型といえるでしょう。

婚礼の発表不笑のソリン

しかしながらプレインズウォーカーはその特性から戦闘で落とされやすく、定着させるには一工夫が必要になります。オルゾフミッドレンジが優れているのは《婚礼の発表》で壁を作りつつ、プレインズウォーカーへつなげられる点にあります。

ではもし、除去で等価交換されず、さらに戦闘で破壊されないプレインズウォーカーがいたらどうでしょうか?使うだけでアドバンテージを生み出す、使い得としかいいようのないカードがあるとしたら。

鏡割りの寓話鏡割りの寓話

《鏡割りの寓話》はまさにその条件を満たしたカードであり、たった3マナと1枚のカードで新鮮な2枚のカードとクリーチャー2体へと変わります。しかもI章で生成されるゴブリン・トークンはミニ《黄金架のドラゴン》と呼ぶべき存在であり、攻撃すればするほどマナ差が開いていく仕様。環境最優良除去である《消失の詩句》で対処すればカード面で、クリーチャー化したところをまとめて《食肉鉤虐殺事件》で流そうものならマナの面でアドバンテージを失ってしまいます。

ゲーム速度がやや落ち、ミッドレンジが幅を利かす環境になったことで、この英雄譚は活躍の時を迎えています。ミッドレンジが不足しがちな序盤のボードの穴埋めとルーティングによる事故の回避、果てはフィニッシャーとなるわけですから。

前置きが長くなりましたが、それでは大会結果をみていきましょう。

Standard Challenge #12399164

順位 プレイヤー名 デッキタイプ
優勝 Mogged ティムールミッドレンジ
準優勝 musasabi ボロスアグロ
トップ4 nekonekoneko エスパープレインズウォーカー
トップ4 _Falcon_ ラクドスサクリファイス
トップ8 Salvatto エスパープレインズウォーカー
トップ8 _Batutinha_ エスパープレインズウォーカー
トップ8 Idea029 ラクドスサクリファイス
トップ8 handsomePPZ ラクドスサクリファイス

(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)

Standard Challenge #12399164を制したのはティムールミッドレンジ。現在のスタンダードの荒波を超えるには、攻防一体のミッドレンジが適しているようです。トップ8はラクドスサクリファイスとエスパープレインズウォーカーが大勢を占めています。

メタゲーム

デッキタイプ トップ32 トップ16
ラクドスサクリファイス 6 5
セレズニアミッドレンジ 6 3
エスパープレインズウォーカー 6 3
オルゾフミッドレンジ 3 1
ボロスアグロ 2 2
ナヤルーン 2 0
その他 7 2
合計 32 16

ラクドスサクリファイスとセレズニアミッドレンジ、エスパープレインズウォーカーが最多数を占めたメタゲームとなりました。エスパープレインズウォーカーは増加したセレズニアミッドレンジを狩る立場にあり、事実、使用者の半数をトップ16へ送り込むことに成功しています。

ラクドスサクリファイスの内、トップ8に残ったのはすべて《鏡割りの寓話》を採用したもの。除去を増やし、別の勝ち筋を用意することで《鎮まらぬ大地、ヤシャーン》を意識した構築となっています。

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ティムールミッドレンジ

ティムールミッドレンジ

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ティムールミッドレンジはマナ加速から《エシカの戦車》《黄金架のドラゴン》へ繋げ、火力と打ち消し呪文でバックアップしていきます。本来のマナ域よりも早期に着地する《黄金架のドラゴン》はゲームを決めるに十分なパワーを秘めている一方で、ドロー呪文がないこともありマナフラッドに弱いピーキーさも持ち合わせていました。Mogged選手は《鏡割りの寓話》を採用することで、事故を緩和することに成功したのです。

厚顔の無法者、マグダ鏡割りの寓話月の帳の執政

《鏡割りの寓話》のゴブリン・トークンは攻撃時に宝物・トークンを生成してくれますが、ティムールミッドレンジの場合は単なる1マナ加速だけで終わりません。《黄金架のドラゴン》が出れば瞬間的に生み出せるマナは倍化し、複数の脅威を同時展開することも可能ですし、《厚顔の無法者、マグダ》の餌にあてがうこともできます。宝物・トークンに付加価値を与えるこのデッキではI章すらも脅威となりえるのです。

