はじめに
みなさんこんにちは。晴れる屋メディアチームの富澤です。
前回は採用率急上昇カードである《鏡割りの寓話》に注目しました。たった3マナでクリーチャー2体分と単体でもマナコスト以上の効果をもたらしてくれますが、II章のルーティング効果を生かしてリアニメイト戦略にも組み込まれているようです。《鏡割りの寓話》の進撃はいつまで続くのでしょうか?
今回は第20期スタンダード神挑戦者決定戦とオンラインイベントの結果を振り返っていきます。
先週末の注目トピックは?
前節の『神河:輝ける世界』期に比べて環境変化がやや緩やかな『ニューカペナの街角』期のスタンダード。その原因は環境に蔓延る3色ミッドレンジにあります。マナベースの安定化とリスクに見合う3色のパワーカードが登場したことで、ジャンド→エスパー→ジェスカイといった3色ベースのデッキだけで覇権争いが続いています。上がりきったカードパワーを前に単色~2色デッキが入り込むのは難しく、優秀な軽量除去が多いこともあって、本来多色デッキを咎める存在であったアグロ系は絶滅危惧種となっていました。
しかし、今週はアグロ使いの方々へ朗報がお届けできそうです。テーブルトップとオンラインの両方で久々に白系アグロが入賞していたのです。
第20期スタンダード神挑戦者決定戦では単騎による短期突破を目指していくヒロイックデッキが入賞しています。《照光の巨匠》と《嵐追いのドレイク》を強化し、相手の態勢が整う前に刺しきりを目指します。単体除去には弱いものの、保護呪文がこれでもかというほど厚く取られており、隙はほとんどありません。
Standard Challenge #12426391のボロスアグロはクリーチャーを横に並べて相手の干渉手段を上回る数で押し切る白の伝統的な戦略になっています。《日の出の騎兵》《轟く雷獣》の2種の速攻クリーチャーを採用しており、《鏡割りの寓話》や《婚礼の発表》の返しでダメージを詰められるように構築されています。環境の標準火力は2点となっているためタフネス3は非常に頼もしい存在です。
アグロデッキの活躍の裏には、3色デッキがミッドレンジやコントロールを意識するあまり除去の質を上げたことによる全体的なマナコストの上昇や、除去呪文の採用枚数減少によりガードが下がっていたということがあげられます。アグロデッキも適切なタイミングと構築次第で活躍できると改めて証明されました。
それでは大会結果をみていきましょう。
第20期スタンダード神挑戦者決定戦
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
優勝 | 増田 勝仁 | ジェスカイオパス |
準優勝 | 高山 純一 | ジェスカイオパス |
トップ4 | 井上 卓人 | 白単タッチ青 |
トップ4 | 藤原 瑞季 | イゼットドラゴン |
トップ8 | 宮崎 裕一 | アゾリウスヒロイック |
トップ8 | 高尾 翔太 | グリクシスミッドレンジ |
トップ8 | 斉藤 徹 | ジェスカイストーム |
トップ8 | 中島 駿一 | ティムールコントロール |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
参加者102名で開催された第20期スタンダード神挑戦者決定戦はジェスカイオパスを使用した増田 勝仁選手が制しました。
トップ4に入った井上 卓人選手が使用したのは打ち消し呪文をタッチした白単アグロ。サイドボードに《無効》と《軽蔑的な一撃》が用意されており、ジェスカイオパスを意識した構築になっています。
今大会でも人気を集めたのはやはり《鏡割りの寓話》。トップ16まで見たところ、実に48枚も採用されていました。現環境でもっとも優れた3マナのカードであることに間違いはなく、このカードを使いたいから赤を選択するといっても過言ではありません。
大会カバレージはこちら。
アゾリウスヒロイック
冒頭のトピックでも軽くふれたアゾリウスヒロイックはクリーチャーを《農家の勇気》や《警備の抜け道》などで強化してビートダウンしていきます。ラインナップされたクリーチャーのタフネスは低く、あらゆる単体除去の的となってしまいますが、16枚の保護呪文で手厚く守られています。
1マナ火力が減りつつあるアドバンテージも大きく、うかつにタップアウトしようものなら強化呪文を連打されて一撃で二桁近いダメージをもらってしまう気の抜けないアーキタイプです。
