齋藤友晴のGPシアトル・タコマ2015レポート

齋藤 友晴


先週末に行われた【GPシアトル・タコマ】は久々のレガシー。

【7月のGPリール】ぶり。

《時を越えた探索》が禁止された後は1度も触ってないし、イベントまでに練習する時間もほとんど取れないという前提での挑戦。


【前回のブログ】の最後で「今の自分にできるベストな立ち回りで頑張ります☆」と言った。

ベストな立ち回りとは何か。


そう、再び【あの男】に連絡した。




土屋 洋紀。


※編注:土屋 洋紀は国内のレガシー大会で数々の入賞経験を持つ強豪。【ボルト算】信者で、《秘密を掘り下げる者》をこよなく愛している。【グランプリ・京都2015】ではグリクシス・デルバーを駆り12勝3敗と好成績を残し、【第5期レガシー神挑戦者決定戦】ではBUGデルバーで見事優勝を収めた。

 晴れる屋の社員であり、現在は成田店勤務。



日本レガシー界のトッププレイヤーのひとりであり、つい先日【神への挑戦権も手にしている】彼に「これが一番オススメ」と言って渡されたリストは、神挑戦者決定戦のときのまま。



土屋 洋紀「青黒緑デルバー」
第5期レガシー神挑戦者決定戦 (優勝)

4 《Underground Sea》
2 《Bayou》
1 《Tropical Island》
4 《汚染された三角州》
4 《霧深い雨林》
4 《不毛の大地》

-土地(19)-

4 《秘密を掘り下げる者》
4 《死儀礼のシャーマン》
3 《タルモゴイフ》
2 《闇の腹心》

-クリーチャー(13)-
4 《渦まく知識》
4 《思案》
2 《思考囲い》
1 《見栄え損ない》
4 《目くらまし》
4 《Hymn to Tourach》
4 《突然の衰微》
3 《Force of Will》
2 《ヴェールのリリアナ》

-呪文(28)-
2 《被覆》
2 《見栄え損ない》
2 《湿地での被災》
2 《精神を刻む者、ジェイス》
1 《真の名の宿敵》
1 《ヴェンディリオン三人衆》
1 《グルマグのアンコウ》
1 《Force of Will》
1 《死の投下》
1 《森の知恵》
1 《真髄の針》

-サイドボード(15)-
hareruya




話を聞くと決して手抜きを抜いているわけではない。環境に対してこれで完結しているとのことだった。

自分にも経験がある。本当に磨かれ切ったリストの場合もあるが、最高の結果が出た後はなかなかそのデッキの課題というのは見えてきにくいものだ。


サイドボード入れ替えについてやデッキの微調整案なども相談していたときに、ひとつだけすこぶる気になったのが、「日本とアメリカはレガシーのメタゲームが全然違う」こと。


例えば、

「コンボは日本ではスニーク・ショーが多く、アメリカではANTが多い」
「日本にはあんまりいない続唱BUGがかなり多い」

っていうようなメタの違いについての話。


苦悶の触手断片無き工作員


うん、レガシーって国が違えばかなりメタが違うよね。各国での大きな大会の結果や、有名プレイヤーの影響はもちろんのこと、どの時代にマジックが盛り上がったかとかにも起因する、カードのマーケット流通量まで関わってくるし。

それが不安だった。


話した翌日シアトルに飛び、現地に行って木曜日はカード屋さん見学したりしてからの金曜日。仕入れは前半だけで止めて、後半は練習するためにGPTに出た。練習で1番効果が高いのは最初の数時間。全てのマッチがフレッシュで、脳内の確認、整理ができる。物事なんでもそうだけど、0と1の差は大きい。

都合6回戦やってトータル3-3。

負けたのは感染、赤単ペインター、続唱BUG。当たりがおかしいとかではなく、会場を見渡すとどれも使ってる人が結構いた。それどころが、リアニメイト、バーン、土地単、アグロローム、スニークショーとか割と何でもいて、各種デルバーデッキやミラクルはもちろん、続唱BUGとANTの多さが確かに際立った。

ああ本当に日本と全然メタが違う(笑)

それと同時に、ツッチーには悪いけど、

このデッキはこのままでは勝てない!

と判断。

土屋デッキはBUGデルバーでありながらテンポではなく、青版ジャンドと言えるようなミッドレンジデッキ。

デッキを組む際、仮にスピード指数線が左から右まであるとして、

左端から右を見渡すのが最速ビートダウンor最速コンボ。

右端から左を見渡すのが最遅コントロール。

ミッドレンジである土屋デッキは右も左も気にしなければならない。

逆にその分、見渡しやすい状況であれば左にも右にも対応しやすい。


150人~300人規模で、しかも慣れているし情報も集まりやすい日本のトーナメントならその構築は許されるし実際フィットしていた構成だったんだと思った。土屋のプレイの正確さとの掛け算との上でおそらく最適なメタデッキとして機能していたに違いない。

しかし、2000人規模の、メタが違うアメリカのトーナメントでは現状の75枚は最適ではないと感じたし、残された時間でミッドレンジのままで最適なカード選択をできる気がしなかった。また、一番人気が予想される続唱BUGと同じ土俵、近い速度でやり合うのはカードアドバンテージが少ないこちらが不利だと感じた。

そこで、《秘密を掘り下げる者》を中心としたこのデッキのカード達が持つ単純なパワフルさを活かし、最速とはいかないまでももっと素直に左から見渡すことにした。

攻める。

そして攻めるために妨害する。


本番前夜に2時間ぐらいかけて最終的にこんなリストになった。



齋藤 友晴「BUG Delver」
GPシアトル・タコマ2015

4 《Underground Sea》
2 《Bayou》
1 《Tropical Island》
4 《霧深い雨林》
4 《汚染された三角州》
4 《不毛の大地》

