いよいよ今週末の7月14日(金)に、最新セット『破滅の刻』が発売されます。
新たな神や復活したプレインズウォーカーに加え、「永遠」「加虐」といった新キーワード能力など。
魅力的なカードが揃った『破滅の刻』を見ると、どのカードやデッキが強いのか、どのカードを買えばいいのか、悩んでしまう方も多いのではないでしょうか?
そこで各フォーマットを代表する実力者である第8期「神」の5人に、「『破滅の刻』で注目するカード トップ3」を聞いてみました!
■ 「神」とは?
晴れる屋が主催している、「神決定戦」という大会の暫定王者。
スタンダード・モダン・レガシー・ヴィンテージ・フロンティアの5フォーマットそれぞれで行われており、予選大会 (挑戦者決定戦) と決勝大会 (神決定戦) を勝ち抜いた者だけが「神」になることができる。
各フォーマットを熟知した者ならではの視点から、鋭い意見が飛び交いました。「神」の目には何が映り、彼らは何を考えたのでしょうか。
◆ 第8期スタンダード神 和田 寛也
『破滅の刻』カードセット全体の印象
ご無沙汰しております、スタン神です。先月は久しぶりにスタンダードの大会に参加したりしましたが、『アモンケット』のゾンビは凄いですね。何が凄いってとにかく筋肉質なことにビビりました。ゾンビ・トークンが簡単に6/6とかになって肉壁を築き上げて迫ってきて、従来のゾンビのイメージが一瞬で崩れ去るのを感じました。
それはともかく、今回の「破滅の刻」ですが、マズいですね。売れる気配がしません。
ついに姿を明らかにしたニコル・ボーラス!!超強力フィニッシャーを手にしたグリクシスコントロールをあなたの手に!!
……というのがこのセットの売りなんでしょうが、いかんせん「グリコン」というデッキタイプそのものが勝てる気がしません。プレインズウォーカーも流せる全除去とかも新たに入ったみたいですが、悲観的な見方ばかりしてしまう私としては、《大天使アヴァシン》を構えられてモジモジする光景しか思い浮かびません。ここはプロツアー『カラデシュ』をグリコンで制したあの男に全力で期待しましょう。
さて、とはいえ、この記事は新セットの魅力をお伝えする場です。私なりのオススメカードを全力でピックアップしていこうと思います。よろしくお願いします。
『破滅の刻』スタンダード注目カードトップ3!
1位 《敵意ある砂漠》
唐突に収録されたミシュラ土地 (※)。起動2マナで3/4という《樹上の村》をも超えるサイズを誇り、様々な盤面で活躍が期待できます。
「墓地の土地を追放」という特殊なコストを要求しているため、投入できるデッキに制限はありますが、「昂揚」系デッキなら安定して運用できることでしょう。後述のカードと相性の良い「砂漠」である点も見逃せません。スタンダードのみならず、フェッチランドのあるモダン以下の環境においても影響を与えそうな一枚です。
※ミシュラ土地: クリーチャー化する能力を持つ土地
2位 《ラムナプのハイドラ》
この手のカードを見るときは、まずはMAX値で見た上で強いかどうかを考えます。この場合、「4マナ5/5、警戒・到達・トランプル」ですね。ですが、これだけだと実際ゲームにおいてどれくらいありがたみがあるのかハッキリしないので、次に、スタンダードでよく使われているカードと相対したときに強いかどうかを考えてみます。
《闇の掌握》……5/5は一撃ではどかせない!!⇒つよい
《大天使アヴァシン》……5/5到達!!ヘビのくせに⇒つよい
《栄光をもたらすもの》……5/5到達!!しかも警戒!⇒つよい
……どうでしょう?ありがたい存在に見えてきましたね。他にもトランプルが飛行機械・トークンに邪魔されなくて強いとか《ハシェプのオアシス》で+3/+3するとトドメの盤面で地味に強いとかいろいろありますが、とにかく単体でここまでやれるのは結構立派なことなんじゃないでしょうか。
「昂揚」デッキで使うなら《精神壊しの悪魔》でいいじゃねーか、とか思っているそこのあなた。コンテンツは買い支えてなんぼであることを思い出すのです。
3位 《啓示の刻》
この手のカードを見るときは……と2位の蛇と同じアプローチで考えようかと一瞬考えましたが、3マナで撃てる《次元の浄化》はどう考えたって強いので、ここは逆に条件を満たさない場合どうか?という観点で見てみます。……むむ、このカード……《次元の浄化》の上位互換!!?
