はじめに
お疲れ様です。てんさいチンパンジー(@tensai_manohito)です。
7月はモダンが熱い!(当社比)
『MagicCon: Barcelona』内で開催される『プロツアー・指輪物語』のフォーマットはモダン!『指輪物語:中つ国の伝承』の発売からある程度経ち、環境の変化にも適用してきたころでしょう。
なので、今回は『指輪物語』リリース後の環境おさらい&『指輪物語』で強化されたデッキでもある「リビングエンド」を紹介します。
リビングエンドは過去にも紹介したことがあるため、一部内容が重複する部分がありますがご了承ください。アップデート部分の解説が中心かつ実践的な内容が多めになりますが、以前の記事を読んでいなくても十分楽しめる内容になっています。
- 2022/05/23
- 「リビングエンド」デッキガイド ~勝利は墓地からやってくる~
- 増田 勝仁
『指輪物語:中つ国の伝承』が環境に与えた影響
デッキガイドに入る前に、まずは現在の環境について簡単に整理しておきましょう。
カード単位
《一つの指輪》
『モダンホライゾン2』以降、固まりつつあったモダン環境をめちゃくちゃにした1枚。
突破が困難な「プロテクション」付与、尋常じゃないドロー枚数(と、それにしては少なすぎるデメリットのダメージ)、伝説のパーマネントであることから重なるとむしろ重荷カウンターをリセットできるなどなど。やりすぎです!
唱えられたとき、そして定着したときの無力感は《王冠泥棒、オーコ》に近いものを感じます。このカードは“本物”です。
《オークの弓使い》
すごい強い《急報》。《急報》に《放蕩魔術師》がついて《覆いを割く者、ナーセット》並みの影響力があるだけです。は?
モダン環境においても《創造の座、オムナス》《ミシュラのガラクタ》《考慮》《歴戦の紅蓮術士》などのドローを行う呪文は多数存在します。これ以外にも多くのカードが影響を受けます。件の《一つの指輪》にも強く、若干不遇だった黒いデッキが大きく評価を伸ばしました。
《喜ぶハーフリング》
ただのマナクリーチャーではありません。タフネスが2で《魂の洞窟》がついてます。え?
タフネス2のおかげで《レンと六番》や《オークの弓使い》に耐性があり、今までのマナクリーチャーは一体なんだったのかと思わされます。《対抗呪文》のような打ち消しを使うデッキはこの手のマナクリーチャーを無視して、以降に唱えられるカードを打ち消せばよいというのがセオリーでしたが、その常識も覆りました。
このクリーチャーを除去しなければ《創造の座、オムナス》も《一つの指輪》も《時を解す者、テフェリー》も無条件で通ってしまいます。1ターン目に出ていいクリーチャーではありません。《一つの指輪》《オークの弓使い》の2種に比べると使用できるデッキが限られる(4色オムナス、ヨーグモス医院など)ことから少し影は薄い印象を受けますが、それにしたってとんでもないです。
デッキ単位
4色オムナス:プラス影響
《一つの指輪》をもっとも使いこなしているデッキ。《孤独》《激情》のような「想起」サイクルを多用するため、手札消費をカバーできる恒久的なリソース源とは相性が良いです。
《一つの指輪》のダメージも《創造の座、オムナス》《孤独》のライフ回復によって補えるため、長いターン維持できます。維持が難しくなっても《時を解す者、テフェリー》で戻して重荷カウンターをリセットして使いまわし、再度手札から唱えたらまた「プロテクション」で1からやり直し。相手からのため息が聞こえてきます。
当然、《喜ぶハーフリング》も使いこなすので《一つの指輪》《時を解す者、テフェリー》《創造の座、オムナス》が《対抗呪文》を貫通します。モダン最強デッキの一角といって間違いないでしょう。
ラクドス想起:プラス影響
今までも強力なデッキではありましたが、意外とフリースロットの選定にこれだ!というカードがなく、特に2マナ域が薄いという問題がありました。そこに《オークの弓使い》が加入し、一気に引き締まりました。
少ない土地でキープしがちなため、この手の軽い脅威は大歓迎です。最終的にフェアに殴るため、本来であれば《一つの指輪》を苦手とするはずですが、《オークの弓使い》によってそれも咎めている点が素晴らしいです。
黒単コントロール:プラス影響
《一つの指輪》に強い《オークの弓使い》ですが、それだけでなく《黙示録、シェオルドレッド》まで採用した重コントロールです。ミッドレンジ以下はこれでもかというくらいボコボコにします。
