コマンダー塚本の統率者戦最前線! vol.16 -ユニットシフト構想-

塚本 樹詩



 こんばんは、塚本です。

 『カラデシュ』が発売されてからというもの、僕の心をつかんで離さないカードが1枚あります。僕はカードプールの広いフォーマットが好きで、使えるカードの種類が少ないスタンダードは苦手です。そんな僕ですらスタンダードのデッキを組んでしまうほどに魅了されています。

 あらゆるフォーマットでの可能性を追求するために、日夜を問わず様々なデッキを夢想する毎日。「とにかく大好き!」と感情が止まらないカードが今回の主役です。


霊気池の驚異


 《霊気池の驚異》

 コンボ好きにはたまらない1枚ですね!今回はさっそくこの新しいおもちゃを使って遊ぼうと思います。



◆ 座礁

 最初はワクワクしながら「どんなデッキを作ろうか」と夢いっぱいの航路を考えていたのですが、デッキ作成に取り掛かると、いきなり暗礁に乗り上げてしまいました。このカードを目一杯楽しむためには、3つのステップを踏まなければいけないことに気が付いたからです。


ステップ1.エネルギーの確保


霊気との調和抽出機構


 『カラデシュ』から新しいリソースとして登場した「エネルギー・カウンター」。このカウンターを6つ貯めなければ《霊気池の驚異》の能力は起動できません。統率者戦ではこれがとても難しいのです。

 他の構築フォーマットならばエネルギーを確保する質のいいカードを沢山採用できますが、1種類1枚しか使えない統率者戦では選り好みをする余裕はなく、ある程度のカードパワーは妥協してでも採用しないといけません。エネルギーを得るカードを増やすために多色化も避けられないでしょう。


テゼレットの計略ゲスの玉座


 そこで過去のギミックから補助として機能するものを探しました。間接的にエネルギー・カウンターを確保するカードの枚数を増やすためです。幸い「増殖」という相性のいい能力を発見できましたが、「増殖」をもつカードの種類が少なかったことは誤算でした。つまり、更なるエネルギーを得るためには、デッキにもう一工夫を加えないと機能しないようなのです。そこでドローやサーチ呪文に頼ることにして、デッキに青を含めることが確定しました。


ステップ2.キーカードが少ない

 《霊気池の驚異》を主役にするのは間違いないのですが、勝敗を決定付けるカードがデッキにたった1枚しか入っていないことは不安です。その1枚を対処されるとリカバリが難しく、相手の対応も簡単になります。なるべくなら《霊気池の驚異》と同じ方向性をもつ追加の勝ち手段を探さなければいけませんでした。


精神の願望予想外の結果


 デッキの重くて強いカードのコストを踏み倒そう!そんなコンセプトのカードを探してみたところ、《霊気池の驚異》と同じくらい楽しそうなカードを2種類も見つけることができました。

 《精神の願望》は「ストーム」の数を稼げば稼ぐほど効力を増します。《霊気池の驚異》《精神の願望》。この2枚をキーカードにしたデッキを作ろうとカードを並べてみると100枚近くの候補が見つかりました。これで一気にデッキの方向性が固まってきましたよ!

 また、《精神の願望》を探す過程で見つけた《予想外の結果》【まつがん氏も認める由緒正しきおもちゃ】なので、デッキを彩るアイテムとしてぜひとも採用したいところです。何が起こるかは誰にも予想できないカードなので、カウンター呪文を握った対戦相手はそれを打ち消すべきか迷うことでしょう。ジャブとしては最適な1枚です。


ステップ3.”当たり”の水準

 統率者戦は多人数で行うため、性質上「この1枚のカードを唱えたら勝ち!」という必勝パターンはなかなかありません。かといって、2枚コンボを目指すならば《霊気池の驚異》を2回以上起動しなければいけなくなりますし、《精神の願望》からその2枚が同時にヒットすることも、いささか難易度の高いハードルです。

 そこで「唱えたら勝ち!」な必殺の1枚を探すのではなく、じわじわと有利を作り上げるようなカードを探し出して採用する方針にしました。


約束された終末、エムラクール無限に廻るもの、ウラモグ


 《霊気池の驚異》《精神の願望》《予想外の結果》。これらキーカードは、どれも戦場に出すのではなく“プレイする”ことができます。つまり各種エルドラージの持つ潜在能力をフルに使えるのです。そこで、基本的にはこれらエルドラージたちを“当たり”として、なるべく多く採用することにしました。

 こうして3つのステップすべてを満たしたので、デッキに入りそうなカードを見繕いつつ、さっそくデッキの雛型を作っていきましょう!