《次元の浄化》と言えばかつて私も参加したプロツアー「ギルド門侵犯」にてトップ8のうち2つのデッキに採用されていた超強力カード。そんな名カードの上位互換が弱いはずがありません。PW・ギデオン・ボーラス・手掛かり……全部まとめて流してしまいましょう。
以上、スタン神的『破滅の刻』3枚でした。それではまたどこかで。
◆ 第8期モダン神 松田 幸雄
『破滅の刻』カードセット全体の印象
今回はモダン向けのカードが結構出ましたね。まあどちらかと言えばメインから使えるカードではなくサイド向けのカードが多い印象です。
サイドボードの幅が広がったことで、様々な既存のデッキが強化に繋がったセットだと思います。
『破滅の刻』モダン注目カードトップ3!
1位 《立身+出世》
現在のモダン環境において非常に強い《死の影》系デッキととても相性がいいですね。《立身》のリアニが《瞬唱の魔道士》、《死の影》、《タルモゴイフ》を復活させられるだけでかなり強力なのに、《出世》の強化モードも地味に優秀。これのおかげで全体除去の返しに《死の影》が走ってくることもあるでしょう。《死の影》デッキは完成度が高く枠が少ないデッキですが、ぜひとも採用したいカードと言えます。
《死の影》以外でも《ヴリンの神童、ジェイス》や《荒廃の工作員》などシナジーするクリーチャーは割と多いので、モダンでよく見るカードになるかもしれません
2位 《リリアナの敗北》
ソーサリーながらたった黒1マナであらゆる黒いクリーチャーとプレインズウォーカーに対処できるナイスサイドカード。特にリリアナはモダンで使われる頻度が多いので、オマケの3点ルーズも地味に強い。
今回は他にも《献身のドルイド》コンボ対策の《厳粛》やバーンにとても有効な《オケチラ最後の慈悲》など、サイドボードで光るカードが本当に多いです。
3位 《約束の刻》
特殊地形が強力なモダンではかなり面白そうな1枚です。《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》を持ってくるのはもちろん、ウルザトロンを揃えることにも使えます。他にも《ニクスの祭殿、ニクソス》、《エルドラージの寺院》、《幽霊街》、《ボジューカの沼》など、候補はいくらでもあります。
同じような挙動の《原始のタイタン》と比べてマナコストと色シンボルが軽いので使いやすいのも大きなポイントです。一応ゾンビ・トークンを出したい場合、モダンには元祖砂漠である《砂漠》があるので検討してもいいかもしれません。
おまけ 《野火の永遠衆》
マナコスト踏み倒し能力がなかなか危険です。モダンでは《残酷な根本原理》や《時間の伸長》など強烈なかみ合いカードがあるので危ないです。地味に《稲妻》に耐えられる最低限のタフネスも持ってますし。能力にビビって《未練ある魂》で4回チャンプされたら16点も削れます。今回1番のおすすめかみ合いワンチャンカード。
えっ、《王神、ニコル・ボーラス》? うーん、《解放された者、カーン》でいいんじゃ?
◆ 第8期レガシー神 川北 史朗
『破滅の刻』カードセット全体の印象
「永遠」、「加虐」、「督励」、「余波」、「サイクリング」、「砂漠」とたくさんのメカニズムが含まれてるため、もっとマジックを楽しくしようというメーカーの意気込みを感じます。個人的には「探査」のようなもっとレガシーにも大きな影響を与えるようなメカニズムに期待したいところですが。。。
『破滅の刻』レガシー注目カードトップ3!
