津村健志のアブザン・アグロ調整記

津村 健志


こんにちは!

【前回のブログ】から、気が付けば随分と日にちが経ってしまいましたが、その間に【原根(健太)君の加入】というビッグニュースが飛び込んできました!




ユニフォーム撮影も兼ねて、つい先日原根君とお話しする機会があったんですが、彼のやる気はすごいです。他の国産ゲームでの成功体験や、最近のスタンダードの話などなど、色々気になっていたことを聞いてみましたが、その中で僕が最も感銘を受けたのは、上達までの道のりをしっかりとイメージしていることでした。

マジックを延々とプレイするだけなら僕にもできますが、目的を持ってそれを達成するのはなかなかに難しいものです。

そんな彼のやる気に負けないように!ということで、今週末の【グランプリ・ブリュッセル2015】(スタンダード)への参加を決意しました。理由の半分くらいはMagic Online(以下MO)での成績が良かったからではありますが、原根君の加入がとても良い刺激になっているのも確かです。

というわけで、本日は【津村健志のゴキゲン!MO生活】でも絶賛使用中の「アブザン・アグロ」を解説させていただきたいと思います。

来る【グランプリ・神戸2015】に向けて、同デッキを使っている方の参考になれば幸いです。



■ 「アブザン・アグロ」を選ぶまで


このデッキを選んだきっかけは、【第5期スタンダード神挑戦者決定戦】で解説を務めさせていただいたことです。

もともと【津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ プロツアー『戦乱のゼンディカー』 新たな世界】用に「アブザン・アグロ」はそれなりに使っていて、非常に堅実で強いデッキだとは理解していました。

しかしながら、まさか【トップ8に6人も残る】とは予想だにしておらず、改めて「アブザン・アグロ」というデッキの強さを実感したのがこの大会です。


先頭に立つもの、アナフェンザゼンディカーの同盟者、ギデオン風番いのロック


ここから世界各国の大会結果を見直し、いたるところで「アブザン・アグロ」が結果を残している事実を受け、とりあえず「アブザン・アグロ」を極めてみようと思ったのがスタートラインでした。



■ 2マナクリーチャーの選択


【プロツアーを制した瀧村(和幸)さんのリスト】がすでに最強クラスに強かったので、そのままでも良かったんですが、瀧村さんのリストの強さは十分すぎるほど分かっていたため、せっかくなので《白蘭の騎士》が入った【和田(寛也)さんのアブザン】から調整を始めました。

「アブザン・アグロ」の2マナ域と言えば、たまに表でも出す《棲み家の防御者》を除外すると、候補に挙がるのは《搭載歩行機械》《荒野の後継者》《白蘭の騎士》の3種類が一般的。


搭載歩行機械荒野の後継者白蘭の騎士


デッキリストがほとんど完成されているだけに、この1枠が与える影響は非常に大きいと考えています。基本的には《搭載歩行機械》《荒野の後継者》がほとんどですが、これら3種類にはそれぞれにしかない特徴があります。


《搭載歩行機械》


搭載歩行機械


こいつの魅力は幅広い相手に有効なところで、「追放」除去の少ない「ダーク・ジェスカイ」なんかには頼りになります。一方で、弱点はミラーマッチに弱いこと。とりわけ《先頭に立つもの、アナフェンザ》に対して無力なのは大きな減点材料です。


《荒野の後継者》


荒野の後継者


対して、《荒野の後継者》はミラーマッチで最高の2マナ域。《先頭に立つもの、アナフェンザ》《包囲サイ》をばっちりと受け止め、《ドロモカの命令》の「格闘」でも対処されないので、最高の壁としてその責務を全うしてくれます。

他のマッチアップでは、《乱撃斬》《コラガンの命令》で簡単に死んでしまうのが懸念材料ではありますが、それを差し引いても採用する価値があると思います。


《白蘭の騎士》


白蘭の騎士


《白蘭の騎士》を採用する目的は、主に「アブザン・アグロ」ミラーで先手・後手を入れ替えることです。こいつがいれば後手でも先に《風番いのロック》が出せるという点、そしてミラーマッチが多発している点を加味すると、この選択は理に適っているように思いました。

そのため、《白蘭の騎士》から調整を始めたのはある意味で必然とも言えます。前述の通り、《搭載歩行機械》入りの瀧村さんのリストの強さはすでに分かっていましたしね。

が、「アブザン・アグロ」のミラーマッチを繰り返すにつれ、予想外の事実が発覚してしまいました。



■ 無敵ではなかった《風番いのロック》


予想外の事実とは、事前の予想よりも《風番いのロック》が弱かったことです。僕のイメージでは「出せば勝ちのカード」でしたが、残念ながら《風番いのロック》では、《先頭に立つもの、アナフェンザ》《包囲サイ》に殴られている状況を打破できません。


