情報を制す者はマジックを制す。
特にSNSによる情報交換が盛んな現代、口コミがその後のメタゲームに与える影響は計り知れない。
すなわち、バズってる(話題になっている)カードを知ることは、メタゲームの把握と予測の大いなる助けとなることだろう。
当企画では、そんな「今、バズってるカード」を週刊で追っていきたいと思う。
カードの紹介に入る前に、先週行われたイベントやマジック関連の主な出来事を簡単におさらいしよう。
【『戦乱のゼンディカー』プレリリース&新マリガンルール施行】
先週末にはついに新セット『戦乱のゼンディカー』のプレリリース・イベントが開催された。
同盟者たちが「結集」し、エルドラージ・末裔トークンが湧き出て、巨大なエルドラージが戦場を蹂躙する『戦乱のゼンディカー』の世界を皆さんも体験しただろうか?
あるいはZendikar Expeditionsというサプライズに遭遇したプレイヤーの方もいらっしゃるかもしれない。【vol.10】でも触れたが、『戦乱のゼンディカー』のブースターパックに低確率で封入されているというフルアートの特殊土地だ。
【大会情報】『戦乱のゼンディカー』プレリリース午前の部、本日も300人の満員御礼です!既にExpeditionカードをゲットした方も!午後の部の受付は15:00からとなっております!詳細は→http://t.co/0vxqtzkbMH pic.twitter.com/zL7gAruNAI
— 晴れる屋 (@hareruya_mtg) 2015, 9月 27
筆者も参加したが、アンコモン以下にシンボルの薄いカードが多く、従来のリミテッドと比べて色を足しやすいこの環境は、筆者のようなリミテッドに不慣れなプレイヤーでもデッキを構築しやすいという印象を受けた。
今回プレリリースに参加できなかったという方も、『戦乱のゼンディカー』発売以降はドラフトやシールドで遊んでみてもらいたい。特に晴れる屋で10月10日に開催される【マナバーン杯】は『戦乱のゼンディカー』のシールドで開催されるので、こちらも奮ってご参加いただければ幸いである。
また、今回のプレリリース・イベントに伴って2015年9月26日(土)より【バンクーバー・マリガンルールが施行された】。マリガン後、キープを選択したプレイヤーは占術1を行えるというこのルール。Hareruya Prosの一員である津村 健志が【このルールについての記事】を書いているので、もし読んでいない方がいらっしゃったらぜひ一読されたし。
【禁止制限カードリスト更新】
2015年9月29日、DCIより『戦乱のゼンディカー』発売日(10月2日)から更新される【禁止制限カードリスト告知】が発表された。
今回の変更で最も注目を浴びたのはレガシーで《時を越えた探索》が禁止されたことだろうか。これにより、最近やや低調だった【続唱青黒緑】や【カナディアン・スレッショルド】といったデッキが再びメタゲームの上位に返り咲くことがありそうだ。
今回の禁止制限カードリスト更新の具体的な内容については下記のとおりである。
●スタンダード・モダン
変更なし。
●レガシー
《時を越えた探索》禁止。
《黒の万力》禁止解除。
●ヴィンテージ
《虚空の杯》制限。
《時を越えた探索》制限。
《知識の渇望》制限解除。
また、次回の禁止制限カードリストの更新は2016年1月18日になるとのことだ。(ソースは【英語版告知サイト】)
主要な出来事はこのくらいだろうか。
さて、それでは今大きな話題を呼んでいるカードたちを紹介しよう。
1. 黒の万力
先述したとおり、10月2日から更新される【禁止制限カードリスト告知】が発表された。
そしてそこには、とあるアーティファクトのレガシー解禁について書かれている。
文字通り刺々しい万力に挟まれるぬいぐるみのイラストが特徴的な《黒の万力》。
ガラスケースに骨董品のように飾られているこのカードを見たことのあるプレイヤーは多いと思われるが、実際に《黒の万力》を使用したことはない、さらにはテキストを知らないというプレイヤーも少なくないのではないだろうか。
しかし、それも無理はない。この《黒の万力》は現在のレガシーフォーマットの前身であるType1.5の黎明期、なんと1996年から今まで長らく禁止されていたのである。
もしこの記事の読者の方の中に19年8か月以内に生まれた方がいらっしゃるなら、これはあなたが生まれた時にはすでに禁止されていたカードだ。
なお余談だが、この《ぬいぐるみ人形》は公式で「スタッフィー/Stuffy」と呼ばれており、他のカードイラストでも散々な目に遭っている。
スタッフィーの目線で語られる、悲哀に満ちた物語【Uncharted Realms: ぼろぼろの人形】も必見。
先攻1ターン目に設置できれば対戦相手に最低でも3点のダメージを与えられることは約束されたようなもので、【白青奇跡】や【白青石鍛冶】、【青黒赤ジャンク】のような青いフェアデッキが相手であればそのまま5点、6点とダメージを与えて行けるだろう。
わずか1マナにしてこの効率は凄まじく、【赤単】や【親和】といったデッキでの活躍に期待される。《師範の占い独楽》などと違って起動にマナがかかるといったこともない、ただただ設置し得なカードであり、無色ということもあってその他様々なデッキのサイドボードに使われる可能性もある。
今後、レガシー環境ではたびたび見かける1枚となることだろう。スタッフィーと苦痛を共有することになるのははたしてあなたの対戦相手か。それとも……
2. 虚空の杯
ヴィンテージでついに《虚空の杯》が制限カードに指定された。ピンとくる方はそう多くはないかもしれないが、これはヴィンテージ環境で長らくトップメタに位置していた【MUD】が弱体化されたという形だ。
《Black Lotus》やMoxen(5種類のMoxシリーズを意味する)を始めとした0マナの強力なカードが使われるヴィンテージ環境において、《虚空の杯》がもたらす影響は絶大なものだった。特に先手でMoxや《Black Lotus》を展開しきったあと、《虚空の杯》を「X=0」でプレイされたなら、その後のゲーム展開が一方的なものになることは想像に難くないだろう。
デッキ名にもあるとおり、まさに対戦相手を「MUD=泥沼」に叩き込む邪悪な戦略である。
晴れる屋で開催される【ヴィンテージ神決定戦】や、東京MTGで開催される【ヴィンテージオープン】など、最近着実に注目が集まりつつあるフォーマット、ヴィンテージ。
よく中毒性があるなどと形容されるフォーマットだが、入門の敷居は決して低くはない。晴れる屋では10月から【平日ヴィンテージ】が開催されるので、興味のある方はぜひその深淵なる世界をご覧になってみてはいかがだろうか。
3. 知識の渇望
禁止・制限されるものがあれば、解禁されるものもある。レガシーでは《時を越えた探索》と《黒の万力》が交代することとなったが、ヴィンテージでは《虚空の杯》と入れ替わりで《知識の渇望》が制限解除となった。
かつてヴィンテージ環境を席巻していたという【Tezzeret’s Vault】では、《Mana Drain》などによる無色マナのバックアップを得て《知識の渇望》を唱えることで実質的に《Ancestral Recall》に次ぐ高効率を誇るドロー呪文として活躍していたそうだ。
現在ではどちらも制限カードに指定されているとはいえ、近年では《宝船の巡航》や《時を越えた探索》といった
はたしてこの変更はマジックの極致・ヴィンテージにどのような変化をもたらすのか。要注目である。
いかがだっただろうか?
今週もまた多くのカードがプレイされ、注目され、議論を呼ぶのだろう。
次回の記事も楽しみにしていただけたら幸いである。
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