《黙示録、シェオルドレッド》は相手の《一つの指輪》に強いだけでなく、自身の《一つの指輪》とも相性が良いので評価が上がっているカードです。《邪悪な熱気》で簡単に処理されてしまいますが、その《邪悪な熱気》を強く使うためには《ミシュラのガラクタ》が必要で、《ミシュラのガラクタ》を使うデッキには《オークの弓使い》が刺さります。よくできていますね。
イゼットマークタイド:マイナス影響
《喜ぶハーフリング》《オークの弓使い》《一つの指輪》のすべてに相性が悪いという奇跡の弱体化を受けました。少し前までは環境トップに君臨していたデッキが、恐ろしいことに現在は弾き飛ばされてtier2以下にまで落ちた印象を受けます。
ハンマータイム:マイナス影響
《オークの弓使い》で《エスパーの歩哨》がお陀仏に。南無三。《一つの指輪》の「プロテクション」付与に対しても無力で、設置された返しには絶対にダメージが入りません。少しゲームが伸びると途端に勝ち目もなくなってしまう始末。序盤に適当に交換されて《一つの指輪》でリソースを稼がれながら延命、という分かりやすい&再現性の高い状況で負けてしまいます。
カスケードクラッシュ:マイナス影響
ハンマータイム同様、この手のフェアに殴るデッキは《一つの指輪》に弱いです。また、《喜ぶハーフリング》から《時を解す者、テフェリー》が出てくると、天井に突き刺さる勢いで飛び上がることしかできません。
独創力コンボ:マイナス影響
ほかのデッキが大幅に強化されたなかで特に強化はなし。デッキの性質上、クリーチャーやアーティファクトでのアップデートが望めないので、こればかりは仕方ないことではありますが…。《一つの指輪》の返しに勝てない(《残虐の執政官》は対象を取るため、《一つの指輪》の「プロテクション」で無効化されてしまう)ということもあり、ポジションは大きく下がりました。
ウルザトロン:その他
《一つの指輪》そのものとものすごい相性が良いわけではないですが、4色オムナスの隆盛に伴って再浮上しました。4色オムナスのような少し遅いデッキをボコボコにすることには長けています。相性の悪いハンマータイムがポジションを下げたことも、このデッキを肯定する理由になっているでしょう。
リビングエンド:その他
恐ろしいことに、ここまで紹介したカードと関係のないカードで強化を受けました。詳細は後述します。《一つの指輪》に対しても「プロテクション」中は力を貯めて、1ターンパスした後に殴れば簡単に20点近く叩き出せるので、カスケードクラッシュよりは耐性があるといえます。ただし、《喜ぶハーフリング》経由の《時を解す者、テフェリー》はどうしようもないです。諦めましょう。
以下の記事も読んでいただくとより理解が深まるでしょう。
- 2023/07/10
- 《一つの指輪》がモダンにもたらしたもの
- Piotr Glogowski
- 2023/07/20
- USA Modern Express vol.99 -指輪の誘惑、オークの包囲網-
- Kenta Hiroki
リビングエンドとは?
リビングエンドとは《死せる生》をキーカードに据えた墓地コンボデッキです。圧倒的な速度と出力を兼ね備えたコンボデッキで、特に対策の難しいメイン戦の勝率は圧倒的です。比喩抜きで8割近い勝率が期待できます。
反面、サイド後は対策がクリーンヒットします。特に墓地対策・「続唱」対策は軽量かつ無色であらゆるデッキに採用される可能性があります。つまり、どんな相手に対してもサイド後に相性が悪化してしまうという脆さを抱えているのです。
サンプルリスト
『指輪物語:中つ国の伝承』からの新戦力とその影響
《気前のよいエント》《オリファント》の2種類の「土地サイクリング」を獲得しました。たったそれだけです。この本当にわずかなアップデートによってリビングエンドは大幅に強化されました。
1. 安定性の向上
《気前のよいエント》《オリファント》によって土地が減ってサイクリングが増えました。リビングエンドは自分都合の動きだけで考えれば土地は3枚あれば十分なので、余計な土地は削れるのであれば削りたいです。デッキの土地総数が減ることで、中盤以降の無駄ドローが減るため、サイクリングからサイクリングが繋がりやすくなります。これによって《忍耐》や《大祖始の遺産》を受けた後の立て直しも早くなりました。
また、土地1枚+サイクリング2枚という形でのキープで事故が起こりづらくなりました。今までも土地1枚+通常サイクリング2枚はキープ寄りで考えていましたが、そこに土地サイクリングが加わることで、リスクなく確実に土地を伸ばせるというのが素晴らしいです。
2. 《血染めの月》への耐性
