プロツアー『霊気紛争』現地レポート Day1

晴れる屋メディアチーム

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 2日目のレポートは【こちら】

 プロツアー『霊気紛争』、ついに開幕。

会場風景
会場はアイルランドの首都・ダブリンの歴史的展示場、ロイヤル・ダブリン・ソサエティ(通称RDS)。
ここで各国から集った425名のプロプレイヤーたちが火花を散らす。

 この日に至るまでにプロたちは何を積み重ね――そして、辿り着いたダブリンの地で、どのように世界と戦うのか?

 晴れる屋メディアでは、今回も特派員・渡辺 和樹によるプロツアー現地レポートを、本記事内で随時更新していきます!




注目のプレイヤーたち

By Hiroshi Okubo

 各国のプロたちがその腕を競い合う世界大会、それがプロツアーです。もちろんHareruya Prosからも多数のプレイヤーが今大会に足を運んでいますが、中でも特に注目の3名をご紹介しましょう!

左から八十岡 翔太(日本)、ピエール・ダジョン(フランス)、ジェレミー・デザーニ(フランス)
※画像は【マジック:ザ・ギャザリング日本語公式ウェブサイト】より引用しました。

 言わずと知れたマジック・プロツアー殿堂顕彰者にして【プロツアー『カラデシュ』】の覇者、八十岡 翔太は今大会でも最注目プレイヤーの1人です。同様に、【プロツアー『カラデシュ』】でトップ8に入賞したピエール・ダジョンからも目が離せません。

 そしてジェレミー・デザーニはアイルランド・ダブリンで開催された【プロツアー『テーロス』】の優勝者です。

 本人のTwitter上では「私はできる限り戦い続け、もし可能なら再び優勝することを夢見ています」と今大会への意気込みを語っていました。頑張ってほしいですね。

 また、彼らは今回から開始されるプロツアーの新たな試み「プロツアー・チームシリーズ」にも参加しています。

 チームシリーズについてと、Hareruya Prosメンバーの所属チームについてはこちらの記事でご覧になれます。プロツアーをより楽しむために、ぜひチェックしてみてください!



新たな刺客たち

By Hiroshi Okubo

 さきほどご紹介した3名がプロツアーのスター……いわば“ボス”だとしたら、今回のプロツアーの挑戦者チャレンジャーは彼らでしょう。

左から原根 健太、平見 友徳、木原 惇希
※画像は【マジック:ザ・ギャザリング日本語公式ウェブサイト】より引用しました。

 昨年の【グランプリ・京都2016】でトップ4に進出し、今回のプロツアー『霊気紛争』への出場権利を獲得した原根 健太平見 友徳、そして【グランプリ・千葉2016】で準優勝を果たした木原 惇希の3名。プロへの階段を駆け上がる彼らの奮闘にも注目です。

 また、平見選手と木原選手はこのたび新グループHareruya Hopesとして晴れる屋からスポンサードを受けることが決まりました! Hopes加入後初となる大舞台、ぜひ良い結果を残してほしいものです。



初日のスタンダード環境

By Hiroshi Okubo

 今日までにSCGなどでは「緑黒アグロ」、「サヒーリ・コンボ」、あるいは《キランの真意号》《霊気圏の収集艇》といった新たな機体をフィーチャーしたビートダウン系のデッキが多く活躍していました。

巻きつき蛇サヒーリ・ライキランの真意号

 これらのデッキはプロたちの間でも頭一つ抜けて強いという評価です。特に「サヒーリ・コンボ」は今大会の本命になるだろうという共通見解があるようで、活躍に期待されます。

 プロツアー前に活躍していたスタンダードのデッキについては、晴れる屋メディアでも【「スタンダード・デッキ・ピックアップ」】にてご紹介させていただきました。はたしてどんなデッキが勝ち残るのか、今から楽しみですね!