軸となるのは《照光の巨匠》と《嵐追いのドレイク》の2種のクリーチャー。新鋭の《照光の巨匠》は打点が高く、ショートレンジのゲームで活躍します。対象をとるたびに「謀議」が誘発するため、除去に対応して保護呪文を唱えるだけで強化されていきます。「謀議」は手札こそ増えませんが、切れ目なく次の保護呪文を引き込んでくれるのです。
対して、《嵐追いのドレイク》はこのデッキのドローエンジンを担います。打点こそ上がりませんが自分の対象を取る呪文すべてにキャントリップを付与してくれるため、除去に対応するだけで自然とリソースに差が生まれていきます。除去が多いコントロールマッチでは重宝します。
《農家の勇気》は+1/+1カウンターを2回配置するだけのカードですが、《照光の巨匠》や《嵐追いのドレイク》と相性の良いカード。《セジーリの防護》などと違い、打点を伸ばしながら2度「謀議」やドローを誘発させることができます。
とはいっても、いつでも《嵐追いのドレイク》や保護呪文を引き込めるわけではありません。限られたリソースでやり繰りするしかありませんが、いつかは途切れてしまいます。そんなとき輝くのが《学生の代言者、マビンダ》。毎ターン1回ですが、墓地にある呪文へ疑似「フラッシュバック」を付与することで息切れ防止に貢献してくれます。保護呪文を使いまわされては、ジャンドやイゼットといえどボードコントロールが追いつきません。
この手のデッキが抱える問題は、中盤以降にブロッカーが並び一切ダメージが通らなくなってしまうことです。それを打破してくれるのが《警備の抜け道》。名前の通り単体にブロック回避を付与してダメージを通してくれるフィニッシュ手段です。隙があれば序盤に《照光の巨匠》や《光輝王の野心家》へ貼り付け、倍速で育てていきましょう。
《暁冠の日向》と強烈なシナジーを形成する《渦巻く霧の行進》ですが、このデッキも負けてはいません。保護兼ブロック突破カードとして機能するだけではなく、戦場に並んだ《照光の巨匠》や《嵐追いのドレイク》の効果を一度に複数誘発させることもできるのです。
《神の乱》デッキ
挑戦者決定戦の翌日に神決定戦が行われました。現神である宮田 健太郎選手が持ち込んだのは5色《神の乱》デッキ。豊富なボードコントロール手段を用いてゲームをスローダウンさせ、《神の乱》や《虹色の橋》から高速展開される《産業のタイタン》でゲームをロックします。
デッキ名にもなっている《神の乱》はボードコントロールにしてフィニッシャー。マナコストこそ重いものの出せればあらゆるパーマネントを対処し、速攻を持つクリーチャー以外での突破は困難を極めます。時間をおけば《顕現した大口縄》へ「変身」し、あらゆるカードを使い回されてしまいます。手札破壊や打ち消し呪文をすり抜けてしまったら最後、カード交換枚数で損することを承知で対処しなければなりません。
序盤をボードコントロールでしのいで相手が減速したならば、すかさずフィニッシャーへと繋いでいきます。《樹の神、エシカ》の第二面に当たる《虹色の橋》は毎ターンただでデッキからクリーチャーかプレインズウォーカーを戦場へ呼び出してくれます。環境的にエンチャント対策が少なく、《消失の詩句》の対象にならないのもグッド。
フィニッシャーをつとめるのは、コントロールデッキの定番となりつつある《産業のタイタン》。ランダムではありますが、《虹色の橋》を使うことで最速5ターン目に着地します。モードは状況に応じて流動的に選択しますが、どのモードであってもアドバンテージをもたらしてゲームに蓋をしてくれます。
3色土地にスローランド、両面ランドとあらゆる多色地形を採用したマナベースは圧巻の一言ですが、土地だけではキレイに5色揃わないこともあります。《急使の手提げ鞄》はブロッカーを用意しつつ一時的に色マナを補填してくれます。《霜と火の戦い》や《神の乱》といった重めのボードコントロール手段への足がかりとなるのです。
この手のカードはマナの余る中盤以降には価値が下がってしまいがちですが、この《急使の手提げ鞄》に限っては心配ありません。5色用意できればドローカードへと早変わり。序盤、中盤、終盤といつ引いても無駄のない縁の下の力持ちなのです。
サイドボードで目を引くのは《茨橋の追跡者》です。対コントロールでは、除去に強い軽量のクロックとして攻め手を厚くしてくれます。打点も高く、《放浪皇》で対処されないのも見逃せません。打ち消し呪文に弱い《産業のタイタン》に代わり、《キキジキの鏡像》のコピー先に最適です。