《気前のよいエント》によって無色マナから《森》を確保できます。また、《オリファント》も無色マナでサイクリング可能かつそこから《蒸気孔》のような色マナを確保できるため、《霧深い雨林》で基本土地を持ってきやすくなりました。これによって《血染めの月》への耐性がアップしました。
3. ピッチスペルの使いやすさ向上
土地という色のないカードから、《気前のよいエント》《オリファント》のような色付きのカードに変更されたことにより、「想起」サイクルなどのピッチ呪文が使いやすくなりました。
特に《気前のよいエント》の追加は大きく、今まで緑カウントの関係で採用しづらかった《活性の力》《忍耐》の価値が格段に向上しました。また、これまでは採用の難しかった《激情》も《オリファント》によって採用を検討できるようになっています。
4. 土地からのダメージ減少
もともとリビングエンドのマナベースは、ファストランド&フェッチランド&ショックランドが基本でした。常にサイクリングをする=常にアンタップインで動くため、色マナをそろえようとするととにかくフェッチ&ショックのダメージが痛かったです。
そこが土地サイクリングに変更され、色のそろいやすさからフェッチランドで基本土地を持ってきやすくなったので、1ゲームで平均2点ほど節約できるようになりました。
些細な変化と思われるかもしれませんが、対バーンやイゼットマークタイドなど、メイン戦においては《稲妻》を本体に撃ち込むことのある相手に対しては、ライフ水準を高く持てるというのは意外と影響します。
5. クリーチャーの質アップ
今までのクリーチャーはサイズに物足りなさを感じていました。1マナの最大打点で《縞カワヘビ》、サイズを意識すると《波起こし》や《タイタノス・レックス》といった取り回しの悪い2マナのサイクリングクリーチャーを採用することになります。これらのクリーチャーでは《孤独》《激情》《創造の座、オムナス》などと戦うには少々力不足です(そもそもコモンのサイクリングクリーチャーで、それらのクリーチャーとやり合おうというのがおかしな話ですが)。
ほかにも適正ターンである3ターン目に《死せる生》を唱えた場合、基本的に帰ってくるクリーチャーは3体なため、《通りの悪霊》が絡まないと打点が足りないことが多々ありました。もっと強いクリーチャーはいないものか…と思っていたら出てきました。《気前のよいエント》と《オリファント》です。
《オリファント》は単体で8点、しかもトランプル付与でチャンプブロックも許しません。これによってクリーチャー3体でも簡単に15~18点を出せるようになりました。フェッチランドからの自爆ダメージも考えれば十分な打点といえるでしょう。
《気前のよいエント》も《邪悪な熱気》を耐えるタフネス7に加えて到達持ちで戦場をがっちりガード。《死せる生》の返しに《ドラゴンの怒りの媒介者》《帳簿裂き》に殴られて負け…といった事態が起きづらくなりました。
◆カード紹介:メインボード
《天上都市、大田原》
《喜ぶハーフリング》からの《時を解す者、テフェリー》を乗り越えるために多めに採用しています。土地サイクリングによって安定性が上がったので、被るリスクよりも引いた際のリターンのほうが大きいと判断しました。
《沈んだ廃墟》
《悲嘆》や《通りの悪霊》《死せる生》などはすべて黒のダブルシンボル。黒い土地を1枚だけ採用しても意味がありません。そこでフィルターランドの出番です。これ1枚でダブルシンボルが出せます。
この土地1枚では色マナが出ませんが、《気前のよいエント》や《オリファント》のような無色でサイクリング可能、かつ土地をサーチできるサイクリングクリーチャーが出たため、これらとセットならキープ可能となり、リスクが下がりました。リターンが非常に大きい土地なので今回は採用としています。
《気前のよいエント》《オリファント》
すでに解説済み。本当に凄い!フルに採用されることは少ないですが、メリットが多すぎるため個人的には4枚ずつ取るべきだと思っています。
《通りの悪霊》《秘法の管理者》《意思切る者》《巨怪なオサムシ》《縞カワヘビ》
サイクリング組。特筆することはありません。《巨怪なオサムシ》はサイドの《激情》の赤カウント用です。
《悲嘆》
バックアップその1。リビングエンドは《悲嘆》を強く使えるデッキの1つといえるでしょう。マナを支払わずに前方確認が可能かつ、《死せる生》で戦場に戻ってきた際にも追撃の手札破壊で相手をボロボロにします。
《断片無き工作員》《暴力的な突発》
「続唱」呪文たち。サイド後に減らすことはあっても、メインは自分の動きを優先するため4:4で採用しましょう。
《否定の力》