-土地(19)-

4 《死儀礼のシャーマン》
4 《秘密を掘り下げる者》
4 《タルモゴイフ》
1 《真の名の宿敵》

-クリーチャー(13)-
4 《渦まく知識》
4 《思案》
2 《見栄え損ない》
2 《思考囲い》
4 《突然の衰微》
4 《目くらまし》
4 《Hymn to Tourach》
4 《Force of Will》

-呪文(28)-
4 《闇の腹心》
3 《水没》
2 《被覆》
2 《外科的摘出》
2 《湿地での被災》
1 《真髄の針》
1 《ヴェールのリリアナ》

-サイドボード(15)-
hareruya









タルモゴイフ


《タルモゴイフ》メイン3枚→4枚

単純に打点が高いパワーカードだし、メイン戦では《安らかなる眠り》などのマイナス要因もほとんど無い。



Force of Will


《Force of Will》メイン3枚→4枚

多すぎる仮想敵に対して負けないための一手であり、攻めのバックアップでもある。



真の名の宿敵


《真の名の宿敵》メイン0枚→1枚

攻め切るためのラスボス的クリーチャーの追加、4枚に増えた《Force of Will》カウントの増加。



見栄え損ない


《見栄え損ない》メイン1枚→2枚

テンポ勝ちするため、後手の不利を覆すための追加。



闇の腹心


《闇の腹心》メイン2枚→サイド4枚

もともとメインにも入っていたほどのパワーカード。ミラクル、BUG続唱という遅めのデッキにパワフルすぎるカードかつ、いくつかのコンボデッキ相手にも入る。



水没


《水没》サイド0枚→3枚

BUG続唱や各種デルバー系にテンポ勝ちするため。また、会場のデルバー系の9割は緑入りの気配だったので。

苦手な感染相手に強いのもプラス材料。



外科的摘出


《外科的摘出》サイド0枚→2枚

苦手な土地単とアグロローム意識。リアニメイトに有効なのはもちろん、ANT相手にも入り割と受けは広い。


土屋のデッキからの変更点を簡単に解説するならこんな感じ。

ベースの構成や環境に対していろいろと教えてもらっていたおかげで、割とスムーズに正解に近づけたと思う。


そうして迎えた本戦の結果は以下の通り。



ラウンド 対戦デッキ 先手・後手 勝敗
Round 1BYE
Round 2BYE
Round 3アグロローム ×〇〇
Round 4BUGデルバー 〇〇
Round 5ミラクル 〇〇
Round 6ANT ×〇〇
Round 7ANT 〇×〇
Round 8アグロローム ××
Round 9リアニメイト ×〇×



7-2で初日通過。得意なリアニメイトに負けてのフィニッシュでちょっと辛かった。



ラウンド 対戦デッキ 先手・後手 勝敗
Round 10感染 〇〇
Round 11RUGデルバー 〇〇
Round 12ミラクル ×〇〇
Round 13BUG続唱 〇×〇
Round 14土地単 〇×〇
Round 15URBデルバー ×〇×



12-3で17位、プロポイント3点、賞金500ドルでフィニッシュ。


最終戦のトップ8を賭けた試合でミスとも結果論とも言えるようなプレイの分岐点を2回ハズして負けて悔しかった。

実際の試合中もこれは難しい!って思ったような局面で、未だに頭の中でちょくちょく考えてるけど長くなるあんまりおもしろい問題じゃないからそこはパス(笑)

何年やってもそういうシチュエーションに出会えるところもまたマジックのおもしろさよ!




Christian Calcano
※画像は【MAGIC: THE GATHERING】より引用させていただきました。

ポール・チョーン(Paul Cheon・ANT)、ジェイコブ・ウィルソン(Jacob Willson・RUGデルバー)、アリ・ラックス(Ari Lax・ミラクル)、クリスチャン・カルカノ(Christian Calcano・URBデルバー)など、

今回は強豪にたくさん当たってフィーチャーマッチに呼ばれまくりで、シリアスなレガシーのゲームができてハッピーでした♪


実は最終戦にトップ8を賭けて戦ったカルカノとは3月にチームリミテッドのGP Washington DCに一緒に出ることが決まってるんですが、

ここでも惹かれ合っちゃったかー!もうっ神様のイジワルッ!って感じでした。

チームメートだったら頼もしいと思う奴と対戦相手として当たれば、そりゃあまあ厳しいわけで(笑)


デッキの感想としては全体的に結構手応えはありましたが、《真の名の宿敵》が使っていて本当にこのカードなのか懐疑的であったり、サイドはいっそのこと《外科的摘出》ではなく《虚空の力線》を3~4枚入れたほうがよさそうな気がしました。

運よく負け越しませんでしたが、アグロロームや土地単が相変わらずきついと感じるのが主な理由です。

ただ、それらとANT、リアニメイトの総量は日本だと多くなさそうなんで、あくまで参考程度に。


今週末はアメリカ滞在からの【BFZリミテッドGP】

寄せに寄せてきた種目なこともありかなり成績がいいですが、【PTでひどい目にあった】ので謙虚かつおしとやかに最後までできることを頑張った上で……





……優勝します!


ってことでレガシーGPのレポートでした☆



いつも思うけどレガシーを書くときは自身に熱量があって、書き終わると実際に汗かいてたりします。

プレイヤーの成熟度が上がって、普段からやれない中で勝てる度合いは以前よりだいぶ下がりましたが、やっぱりレガシー特有のデッキ構成やゲーム内容の緊張感、選択肢の多さなんかがすっごく好きなんだと思います。



さて、カード屋やってる僕がデッキ単価の高い種目を推し始めたところで、怪我する前にそろそろ今回の幕を締めますね(笑)


レガシーハッピー!!!


トモハル



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