津村健志のWMCQ2016名古屋予選レポート

津村 健志


こんにちは!

昨シーズンは残念ながらシルバー・レベルでフィニッシュでした。【最後のプロツアー】はリミテッドが5勝1敗、スタンダードが2勝6敗とダメダメな成績で終わりました。珍しくリミテッドが良かっただけに、スタンダードのデッキ選択 (スゥルタイ・コントロール) が悔やまれます。※デッキリストは海の藻屑と化しました。

さて、そこからは新シーズンがスタートし、今季は【グランプリ・京都2016】【ワールド・マジック・カップ2016 名古屋予選】に参加してきました。

【グランプリ・京都2016】はチームメイトのおかげで11勝3敗の11位 (プロポイント3点!) に入賞。ほぼ毎日練習していただけに初日の構築ミスが悔やまれるものの、チームメイトさまさまの好成績です。



※画像は【MAGIC: THE GATHERING】より引用させていただきました。


続く【ワールド・マジック・カップ2016 名古屋予選】は、なんとなんと望外の優勝!




使用したデッキは、Luis Scott-Vargas (以下LSV) たちが【マジック:ザ・ギャザリング世界選手権2016】で使っていた「アブザン」を少し変更しただけのものです。

デッキリストに関してはあまり語ることもないので、今回のブログでは僕がモダンのデッキを選ぶ際に意識していることを中心に、おまけでデッキリストに変更を加えた理由などをお届けしたいと思います。



■ モダンのデッキを選ぶ際に意識していること

僕がモダンのデッキを選ぶ際に意識しているのは、下記3点です。


【A】できるだけアンフェアデッキ (=コンボデッキ) の中から最適なデッキを探す
【B】勝ちたいデッキを想定する
【C】流行っている除去呪文を把握する


順を追って見ていきましょう。



【A】できるだけアンフェアデッキ (=コンボデッキ) の中から最適なデッキを探す

いきなりフェアデッキの王道である「アブザン」と対極の話題で申し訳ありませんが、これはこれまでの自分の経験に基づいた結論です。過去に【アブザン】でモダンのプロツアーに参加した際に、どんなデッキでも存在しうるモダン環境で、いかに受けきることが難しいかを学びました。

そのため、基本的には対戦相手の攻勢を捌くのではなく、自分のやりたいことをやるアンフェアデッキの中から最適なものを探すように心がけています。そしてその際に重要になるのが、どの領域が空いているかです。

ご存知のようにモダンには、特定のデッキを1枚で封殺してしまうキラーカードが大量に存在します。


呪文滑り石のような静寂機を見た援軍虚空の力線


多くのプレイヤーがサイドボードを用意している状態では、いくらデッキが強かろうとも結果を残すのは難しいです。しかしながら、「皆の意識がどこに向いているか」さえ把握しておけば、それを逆手に取って最適なデッキ選択がしやすくなります。

例えば今のモダンで言えば、「墓地」という領域は過剰に意識されていますし、それが分かっていれば実際に練習を始める前から「発掘」や「グリセルシュート」などを選択肢から外すことができるというわけです。


漁る軟泥トーモッドの墓所大祖始の遺産虚無の呪文爆弾


【前回のドレッジ】のように、アンフェアデッキの中で良さそうなものが見つかればそこでデッキを探す作業は終了し、プレイングやサイドボーディングの精度を上げる工程に移ります。

もしもいいアンフェアデッキが見つからなかった場合には、もう一度アンフェアデッキを見直すか、続く【B】や【C】の項目をヒントにデッキを探していきます。



【B】勝ちたいデッキを想定する

次に重要だと考えているのは、勝ちたいデッキを想定することです。今回僕が想定していたデッキは、「感染」、「Super Crazy Zoo」、「バント・エルドラージ」、「ドレッジ」といったクリーチャー主体のデッキ、そして【世界選手権2016】での活躍が顕著だった「アブザン」です。

これら全てに相性が良いデッキは存在しないと思いますが、「勝ちたいデッキ」に対してはメインボードからしっかりと戦える構成にしておき、サイドボードはその他のデッキ対策や苦手なデッキに対して弱点を補完できるような形にできれば理想的です。

少し【A】の補足になりますが、アンフェアデッキは「勝ちたいデッキ」に対して構成やカード選択をあまり意識する必要がなく、速度で上回ればいいだけということが多く、強いデッキの種類が多いモダン環境においてはそれ自体が大きな強みになります。



