こんにちは。らっしゅです。
先週末はレガシーのグランプリが開催されたため、大きなトーナメントというとMOで開催されたPTQくらいでした。この2週間の環境の姿は、あまり変わっていないという認識でいいでしょう。
今週の連載では、今週末に開催されるWMCQ大阪予選に向けてのデッキ選択について話していこうかと思います。手前味噌な話になってしまいますが、数年前に僕がWMCQを通過したときの記事を参考資料に、簡単なトーナメント戦略についておさらいしてみましょう。
現環境のメタゲームの登場人物については【Kenta Hirokiの記事】をご覧ください。
【お題】あなたがWMCQを優勝するためにするべきこと
世の中には様々なプライズ形式のトーナメントがありますが、WMCQはなかでも最も単純な部類にあたります。いわゆるWinner-take-allという形式で、優勝者への配分がほとんどを占めているものです。優勝者以外は敗者。とにかく優勝する確率を最大化することが求められる形式として知られています。
では、その確率を最大化するために何をすればいいのか?
ここではその答えに当たる2つの方法に注目してみます。【過去の連載】でも紹介したものです。この記事自体は3年も前のものですが、とても基本的なトーナメント戦略なので、現在でも通用すると思われます。
【WMCQ対策その1】使い慣れたデッキを選ぶこと
これは何よりも重要なことなので真っ先に紹介させてもらいます。おそらく掲載されて間もなくWMCQが開催されるため、準備期間が短いことを前提にしたお話です。
使い慣れたデッキを使う。練習してきたデッキを使う。
当然のように思われるかもしれませんが、メタゲームや流行に惑わされて、直前で使い慣れないデッキを手にしてしまう人は少なからずいます。練習してきたデッキに不安があったり、ふと魅力的に映ったデッキが気になったり。僕なんかは特にその気が強く、このような取捨選択では人一倍後悔してきました。
いくらでも合理的に聞こえる言い訳は用意できてしまうので、いっそ「使い慣れてないデッキは使わない」と禁止しましょう。それが結果的に良い選択だったとしても、これまでにそのデッキを練習してこなかった自分が悪いのです。
さて、特にWMCQでは使い慣れたデッキを使うべきなのですが、その理由についても簡単に触れましょう。それはWMCQが長丁場のトーナメントだからです。
優勝するためには決勝戦まで戦わなければならないので、スイスラウンド9回戦+SE3回戦と、合計12回戦を戦うことになります。これほど長丁場のトーナメントは数少なく、ましてや一日で12回戦を戦ったことのあるプレイヤーは結構少ないはずです。
このような長丁場の舞台では、目の前の対戦相手だけでなく、自分との勝負にも気をつけなければなりません。つまりはプレイミスとの戦いです。デッキ同士の相性は五分でも、こちらのプレイミスが起こる頻度が高ければ、それは不利なマッチアップに傾いてしまいます。
彌永 淳也、八十岡 翔太、齋藤 友晴、渡辺 雄也らのような強靭なメンタルがあれば話は別ですが、長丁場のトーナメントでは、多くのプレイヤーは疲れやプレッシャーから集中力を切らしてプレイミスを起こすものです。それが慣れていないデッキならば尚更でしょう。慣れていないからミスを起こし、慣れていないから疲れやすく、疲れによるミスの頻度も高まる。こんな二重苦にハマってしまいます。
最初から12回戦を戦いぬくつもりで使い慣れたデッキを選びましょう!
