MTG Just Now! vol.25 -ラッパの一吹き etc.-

晴れる屋メディアチーム


 情報を制す者はマジックを制す。

 特にSNSによる情報交換が盛んな現代、口コミがその後のメタゲームに与える影響は計り知れない。

 すなわち、バズってる(話題になっている)カードを知ることは、メタゲームの把握と予測の大いなる助けとなることだろう。

 当企画では、そんな「今、バズってるカード」を週刊で追っていきたいと思う。


 カードの紹介に入る前に、先週行われたイベントやマジック関連の主な出来事を簡単におさらいしよう。



【ワールド・マジック・カップ2015が開催される】

写真左から玉田 遼一、楊 塑予、渡辺 雄也、津村 健志
※画像は【Magic: The Gathering 公式Facebook】より引用させていただきました。

 先週末には【ワールド・マジック・カップ2015】がスペイン・バルセロナの地で開催された。Hareruya Pros所属の津村 健志も出場していた本イベントは【ニコニコ生放送】でも中継され、解説には【Team Cygames】所属の市川 ユウキも出演していた。


 2012年から4年連続で出場していた【TEAM MINT】【Ultra・PRO】所属の渡辺 雄也のかねてからの悲願だった2日目進出を達成した日本勢はそのまま2日目も好調に勝ち進み、トップ8進出を果たした!

 先の【プロツアー『戦乱のゼンディカー』】でも瀧村 和幸・玉田 遼一の2名が1・2フィニッシュを飾ったこともあり、日本のプロマジックシーンは非常に実り多き1年だったと言えるだろう。

 また、今回のトップ8入りで楊 塑予もプロツアー権利を獲得した。次回のプロツアーはモダンで開催されるため、【ワールド・マジック・カップ2015東京予選】を突破した剛腕が再び見られるだろうか?



【ヴィンテージ神決定戦】

 また、2015年12月13日には弊店主催の【ヴィンテージ神決定戦】も開催された。122名もの参加者が集い、覇を競った今大会で見事優勝を収め「ヴィンテージ神」の座に輝いたのは森田 侑(東京)!




 ヴィンテージを代表するコンボデッキである《ドルイドの誓い》コンボ」を始めとして、ちょっと珍しい「黒単《暗黒の深部》+ヘルムヴォイド」レガシーの「オムニテル」に各種教示者を詰め合わせたデッキなど、トップ8のデッキリストを見渡すだけでも趣向を凝らしたデッキが多く見られた。

 ヴィンテージフォーマットで開催された国内のトーナメントとしては史上最大規模となった本イベント。カバレージページにて、動画やデッキテクなどなど多数のコンテンツを掲載しているので、ご一覧いただければ幸いである。



 主要な出来事はこのくらいだろうか。

 さて、それでは今大きな話題を呼んでいるカードたちを紹介しよう。



1. 《ラッパの一吹き》

 【GP神戸】でも優勝を果たし、現スタンダード環境を語る上では外せないアーキタイプの一つである「アタルカレッド」。

 《強大化》《ティムールの激闘》の一撃死コンボ、“点の突破力”によるプレッシャーを与えつつ、《ドラゴンの餌》《軍族童の突発》といったトークン生成カードと《アタルカの命令》“面の攻撃力”で攻める戦略も擁するデッキだ。

 その「アタルカレッド」が”面の攻撃力”に特化し、あまつさえ5枚以上の《アタルカの命令》を入れることができたとしたら?


ラッパの一吹き


 《ラッパの一吹き》は、そんな「ネクストレベル・アタルカレッド」(?)を実現するキーパーツとなりえるかもしれない。




MENTHORE30「アタルカレッド」
STANDARD PTQ #9126041 (8位)

7 《山》
1 《森》
2 《燃えがらの林間地》
4 《血染めのぬかるみ》
4 《樹木茂る山麓》
2 《吹きさらしの荒野》
2 《領事の鋳造所》

-土地(22)-

4 《僧院の速槍》
3 《鐘突きのズルゴ》
4 《ケラル砦の修道院長》
3 《飛行機械技師》
4 《ピア・ナラーとキラン・ナラー》

-クリーチャー(18)-
4 《焦熱の衝動》
2 《乱撃斬》
4 《ドラゴンの餌》
4 《アタルカの命令》
3 《軍族童の突発》
3 《ラッパの一吹き》

-呪文(20)-
4 《焙り焼き》
3 《搭載歩行機械》
3 《引き裂く流弾》
3 《弧状の稲妻》
2 《前哨地の包囲》

-サイドボード(15)-
hareruya



 先週末にはマジックオンライン(MO)上でも【MOPTQ】が開催され、盛り上がっていたことはご存知だろうか?