【C】流行っている除去呪文を把握する

モダンの代表的な除去呪文と言えば《稲妻》《流刑への道》ですが、これらふたつのどちらが流行っているかをチェックするのは意外と重要だったりします。


稲妻流刑への道


この2種類の流行り廃りがどのようにデッキ選択に影響を及ぼすかと言いますと、例えば《流刑への道》の方が数が多そうな場合には僕は「Super Crazy Zoo」を使用候補から外しますし、サイドボードに少し重めのカードを入れることが肯定されるようになると思っています。今回最終的に使用した「アブザン」のリストだと、サイドボードの《太陽の勇者、エルズペス》がそれに該当します。


太陽の勇者、エルズペス


《稲妻》《流刑への道》のどちらが多いかを判断するのは一見難しそうに思えるかもしれませんが、実はとても簡単に判別する方法があります。それは「ジャンド」と「アブザン」のどちらが多いかです。

今回は【世界選手権2016】で「アブザン」が大流行していたこともあり、「ジャンド」よりも「アブザン」の方が多いと予想され、それに伴い環境で最多の除去は《流刑への道》だと分かります。



■ 実際のデッキ選択

上記3点、主に【A】を意識して最初に試したのは、【世界選手権2016】で4勝0敗を記録した「赤緑《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》」でした。



Oliver Tiu「赤緑《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》
世界選手権2016・モダン部門(4勝0敗)

7 《山》
3 《森》
4 《燃えがらの林間地》
2 《踏み鳴らされる地》
4 《樹木茂る山麓》
3 《吹きさらしの荒野》
4 《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》

-土地 (27)-

4 《桜族の長老》
4 《原始のタイタン》

-クリーチャー (8)-
2 《召喚士の契約》
4 《稲妻》
4 《探検》
2 《遥か見》
4 《明日への探索》
2 《神々の憤怒》
4 《風景の変容》
3 《カルニの心臓の探検》

-呪文 (25)-
3 《強情なベイロス》
3 《仕組まれた爆薬》
2 《虚空の杯》
2 《自然の要求》
2 《突然のショック》
1 《不屈の追跡者》
1 《古えの遺恨》
1 《神々の憤怒》

-サイドボード (15)-
hareruya



みんな墓地対策に夢中できっと土地はノーマークに違いない……もろた!もろたで工藤!!


……と思ったのも束の間、MOのリーグで2勝3敗×2で一瞬で解体の憂き目に(^_^;)

僕のプレイングにも問題があったのは間違いありませんが、今回「勝ちたいデッキ」に入れていた「感染」や「Super Crazy Zoo」といったデッキに対して相性が悪そうだったのもマイナス要素でした。

この時点で他に良いアンフェアデッキを思い付かなかったので、何もしないよりはといった感じで「アブザン」を試してみることに。



Luis Scott-Vargas「アブザン」
世界選手権2016・モダン部門(3勝1敗)

1 《沼》
1 《森》
1 《平地》
2 《草むした墓》
1 《神無き祭殿》
1 《寺院の庭》
4 《新緑の地下墓地》
3 《湿地の干潟》
3 《吹きさらしの荒野》
3 《乱脈な気孔》
2 《黄昏のぬかるみ》

-土地 (22)-

3 《貴族の教主》
4 《タルモゴイフ》
4 《残忍な剥ぎ取り》
2 《漁る軟泥》
1 《先頭に立つもの、アナフェンザ》

-クリーチャー (14)-
4 《流刑への道》
3 《コジレックの審問》
3 《思考囲い》
2 《突然の衰微》
1 《集団的蛮行》
4 《未練ある魂》
1 《残忍な切断》
2 《ミシュラのガラクタ》
4 《ヴェールのリリアナ》

-呪文 (24)-
3 《大爆発の魔道士》
2 《外科的摘出》
2 《石のような静寂》
2 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》
1 《仕組まれた爆薬》
1 《集団的蛮行》
1 《盲信的迫害》
1 《大渦の脈動》
1 《最後の望み、リリアナ》
1 《滅び》

-サイドボード (15)-
hareruya



すると非常に感触が良い!5勝0敗こそできませんでしたが、4勝1敗を繰り返す望外の結果に。

そして、「アブザン」が秀でていた点は、僕が想定していた「勝ちたいデッキ」の多くに勝利できたことです。

また、《残忍な剥ぎ取り》が加入したおかげで以前よりも手札破壊→クリーチャーの流れが強化されており、前回このデッキを使ったときよりも受け一辺倒のデッキではなくなったなという印象を受けました。