1位 《厳粛》
レガシーで非常に可能性を感じるカード!! すぐに思いつくのは《暗黒の深部》ですかね。このエンチャントを置いている状態で緑1マナ出せるようにしておいて、《輪作》で突然死とか決まると気持ちよさそうですね。
レガシーの既存デッキだとエンチャントレスに入りそうです。地味ですが「感染」デッキ対策にもなるし、《梅澤の十手》や《霊気の薬瓶》でカウンターが置けなくなりますね。
「無限頑強」、「無限不死」など他にも思いついていないコンボがあると思いますので、今後注目の一枚です。
2位 《敏捷な妨害術師》
3マナ払えばドロー付きの打ち消されない《もみ消し》。3マナのうち青は1マナしか必要ないので、《ヴェンディリオン三人衆》より出しやすく、3/1飛行、瞬速は十分レガシーでも通用するカードです。コントロール対決のときにフェッチランドをもみ消されてワンドローされたら、負けた気持ちになります。
3位 《ラムナプの採掘者》
クリーチャー版《世界のるつぼ》!クリーチャーであるがゆえに《世界のるつぼ》より除去されやすいですが、《緑の太陽の頂点》で持ってこれたり、アドバンテージを稼ぎつつ殴れたりと《世界のるつぼ》ではできない芸当ができるので、レガシープレイヤーなら1枚は買っておきたいカードですね。他にも3マナ《神の怒り》である《バントゥ最後の算段》や、前半は2マナのクリーチャー除去、後半は最大2体まで除去できる《翦草+除根》も注目しています。
◆ 第8期ヴィンテージ神 森田 侑
『破滅の刻』カードセット全体の印象
黒幕、《王神、ニコル・ボーラス》により『アモンケット』が滅ぼされてゆく様が描かれていることもあり、ゲートウォッチ各メンバーの敗北、斃れた『アモンケット』の神々など 衝撃的な場面がカード化されている枚数が、ここ最近のセットの中で特に多い印象を受けました。
『アモンケット』ブロックは墓地を利用するカードが多いので、何か良からぬことができるカードが出てこないかと思ってましたが悪用できそうなカードは無く、残念なような安心したような複雑な感じです。(『カラデシュ』ブロックから引き続いてヴィンテージ級のカードがそう頻繁に来られても困るのですが)
『破滅の刻』ヴィンテージ注目カードトップ3!
1位 《削剥》
ヴィンテージ環境の多くのデッキに入っている厄介なアーティファクトを対処しつつ、「墓荒らし」、「エルドラージ」などのアーティファクトに依存しないデッキに対してもクリーチャー除去という役割を持てるため、メイン投入しても腐ることが少ない便利なカードです。
単体のカードパワーはさほど高いわけではないので、複数枚投入されることは少ないと思いますが、デッキの隙間を埋めるような形で採用するデッキがこれから出てくるでしょう。
2位 《王神の贈り物》
7マナとかなり重いですが、《Mishra's Workshop》を使えば何とか出せる範囲なので、「MUD」などのクリーチャーで攻める茶単デッキの息切れ防止役として採用できるのではないでしょうか。
使用する場合は同型対策としてサイドから投入することが主だと思いますが、これで生成されるトークンは速攻を持っているため、《魔力流出》などの1枚で完封されかねないカードに対しても効果的な局面も出てくるでしょう。
3位 《厳粛》
今すぐに使われるカードではないと思いますが、きな臭いことが書かれていることは間違いないので、セット内で将来的に大化けする可能性が一番高いカードとして挙げさせていただきます。
ヴィンテージで使われるアーティファクトの中で《歩行バリスタ》、《煙突》などカウンターを利用するものは少なくないため、このカードが効果的な局面があるかもしれませんが、《魔力流出》、《静寂》といったより強力な対策カードが既に存在するので、アーティファクト対策としてはそれらのカードを使うほうが良いでしょう。
今は想像できませんが、ヴィンテージ級の新しいコンボが生まれるとき、このカードが必須となるかもしれません。
◆ フロンティア神 松本 友樹
『破滅の刻』カードセット全体の印象
こちらの記事ではお久しぶりです。BIGMAGIC所属松本友樹です。
さて、今回のエキスパンション名は『破滅の刻』。その名の通り、スタンダードでは猛威を振るいそうなカードが多数ありますね。しかし残念ながら、フロンティア世界において破滅をもたらすほどの影響力はなさそうです。
もちろんですが、猛威を振るわずとも既存のデッキを強化するカードや新しい構成にチャレンジしたくなる魅力的なカードはきちんと収録されています。特に今回は脇を固めるいぶし銀なカードたちが多そうだと感じました。
それでは見ていきましょう。
『破滅の刻』フロンティア注目カードトップ3!