 《ラッパの一吹き》はそこで8位に入賞していた「アタルカレッド」で採用されていたのである。リストを見ると《ピア・ナラーとキラン・ナラー》《飛行機械技師》までもが採用されており、とにかくトークンを並べて攻めようという気概が伝わってくる。


ピア・ナラーとキラン・ナラー飛行機械技師領事の鋳造所


 「アタルカレッド」にとっては厳しい勝負を強いられる「ダークジェスカイ」に対してもトークン戦略は有効なため、無理なく弱点が克服されている。もちろん環境最大の仮想的である「アブザンアグロ」に対して飛行機械トークンによる空からの攻撃が有効なのは言うまでもないだろう。


強大化ティムールの激闘


 また、対戦相手からすればこのデッキリストに《強大化》《ティムールの激闘》が入っていないことは分からないというのもポイントだ。

 コンボを警戒するあまり迂闊にタップアウトすることもできず、《残忍な切断》《アブザンの魔除け》を構えることでトークンの対処に遅れた対戦相手の前に《ラッパの一吹き》を突きつけるのは得も言われぬ快感に違いない。「アタルカレッド」の新たな構成として、使う側も使われる側も意識したいデッキリストである。



2. 《僧院の導師》

 【過去にも】【2度にわたり】ご紹介させていただいたが、やはりこの活躍を見てはこのカードを取り上げないわけにはいかないだろう。


僧院の導師


 【ヴィンテージ神決定戦】の決勝戦は《僧院の導師》をフィーチャーしたデッキ、「Mentor」のミラーマッチとなった。

 デッキの挙動や構造などは【高橋優太のヴィンテージのすゝめ 前編】にて詳しく解説されている。ヴィンテージプレイヤーはもちろんのこと、すべてのマジックプレイヤーにご一読いただきたい。


ヨーグモスの意志Time VaultBazaar of Baghdad


 パワー9はもちろんのこと《ヨーグモスの意志》《Time Vault》《Bazaar of Baghdad》といった往年の凶悪カードが使用されるヴィンテージでは瞬殺コンボが横行しているイメージが先行していたが、意外にも決勝に残った2名が選んだデッキはフェアな動きをする《僧院の導師》デッキだ。やはり打ち消し・除去・ドロー・優秀なクリーチャーと強い要素が組み合わさったこのデッキの安定性に敵うものはないということなのだろうか。


 優勝者の森田 侑は【トップ8プロフィール】にて“プロキシありでもいいので試合数をこなす”ことがヴィンテージでの勝利に繋がると言っている。年末は友人たちとプロキシでヴィンテージデッキを持ち寄って遊んでみるのもおもしろそうだ。

 もちろん公式戦で《Ancestral Recall》を唱えたくなってきたなら実際にカードを購入する必要がある。その際はぜひとも【こちら】からご購入を!

 4人目の神・森田の挑戦者となるのは、あなたかもしれない……



3. 《死霧の猛禽》

 先週末のイベントを振り返るならば、トリを飾るのはやはり【ワールド・マジック・カップ2015】だろう。優勝を飾ったイタリアチームのスタンダードデッキは「アタルカレッド」と「エスパードラゴン」……


死霧の猛禽


 そして《死霧の猛禽》が4枚採用された「ティムール大変異」だった!



William Pizzi(イタリア・B席)「ティムール大変異」
ワールド・マジック・カップ2015 (優勝)

3 《森》
2 《島》
2 《山》
1 《燃えがらの林間地》
1 《大草原の川》
4 《吹きさらしの荒野》
4 《開拓地の野営地》
3 《伐採地の滝》
2 《シヴの浅瀬》
2 《ヤヴィマヤの沿岸》

-土地(24)-

4 《棲み家の防御者》
4 《爪鳴らしの神秘家》
2 《荒野の後継者》
4 《跳ねる混成体》
4 《死霧の猛禽》
4 《凶暴な拳刃》

-クリーチャー(22)-
4 《焦熱の衝動》
2 《軽蔑的な一撃》
2 《否認》
2 《ティムールの魔除け》
4 《集合した中隊》

-呪文(14)-
4 《光輝の炎》
2 《龍爪のスーラク》
2 《払拭》
2 《引き裂く流弾》
2 《氷固め》
1 《層雲の踊り手》
1 《軽蔑的な一撃》
1 《焙り焼き》

-サイドボード(15)-
hareruya



 【ワールド・マジック・カップ2015】はチーム戦であり、その構築ラウンド(スタンダード)では“3つのデッキを合わせて同名のカードは(基本土地を除いて)4枚まで”という厳しい制約の中での構築を強いられていた。

 特に現環境のマナベースはフェッチランドに依存している部分が大きく、土地が被らない組み合わせとして「アタルカレッド」「エスパードラゴン」「+α(『緑単エルドラージ』など)」といったデッキを選択する国が多かったようだ。【日本代表もデッキ選択には非常に苦労した】とのことである。


伐採地の滝焦熱の衝動


 ここでイタリア代表は完全オリジナルの「ティムール大変異」デッキを持ち込み、見事に優勝を収めた。予想されるトップメタデッキである「エスパーコントロール」に対しては除去や打消しに強い《死霧の猛禽》《伐採地の滝》が、「アタルカレッド」に対しては《焦熱の衝動》のような軽い単体除去や《否認》といった打ち消し呪文が有効だという判断だろう。

 実際にトップ8のシングルエリミネーションではマッチカウント3-0と負けなしで、イタリア優勝の影の立役者と言っても過言ではない。既存のアーキタイプからカードを被らせずに組めそうな3つのデッキを探すのではなく、予想される上位デッキに対して強いデッキを一から、しかも多くの制約がある中で構築したのはお見事である。


 さてこのデッキ、チーム戦の制約の中で組まれたものながら妥協の跡があまりないため、フェッチランドを《吹きさらしの荒野》から《樹木茂る山麓》に変更するだけでも十分に戦えそうである。全国のティムールファンの方は、このリストを参考にデッキを調整してみてもいいかもしれない。






 いかがだっただろうか?

 今週もまた多くのカードがプレイされ、注目され、議論を呼ぶのだろう。

 次回の記事も楽しみにしていただけたら幸いである。



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