風番いのロック


ミラーマッチにおける《風番いのロック》は、あくまで逆転を許さないダメ押しであり、一発逆転のカードではありません。《白蘭の騎士》経由であろうとなかろうと、盤面が少し不利な状態で出す《風番いのロック》ではゲームをひっくり返すには不十分だというのが僕の見解です。

もちろん、《風番いのロック》は「ダーク・ジェスカイ」や他のデッキ相手には強力無比ですし、ミラーマッチでも先手なら強いので、不採用はもったいないように思います。

しかし、僕が探していたのは最後の一押しではなく、ミラーマッチの先手・後手を入れ替える、または劣勢を跳ね返せるカードだったので、《風番いのロック》が微妙となると、《白蘭の騎士》の存在意義にも疑問を抱くようになりました。

和田さんのリストは勝率こそ良かったものの、自分の中でミラーマッチにはなんとなく勝っているような状態で、「アブザン・アグロ」の強さに自信は持てても、ミラーマッチに強い構成だと自信を持つことはできませんでした。

また、序盤に(白)(白)を揃えないといけない関係で、最初の数ターンに《梢の眺望》《乱脈な気孔》を置けなかった場合のチグハグさも気になりました。

そこで、次に試してみたのがミラーマッチ最強と名高い《荒野の後継者》です。



■ ミラーマッチを制する鍵



荒野の後継者


前述の通り、こいつはミラーマッチで最高の2マナ域です。ミラーマッチの後手番でも、このカードが初手にあれば安心してゲームを開始することができますし、感触は良好でした。

《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》《風番いのロック》のみ《荒野の後継者》を悠々と乗り越えてきますが、逆にそれ以外は全て受け止めてくれるので、ミラーマッチが多いのであれば《荒野の後継者》に勝る2マナ域はないと思っています。



■ デッキリスト


少し長くなってしまいましたが、紆余曲折を経て完成したのがこちら。


kogamo《荒野の後継者》・アブザン」

2 《森》
2 《平地》
2 《梢の眺望》
1 《燻る湿地》
1 《窪み渓谷》
4 《吹きさらしの荒野》
4 《樹木茂る山麓》
4 《溢れかえる岸辺》
4 《乱脈な気孔》
2 《ラノワールの荒原》

-土地(26)-

4 《始まりの木の管理人》
3 《棲み家の防御者》
3 《荒野の後継者》
4 《先頭に立つもの、アナフェンザ》
4 《包囲サイ》
2 《風番いのロック》
1 《黄金牙、タシグル》

-クリーチャー(21)-
4 《ドロモカの命令》
4 《アブザンの魔除け》
1 《残忍な切断》
4 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》

-呪文(13)-
4 《絹包み》
3 《強迫》
3 《精神背信》
2 《究極の価格》
1 《黄金牙、タシグル》
1 《風番いのロック》
1 《自傷疵》

-サイドボード(15)-
hareruya


個人的には《荒野の後継者》の枠3枚、《棲み家の防御者》の枠1枚、《黄金牙、タシグル》の枠1枚以外の55枚は確定だと思っています。あまり決めつけすぎるのは良くありませんし今後変わる可能性もありますが、それくらいその他の55枚は信頼の置けるカードです。

瀧村さんのリストから大きな変化はありませんが、《棲み家の防御者》が減っていたりするので、その辺りの理由を。


《棲み家の防御者》の減量と《黄金牙、タシグル》のメイン投入


棲み家の防御者黄金牙、タシグル


《棲み家の防御者》を減らした理由は単純明快で、よくサイドアウトしていたためです。「変異」から表返るまでの重さがネックとなり、後手はほとんどの場合に《黄金牙、タシグル》と入れ替えてたため、サイドボードの枠を空けるためにも減らしました。

逆に《黄金牙、タシグル》サイドインする機会があまりにも多かったので、メインボードに昇格。4~5ターン目のアクション増加に貢献してくれる点を最も評価しています。対戦相手に予想されることがなく、勝利貢献度の高い《残忍な切断》の2枚目と悩みましたが、攻め手が尽きないように、ということでクリーチャーを優先。


・手札破壊の増量


強迫精神背信


もともと手札破壊は最低でも5枚 (《強迫》2枚・《精神背信》3枚) 以上は確保するつもりでいましたが、「ダーク・ジェスカイ」によく負けるので《強迫》を増量しました。