バックアップその2。《暴力的な突発》との相性は◎です。今回は《巨怪なオサムシ》のせいで従来の型よりも青カウントが減っているので、サイクリングの際には注意が必要です。
《死せる生》
キーカード。3枚や4枚のどちらが良いかは所説ありますが、個人的には4枚を推奨します。《対抗呪文》などの打ち消しを乗り越えて仕掛ける場合には弾として必要ですし、1枚引いてしまう分には《悲嘆》のコストにも当てられるためそこまで悪くありません。不要であればサイド後に減らしましょう。要否の判断ポイントは後述します。
カード紹介:サイドボード
《耐え抜くもの、母聖樹》
置き物対策の対策。サイドインによるリスクが小さいので、《基盤砕き》よりも気軽にサイドインします。
《基盤砕き》
置き物対策の対策。対象が出てこないと腐るリスクが大きいですが、クリーチャーとして墓地に落ちるので《耐え抜くもの、母聖樹》よりもデッキとの相性が良いです。相手が置き物を置いてくる可能性が高い場合にだけサイドインします。
《激情》
ハンマータイムの《ドラニスの判事》やラクドス想起の《ダウスィーの虚空歩き》といったヘイトクリーチャー対策。ヨーグモス医院、サムワイズコンボ、鱗親和などの自壊できるクリーチャーを使ったデッキに対しても有効です。
《忍耐》
相手が墓地を利用する&こちらの《死せる生》を利用してくる(影響を受けない)デッキ対策。リビングエンド、ドレッジ、ヨーグモス医院などへのサイドインを想定しています。
《緻密》
相手の《忍耐》対策。相手が《虚空の杯》《大祖始の遺産》のような対策を複数引いている場合は、素出しからの素殴りで押し込むこともあります。《ダウスィーの虚空歩き》や《喜ぶハーフリング》経由の《時を解す者、テフェリー》も打ち消せますが、返しに「続唱」が通せないと次のターンにまた出てきてしまうので、そこまで効果的ではないです。
プレイ指針
本項ではプレイ指針について解説します。
リビングエンドは「①墓地にクリーチャーを貯める(サイクリングをする)」「②続唱呪文を唱える」という2ステップでデッキが構成されています。それ以外の行動はほとんどありません。逆にいうと、それらを適切に行えるかどうかが非常に重要になりますので、具体的に掘り下げていきます。
サイクリングの順番
基本的に土地サイクリングの《気前のよいエント》《オリファント》が最優先です。手札に土地を確保して安定して土地を伸ばす+デッキ内の土地を減らすことで後続のサイクリングが繋がりやすくなります。
次点で色で考えます。手札に《否定の力》があるなら青いカード、《悲嘆》があるなら黒いカード。それぞれと合う色は優先順位を下げて取っておきましょう。《意思切る者》のような複数の色付きのカードはピッチコストにしやすいです。
《通りの悪霊》はマナを支払わずにいつでもサイクリング可能なので、サイクリングの優先順位はもっとも低いです。最後まで残しておけば《悲嘆》のコストになる可能性もあるので、「続唱」呪文の直前まで残しましょう。
サイクリングのタイミング
黒いカードを引いたとき or 《悲嘆》を引いたときに《悲嘆》を唱えたい場合は、メインにサイクリングをしましょう。メイン戦の先攻3ターン目 or 後攻2ターン目(=《時を解す者、テフェリー》の直前のターン)や、サイド後の先攻1ターン目(=《虚空の杯》を抜ける可能性あり)などがねらい目です。
また《気前のよいエント》《オリファント》をサイクリングすることが確定している場合は、自分のアップキープ・ステップにサイクリングしたほうがよいです。よくあるのが土地1枚+土地サイクリング2枚でキープした場合。これで3枚の土地が確定しており、逆にそれ以上の土地は引きたくありません。なのでアップキープ・ステップに土地サイクリングを消化しておいたほうが、通常ドローで土地を引く確率が下がるので少しだけお得です。
《オークの弓使い》の入っているデッキに対しては、2マナになる前に通常サイクリングを優先して消化しましょう。サイクリングの度にペナルティが発生するようでは、いくらなんでも耐えられません。
「続唱」の優先順位
ラクドス想起のように打ち消しがないことが確定している場合は、《断片無き工作員》のほうが本体がクリーチャーな分だけお得なので《断片無き工作員》から入ったほうがよいです。次のターンに攻撃する際に《暴力的な突発》を《ラッパの一吹き》のように使うこともできます。
逆にイゼットマークタイドのように打ち消しを含む相手の場合は、相手のターン終了時に《暴力的な突発》から仕掛けて、自分のターンに《断片無き工作員》と唱えたほうが相手の打ち消しを乗り越えやすいです。
