情報を制す者はマジックを制す。
特にSNSによる情報交換が盛んな現代、口コミがその後のメタゲームに与える影響は計り知れない。
すなわち、バズってる(話題になっている)カードを知ることは、メタゲームの把握と予測の大いなる助けとなることだろう。
当企画では、そんな「今、バズってるカード」を週刊で追っていきたいと思う。
カードの紹介に入る前に、先週行われたイベントやマジック関連の主な出来事を簡単におさらいしよう。
【GP北京が開催される】
※画像は【マジック:ザ・ギャザリング 日本公式ウェブサイト】より引用させていただきました。 |
見事に優勝を収めたのは、Craig Wescoe・Rich Hoaen・Mike Hronの3名!決勝を争ったのは渡辺 雄也・三原 槙仁・市川 ユウキ。
日本からも多数のプレイヤーが参加しており、(【参考1】【参考2】)トップ4には日本人チームが2組も入賞するという大
主要な出来事はこのくらいだろうか。
さて、それでは今大きな話題を呼んでいるカードたちを紹介しよう。
1. 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》
【多色ジェスカイ】や【アブザンビートダウン】など、『戦乱のゼンディカー』参入後のスタンダードのメタゲーム上位のデッキがある程度固定化されてきた今――
”いよいよ獲物が美味しく育った時期だ”と言わんばかりに、“ヤツ”が世界に牙を剥いた。
先週末にスタンダード・フォーマットで開催された【GPケベックシティ】と【SCG Premier IQ セントルイス】にて、同時多発的に《絶え間ない飢餓、ウラモグ》が暴れていたのだ。
14 《森》 1 《山》 4 《ウギンの聖域》 4 《見捨てられた神々の神殿》 1 《荒廃した森林》 1 《精霊龍の安息地》 -土地(25)- 4 《搭載歩行機械》 4 《ジャディの横枝》 2 《龍王アタルカ》 3 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》 -クリーチャー(13)- |
4 《森の占術》 4 《荒野の地図作成》 3 《ニッサの巡礼》 4 《爆発的植生》 3 《面晶体の記録庫》 4 《精霊龍、ウギン》 -呪文(22)- |
4 《大地の断裂》 2 《巨森の予見者、ニッサ》 2 《囁きの森の精霊》 2 《カル・シスマの風》 1 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》 1 《破滅の昇華者》 1 《引き裂く流弾》 -サイドボード(15)- |
上記は【GPケベックシティ】のリストだが、【SCG Premier IQ セントルイス】でもトップ8に3名が入賞と、まさにエルドラージ無双といった活躍を見せていた。
先週末のこれらの結果から、【プロツアー『戦乱のゼンディカー』】で【アブザンビートダウン】が優勝した!→それを食う【エルドラージランプ】が台頭した!といった流れが明確となった。
4/5トランプルよりも、10/10破壊不能の方が強いのだ。3/3飛行・警戒・速攻など、8/8飛行・トランプルからすれば文字通り虫ケラだ。
新たに強力なアーキタイプが台頭してきたスタンダード・フォーマット。【GP神戸】に向け、これからメタゲームにどのような動きがあるのか。少しの揺らぎからも目が離せない。
2. 《先祖の結集》
そして【GPケベックシティ】で活躍を見せたデッキで目新しいものがもう1つ。それが【先祖の結集コンボ】だ。
3週間前に開催された【BIG MAGIC OPEN Standard Vol.5】でも5位に入賞するなど、じわじわと活躍していたアーキタイプではあったが、上述の【エルドラージランプ】と同様、アブザンやジェスカイといったミッドレンジ系のデッキに対して強いアーキタイプとして使用者が増えているようだ。
アブザンもジェスカイも共通して大雑把に分類するならば「ビートダウン」の括りに入る。そして「ビートダウン」は「コンボ」に弱いとされているのが世の常だ。何しろ、どれだけ頑張ってビートダウンがライフを削ったとしても、コンボデッキにはちょっとしたアドバンテージ差や形勢を一発で逆転する手段があるのだから。