その他の大会結果
Standard Challenge #12426391
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
優勝 | Mogged | エスパーミッドレンジ |
準優勝 | Lukas261997 | グリクシス吸血鬼 |
トップ4 | mahzinha_linda | ジャンドミッドレンジ |
トップ4 | Cabezadebolo | ジャンドミッドレンジ |
トップ8 | CharlesWang | イゼットコントロール |
トップ8 | O_danielakos | ジェスカイオパス |
トップ8 | medvedev | ボロスアグロ |
トップ8 | bolddd | オルゾフミッドレンジ |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
Standard Challenge #12426391を制したのは久しぶりのエスパーミッドレンジ。メインボードから《常夜会一家の介入者》が3枚採用されたミッドレンジを意識した構築になっています。
ボロスアグロは1マナ域からパーマネントを展開していき、速度と数で押し切りを狙います。軽いクリーチャーばかりで構成されていますがタフネス1を極力排除しており、《棘平原の危険》はほとんど機能しません。《日の出の騎兵》はタップアウトの隙にプレイしたい1枚で、インスタント中心の戦略に強いクリーチャーです。打ち消し呪文を構えるならば、代償として打点の上昇を許すことになってしまうのです。
メタゲーム
デッキタイプ | トップ32 | トップ16 |
---|---|---|
ジェスカイオパス | 10 | 5 |
ジャンドミッドレンジ | 4 | 3 |
グリクシス吸血鬼 | 4 | 1 |
オルゾフミッドレンジ | 3 | 3 |
エスパーミッドレンジ | 2 | 1 |
白単アグロ | 2 | 0 |
その他 | 7 | 3 |
合計 | 32 | 16 |
トップ8デッキリストはこちら。
Standard Challenge #12426401
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
優勝 | Oliver_Hart | ジェスカイオパス |
準優勝 | andrw1232 | イゼットコントロール |
トップ4 | sick_boy138 | グリクシス吸血鬼 |
トップ4 | lsmguys | ジェスカイオパス |
トップ8 | triosk | ジェスカイオパス |
トップ8 | Valorj | グリクシス吸血鬼 |
トップ8 | mahzinha_linda | ジャンドミッドレンジ |
トップ8 | Folero | ジェスカイオパス |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
前日の結果からは一転して、Standard Challenge #12426401ではジェスカイオパスが上位に複数入賞しています。トップ16を見てもミッドレンジ/コントロールが大半を占め、アグロデッキはわずか1名のみとなりました。
メタゲーム
デッキタイプ | トップ32 | トップ16 |
---|---|---|
ジェスカイオパス | 11 | 6 |
エスパーミッドレンジ | 4 | 1 |
白単アグロ | 4 | 1 |
ジャンドミッドレンジ | 3 | 3 |
グリクシス吸血鬼 | 3 | 2 |
イゼットコントロール | 2 | 2 |
その他 | 5 | 1 |
合計 | 32 | 16 |
トップ32ではエスパーミッドレンジや白単アグロなど押し付けの強いアーキタイプを選択したプレイヤーが複数名います。しかし、トップ16では数がガクッと落ちています。軽量除去によるボードコントロールに力を入れたジェスカイやジャンド、グリクシスの壁を突破することはできなかったようです。
トップ8デッキリストはこちら。
おわりに
今回は白系アグロと《神の乱》デッキをご紹介しました。スタンダードはメタゲームの変化を受けやすい代わりに、どのデッキでもチャンスがあります。単色アグロデッキはデッキパワーでこそ劣るものの、今回のようにミッドレンジ中心の環境では、もちまえのテンポを生かして活躍できるのです。
次回もスタンダードの情報をお届けしたいと思います。それでは!