「続唱」のタイミング
《断片無き工作員》の場合はソーサリータイミングなので選べませんが、《暴力的な突発》はいろんなタイミングで唱えることができます。
[1] 相手のアップキープ・ステップ – 頻度:高
《否定の力》のバックアップ込みで、《死せる生》が通ることが確定しているならこのタイミングがベストです。ドロー後のほうがさらに引いた1枚を確認できるので《死せる生》で戻った《悲嘆》をより強く使えますが、トップしてきた1枚が《狼狽の嵐》などの妨害だと通らなくなる可能性があります。
打ち消しを含む相手に対してドロー後に唱えるのはリスクがあるので、《否定の力》のバックアップ込みで即仕掛けるならこのタイミングがよいでしょう。《意思切る者》でトップを操作して詰ませられれば完璧です。
[2] 相手のドロー・ステップ – 頻度:中
[1]では打ち消しを含む相手にドロー後に唱えるのはリスクだと解説しましたが、そうでない場合はこのタイミングがベストです。ドローした重要なカードを落とせる可能性があります。
3. 相手の終了ステップ – 頻度:高
[1]のアップキープ・ステップや[2]のドロー・ステップの場合、《死せる生》を通した後のメイン・フェイズに普通にクリーチャーを追加されます。《タルモゴイフ》や《激情》など、戦場への影響が大きいクリーチャーが出てくると意外と突破が難しいため、メイン・フェイズに出てくるクリーチャーも《死せる生》で巻き込みたい場合は終了ステップに唱えましょう。
4. 自分のアップキープ・ステップ – 頻度:低
《死せる生》が残り1枚のときなど、絶対に《死せる生》を引きたくない場合に仕掛けるならこのタイミングになります。《暴力的な突発》×2枚で仕掛ける場合に限った話かつ、デッキの残りの《死せる生》の枚数次第なので頻度はかなり低いです。
どれくらい貯めてから「続唱」をすればよい?
メイン戦においては致死量のダメージを出せるか否かで判断します。基本的に3ターン目の《死せる生》で帰ってくるクリーチャーは3~4体です。ほとんどの場合においてこれで十分です。
しかし、相手の墓地に《孤独》や《激情》が落ちていると《死せる生》で一緒に戻ってきてしまうので、3~4体では足りないケースがあります。その場合は1ターン力を貯めて、4ターン目の「続唱」を狙います。1ターン待てば墓地は一気に貯まるので、さすがに20点以上の打点を用意できることでしょう。
サイド後は少し複雑になります。
相手の対策を掻い潜りながらメイン戦と同様に3体以上のクリーチャーが戦場へ!という展開になるのは稀です。《大祖始の遺産》《虚無の呪文爆弾》《忍耐》に阻まれたり、そもそも《虚空の杯》で「続唱」呪文の通りが悪かったり…などなど。それらの対策を《否定の力》《悲嘆》《緻密》で妨害するとなると、一撃で20点のダメージ分のクリーチャーなんて到底用意できません。ピッチコストもタダではないのです。
しかし、それは相手も同じことがいえます。
こちらの妨害を探すためにマリガンしているのであれば、逆に戦場に出たあとのクリーチャーへの対処手段はほとんどありません。そのため、大量のクリーチャーでなく2体程度のクリーチャーでも十分脅威になり得ます。
そもそも、《断片無き工作員》+《悲嘆》+《縞カワヘビ》でも10点あります。相手の除去が薄いのであれば2ターンあれば十分倒せるだけのクロックです。なので、サイド後は《死せる生》が通せるなら、2体以下しか戻ってこない場合でもさっさと通してしまったほうがよいケースが多いです。
マリガン判断
リビングエンドのマリガン判断は非常にシンプルです。1枚以上の土地と2枚以上のサイクリングがあればほとんどの場合でキープです。《断片無き工作員》《暴力的な突発》の有無は気にしなくて構いません。《悲嘆》《否定の力》も同様です。これらは加点要素であり、キープ基準ではありません。
サイクリングから《断片無き工作員》《暴力的な突発》に繋がることはありますが、逆はありません。とにもかくにもサイクリングカードでキープしましょう。
逆に引いてはいけないカードでマリガンをすることはあります。そう、《死せる生》です。引いてしまった《死せる生》は《悲嘆》のピッチコスト以外でほとんど役割がないため、手札にある時点でほぼマリガンと同義です。《死せる生》が2枚以上ある手札はマリガンしたほうがよいでしょう。
サイド方針
本項ではサイド方針について解説します。
モダンには多くのアーキタイプが存在するため、アーキタイプ毎にサイドボーディングを紹介するのではなく、サイドアウトの方針について解説します。サイドインするカードについては、カード解説の項で解説した通りなので、ここではサイドアウトするカードについて解説していきます。