【先祖の結集コンボ】に関して言うならば、例えば自分のターンの第一メインステップに「X=3」で《先祖の結集》を唱え、墓地から……
といった釣り方をしたならば、何が起こるかお分かりだろうか?答えは「7枚ドロー」「20点ドレイン」だ。(ドロー優先やドレイン優先などの別解も存在する。)
《集合した中隊》なども駆使して盤面を作りつつ、状況に応じて《ナントゥーコの鞘虫》でライフを詰めたり、《先祖の結集》で一気に畳みかけたりといった戦術が可能なこのデッキは、これからもひっそりと研究されていくことだろう。
ちなみにご存知でない方も多くいらっしゃるが、対戦相手が《先頭に立つもの、アナフェンザ》をコントロールしているときでもトークンが死亡したときは墓地に落ちる。総合ルール110.5eにより、トークンはカードとしては扱われないため、クリーチャー・カードではないからである。
言っている意味が分からないという方は、【MTG Wiki: 先頭に立つもの、アナフェンザ】の項を参照されたし。
《先頭に立つもの、アナフェンザ》をプレイして一安心、といった顔を浮かべる対戦相手のライフをエルドラージ・末裔・トークン+《ズーラポートの殺し屋》で吸い尽くすのもまた一興……?
3. 《溶鉄の渦》
さて。ネット上では「スタンダードはどのデッキにも《ヴリンの神童、ジェイス》や《包囲サイ》が入っていて多様性がない・飽きる」などと嘆く声が散見される。そういったプレイヤーがもし【2011年4月頃】や、【2012年6月頃】のスタンダードをプレイしたらおそらく卒倒するだろうが、それは余談か。
ともかく、ローテーション後のメタゲームがひとまず固まりつつあり、Tier1のデッキが固定されてきた今こそ、我々レジスタンスが立ち上がるべき瞬間なのではないだろうか?
ジェスカイ、アブザン、アタルカレッド、緑白大変異。これらの横っ面を叩き、閉塞的な環境に風穴を開けろ!メタゲームという餌に尻尾を振って飛びつく我々はもういない。これからは我々が、メタゲームに給餌してやるのだ!!
48 《山》 -土地(48)- -クリーチャー(0)- |
4 《溶鉄の渦》 4 《マグマの洞察力》 4 《苦しめる声》 -呪文(12)- |
2 《焙り焼き》 2 《粉々》 2 《塵への崩壊》 1 《引き裂く流弾》 -サイドボード(7)- |
これぞ意思の塊といったデッキリストだ。《溶鉄の渦》を設置し、《山》を投げ続けて勝利する。あらゆる贅肉をそぎ落としたこのデッキリストはまさにミニマリズムの極致と言えるだろう。
Who says Standard is solved? Not Joe Efinger. pic.twitter.com/PPKmAPXTjh
— Saffron Olive (@SaffronOlive) 2015, 10月 17
サイドボードにも無駄がない。そもそもサイドボードを15枚用意しなくてはならないと誰が決めた? よもや強迫的なまでにシェイプアップされたこのデッキのサイドボードはわずかに7枚のみだ。そもそもメインボードに12枚しか呪文が入っていない上、《溶鉄の渦》を抜くことは絶対にありえないのだから、持ち歩くカードは必要最小限でいい。
さらにこのデッキを回す際には、ほぼあらゆる対戦相手に対して後手を選択すべきだろう。土地は2枚、多くて3枚程度置けばいい。すぐに手札を使い切らず、対戦相手の繰り出す脅威に常に対応できるよう用意すべきだ。《苦しめる声》は2枚目以降の《溶鉄の渦》を捨てるのに必要になるため、考えなしにプレイしてはいけない。
ちなみに開催地のフォー・オークスは【人口1400人程度の町】であることを、ここに付記する。インターネット全盛の現代であれば、小さな町のカードショップからでも世界は変えられるのだ。
いかがだっただろうか?
今週もまた多くのカードがプレイされ、注目され、議論を呼ぶのだろう。
次回の記事も楽しみにしていただけたら幸いである。
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