1stドラフト ピックの様子

By Kazuki Watanabe

 ついに始まった、プロツアー『霊気紛争』。

 まずは1stドラフト。ここではピックの様子をお届けしよう。

1stドラフト ピック風景1

 強豪の集う、プロツアーではドラフトで隣り合うメンバーも豪華。プロツアー『カラデシュ』の覇者、八十岡 翔太の隣には、Samuel Black。

1stドラフト ピック風景2

 こちらは齋藤 友晴とAndrea Mengucci。

1stドラフト ピック風景3

 原根 健太の横には、前回ダブリンで開催されたプロツアー『テーロス』の覇者、Jeremy Dezani。

1stドラフト ピック風景4

 Hareruya Hopesでその抱負を語った、木原 惇希が初めてのプロツアーに挑む。

1stドラフト ピック風景5

 Hareruyaのユニフォームを身にまとう、Petr Sochurek。

 フィーチャーエリアでは、殿堂プレイヤー・中村 修平がピックをしている。

 現地の時刻は9:45。ピックが終わり、構築が始まった。

 この環境のドラフトの概観は、ぜひ【晴れるーむ合宿『霊気紛争』カバレージ】をお読みいただきたい。その後も研鑽を積んだプロプレイヤーがどのような戦いを魅せるのか。目が離せない。



ジェレミー・デザーニが語る『霊気紛争』ドラフトの鍵

By Kazuki Watanabe

 会場内の写真を撮影しながら1ラウンドの様子を眺めていると、早々と勝利を決めたJeremy Dezaniが声を掛けてくれた。

 前回ダブリンで行われたプロツアー『テーロス』の覇者。今回も意気込みは十分だ。

 まだ1stドラフトは始まったばかり(インタビュー時点)であり、彼がピックしたカード、そしてデッキを公開することはできない。しかし「どのようにこの環境を捉えているのか」を聞いてみることにしよう。


--「まずは勝利おめでとう。早速だけど、『霊気紛争』のドラフトについて考えを聞かせてもらえる?」

Jeremy「ありがとう。そうだね、『霊気紛争』のカードパワーは比較的弱め、という印象だよ。メカニズムも……かなり難しいね」

--「新たなメカニズム、『即席』『紛争』はやっぱり難しい?」

異端の飛行機械職人改革派の結集者

Jeremy「そのメカニズムで特化したときの爆発力は確かに強い。もちろん、ドラフトでそれができれば、という話だけど。普通にピックしていても、有効活用は難しい。ちょっとしたプレゼント、くらいに考えるのがベストだね」

--「なるほど。じゃあ、この環境で勝つ鍵は何だと思う?」

Jeremy「あまり積極的な考え方ではないと思うけど、『カラデシュ』をどう活かせるかが鍵だと思う。コモンを始めとして、カードパワーが段違いだ」

改革派の貨物車

--「3パック目だから『カラデシュ』に依存してドラフトを進めることは難しそうだけど……?」

Jeremy「そのとおりだね。依存したドラフトは消極的すぎる。でも、アーティファクトならば色の制限はないし、コモンも十分に強いから選択肢はあるはずだよ。依存するのではなく、『カラデシュ』のカードを無駄にしないようなドラフトが鍵、と言うべきかな」

--「それは分かりやすいね!」

Jeremy「これまで『カラデシュ』3パックでやっていたドラフトとは、かなり重要度が違うからね。しっかりと3パック目まで活かし切るように意識すると、デッキが引き締まると思う」

--「ありがとう。ちなみに、『霊気紛争』のトップコモンはなんだと思う?」

Jeremy「そうだな……個人的には、《霊気急襲者》が好きだよ。絶対に逃してはいけない1枚だ。コモンとは思えないくらい強力で、主戦力となってくれる」

霊気急襲者

--「中村 修平と同じだね。彼は『これ1枚でコンボになる』と言ってたよ」

Jeremy「良い言葉だね、たしかに1枚でコンボだ。この1枚があるおかげで青のデッキは成り立つようなものだから」

--「では、一番好きな色の組み合わせは?」

Jeremy「色の組み合わせで言えば、青緑青白が好きだよ。練習では、本当に様々なデッキを試したんだ。その中でも、この2つはかなり感触が良かった。《霊気急襲者》に限らず、青が一番好きで、緑と白も感触が良い。赤と黒も挑戦したけど、僕には合わなかったね。でも、《霊気追跡者》《霊気毒殺者》は強いカードだから、決して悪いわけじゃない。好みの問題だね」