◆ エネルギー!そして「ストーム」!

 《霊気池の驚異》を元にエネルギー・カウンター生み出すカードを選出していくわけですが、上記の通り、選り好みするほどの数が存在するわけではないので、比較的エネルギー・カウンターを生み出せるカードの多い色である青・赤・緑を中心に「増殖」を持った呪文と一緒に選んでいきます。

 そうして選ばれたカードたちがコレ!


クリーチャー: 17


亢進する亀理論霊気学者牙長獣の仔シャイラ専有地の賢者
導路の召使い亢進する地虫かき鳴らし鳥通電の喧嘩屋
改革派の霊気砲手獣性を築く者崇高な飛行士つむじ風の巨匠
静電気式打撃体ジャンジーの歩哨逆毛ハイドラ襲拳会の扉破り
気ままな芸術家



インスタント、ソーサリー: 6


霊気との調和蓄霊稲妻電位の負荷
天才の片鱗テゼレットの計略慮外な押収



アーティファクト: 8


伝染病の留め金抽出機構ガラス吹き工の組細工ゲスの玉座
織木師の組細工行き詰まりの罠電招の塔霊気池の驚異



エンチャント: 2


革新の時代容赦無い潮流


 現時点で33枚のカードが選出され、デッキの約1/3の枠が埋まったことになります。そして次に《精神の願望》《予想外の結果》を軸としたカードの選出に移ります。


クリーチャー: 8


永遠の証人歓楽の神、ゼナゴス大渦の放浪者真実の解体者、コジレック
絶え間ない飢餓、ウラモグ無限に廻るもの、ウラモグ荒廃鋼の巨像約束された終末、エムラクール



インスタント、ソーサリー: 16


ギタクシア派の調査捨て身の儀式魔力変発熱の儀式
断絶大あわての捜索煮えたぎる歌炎の中の過去
転換予想外の結果袖の下記憶の点火
時間の亀裂精神の願望時のらせん火山の目覚め



アーティファクト: 7


水蓮の花びら魔力の墓所五元のプリズム魔力の櫃
師範の占い独楽太陽の指輪通電式キー



エンチャント: 2


花の絨毯騙し討ち


 こうして同じように《精神の願望》を始めとした「ストーム」系のパーツ+《霊気池の驚異》と相性の良いカード33枚が選出されました。後は適当な土地33枚と統率者1枚を選べばデッキは完成です!!



◆ ユニットごとの構想

 こうしてデッキの雛型が作成できたので、テストプレイとして一人回しを繰り返してデッキの感触を確かめた結果分かったことがあります。


良い点
・当たりを引いたときに気持ちいい!
・エネルギーは確保できるし、新しいカードをたくさん使えて嬉しい。

悪い点
・エネルギーを生むカードが「ストーム」を稼ぐ役割にならない。
《霊気池の驚異》自身のエネルギーを生む効果が機能しにくい。
・ふたつのギミックを足しているので、ドローカードなどの潤滑油的な部分が少なくデッキが回りにくい。


 良い点として感じているふたつが飽きやすい要素で、悪い点はデッキ全体の統一感がなくシナジーが薄いということですね。エネルギーのパーツと「ストーム」のパーツは別々に主役として選ぶならいいので、どちらかの33枚を主役にするほうがよさそう。なので今回は《霊気池の驚異》を主役として、それを補助する残りの33枚を選び直すことにしました!!


霊気池の驚異


 しかし、「ストーム」部分の33枚をそのまま残しておくことで、すぐに別のデッキに組み替えられるという術を発見!!これを今後『ユニットシフト構造』として自分の中で定着させようと思いました!

 要は……


・ユニットA: 約33枚
土地及びマナソース。

・ユニットB: 約33枚
デッキの核となるコンセプティブなカード群。

・ユニットC: 約33枚
Bパーツのサポートとなるカード群。追加のマナソースやドロー、サーチ呪文。そして相手のへの妨害、及び相手の妨害対策のカウンターやパーマネント破壊呪文。


 となるわけです。枚数は前後しますし、極端にコンボカードに依存する場合はこの形態をとれなくなりますが、全体のシナジーを活かして戦うようなデッキではユニットの交換によってデッキが別の顔を見せるようになる面白い発想だと感じました。

 今回はエネルギー・カウンターが主体で、かつクリーチャーを多用するのでユニットCにはクリーチャーでの戦闘に影響を及ぼすアーティファクトを中心に選出してみました。その結果がこちら!