想定しうる対策とその乗り越え方も解説するので、その組み合わせでマッチアップ毎のin/outを考えてみてください。最後に代表的なマッチアップのサイドin/out例を載せておきます。
サイドアウト候補
《否定の力》
手札破壊の多い相手に対しては《断片無き工作員》《暴力的な突発》が抜かれてしまい、《否定の力》は手札で浮きやすいです。バックアップとしての役割を持てず、手札破壊に対して唱えるのも悲しい気持ちになるので、素直にサイドアウトしたほうがよいでしょう。
《悲嘆》
純粋な速度勝負になるクリーチャーのみで構成された相手には微妙です。相手の墓地にクリーチャーを落としてしまい、《死せる生》の威力が下がってしまいます。とはいっても環境にクリーチャーデッキが少ないというのもまた事実です。つまり、ほとんどサイドアウトすることはありません。
ただし、サイド後に《ドラニスの判事》のようなヘイトクリーチャーが追加される場合には有効です。今回は《激情》をサイドに取っているのでそちらに対処を任せられますが、それがない場合は残したほうがよいでしょう。また、《アゾリウスの造反者、ラヴィニア》は《激情》で対処するのが難しいので、その採用が予想できる場合はクリーチャーデッキ相手でも《悲嘆》を優先して残しましょう。
《死せる生》
サイド後は墓地対策や「続唱」対策を乗り越える必要があるため、「続唱」呪文自体をたくさん引いてもあまり意味がありません。《虚空の杯》や《安らかなる眠り》など、これらを除去しない限りは「続唱」呪文&《死せる生》は何枚あっても無価値です。そういった対策が想定される場合は「続唱」呪文とともに減らしましょう。
単なる打ち消し呪文(《狼狽の嵐》《ドビンの拒否権》など)や使い切りの墓地対策(《大祖始の遺産》《虚無の呪文爆弾》)の場合などは《死せる生》の弾数が重要になるので、そういった相手に対しては減らす必要はありません。
《断片無き工作員》
《死せる生》の項でも解説した通りです。たくさん引いても仕方ない相手に対しては減らします。「続唱」呪文を減らす場合は、《暴力的な突発》よりも先にこちらを減らしましょう。2/2のクリーチャーよりも、インスタントであることのほうが価値が高いです。
《通りの悪霊》
ライフを詰めてくる相手にタダで2点差し出すのは自殺行為です。真っ先に抜きましょう。イゼットマークタイド、ラクドス想起など、ある程度ライフを詰める速度が速いデッキにも抜いたほうが無難です。
《霧深い雨林》
試合が長期戦になることが予想される場合(=相手の対策を剥がしながら戦う場合)、土地を減らしても問題ありません。そういった展開の場合、土地がストレートに伸びる必要はありません。1~2枚で止まっても気にしないでください。ストレートに3マナまで伸びたところで、《虚空の杯》が置かれていては《断片無き工作員》を持っていても意味がないからです。
想定する対策とその乗り越え方
呪文制限系
《虚空の杯》
「続唱」呪文が止められてしまうため、《死せる生》を唱えることができません。メイン戦でこれを退かせるカードは《天上都市、大田原》だけです。置かれたらほぼ終わりなので、なんとかして《否定の力》で消しましょう。
サイド後に唱えられる場合、特に1~2ターン目の場合は《否定の力》で付き合わないのがコツです。墓地が消えるわけではないので、いざ仕掛けるぞ!という場面までは無視できます。墓地が貯まってから《耐え抜くもの、母聖樹》や《基盤砕き》で退かして攻めに転じましょう。
《ドラニスの判事》
「続唱」呪文が止められてしまうため、《死せる生》を唱えることができません。対処手段も限られており、非常に厄介です。今回は《激情》を採用しているので、これで退かしましょう。
《アゾリウスの造反者、ラヴィニア》
ピッチ呪文&0マナの呪文が止まります。《ドラニスの判事》の数倍キツいです。《激情》でも対処できないので戦場に出てしまうとほぼ対処不能です。《悲嘆》で抜くしかありません。それでも出てしまったらお手上げです。素出しの《秘法の管理者》などで戦うしかありません。
《時を解す者、テフェリー》
「続唱」呪文が一切の役に立たなくなると同時に《否定の力》も紙切れになります。ほかの対策と異なり、普通にメインから採用されるカードなのも、その汎用性と威力のバランスがえげつないです。《虚空の杯》同様、メイン戦に関しては気合いで《天上都市、大田原》を引き込んで退かしましょう。