《キキジキの鏡像》へ変身を果たすと求めるは有力なコピー先。このデッキでは2種類のドラゴン、《黄金架のドラゴン》《月の帳の執政》が候補にあがります。《月の帳の執政》は素晴らしいスタッツに加えて死亡時にダメージを飛ばしてくれるため、攻撃の手を緩めずにボードコントロールまで担っています。序盤にライフを詰めておけば、ブロッカーを並べられたとしても直接火力として削りきることもできるのです。

反逆のるつぼ、霜剣山耐え抜くもの、母聖樹

土地/呪文の両面土地やクリーチャー化土地など、マナフラッドを受けるカードが多数採用されています。『神河:輝ける世界』からは《反逆のるつぼ、霜剣山》《耐え抜くもの、母聖樹》がみられます。前者は打ち消されないクロックであり、速攻もあることからライフを詰めるのに最適

後者はクリーチャーとプレインズウォーカーを除くパーマネント、いわゆる置物対策となります。《婚礼の発表》《鬼流の金床》など置物が増えているため、《耐え抜くもの、母聖樹》デッキスペースを圧迫せずに採用できる貴重な対策カードといえますね。

第5回 Sekappy COLOSSEUM MTGアリーナ 決勝大会

順位 プレイヤー名 デッキタイプ
優勝 松崎 照央 ゴルガリコントロール
準優勝 松浦 拓海 白単アグロ
トップ4 沢田 哲志 オルゾフミッドレンジ
トップ4 小阪 和音 オルゾフミッドレンジ
トップ8 川端 真司 オルゾフコントロール
トップ8 萩原 紀幸 白単アグロ
トップ8 木村 透 オルゾフミッドレンジ
トップ8 原 康貴 ナヤルーン

(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)

オルゾフ系や白単アグロが活躍した第5回 Sekappy COLOSSEUM MTGアリーナ 決勝大会。優勝したのは”Akio Pros”総帥、松崎 照央選手であり、オリジナルのゴルガリコントロールを使用しての快挙となります。

勢団の銀行破り絶望招来

トップ8に入賞した川端 真司選手は黒に寄せたオルゾフコントロールを使用していました。単体除去でゲーム展開を遅らせ、《勢団の銀行破り》でリソースを伸ばしていきます。プレインズウォーカーと英雄譚で攻めつつ、黒マナが4つ揃えば《絶望招来》により幕引きする構築となっています。

メタゲーム

デッキタイプ トップ16 トップ8
オルゾフミッドレンジ 4 3
白単アグロ 2 2
オルゾフコントロール 2 1
オルゾフアグロ 1 0
ラクドスサクリファイス 1 0
ゴルガリコントロール 1 1
イゼットドラゴン 1 0
イゼットコントロール 1 0
エスパープレインズウォーカー 1 0
ナヤルーン 1 1
マルドゥミッドレンジ 1 0
合計 16 8

序盤から終盤まで隙のないオルゾフ系と白単アグロに人気が集中しています。オルゾフのポイントはメインボードでの手札破壊であり、遅いゲームで有利に立ち回れる構築となっています。サイドボード後は白単アグロを意識した《レイ・オヴ・エンフィーブルメント》が目を引きます。

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ゴルガリコントロール

ゴルガリミッドレンジ

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これでもかというくらい積まれた除去でゲーム展開をコントロールし、相手が疲弊したところで《樹海の幻想家、しげ樹》《無限性の支配》を使ってアドバンテージ差を確固たるものとするゴルガリコントロール。パーマネント対策も多いため、クリーチャーベースのデッキとラクドスサクリファイスに強いデッキとなります。

レイ・オヴ・エンフィーブルメント不憫な悲哀の行進

単体/全体問わず各マナ域に除去呪文が採用されています。一見すると《スレイベンの守護者、サリア》1枚に完封されてしまいそうですが、メインボードから《レイ・オヴ・エンフィーブルメント》を採用することでテンポロスを最小限にとどめています

《不憫な悲哀の行進》はマナに応じてプレイできる柔軟な除去であり、貴重なライフ回復カードでもあります。コントロールが苦手とするプレインズウォーカーも対象にとれるため、オルゾフ相手には撃ち時を間違えないようにしましょう。手札のカードを犠牲にコスト軽減も可能なため見た目以上に警戒しにくく、相手の裏をかいた一手となりえます。