【WMCQ対策その2】Top8のデッキ分布を簡単に想定すること
「400人近くもいればなんでもいるし、なんとでも当たる。予想なんてするだけ無駄」というのはわからなくもない意見ですが、デッキ選択とはトーナメントに参加する前の意思決定になります。
なんでもいることは事実で、なんとでも当たる可能性があるのもまた事実ですが、そのすべての可能性が同じ確率かというと、そうではないはずです。何かしらに偏りがあり、その偏りを事前に予測することは優勝する可能性を高めてくれるのです。
ただ、「会場に緑白トークンが沢山いるから、12回戦全部緑白トークンだと仮定して……」というほど極端に進める必要はありません。それが的中したときには優勝する可能性は誰よりも高いかもしれませんが、そもそもその可能性は低いでしょう。
あくまでも簡単に。ざっとした想定をするに限りますが、Top8の姿を予想することは有意義なアプローチです。
ここまでさらっと読んで「あれ?」と思った方がいるかもしれません。会場のデッキ分布ではなく、Top8の分布なのか、と。もちろん会場の姿を想像することも大事なのですが、WMCQにおいてはTop8を想定することも同じくらい重要な要素になります。
その理由は、最終的に優勝することが目的だからです。9回戦の予選はあくまでも予選。Top8のプレーオフを3連勝できる可能性が少ないデッキ選択には、予選落ちに等しい結果が待っています。
ちなみに【この記事の当時】は、予選ラウンドと決勝ラウンドのデッキ分布が大きく異なることが予想されたため、予選と決勝のどちらにおいても満足に戦えるデッキ選択をする必要がありました。これもただの一例であり、時にはTop8が会場の分布のままということもあるでしょう。
いずれにしても。どんなデッキがなぜ勝ち進み、それをどうやって倒すのか。この問いに答えられるデッキ選択が求められます。
【実践例】同型対策をした「緑白トークン」
「使い慣れたデッキを選ぶ」「Top8のデッキ分布を簡単に想定する」以上の2点に気をつけて準備をしましょう!
と終わるのも物足りないので、”もし自分がWMCQに出場するならば”という想定で実践編としてデッキリストを決める過程を紹介します。まずは前提となる会場とTop8のデッキ分布を仮定するところから始めましょう。
■ 1. デッキ分布の仮定
~会場のデッキ分布~
30% 緑白トークン
30% バントカンパニー(人間型含む)
15% 黒系コントロール
10% 白系人間
10% アンチメタ(青赤系、《謎の石の儀式》など)
5% 緑系ミッドレンジ
~Top8のデッキ分布~
50% 緑白トークン
25% バントカンパニー
25% その他
30% 緑白トークン
30% バントカンパニー(人間型含む)
15% 黒系コントロール
10% 白系人間
10% アンチメタ(青赤系、《謎の石の儀式》など)
5% 緑系ミッドレンジ
~Top8のデッキ分布~
50% 緑白トークン
25% バントカンパニー
25% その他
大体こんな感じの模様を想定しました。もう少し参加人数が少なければ「緑白トークン」の割合を多く考えたいところでしたが、人数が増えるほどデッキタイプはバラけていく傾向があるので、30%程度で「バントカンパニー」と人気を分けると仮定しました。
Top8の分布については、主流の2つのデッキタイプが脅かされる可能性の少ない会場を想定したため、順当に「緑白トークン」と「バントカンパニー」が大半を占めると考えます。「バントカンパニー」と3人ずつかも知れませんが、そこは拘りなく、とりあえず「緑白トークン」と「バントカンパニー」が多く残るという想定です。
■ 2.デッキタイプの選択
さて、会場の簡単な想定を終えたので、次はデッキタイプを選択していきます。「緑白トークン」と「バントカンパニー」が多いという前提なので、それらに強いデッキタイプを選びたいところです。
ぱっと思い浮かぶのは「《謎の石の儀式》」でしょうか。