逆に《否定の力》で打ち消せればチャンスです。そこを起点に仕掛けましょう。ソーサリーの3マナアクションなのでタップアウトしやすく、返しに「続唱」呪文が通りやすいです。ただ、《喜ぶハーフリング》経由の場合はどうしようもありません。見なかったことにしましょう。
墓地対策系
《虚空の力線》《安らかなる眠り》
割らないことには何も起きません。絶対に割りましょう。いずれもハードマリガンの上で設置された場合は相手のリソースが不足している場合が多いので、その場合は割るのを諦めて《忍耐》《秘法の管理者》《緻密》などを素出しして頑張るというのも手です。
《大祖始の遺産》《トーモッドの墓所》《魂標ランタン》《虚無の呪文爆弾》
使い切り系。乗り越え方は何通りかあります。
①適当に踏む:しょせんは使い切りの対策です。適当に踏んでしまえばそこで終了です。早いタイミングで設置された場合はこれが有効になります。墓地に3体程度クリーチャーを貯めたら、さっさと「続唱」して相手の対策を使わせて、そこから再度墓地を貯め直しましょう。
②アーティファクト破壊と組み合わせる:中盤以降に設置された場合はこれが有効です。こちらが3マナ以上浮かせている限りは墓地追放に対応して《暴力的な突発》で回避される恐れがあるので、相手もうかつには墓地追放を起動できません。
つまり、相手から墓地追放を先に起動させられれば、その上から《暴力的な突発》が通るということです。5マナ以上まで伸ばした状態で、《基盤砕き》や《耐え抜くもの、母聖樹》で墓地対策を対象にする→対応して相手がそれを起動する→それに対応して《暴力的な突発》とすることで突破可能です。
③上からサイクリングする:これも中盤以降に設置された場合に有効です。ある程度マナが伸びていて、墓地に数体のクリーチャーが貯まっている状態で「続唱」呪文→《死せる生》を唱えます。それに対応して相手は墓地追放を起動します。一旦、そのまま墓地追放を解決します。
その解決後、《死せる生》が解決される前にスタック上でサイクリングを行うと、墓地対策解決後に改めて墓地にクリーチャーが貯まるので《死せる生》でクリーチャーを戻せます。これを実現するためにも、中盤以降は無駄にサイクリングをしないというのも手です。手札に貯めておきましょう。
《ダウスィーの虚空歩き》
常在系のクリーチャー版。対策のなかでは最強クラス。《虚空の力線》を内蔵しつつ、こちらが《死せる生》で流そうとした場合は自身の効果で墓地に落ちて、こちらの《死せる生》で復活します。絶対に倒せません。さらに自身の効果で《死せる生》を唱えることで、こちらの戦場をリセットした上で再び戻ってきます。意味不明です。
《ダウスィーの虚空歩き》を使う側は《死せる生》に対応して墓地に送れるように、必ず攻撃せずに立たせておきましょう。それだけでリビングエンドは詰みます。
《暴力的な突発》であれば返しに攻撃するチャンスがありますが、《断片無き工作員》の場合はすぐに召喚酔いがとけてしまうので意味がありません。幸い、採用されているデッキが少ないですが、問題はその採用しているデッキが、モダン最強クラスのデッキであるラクドス想起ということ。《激情》でなんとかしましょう。《激情》が採用されているだけまだマシです。
《忍耐》
使い切り系のクリーチャー版。基本的には使い切りのアーティファクトと同じ対策が可能です。適当に踏む or 上からサイクリングが有効です。ただし、置き物と異なりピッチで切られるため、見えない角度からの奇襲でクリーンヒットすることもあります。なので、採用されるであろうデッキはちゃんと覚えておきましょう。
とはいっても緑のデッキすべてから飛んでくる可能性があるので、時としては割り切ることも大事です。ただ、メイン戦で《湧き出る源、ジェガンサ》を公開していたのにサイド後に外してきたら要注意で、《忍耐》をサイドインした可能性が非常に高いです。
ただし、アーティファクトと違って《緻密》での突破が可能です。ピッチスペルにはピッチスペルで対抗しましょう。モダンは空中戦です。
打ち消し系
《狼狽の嵐》《ドビンの拒否権》
《否定の力》で越えるのもが不可能なタイプ。基本的には《悲嘆》で先に抜くか踏むしかありません。ただ、墓地が消えるわけでもなければ「続唱」自体が止まるわけでもないので、《暴力的な突発》→《断片無き工作員》の二段仕掛けで突破可能です。対策自体は単発であること、仕掛けるターンの《悲嘆》で抜ける可能性も含め、対策のなかではかなりマイルドです。
その他
《神聖なる月光》