霊気追跡者霊気毒殺者

--「なるほど。ありがとう。そろそろ周りのプレイヤーも席を立ち始めているから、最後に一つだけ。JeremyはチームシリーズではHareruyaの一員だよね?」

Jeremy「そうだよ。メンバー全員、世界を舞台に戦い続けている。海外のチームにも負けないくらい豪華なメンバーだ」

--「たしかにそうだね。じゃあ、君たちの良きライバルとなる”最強のチーム”はどこだと思う?」

Jeremy「それはもちろん、“MUSASHI”だよ。メンバーが本当に豪華だ! 勢いもあるし、トップ8に何人入っていてもおかしくないくらいだよ。もちろん、負けるつもりはないけどね」

写真左から渡辺/行弘/市川/山本/八十岡/覚前
※画像は【Team Cyagems】より引用しました。

 そう笑いながら答えたJeremyに「次のラウンドも頑張ってね!」と伝えると、こんな答えが返ってきた。

Jeremy「そうだ、最近日本語を覚えたんだよ。こういうときは『ガンバリマス!』、で良いのかな?」

 もちろん、それで大丈夫。“Bon courage á toi(頑張れ)”!!



なぜ八十岡はテゼレットを使わなかったのか

By Kazuki Watanabe

 2017年2月3日、世界に衝撃が走った。

 「3つの発表」と題された、八十岡のブログをお読みになっただろうか?

 読んでない、という方は今すぐ上記のリンクをクリックし、その衝撃を受け止めてから戻ってきてほしい。

 そう、「八十岡 翔太、テゼレットとの決別」。

策謀家テゼレット

 「そんなに大げさに書くこと?」という気もするが、この10時間で360RTを叩き出していることを見ると、どうやら世界はこっち側らしい。

 記事の中で「いろいろ試しましたが全然無理でした」とのことだったが、ここは全国のテゼレットファンを、そして八十岡ファンを代表して、アイルランドの地で聞いてみるしかあるまい。


--「八十岡さん、どうしてテゼレットを使わないんですか?」

八十岡単純に弱いんだよね

--「これ以上ない、真っ直ぐな理由ですね……」

八十岡「ブログにも書いたとおり、本当にいろいろと試したんだ。だけどダメだったね。八方手を尽くした、と思ってるよ」

--「改めて聞くのも躊躇するのですが、どう弱いんですか?」

八十岡「まず、盤面に干渉ができないプレインズウォーカーはテゼレットに限らず基本的に弱いんだ。そして、《策謀家テゼレット》を使うためには、周りを『テゼレットを活かす&守るカード』で固めなきゃいけないんだよ」

鎮定工作機歩行バリスタ行き詰まりの罠

--「たしかに、アーティファクトは多数必要ですよね」

八十岡「ところが、環境のアーティファクトはそこまで強くない。少なくとも、テゼレットを活かす方向で使えるアーティファクトは限られているね。そもそも、守らなきゃいけないプレインズウォーカー、という時点で厳しいよ」

--「なるほど。では、《ボーラスの工作員、テゼレット》“10点”だとすると、《策謀家テゼレット》は何点ですか?」

ボーラスの工作員、テゼレット策謀家テゼレット

八十岡2点

--「に、2点!? そんなに違うんですか?」

八十岡「全然違うね。別人かと思うくらいだよ。《ボーラスの工作員、テゼレット》が強すぎたのもあると思うんだけど、能力の似ている別物だよね」

--「は、はぁ……」

八十岡「もちろん、『テゼレットのために、テゼレットを活かすために』と組んだデッキは、山ほどある。ナベ(渡辺 雄也)を相手にいろいろと挑戦した結果だからね。申し訳ないけど、現在の環境では使えないよ」

--「ちなみに、逆にどのような環境であればテゼレットが使われるようになると思いますか?」

八十岡「うーん……カード自体の問題だからね。環境の変化というよりは、、たとえば軽くて強いアーティファクトが大量に出てきたら、とかカードプールが変わるレベルで変化があればもしかするかもしれないね」

仕組まれた爆薬

--「《策謀家テゼレット》の前途は多難、ということですかね」

八十岡「まぁ、『霊気紛争』の《闇の暗示》みたいに、エキスパンションを跨いだ何かに期待だね。いずれにせよ、覚悟と愛が必要になるとは思うよ。今回のプロツアーでも使用してるプレイヤーはいるみたいだけどね」