4 《森》 1 《島》 1 《平地》 1 《大草原の川》 4 《進化する未開地》 4 《戦場の鍛冶場》 4 《ラノワールの荒原》 4 《ヤヴィマヤの沿岸》 1 《コイロスの洞窟》 -土地 (24)- 4 《壌土のドライアド》 4 《エルフの幻想家》 4 《薄暮見の徴募兵》 4 《作り変えるもの》 4 《変位エルドラージ》 4 《反射魔道士》 2 《巨森の予見者、ニッサ》 2 《龍王アタルカ》 -クリーチャー (28)- |
4 《集合した中隊》 4 《謎の石の儀式》 -呪文 (8)- |
4 《森の代言者》 4 《現実を砕くもの》 4 《ドロモカの命令》 3 《否認》 -サイドボード (15)- |
「《龍王アタルカ》版」と「無限コンボ版」のどちらも「緑白トークン」と「バントカンパニー」に強いので、悪くない選択肢に見えます。ただ、会場の想定では2つ以外の残り40%のデッキには不利なのです。Top8まで残ることができれば活躍できそうですが、それまでの道中で躓くことも多いでしょう。今回の想定ではもっと良い選択がありそうです。
5 《森》 5 《沼》 1 《島》 4 《進化する未開地》 4 《ラノワールの荒原》 2 《ヤヴィマヤの沿岸》 4 《風切る泥沼》 1 《伐採地の滝》 -土地 (26)- 4 《森の代言者》 2 《棲み家の防御者》 4 《不屈の追跡者》 3 《巨森の予見者、ニッサ》 2 《ゲトの裏切り者、カリタス》 2 《龍王シルムガル》 -クリーチャー (17)- |
4 《究極の価格》 1 《闇の掌握》 1 《精神背信》 3 《破滅の道》 2 《衰滅》 4 《ニッサの誓い》 2 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》 -呪文 (17)- |
2 《ラムホルトの平和主義者》 2 《強迫》 2 《精神背信》 2 《衰滅》 2 《悪性の疫病》 1 《ゲトの裏切り者、カリタス》 1 《闇の掌握》 1 《苦い真理》 1 《破滅の道》 1 《シルムガルの命令》 -サイドボード (15)- |
「黒緑系ミッドレンジ」も優秀で惹かれる選択肢ですが、「《謎の石の儀式》」同様に、予選あるいはTop8の想定のどちらかに適しません。
となると、「緑白トークン」か「バントカンパニー」の2つが有力な選択肢となりそうです。
4 《森》 3 《平地》 1 《島》 1 《荒地》 4 《大草原の川》 3 《梢の眺望》 4 《進化する未開地》 4 《ヤヴィマヤの沿岸》 2 《伐採地の滝》 -土地 (26)- 4 《薄暮見の徴募兵》 4 《森の代言者》 4 《ヴリンの神童、ジェイス》 4 《反射魔道士》 4 《不屈の追跡者》 3 《変位エルドラージ》 2 《巨森の予見者、ニッサ》 -クリーチャー (25)- |
4 《ドロモカの命令》 4 《集合した中隊》 1 《オジュタイの命令》 -呪文 (9)- |
4 《ラムホルトの平和主義者》 4 《否認》 2 《石の宣告》 2 《オジュタイの命令》 2 《悲劇的な傲慢》 1 《巨森の予見者、ニッサ》 -サイドボード (15)- |
「緑白トークン」vs「バントカンパニー」。かつては「緑白トークン」が優勢だと言われていたマッチアップでしたが、今ではその差も埋まり、先手後手差によって勝敗が分かれる程度になりました。個人的にはまだ「緑白トークン」が優勢だと思っていますが、聞く人によって返ってくる答えが違うので、きっといい勝負なのでしょう。
同程度のシェアで同程度の相性となると、使用感や好みで決めてもいいのですが、今回はWMCQという長丁場のトーナメントであることを加味して「緑白トークン」を選ぶことにします。「バントカンパニー」のほうが複雑で引き分けやすく、またゲーム時間が長くて疲れやすいからです。
見た目は消去法とはいえ、そもそも「緑白トークン」は最高の選択肢の1つです。腕自慢は「バントカンパニー」を選ぶのも悪くないのですが、都合の悪い状況でもない限りは「緑白トークン」を選んでバチが当たることはありません。
■ 3.デッキリストの選択
さあ「緑白トークン」を使うことに決めましたが、ここから重要なのは、どのようなリストを使うかです。昨今のグランプリには必ず「緑白トークン」が顔を見せ、Raphael Levyのタッチ《炎呼び、チャンドラ》を筆頭に様々なリストが活躍してきました。