ユニットC: 33枚


クリーチャー: 17


ゴブリンの溶接工幻影の像詐欺師の総督やっかい児
再利用の賢者発明の領事、パディームファイレクシアの変形者鏡割りのキキジキ
龍爪のスーラク新緑の機械巨人業火のタイタンマイアの戦闘球
パリンクロン孔蹄のビヒモス大渦の放浪者州民を滅ぼすもの
荒廃鋼の巨像



インスタント、ソーサリー: 7


稲妻作り直しTransmute Artifact圧倒する暴走
裂け目の突破サヒーリの芸術歯と爪



アーティファクト: 5


稲妻のすね当て梅澤の十手火と氷の剣
戦争と平和の剣エルドラージの碑



エンチャント: 2


ティムールの隆盛欠片の双子



プレインズウォーカー: 2


サヒーリ・ライ野生語りのガラク


 ユニットBが真新しいカードばかりということもあってか、ユニットCでも意識して『カラデシュ』のカードを採用しました!特に《サヒーリ・ライ》の「-2」の能力は強力で、スタンダードではお馴染み《新緑の機械巨人》をコピーするだけで大量打点を与えることができる爽快感の強いコンボに倣って、《マイアの戦闘球》を始めとしたコピーすると楽しいクリーチャーも沢山採用。


サヒーリ・ライマイアの戦闘球


 また、ユニットB、Cともにほとんどのカードがモダンなので、これから統率者戦を始めたいという人にはぴったりです!無理にこのリストに合わせずとも、まずは自分の好きなカードを入れて遊んでみることがそのまま楽しさに繋がるのでおススメです!



◆ 最後に統率者とユニットAは?

 結論から言えば青赤緑の伝説のクリーチャーであれば何でも大丈夫!ただ《大渦の放浪者》だけは《霊気池の驚異》でめくれる当たりとしてライブラリーの中に居てほしいので、統率者には設定したくないですね。しかし、すでにデッキの中に3色の伝説のクリーチャーが多数採用されているので《二つ反射のリクー》を統率者に当てるのが無難かもしれません。そこそこシナジーありますし。


二つ反射のリクー


 そして最後に土地やマナソース群であるユニットAですが、ここは自分の手持ちのカードに合わせて青赤緑が難なく出る構成なら大丈夫なので、統率者における最低限押さえておきたいポイントだけ伝えておきます。

 毎回デッキリストで土地の欄もしっかり埋めていますが、特に意識するのは墓地の枚数を参照する「スレッショルド」や「探査」といった呪文、そして「上陸」のような土地と組み合わせてシナジーを生むようなカードが多い場合は《溢れかえる岸辺》を始めとしたフェッチランドは入れられるだけ入れておきたいですね。今回は《霊気池の驚異》《獣性を築く者》がエネルギー・カウンターを供給しやすいようになるべく多く採用したほうが望ましいです。


溢れかえる岸辺霊気池の驚異獣性を築く者


 そして対戦相手がデッキの構造を攻めてくる場合がありますので基本地形を入れ忘れてはいけません。一番効果的でポピュラーな対策カードは《血染めの月》なので、今回のデッキでは《山》の枚数は1枚でいいでしょう。《島》《森》に関してはダブルシンボルの呪文を唱える際や、同じ色の呪文で2アクション取れるように最低2枚は欲しいですね。あくまで最低限の枚数なだけで、無理にそれ以外を特殊地形で埋める必要もないので、迷ったときはとりあえず基本土地の枚数を増やすのが吉です!

 加えて、自分のデッキの色の数も採用する土地に影響がでます。3色以上でしたら《真鍮の都》のような色がたくさん出せるような土地を積極的に採用し、2色以下のデッキでしたら《ケッシグの狼の地》のような色マナは出せなくとも別の効果が付いている土地を積極的に採用するようにしましょう。そうすることによって色事故やマナフラット時の解決策となります。


真鍮の都ケッシグの狼の地


 最後の要素は特定のデッキで効果を発揮しそうな土地についてです。今回は「増殖」という能力を使うので、《菌類の到達地》のようなカウンターを貯めた分のマナを出す能力の土地を入れると効果が倍増します。クリーチャーのパワーが大きくなることや大量のダメージを与えられることに着目して《苔汁の橋》《背骨岩の小山》を入れるのもいいでしょう。このようにデッキに合ったカードを見つけることがデッキ全体のパワーアップに繋がるので、色マナを整えること以外も意識しましょう。


菌類の到達地苔汁の橋背骨岩の小山


 こうしてユニットごとにデッキを組むことにより「ユニットCの改善が必要だな……」「ついにユニットAをタイプ2にさせる相手が現れたか……!」といった中二心を昂らせる台詞を呟けるチャンスができたので、積極的に使っていきたいと思います。

 今回は大体こんな感じでーす。続く。



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