1位 《立身+出世》
1993年8月5日にMTGは誕生しました。今年で24歳になりますね。
その長い歴史の中で膨大な数のカードが作られましたが、1マナでキャストが可能なリアニメイトスペルはこの世に2種類しか存在しませんでした。この『破滅の刻』で3種類目が作られるまでは……。
ということで、みんな大好きリアニメイトの新たな亜種です。これまでのリアニメイトの中でも対象の範囲は最も狭くなっています。もちろん、《発掘》のただの下位互換とはなっていません。「余波」でキャストが可能な《出世》は非常に強力な能力です。
フロンティアというスタンダードよりも遥かに広いカードプールを持つ世界において、この《出世》モードの存在は非常に大きなものです。《残忍な剥ぎ取り》がたった3マナで走り6点ものダメージを与えながらさらに墓地を肥やすのは痛快です。相手が苦労してようやく倒した《ヴリンの神童、ジェイス》が復活して即座に変身し、盤面をコントロールしだすかもしれません。《サテュロスの道探し》の能力でついでのように墓地に落ち、相手が油断した隙に《出世》した《ナントゥーコの鞘虫》がライフを全て奪っていくかもしれません。
2マナ以下で強烈なインパクトを持つカードや、速攻を得ることで大きな力を発揮するカードは沢山あります。是非いろんなデッキで試してみてください。
2位 《約束の刻》
フロンティアでもランプデッキというものはあります。《精霊龍、ウギン》や《絶え間ない飢餓、ウラモグ》、《約束された終末、エムラクール》といった最上級のカードを使えるフロンティアにおいて、強力なマナ加速はずっと待ち望まれていました。
未だ《不屈の自然》はありませんが、《エルフの神秘家》→《ニッサの巡礼》というラインは強力です。しかし、これまで《ニッサの巡礼》後のアクションで強力なものがありませんでした。確実に5マナに伸びるというのに、取れるアクションは4マナの《爆発的植生》か《面晶体の記録庫》のみ。どちらも強力なマナ加速ではありますが、次のターンにウギンもウラモグも唱えることはできません。
この《約束の刻》は違います。3ターン目に《約束の刻》を唱えることができれば、4ターン目に《絶え間ない飢餓、ウラモグ》でも《精霊龍、ウギン》でも好きなものを唱えることができるのです!
……というのは少々都合が良すぎますが、土地の選択肢が豊富なフロンティアにおいて、どんな土地でもサーチできるこのカードの価値は計り知れません。素直にランプデッキで使うのも良いですし、《霊気池の驚異》のサブプランとして採用するのも有効です。ばんばん唱えて戦場をエルドラージやドラゴンで埋め尽くそう!
3位 《敵意ある砂漠》
フロンティアといえばフェッチランド環境です。新たなミシュラランドである《敵意ある砂漠》の起動条件は、フロンティア世界においてないも同然です。そしてミシュラランドにおける3/4というサイズは、本来であれば起動に3マナはかかって然るべき強さです。それがたった2マナで動き出すというのですから、このカードの強弱について語るまでもありませんね。
惜しむべくは無色のカードであるという点。フェッチランドを多用するのは基本的に2色以上のデッキであり、そのようなデッキでは無色ランドを取ることそのものがリスクであり、採用できる枚数も限られてしまいます。
それでもアンタップインであるというのは大きな魅力ですし、もしかするとかつての《変わり谷》のような気軽さで採用されてしまうかもしれませんね。
「神」ならではの柔軟な発想と鋭い着眼点から、各フォーマットの『破滅の刻』の注目カードをレビューしてもらいました。
彼らは、そして世界中のプレイヤーたちは、これらのカードをどう使うのでしょうか?
発売後に行われるプロツアー『破滅の刻』や、各フォーマットの大会結果をお楽しみに!!
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