手札破壊を増やせば、コントロールデッキに強くなるだけでなく、「エルドラージ・ランプ」系のデッキに負けることもほとんどなくなります。


《絹包み》を4枚に


絹包み


これも「ダーク・ジェスカイ」を意識した選択です。「ダーク・ジェスカイ」相手の有効なサイドボーディングプランは未だ結論が出ておりませんが、手札破壊と除去呪文で対戦相手のリソースを削り、《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》《風番いのロック》で短期決戦を挑むのがいいのではないかと思っています。



■ サイドボーディングプラン


「アブザン・アグロ」で1番難しいのがサイドボーディングだと思います。先手と後手で入れ替えが変わることが多く、僕自身も自信がないものが多いですが、今のところ行っているサイドボーディングプランを記載しておきます。



● 対「アブザン・アグロ」 (Abzan Aggro)

・先手 (On the Play)


・後手 (On the Draw)


ミラーマッチは、先手と後手で大きくプランが異なります。先手はメインボードと変わらず、ひたすらに殴るのがいいですが、後手はどこかで手数で上回るなりで先手側を追い抜く必要があります。《ドロモカの命令》は2マナと軽いので、先手・後手を入れ替えるきっかけになりやすいので、数枚は残した方がいいと思います。

《精神背信》を投入するのは、《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》《風番いのロック》を最も効率良く対処できるカードだからです。展開次第では、《先頭に立つもの、アナフェンザ》を抜けるだけでも十分ですしね。



● 対「ダーク・ジェスカイ」 (Dark Jeskai)

・先手 (On the Play)


・後手 (On the Draw)


このマッチアップは特にサイドボーディングが難航していますが、現状ではこんな感じです。《見えざるものの熟達》なども試してみたものの、《オジュタイの命令》《時を越えた探索》の入ったデッキに対して長期戦は挑みたくないと思ったので、今は手札破壊から徹底的に攻めるプランを実行中。



● 対「エスパー・トークン」 (Esper Tokens)



これまた手札破壊からビシバシ殴るパターン。《荒野の確保》から《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》の「-4」能力はどんな角度からでも負けかねないので、可能であれば常に《荒野の確保》を警戒して動きたいマッチアップですね。



● 対「アタルカ・レッド」 (Atarka Red)



いつも通り相手の攻勢を削ぐことが目的となりますが、今回の「アタルカ・レッド」は《ティムールの激闘》《強大化》一撃必殺コンボがあるので、できるだけ手札にインスタント除去を温存しておければ理想的です。



● 対「エルドラージ・ランプ」 (Eldrazi Ramp)



対「エルドラージ・ランプ」戦は、《始まりの木の管理人》《先頭に立つもの、アナフェンザ》《強迫》《精神背信》のいずれかがない限りはマリガンしましょう。

手札破壊は、できるだけ2マナ以上のマナ加速(《爆発的植生》《面晶体の記録庫》)を落とせるといいですね。1本目はキープした手札次第ですが、サイドボード後はキープできる手札が増えるのでグッと楽になります。



《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》の使い方


このデッキでサイドボーディングに次いで難しいのは、《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》の使い方ではないでしょうか。


ゼンディカーの同盟者、ギデオン


基本的には「0」能力から入って、「+1」か「-4」を使うことが多いですが、キャストしてすぐに「-4」を使うこともあります。返しのターンで《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》が殺されそうなときや、お互いのクリーチャーのサイズが似通っている場合には「-4」が最適なことが多いですね。




《乱脈な気孔》もサイズがひとつ上がると強さが段違いなので、《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》の使い方はぜひ意識してみてほしいポイントです。



■ おわりに


「アブザン・アグロ」調整記は以上です。

ちなみにMOでの直近の成績は38勝3敗!

これまでに前例がないほど勝率がいいのですが、【グランプリ・神戸2015】を前に、現実世界でも本当にこんなに勝てるんだろうかと不安に思ったのが【グランプリ・ブリュッセル2015】行きを決意したもうひとつの理由です。

調整のためにベルギーまで行く必要があるかは分かりませんが、行弘(賢)君とノリでチケットを取ってしまいました(^_^;)(笑)

今週末に負けたら負けたで来週に向けた良い調整になりますし、勝ったら勝ったでハッピーですしね。

もちろん、せっかく行くからには良い結果を残したいので、同行の行弘君、覚前(輝也)君、たまちゃん(玉田 遼一)とがんばってきます!

それでは、また次回のブログで!


コガモ



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