 ここで、このラウンドの制限時間が終わったアナウンスが流れた。

 テゼレットとの決別に至るまでに、八十岡は無数のデッキを構築し、挑戦したという。

 先述のブログで紹介されていたサンプルデッキは、言わば八十岡の作り上げた「テゼレットを守り、活かすデッキ」である。全国のテゼレットファン、そして八十岡ファンは、このデッキを回してみよう。そこには、プロツアーチャンプ、“世界のヤソ”の思考と愛が詰まっているのだから。



メタゲームブレイクダウン雑感

By Atsushi Ito

 プロツアー『霊気紛争』初日はドラフトラウンド3回戦を終え、いよいよスタンダードラウンド5回戦が開始。そして英語版のカバレージでは、毎プロツアー恒例のスタンダードラウンドの【メタゲームブレイクダウン】が公開された。

 プロツアーのスタンダードは、蓋を開けてみるまでどんなデッキが最多勢力になるのか全くわからないのが面白いところだ。プロツアーに出場するプレイヤーは当然、最多勢力になりそうなデッキを意識し、自分だけはそのデッキに対して勝てるように、自らのデッキをチューンアップしてくる。つまりプロツアーでは、最多勢力はあえて泳がせつつ、自分はそれを狩る側に回るのが賢い立ち回りと言える。

 だが、そのようなことは参加者全員が考えている。自分だけはおいしい思いをしようと考える参加者たちが集まった結果、何が起こるのか?そこから始まるのはゲーム理論的な「裏」と「裏の裏」の読み合い、メタ的な化かし合いだ。しかし、そのメタの読み合いもプロツアー当日には必ず止まる。だから問題は、どこで止まるか・・・・・・・なのだ。

 はたして今回のプロツアー『霊気紛争』では、時計の針はどこで止まったのか?それでは実際にメタゲームを見てみよう。

サヒーリ・コンボ……24.7%

サヒーリ・ライ守護フェリダー

 やはり、予想通りと言うべきか。約25%、4分の1弱のプレイヤーが、この現代に蘇った《欠片の双子》コンボを選択した。

 この数字は【ジェスカイコントロール型】(16.9%)、【4色ミッドレンジ型】(5.9%)、さらに少数の《霊気池の驚異》型(1.9%)の3つの合計を合わせたものだが、プロツアーの2週間前から猛威を振るっていたこのコンボは、プロツアーでは対策されるというよりはむしろより洗練された形で他のデッキを脅かす結果となった。

黒緑系アグロ……24.5%

巻きつき蛇歩行バリスタピーマの改革派、リシュカー

 そしてこちらも前評判通り。「サヒーリ・コンボ」と同様に約25%、4分の1弱のプレイヤーが、『霊気紛争』で最も強化されたビートダウンを選択した。

 「サヒーリ・コンボ」への回答の一つ、《歩行バリスタ》をナチュラルに運用できるのはやはり強みだ。「サヒーリ・コンボ」と違い、ぶん回りもありつつメタられても容易には打ち砕かれない太さが人気の秘訣と思われる。

マルドゥ機体……22.4%

キランの真意号模範操縦士、デパラ無許可の分解

 今回のプロツアーで最も意外な展開だったのは「機体」の躍進だろう。もちろん「機体」自体は《密輸人の回転翼機》の代わりに《キランの真意号》を得て依然として強力なデッキであったことは自明だったのだが、それにしても5分の1強のプレイヤーが選択するとは誰が予想できただろうか。

 だが、「サヒーリ・コンボ」と「黒緑系アグロ」の2強状態が環境の前提だったとするならば、多くのプレイヤーが「機体」を解答として選んだのも納得できる話ではある。なんといっても3ターン目の《サヒーリ・ライ》を返しに落とせるのが《キランの真意号》であり、黒緑系アグロに対しても《致命的な一押し》の引かれ具合とぶん回り具合次第で戦えるデッキだからだ。

メタゲームは2強から3すくみの構造へ

 かくしてプロツアーは「サヒーリ・コンボ」「黒緑系アグロ」「マルドゥ『機体』」の3種のデッキがそれぞれ同程度の割合で存在し、しかもそれらの合計だけで70%以上を占めるという、多くの人間の意思が介在したにもかかわらず奇妙な均衡がとられているような、極めて興味深いメタゲームとなった。

 ここからどのようなデッキが勝ちあがり、トップ8に進出するのか。2日目の結果を楽しみに待つとしよう。

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