ワタナベガタリ:青白系コントロール

晴れる屋

By Daisuke Kawasaki

 本戦、グランプリ・静岡のフォーマットであり、また、現在サイドイベントであるスーパーサンデーシリーズでも行われているフォーマットであるスタンダード。

 様々なデッキが登場しては消えていくこの環境を「ジャパニーズ・ジャガーノート」渡辺 雄也(神奈川)に語ってもらうという趣旨のこの企画。なお、語ってもらうのはTier 1として選んでもらった以下の4つのデッキだ。

・黒単信心
・青単信心
・赤単信心タッチ白
・青白系コントロール(当記事)

 最後に紹介するのは、環境最遅のコントロールである青白系コントロール。青系コントロールを愛する渡辺だけに、このデッキについても語りべき事柄は多そうだ。

 なお、記事中に登場するデッキリストに関しては、特に記載がない限りはhappymtg内デッキサーチから選出したものであり、渡辺自身のテストプレイなどとは無関係であることにご留意いただきたい。


■青白系コントロールとはどんなデッキか?

川崎 「さて、いきなりですけど、まずは、青白系コントロールといっても、基本的には純粋な青白と黒をタッチしたエスパーの2種類がありますよね?」



「青白コントロールサンプルデッキ」

7 《島》
6 《平地》
4 《神聖なる泉》
4 《アゾリウスのギルド門》
2 《欺瞞の神殿》
2 《静寂の神殿》
2 《変わり谷》

-土地(27)-

1 《霊異種》

-クリーチャー(1)-
2 《中略》
4 《今わの際》
4 《アゾリウスの魔除け》
4 《解消》
4 《スフィンクスの啓示》
4 《至高の評決》
4 《拘留の宝球》
4 《思考を築く者、ジェイス》
2 《太陽の勇者、エルズペス》

-呪文(32)-
4 《反論》
3 《鬼斬の聖騎士》
2 《テューンの大天使》
1 《霊異種》
1 《否認》
1 《解消の光》
1 《真髄の針》
1 《漸増爆弾》
1 《太陽の勇者、エルズペス》

-サイドボード(15)-
hareruya





「白青黒コントロールサンプルデッキ」

4 《島》
3 《平地》
4 《神無き祭殿》
4 《神聖なる泉》
4 《湿った墓》
4 《欺瞞の神殿》
4 《静寂の神殿》

-土地(27)-

2 《ヴィズコーパの血男爵》
1 《霊異種》

-クリーチャー(3)-
2 《思考囲い》
3 《アゾリウスの魔除け》
2 《ディミーアの魔除け》
1 《破滅の刃》
1 《肉貪り》
4 《スフィンクスの啓示》
2 《英雄の破滅》
2 《解消》
4 《至高の評決》
4 《拘留の宝球》
4 《思考を築く者、ジェイス》
1 《太陽の勇者、エルズペス》

-呪文(30)-
3 《鬼斬の聖騎士》
3 《反論》
2 《概念泥棒》
2 《減縮》
2 《盲従》
1 《ヴィズコーパの血男爵》
1 《霊異種》
1 《破滅の刃》

-サイドボード(15)-



渡辺 「そうですね。《軍勢の集結》を入れたトリコロール(青白赤)もありますが、基本的にはこのふたつを青白系として見ていいんじゃないでしょうか」

川崎 「黒をタッチするか否かがポイントなわけですか、この違いがもっともでるマッチアップってなんですか?」

思考囲いヴィズコーパの血男爵



渡辺 「やはり、同型対決です。エスパーは1色足してる分、同型で対決した場合は、青白より有利ですね」

川崎 「それは手札破壊の分、ってことですか」

渡辺 「手札破壊もそうですが、サイドボードからの《ヴィズコーパの血男爵》もデカイです、基本的にはさわれないので。同型の場合、サイドの《ヴィズコーパの血男爵》の存在はデカイんじゃないですかね」

川崎 「逆に、エスパーより、青白がいい部分はどこですか?」

渡辺 「これはさっきの逆で、色が少ない分、土地からダメージを受けない分、早いデッキに対してはやっぱり青白のほうが基本は有利です」

川崎 「ショックランドを2ポケット取らなければいけないから、アンタップインが必要な序盤戦が重要なマッチアップでは、青白のほうが有利ってことですか」

渡辺 「今のスタンダードは結構早い環境ですからね。あと、あくまでも基本的なデッキレシピの場合の話ですが、色を絞っている分、《変わり谷》を取れるのがものすごく大きいと思います」

変わり谷



川崎《変わり谷》ですか……たしかに、環境を象徴しているカードですもんね。赤単タッチ白も《変わり谷》を取れないのがデメリットって話がありましたけど」

渡辺 「このカードはやはり強すぎるカードじゃないかと思いますね。さっき、早いデッキ相手に土地からのダメージが、って話をしましたが、青単信心や黒単信心に対して考えても、一番の回答となるのはやはり《変わり谷》ですからね」