性質的には《忍耐》に近いです。《悲嘆》《否定の力》で普通に越えられますし、単発なので再度貯め直すことでも対応可能です。効くには効きますが、《時を解す者、テフェリー》や《虚空の力線》に比べれば大したことはありません(?)。
ちなみに感覚が麻痺しているだけで普通にめっちゃ効きます。
サイドボーディング例
vs. ラクドス想起
vs. ラクドス想起
《未認可霊柩車》《虚空の杯》《虚無の呪文爆弾》《虚空の力線》…などなど。このどれもが入ってないことはありえません。なので《基盤砕き》もサイドインします。
ラクドス想起との試合はショートレンジになりやすいです。《耐え抜くもの、母聖樹》は呪文扱いとしてのサイドインになるので、土地は減らさないほうがよいでしょう。
《激情》は《ダウスィーの虚空歩き》のピンポイント対策です。一応、相手が初手で《激情》+《フェイン・デス》を決めてきたときのスマートな回答になることもあります。
vs. 独創力コンボ
vs. 独創力コンボ
《虚空の力線》のみを考慮すれば問題ありません。ただし、適当に《断片無き工作員》で仕掛けると返しに《時を解す者、テフェリー》が通りやすいので注意が必要です。仕掛けるときは《暴力的な突発》+《否定の力》にする、もしくは《断片無き工作員》で仕掛けるときも《悲嘆》を絡めるなどのひと手間は掛けたほうがよいです。
幸い、《喜ぶハーフリング》経由で《時を解す者、テフェリー》が出てくることはないので、そこも安心できます。打ち消せる《時を解す者、テフェリー》は癒しです(?)
vs. 4色オムナス
vs. 4色オムナス
《虚空の杯》《神聖なる月光》《忍耐》などがメジャーな対策になります。仕掛ける回数は少なめで、対策を乗り越えた上で一発決めるイメージで戦います。
メインの《喜ぶハーフリング》+《時を解す者、テフェリー》などキツい対策が多いものの、クロック自体は遅いため、対策を引き込む・貯め込む時間も十分にあります。《虚空の杯》や《時を解す者、テフェリー》にハメられてても諦めずに我慢強くいきましょう。
どんな対策にせよ、試合自体はメイン戦に比べてかなり長引くので、土地は減らします。相手も絶対に《虚空の杯》や《時を解す者、テフェリー》《忍耐》などでキープします。それらがない手札で臨んだところで瞬殺されるのが目に見えているからです。なので、すぐに仕掛けられることはほとんどないです。しっかりと対策を剥がして仕掛けることになります。
vs. リビングエンド
vs. リビングエンド
ミラーマッチはかなり特殊なので例として取り上げました。大前提として《死せる生》で仕掛けるだけ無駄です。3マナと手札1枚を使って相手のやりたことをやってあげるのは意味不明です。自分からは《死せる生》を唱える気はありません。そして、きっと相手も同じことを考えているでしょう。
なので、「続唱」呪文と《死せる生》は大量に減らします。特にソーサリータイミングの《断片無き工作員》は確実に不要です。
じゃあ何で勝負が決まるかというと、素出ししたサイクリングクリーチャーと「想起」クリーチャーです。これらでプレッシャーを掛けて、どうしようもなくなった側が仕方なく《死せる生》を唱えて戦場をリセットします。なので、《死せる生》+《暴力的な突発》は少しだけは残します。このとき、戻ってくるクリーチャーが相手より強くなるような墓地が準備できていれば完璧です。
ただし、無暗に素出しすればよいというわけではありません。自分の墓地のほうが弱い場合は、サイクリングクリーチャーを素出しせずに墓地を貯めるのに専念しましょう。墓地が弱い側は相手からの仕掛けが肯定されます。その状態で素出ししたところで、普通に《死せる生》を解決されて押し潰されてしまうのです。
もしくは《忍耐》で相手の墓地をリセットするのも有効です。相手の墓地が弱くなれば相手から《死せる生》を唱えることはないので、その状態で改めて素出しを狙います。
おわりに
リビングエンドのアップデートガイドは以上になります。
リビングエンドは見た目に反して(?)非常に奥の深いデッキのため、使い込むことで勝率が上がるタイプのデッキです。かといって難しい=とっつきづらいかと聞かれると、必ずしもそうではありません。特殊なコンボデッキではあるものの構造自体はシンプルなので、お手軽にその速度と威力を体感することも可能です。
ゆえに初心者のモダンコンボデッキ入門編としてもオススメできますし、上級者のトーナメントを勝ちあがるための“ガチデッキ”としてもオススメできます。リストはこの記事で紹介したものと違いますが、晴れる屋でも構築済みデッキが販売されているので、この機会にぜひとも手に取って遊んでみてください!
増田 勝仁 (Twitter)