直前の生放送でも4勝1敗で、最終的に4勝1敗が5回、3勝2敗が1回だったので、思い切って「アブザン」と心中することにしました。



■ LSVのリストからの変更点

こちらが僕が最終的に使用したデッキです。



津村 健志「アブザン」
ワールド・マジック・カップ2016 名古屋予選

1 《沼》
1 《森》
1 《平地》
2 《草むした墓》
1 《神無き祭殿》
1 《寺院の庭》
4 《新緑の地下墓地》
3 《湿地の干潟》
3 《吹きさらしの荒野》
3 《乱脈な気孔》
2 《黄昏のぬかるみ》

-土地 (22)-

3 《貴族の教主》
4 《タルモゴイフ》
3 《漁る軟泥》
3 《残忍な剥ぎ取り》
1 《先頭に立つもの、アナフェンザ》

-クリーチャー (14)-
4 《流刑への道》
3 《コジレックの審問》
3 《思考囲い》
2 《突然の衰微》
1 《集団的蛮行》
4 《未練ある魂》
1 《残忍な切断》
2 《ミシュラのガラクタ》
4 《ヴェールのリリアナ》

-呪文 (24)-
3 《大爆発の魔道士》
2 《外科的摘出》
2 《石のような静寂》
2 《集団的蛮行》
1 《仕組まれた爆薬》
1 《大渦の脈動》
1 《最後の望み、リリアナ》
1 《滅び》
1 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》
1 《太陽の勇者、エルズペス》

-サイドボード (15)-
hareruya



元のリストが良かったので、ほとんど変更を加えることはありませんでしたが、リーグで負けた相手や苦手だと感じたデッキへの耐性を上げるべく数枚だけ変更したのでその理由を。



《残忍な剥ぎ取り》-1、《漁る軟泥》+1


残忍な剥ぎ取り漁る軟泥


これは《残忍な剥ぎ取り》のサイドアウト率が高かったことと、「ドレッジ」や「グリセルシュート」といったデッキに対して墓地対策がもう1枚ほしかったけどサイドボードの枠が取れなかったためです。

特に「ドレッジ」に対してはしっかりと勝ちきりたかったため、それ以外の「バーン」や「アブザン」などのマッチアップでも強い《漁る軟泥》は汎用性に長けた優秀な1枚でした。



《盲信的迫害》-1、《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》-1


盲信的迫害ゼンディカーの同盟者、ギデオン


《盲信的迫害》は「親和」デッキや《未練ある魂》の入ったデッキに対して効果的な1枚ですが、小粒なクリーチャーや《未練ある魂》対策は十分だと感じたので抜きました。

《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》は速攻で押し切りたい「スケープシフト」などのマッチアップからミラーマッチまで、幅広い相手に対して強いカードだったものの、今大会で多いと思ったミラーマッチでより効果覿面な《太陽の勇者、エルズペス》に枠を譲りました。



《集団的蛮行》+1、《太陽の勇者、エルズペス》+1


集団的蛮行


《集団的蛮行》は対「バーン」戦で最高のカードです。今回のリストでは、「バーン」と対戦する際に《思考囲い》を3枚とも残さざるをえない構成ですが、それでも問題ないと判断したのは《集団的蛮行》がそれほどまでに強力だったからにほかなりません。


思考囲い


基本的にみっつのモード全てを選べるような展開ではまず負けることはありませんし、「バーン」以外のマッチアップを見ても、スペルが多い「アドグレイス」や「スケープシフト」といったコンボデッキとのマッチアップで追加の《思考囲い》として重宝します。

これが《機を見た援軍》との決定的な違いで、「バーン」デッキ専用カードではなく、コンボデッキ対策をも兼ねる《集団的蛮行》は、今大会における影のMVPと言っていいかもしれません。もしも「バーン」が多いと読むのであれば、他のどのカードよりも優先して4枚目の《集団的蛮行》の投入を検討すべきだと思います。


太陽の勇者、エルズペス


《太陽の勇者、エルズペス》は対ミラーマッチの必殺兵器。これはMOでたまたま対戦したWilly Edelのアイディアを拝借したもので、残念ながら実際に自分で試す時間はありませんでした。しかしながら、一目見て《太陽の勇者、エルズペス》は非常に理に適った選択だと確信を持てたので、1枚だけ採用することに。

ミラーマッチを含む《流刑への道》の入ったデッキに対して、その重さがネックになることはありませんし、サイドボード後はほとんどのプレイヤーが手札破壊をサイドアウトするため、手札にくすぶっている間に対処されてしまうこともありません。

ミラーマッチ以外で《太陽の勇者、エルズペス》をサイドインするマッチは、これまた《流刑への道》の入った「バント・エルドラージ」ということで、6マナが用意できず唱えられないという展開はありませんでした。