どれも一長一短で悩ましい……とついつい続けてしまいそうですが、「緑白トークン」が流行していると仮定するならば選ぶべきはこれしかありません。僕ならばこのリストで出場します。
9 《森》 7 《平地》 4 《梢の眺望》 4 《要塞化した村》 2 《ウェストヴェイルの修道院》 -土地 (26)- 4 《搭載歩行機械》 4 《森の代言者》 2 《棲み家の防御者》 4 《大天使アヴァシン》 -クリーチャー (14)- |
4 《ドロモカの命令》 2 《石の宣告》 4 《ニッサの誓い》 2 《進化の飛躍》 4 《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》 4 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 -呪文 (20)- |
3 《次元の激高》 2 《巨森の予見者、ニッサ》 2 《保護者、リンヴァーラ》 2 《荒野の確保》 2 《石の宣告》 2 《停滞の罠》 1 《悟った苦行者》 1 《棲み家の防御者》 -サイドボード (15)- |
Gerry Thompsonが制作したもので、メインボードから2枚の《進化の飛躍》を採用していることが特徴的なリストです。この工夫のおかげでミラーマッチを得意としています。
《反射魔道士》《変位エルドラージ》の2枚を見かける最近では、《搭載歩行機械》の価値を疑う声もありますが、ことミラーマッチとコントロール戦における《進化の飛躍》とのコンビネーションは最強です。
サイドボード後のコントロールプランの軸となる《保護者、リンヴァーラ》+《次元の激高》は、《龍王ドロモカ》+《悲劇的な傲慢》とどちらを採用するかは悩ましいところです。前者のほうが「バントカンパニー」に強く、後者は《龍王ドロモカ》の使い勝手の良さから幅広いマッチアップで役立ちます。
また、Gerry型は相手の想定するサイドプランよりも重く太く戦う(《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》をサイドアウトしたり)ことで差をつけていますが、より軽くすることで差をつける構成としてはこのようなものもあります。
8 《森》 7 《平地》 4 《梢の眺望》 4 《要塞化した村》 2 《ウェストヴェイルの修道院》 -土地 (25)- 4 《搭載歩行機械》 4 《森の代言者》 4 《ラムホルトの平和主義者》 2 《棲み家の防御者》 4 《大天使アヴァシン》 -クリーチャー (18)- |
2 《荒野の確保》 4 《ドロモカの命令》 2 《石の宣告》 1 《進化の飛躍》 4 《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》 4 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 -呪文 (17)- |
4 《往時の主教》 3 《悲劇的な傲慢》 3 《停滞の罠》 2 《石の宣告》 1 《優雅な鷺、シガルダ》 1 《荒野の確保》 1 《進化の飛躍》 -サイドボード (15)- |
十分に触れていないので使用候補には入りませんでしたが、メインボードの《石の宣告》の枚数などに若干の修正を加えたらぜひとも使いたいリストです。《石の宣告》と《ラムホルトの平和主義者》は流行のデッキのいずれにも強く、特に「バントカンパニー」が復権した現在は理に適っています。
【まとめ】「緑白トークン」対策が激化する週末
現環境で最高のデッキは間違いなく「緑白トークン」です。
WMCQで優勝するためには、きっと避けては通れない壁として立ちはだかることでしょう。自分も使う側に回るのか、それとも対策する立場を選ぶのか。いずれにしても「緑白トークン」への警戒は過去最大級となるはずです。
はたして今週末も「緑白トークン」が勝ち続けてしまうのか。それとも食い止めるデッキが登場するのか。
今週末のWMCQに参加される方の幸運を祈って!それでは、また来週お会いしましょう。
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