川崎 「それは、序盤の動きを《変わり谷》でさばけるってことですか」

渡辺 「うーん……というより、相手の《変わり谷》に対して一番有効なカードが《変わり谷》なんですよね。相手が土地を置くだけで出来ているアクションに対して、土地ではなくてスペルを使って対処している時点で結局は不利なんです」

川崎 「なるほど……同型に対しては黒を入れたエスパーが、それ以外には《変わり谷》を取れる青白が、ってことですか」

渡辺 「まぁ、とにかく《変わり谷》です。同型対決でも《変わり谷》が重要になることは多いです。もちろん、カウンターされないクロックという意味でも強いですし、それ以外でも細かい所で《変わり谷》が影響するプレイはあります」

川崎 「カウンターされないクロックっていうのはわかるんですが、それ以外だと例えば、どんな状況ですか?」

思考を築く者、ジェイス



渡辺 「わかりやすいところだと、《思考を築く者、ジェイス》をめぐる攻防ですかね。同型対決では《思考を築く者、ジェイス》と、それを《拘留の宝球》で対処するっていう攻防が結構重要なんですけど、相手が1回でもマイナス能力を使ったあとだと《拘留の宝球》を使った側が結局は不利なんですよね」

川崎 「対処しないわけにはいかないとはいえ、アドバンテージをすでにとっているカード相手に《拘留の宝球》を使う分、不利ってことですね」

渡辺 「そういうことになります。こちらがなにもクロックを用意出来ていないと相手はなにも考えないでマイナス能力を使うことができるんですけど、こちらが《変わり谷》をおいているとマイナス能力で忠誠を2にして殴り返されるのを嫌って、一回プラス能力を使って、忠誠を5にするプレイが発生するわけです。それならば、《拘留の宝球》で対処してもそこまで有利不利は発生しませんよね」

川崎 「実際に殴る殴らないはともかく、セットランドするだけで相手にプレッシャーをかけられるのは、同型対決でも重要ってことですね」

渡辺 「とにかく環境を一番支配しているカードは《変わり谷》ですからね。《変わり谷》を使えるか使えないか、使えないなら《ニクスの祭殿、ニクソス》が使えていないと厳しいマッチは増えてしまうんじゃないでしょうか」

川崎 「なるほど。青白系同士の対決はわかりましたが、逆にメタゲームの中での青白系を包括したデッキの特徴はなんでしょう?」

拘留の宝球スフィンクスの啓示



渡辺 「とにかく長期戦に強いことですね。《拘留の宝球》《至高の評決》《スフィンクスの啓示》の3種の神器が使えるのが青白系の強みで、特に信心系に劇的に効く《至高の評決》と、神やプレインズウォーカーを含めて、ほとんどのカードに触ることができる《拘留の宝球》は青白系を使う最大のメリットですね。個人的にはこの辺りを4枚から減らす選択肢はないと思います」

川崎 「ちなみに、プロツアー時点での青白系はカウンターが少なかったと思うのですが、今だとカウンターを増やす選択肢はありますかね?」

渡辺 「もっと環境が遅くなるならありえなく無いですが、現状だとやはり環境が早いのでカウンターで対処するっていうゲームになりにくいです。なにより、カウンターされない2/2である《変わり谷》が居る以上は、カウンターにたよったプランは作りにくいですしね」


■青白系を使うメリット・デメリット

川崎 「それでは、青白系を使うメリットとデメリットですが……メリットは先ほど言っていた《拘留の宝球》《至高の評決》《スフィンクスの啓示》の3種を使える部分ですか」

渡辺 「そうですね。その辺のカードによって、Tier 1に対して有利が付きますし、対応力の高さのお陰で、それ以外のデッキやローグデッキにも勝てますからね。個人的には青白系が現状、一番よい選択肢だと思っています」

川崎 「話を聞いていると、ほぼ弱点がなさそうで、同型が勝負って感じに聞こえますが……」

渡辺 「同じく同型が勝負の黒単信心に比べて、プレイや構成で差をつけやすいので練習をした分、有利になるのもメリットですね」

川崎 「逆にデメリットはあるんですか?」

渡辺 「最大のデメリットはゲームが長いことです」

川崎 「それは長期戦だと疲れるってことですか?」

渡辺 「まぁ、それもありますけどね。基本的にゲームをしているターンが長いってことは、相手が逆転するチャンスのあるターンも多いってことなので。他のデッキのようにゲームを決める決定打のターンが早くない以上、まくられる可能性が高いっていうのは青白系が抱えるリスクではあります」

川崎 「青単信心のサイドで《霊異種》って話ででてきたように、ウッカリ着地したカードで捲くられたり、ってことですね」

渡辺 「そうならないようにプレイしたいものの、やはりゲームが長くなってしまうと相手のドローと構成次第ではどうしても隙ができてしまいますからね」

 おそらく、本戦では青白系を使用していると思われる渡辺。

 果たして、渡辺が青白系の弱点をどうやって克服したかに注目するのも面白いのではないだろうか。