流刑への道


《太陽の勇者、エルズペス》の制圧力は少し前のスタンダードをプレイされていた方ならご存知でしょうし、今後もミラーマッチが多い限りは採用し続けると思います。



■ 苦手なマッチアップ

「アブザン」はどんなデッキ相手にもバランス良く戦えるデッキではありますが、このデッキが苦手とするマッチアップで真っ先に思い付くのが「赤緑トロン」や「スケープシフト」といった土地絡みのコンボデッキです。


ウルザの塔溶鉄の尖峰、ヴァラクート


「スケープシフト」は《集団的蛮行》まで含めて対抗策がかなり多いので若干マシですが、《解放された者、カーン》《精霊龍、ウギン》と、《思考囲い》でしか落とせないキーカードが多い「赤緑トロン」は本当に最悪のマッチアップです。


解放された者、カーン精霊龍、ウギン


もしも「赤緑トロン」を意識するのであれば、《滅び》を抜いて4枚目の《大爆発の魔道士》を用意した方がいいと思います。


大爆発の魔道士


また、繰り返しになりますが「バーン」も《集団的蛮行》頼みの力技で乗り切っているので、不安があるのなら4枚目の《集団的蛮行》の採用を検討しましょう。



■ ~サイドボード関連のTIPS~

・コンボデッキ相手に良くサイドアウトするのは《漁る軟泥》《未練ある魂》です。《未練ある魂》をサイドアウトしない例外は《引き裂かれし永劫、エムラクール》の入ったデッキで、「グリセルシュート」などがそれにあたります。


未練ある魂引き裂かれし永劫、エムラクール


《未練ある魂》があれば《引き裂かれし永劫、エムラクール》の「滅殺6」にも耐えることができますし、《引き裂かれし永劫、エムラクール》へのブロッカーも確保できます。僕は「グリセルシュート」との対戦は、2~3ターン目に決められたらしょうがないとある程度割り切っていますが、その代わりに少しでもゲームが長引いた場合には絶対に勝てるように《未練ある魂》を残すようにしています。


・ミラーマッチや対「ジャンド」戦では、後半のトップデッキ合戦で弱い手札破壊を全てサイドアウトするのが定石とされていますが、僕は《思考囲い》を2枚以上は残すようにしています。理由は下記の3点です。


1.「プレインズウォーカー」に対するすばらしい解答であること
2.《残忍な剥ぎ取り》の加入により、序盤の攻防の重要性が上がったこと
3.中盤以降でも除去呪文と1対1になること


3は昔から変わっていないので、重要なのは1と2です。ミラーマッチは「プレインズウォーカー」を多用する戦略が一般的になってきているので、それに対処できるカードの総数は大切ですし、《残忍な剥ぎ取り》を巡る序盤の攻防においても手札破壊は重宝します。

もしも現状のリストのまま手札破壊を全てサイドアウトするならば、代わりに入るのは《大爆発の魔道士》になりますが、「ミシュラランド」を壊さない限りあまり大きな仕事をしない《大爆発の魔道士》よりも《思考囲い》の方が遥かに重要だと考えています。



■ 「ワールド・マジック・カップ2016 名古屋予選」簡易レポート

ラウンド 対戦デッキ 勝敗
Round 1BYE
Round 2バーン
(井川 良彦さん)
 ×〇〇
Round 3バント・エルドラージ 〇〇
Round 4赤緑トロン ××
Round 5赤緑《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》 〇〇
Round 6アブザン ×〇〇
Round 7バーン ×〇〇
Round 8バント・エルドラージ 〇〇


7勝1敗の1位通過で決勝ラウンドへ!

「赤緑トロン」→「赤緑《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》」との連戦で死を覚悟しましたが、ドローが良くてなんとか勝利。

日本代表まで残りみっつ!


ラウンド 対戦デッキ 勝敗
準々決勝アブザン ×〇〇
準決勝感染 〇〇
決勝グリセルシュート
(山本 賢太郎さん)
 〇〇


優勝!!




ミスは多かったものの、1日を通してマリガンが少なく終始運が良かったです。

【昨年のワールド・マジック・カップ2015】では、本当にチームメイトに迷惑をかけてばかりだったので、今年こそはチームに貢献できるよう精一杯がんばってきます!

それとお祝いの言葉をいただいたみなさまはありがとうございました。みなさまからの「いいね」やお祝いの言葉は何よりも励みになります。

それでは、また次回のブログで!!


コガモ



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