掘り起こし

《掘り起こし》はデッキに柔軟性をもたらす接着剤であり、状況に応じた必要牌を届けてくれます。序盤は基本土地を、中盤以降は「切除」コストを支払うことであらゆるカードがサーチ可能となります。

選別の儀式領界喰らい、サルーフ

《選別の儀式》は対アグロやサクリファイスで、ボードを一掃しつつ次の行動を確保してくれる必殺の1枚。2マナ以下のパーマネント対策をまとめて流してくれるため、《ラトスタイン翁》で生成したトークンもマナへと早変わり。ラクドスサクリファイスでこのデッキとマッチアップする際は《鬼流の金床》を複数並べないように気をつける必要があります。

《領界喰らい、サルーフ》は生きる全体除去であり、除去呪文と組み合わせることでサイズアップしつつ、ボードに睨みを利かせます。+1/+1カウンターの置かれたこのクリーチャーの前では《婚礼の発表》もプレインズウォーカーも無防備に等しく、置物すらも対処されてしまいます。アップキープの誘発型能力は破壊ではなく追放であるため、死亡時の誘発型能力を無視できるのも忘れないようにしましょう。

樹海の幻想家、しげ樹魂転移

相手のリソースを削り続けた先に待ち受けているのが《樹海の幻想家、しげ樹》です。「魂力」コストは重いものの、《古き神々への拘束》《ラトスタイン翁》などマナを伸ばせるカードがあり、ロングレンジを前提に構築されているためさほど気になりません。

「魂力」されたが最後、一度使った除去や《魂転移》を拾って相手の攻撃を完全にとめ、《遺跡の碑文》も交えて手札も刈り取ってしまいます。《魂転移》があればこの過程を繰り返すことができ、相手のボードと手札は空となり、後は悠々と《領界喰らい、サルーフ》《目玉の暴君の住処》で攻撃を繰り返すだけ。自分のライフが少ない場合には、《ウィザーブルームの命令》のドレイン効果を交えて削っていきましょう。《樹海の幻想家、しげ樹》自身は回収できないのでご注意を

その他の大会結果

Standard Challenge #12399176

順位 プレイヤー名 デッキタイプ
優勝 Salvatto ラクドスサクリファイス
準優勝 Cabezadebolo セレズニアミッドレンジ
トップ4 MJ_23 オルゾフミッドレンジ
トップ4 fingers1991 ティムールミッドレンジ
トップ8 Demian77 エスパープレインズウォーカー
トップ8 hcook725 ラクドスサクリファイス
トップ8 bolov0 アゾリウスコントロール
トップ8 albertoSD エスパープレインズウォーカー

(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)

Standard Challenge #12399176を制したのはSalvatto選手のラクドスサクリファイス。打ち消し呪文主体の防御的なアゾリウスコントロールも残っています。

穢れた敵対者パワー・ワード・キル

Salvatto選手のデッキは固定枠だった《霜剣山の製錬者》を排除し、《穢れた敵対者》と黒除去を増やしています。《穢れた敵対者》《鏡割りの寓話》と相性が良く、メインボードから除去を増やしたことで《鎮まらぬ大地、ヤシャーン》で止まらない構築となっているのです。

メタゲーム

デッキタイプ トップ32 トップ16
ラクドスサクリファイス 7 5
オルゾフミッドレンジ 4 2
白単アグロ 4 1
エスパープレインズウォーカー 3 2
セレズニアミッドレンジ 3 1
ティムールミッドレンジ 3 1
アゾリウスコントロール 2 2
イゼットドラゴン 2 1
その他 4 1
合計 32 16

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おわりに

今回は流行の《鏡割りの寓話》に焦点を当ててデッキをご紹介しました。ミッドレンジのマスターピースとなった英雄譚は、今後も活躍してくれそうですね。次はどんなデッキに採用されるのでしょうか。

また、ゴルガリコントロールも注目のアーキタイプです。ボードコントロールに力をいれてリソースを削りきることで相手を再起不能に陥れます。「魂力」は対処されにくいため、ハマったが最後、《樹海の幻想家、しげ樹》の循環から抜け出すことは難しそうです。

次回もスタンダードの情報をお届けします。それでは!

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富澤 洋平 晴れる屋メディアチームスタッフです。最近は《黙示録、シェオルドレッド》に夢中な日々です。 富澤 洋平の記事はこちら

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