熊猫杯スタンダード決勝: 石川 翔(東京) vs. 中澤 成祐(長野)

晴れる屋

by Atsushi Ito


 141名の頂点が今、決まろうとしている。

 熊猫杯スタンダードの全参加者たち。その中で最もタフで、最も強いプレイヤーだったのが、今ここに座っている石川と中澤だ。

 石川のデッキは友人との独自の調整の結果辿りついたラクドスビート。

 本人の言によれば、「とにかく《殺戮の神、モーギス》が使いたかったんですよね。青単とバーンには不利だけど、運良く当たらずにここまで勝ってきました。特に緑系相手には《快楽殺人の暗殺者》が本当に止まらなくて強いんですよ」とのことだ。

 対する中澤はこれまた独特なチューンが施されているナヤを駆っている。

 7回戦目の記事で紹介した『平安堂勢』とともに、切磋琢磨したのだろう。

 すなわち、どちらもデッキの練度は十分。どちらが勝ってもおかしくはない。

 だからこその決勝。だからこその最終戦。

 最後にふさわしい戦いをしよう。






 「神々の軍勢」環境のラストを飾る、熊猫杯スタンダード。

 その最終幕の緞帳が、今上がった。


Game 1

 先手の石川がワンマリガンな上に、初動が2ターン目の《悪意に満ちた蘇りし者》というイマイチな立ち上がり。さらにこれを中澤が《岩への繋ぎ止め》で処理すると、返しで土地が詰まってしまった石川。やむなく《変わり谷》でアタックすることしかできない。

 この隙にとばかりに中澤が《羊毛鬣のライオン》を送り出すと、返すターンに引き込まれた土地から《生命散らしのゾンビ》をプレイされるも、《ドムリ・ラーデ》《嵐の息吹のドラゴン》《ミジウムの迫撃砲》に土地2枚でスカという幸運ぶり。ゾンビ本体は《ミジウムの迫撃砲》で処理し、3点クロックを継続する。

 と、ここで3マナフルオープンでターンを返した石川に対し、5マナ目を引いて悩む中澤だったが、冷静にインスタント除去をケアして『怪物化』を構えたままエンドする。





石川 翔


 土地が詰まっている上にクロックでも先行されているとなると、俄然苦しい石川。自ターンのエンド前『怪物化』にはスタック《英雄の破滅》を合わせるが、中澤のメインに予定調和の《嵐の息吹のドラゴン》が走る。

 これは《英雄の破滅》し、さらに続く《嵐の息吹のドラゴン》2体目にも返しで即座に《英雄の破滅》を合わせるが、「速攻」の4点×2が重くのしかかり、残りライフはわずかに6。

 そして黒い除去を撃ちきったところで、中澤が戦線に投入したのはあろうことか《ボロスの反攻者》

 詰まったライフで、石川に捌く手段がない。

 《生命散らしのゾンビ》《加護のサテュロス》をリムーブするものの、3点アタックをスルーした後に《ドムリ・ラーデ》の「格闘」を受け、跳ね返ったダメージによってまずは中澤がゲームを先取した。

石川 0-1 中澤


Game 2

 石川の2ターン目《とげの道化》により、中澤のライフが延々と削られる展開になる……かと思いきや、中澤は《聖なる鋳造所》をトップしたことにより、返しで即座に《岩への繋ぎ止め》でこれを捌くことに成功する。

 石川も続けて《責め苦の伝令》を送り出し、《羊毛鬣のライオン》《稲妻の一撃》で処理しつつ《変わり谷》を当てて攻勢を継続するが、やがてこれも《ミジウムの迫撃砲》で失ってしまうと、石川の攻め手が完全に尽きてしまう。

 あえての《変わり谷》アタックで《復活の声》をエレメンタルトークンへと変身させ、虎の子の《ミジウムの迫撃砲》「超過」での逆転プランを作る石川だったが。

 続いて中澤がキャストした《歓楽者ゼナゴス》が、全てを破綻させてしまった。





中澤 成祐


 何せ、捌いてもクロックがなくならない。この事実は石川に重くのしかかる。

 「速攻」トークンとエレメンタルトークンの強烈な一撃を受け、ライフは残り9。

 それでも、中澤が何も持ってなければあと1ターンは耐えられる。そう信じた石川は、《歓楽者ゼナゴス》《戦慄掘り》を当てて無事ターンが返ってくることに全てを賭けた。

 そして。



嵐の息吹のドラゴン



 石川に最後のターンは、回ってこなかった。

石川 0-2 中澤


 「今ではたくさんのプレイヤーがマジックをしに地元のショップに集まるようになった。それだけで満足なんですよ」と中澤は語った。

 その純粋な思い。マジックをもっと盛り上げたいという思い、マジックを仲間と目いっぱい楽しみたいという思いが、実はグランプリというイベントを支えている。

 今回の主催、ホビーステーションもまた、その思いを抱えてグランプリ名古屋14という素晴らしい3日間を作り上げた。その根っこにあるのは、きっと中澤と同じものだ。

 だから中澤の勝利は、ある意味で必然だったのかもしれない。

 このグランプリのグランドフィナーレには、やはり「マジックって楽しい」という思いこそが相応しいからだ。

 その思いさえ忘れなければ。

 これからもマジックとグランプリに関わるより多くの人が、きっと中澤のように素敵な笑顔を浮かべていられることだろう。


 


           「マジック楽しい!」


 熊猫杯スタンダード、優勝は中澤 成祐(長野)!本当におめでとう!!